HomeMr.Taka 中学校理科の授業記録1年(2016年度)

実験3 光の屈折

     2016 10 28(金)〜11 2(水)
     理科室

はじめに
 本時は、光が屈折する現象を学習します。文科省レベルは『その現象を正しく把握すること』にとどまっていますが、私は『光が屈折する原因』まで踏み込みます。ただし、中学1年レベルで『光の屈折現象を理解すること』は基本的に不可能でであることは理解してなければ、授業は失敗します。踏み込むというより、入り口の扉をノックする程度です。しかし、現象を楽しむだけのような学習は理科という教科の本質に背くので、私は入り口だけでも紹介しなければいけないと思います。さもなければ小学校で楽しい自然現象として取り扱えば良い、と思います。

 屈折現象の理由・原因説明は長年苦労してきました。私は『説明授業』や講義形式の授業は嫌いますが、残念ながら、いまだそのレベルの授業しかできません。これは中学1年生の発達段階が原因なので、人類の知的水準そのものが上昇しなければ解決しない問題です。本ページは、その解説手順の現状を掲載します。

 現象そのものに学習は14年前の記録『実験4 光の屈折1年(2002年』や4年前の記録『実験3光の屈折1年(2012年』をご覧ください。


本時の記録
 授業は前半と後半の2つに分けられます。そして、最後にプチ実験『水槽によるレーザーポインター光線の屈折』が付いています。図1を見てください。左は前半『屈折現象の確認』、右は後半『光が屈折する理由』です。


図1:本時の板書(クリックすると拡大します)

(1)前半『屈折現象の確認』
  指導手順は、14年前と4年前のものをご覧ください。比較すると、レーザーポインターを使った『実験4 光の屈折1年(2002年』が優れていることがわかります。安全に気をつけて実践してください。


図2:レーザーポインターとガラスを使った実験(実験4 光の屈折1年(2002年から)
 
図3:光源装置とガラスを使った実験(実験3光の屈折1年(2012年から)

(2)後半『光が屈折する理由』
 先生が主体になって行います。制限時間は8分です。それ以上使うことは、生徒の混乱を招きます。楽しく歌うように、ごく自然に話を進めていきましょう。私が変なことを言っているように感じる先生には、以下の手順による講義形式の授業をお勧めしません。つまり、この(2)は割愛するべきです。

光が屈折する理由

 黒板に長方形を書きます。その長方形は、授業前半で学習した長方形(直方体)のガラスに対応します。図4にある長方形が『それ』です。


図4:黒板1

 「さて、この長方形は何でしょう? ・・・(生徒がいろいろ答えるので)・・・違います、ちがいます、違います。正解は、・・・砂場です(生徒は『わかるわけない』とつぶやく)。では、砂場はどんな場所でしょう? ・・・(生徒がいろいろ答えるので)・・・A君正解です! 走りにくい場所です。さてさて、砂場とガラスは同じように考えることができます。すなわち、光にとって進みにくい場所なのです。光は透明なものの中を直進することができますが、空気中からガラスへ進む時、その境界線で減速します。そして、ガラスから空気中へ出た途端、もとの速さにもどります」

 「光の速さはとても速く、1秒間に地球を7周半もまわってしまうほどですが、これは真空、何もないところでの速さです。空気中なら少し遅くなります。ガラスならもう少し遅くなります。水中でもプラスチックの中でも遅くなります」

 「ここで、図1をもう一度見てください。何もなければ、光は屈折することなく、破線のように直進します。しかし、道路と砂場との境界線で屈折しますので、その理由をこれから説明します。光は斜めに進むように書きますが、これは斜めから進入した場合しか屈折しないからです。もし、光が砂場にまっすぐ進入した場合は、砂場で遅くなりますが、屈折することはありません。それは、みなさんが実験で確認した通りです」


図6:黒板2

 図6は砂場に進入しようとする光です。光は『2つのタイヤで進む車』として例えます。なぜ、そのように例えるのかは説明してはいけません。

 「光を2つのタイヤで進む車に例えると、ほら、まっすぐに砂場に入らない場合、一方のタイヤだけブレーキがかかります。その一瞬の間に、もう片方のタイヤだけが進みます。結果、砂場との境界線で車は急に曲がります(図6)


図7:黒板3

 図8の赤線は、砂場における光の進行方向です。このを書いてから図9のように、を書きます。


図9:黒板3

 注意点は、先生が説明をしている時、生徒は自分のプリント(ノート)に書かないことです。先生の一挙手一投足を見るように指導してください。書くことに気を取られた生徒は、ほぼ確実に落ちこぼれます。

 そして、車を砂場のふちまで進めます。砂場から脱出しようとする車は、ここでも屈折します。すなわち、初めに脱出したタイヤだけが進むことになります(図10)。


図10:黒板4

 図10の緑色の線は、光の進行方向です。このを描いてから、車(光)を書きます(図11)。注意点はここでも同じ、生徒に書かせないことです。


図11:黒板5

 最後に、初めの破線緑色の直線が平行になっていることを確認してください(図11)。

 先生の説明が全て完了したら、生徒に筆記用具を持たせ、プリントに記述させます。

ワンポイント:入射角と反射角
 図10は「光が砂場から出る」と説明していますが、すべての説明を終えてから、次のように訂正してください。
 「光は砂場から出るのではなく、普通の道へ入る、と考えてください。つまり、入射角はこれまで進んでいた砂場につくります。屈折角は普通の道に入ったことによってできた角度です。入射角と屈折角の関係は『普通の道から砂場へ入る部分』と同じように考えてください。


図1:本時の板書(クリックすると拡大します)

(3)簡単な生徒実験『水槽によるレーザーポインター光線の屈折』
  安全に気をつけて実施させてください。方法は以下の通りです。

生徒実験『水槽によるレーザーポインター光線の屈折』の手順
(1)水槽に水を入れる
(2)電気を消して、室内を暗くする
(3)レーザーポインタの光線を、水槽に入れる
(4)境界線における屈折を楽しむ

 理科室を暗転させると、生徒の何人かは興奮状態になります。その一方、冷静な生徒は授業内容を確認することができます。以下の図2と図3を見てください。これらは同じものです。


図2:レーザー光線の屈折1



図3:レーザー光線の屈折2

 屈折する場所、よおび、屈折率はさまざまです。さらに、全反射している部分もあります。光の直進・屈折・全反射という現象は、次の時間にまとめるので、本時は自由に楽しむことができれば良いでしょう。


授業を終えて
 指導できる先生は、レーザーポインターによる授業が良いと思います。また、文科省と教科書出版社にお願いですが、光が屈折する理由説明は中学生の発達段階に適していませんので、扱わないようにしてください。よろしくお願いします。

関連ページ
実験4 光の屈折1年(2002年
実験3 光の屈折1年(2012年

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
第5章 目で見る 光   直進する光 p.88
 反射の法則  p.89
 屈折する光  p.90
 光の屈折を光の速さで説明する  p.91

実験2 光の直進性と反射の法則 ←

→ 実験4 光の直進・屈折・全反射

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