HomeMr.Taka 中学校理科の授業記録1年(2016年度)


実験4 光の直進 → 屈折 → 全反射

     2016 10 31(月)〜11 2(水)
     理科室

はじめに
 前時『実験3光の屈折』で学習したことは、(1)光は直進する、(2)違う物質へ進入する場合、進入方向と境界面が垂直なら直進する、(3)進入方向が斜めの場合は屈折する、でした。本時はそれを受けて、さらに斜めにすると光が進入できなくなる現象『全反射』を学びます。


図1:本時の学習プリント原稿(クリックすると拡大します)


本時の目標
・半円形の透明体を使い、光の直進、屈折、全反射を理解する
・光の直進、屈折、全反射を正しく作図する
・同上の検証実験を行う

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 定 規
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 『全反射』演示用水槽
  • 茶 碗        (1 / 班)
  • コイン、または、丸磁石(1 / 班)
  • 丸底フラスコ     (1 / 班)
  • 小さな赤い物体  (約5個 / 班)
    業務室で見つけた建築用資材『アンカー』

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 授業は、前後半の2つにわかれます。

 前半は『光の直進→屈折→全反射』の理論と演示実験、後半は全反射の生徒実験です。

(2)理論の確認:光の直進→屈折→全反射 (15分)
 学習プリント左半分(図2)を使います。プリントに書かれて半円形の物体は、透明なものなら何でもかまいせん。プラスチック、ガラス、水などです。


図3:学習プリント左半分

 半円形の弧(こ)の外側にある点A点Eから、レーザー光線を発射します。照射方向は、半円形の中心です。図3の点Eを見てください。その方向を破線で示しています。

 さて、ここで問題です。

問題:レーザー光線は直進しますが、物体との境界でどうなるでしょう?
   次の◯◯に2文字を入れてください。

   光は◯◯する

 まず、考え方を紹介します。前時『実験3光の屈折』で学習したように、違う物体へ進入した光の速さは変わります。遅くなったり速くなったりします。しかし、この場合、光は境界線に対して垂直に進入しているので、左右のタイヤが同じように遅くなったり速くなったりするので、境界で一方のタイヤだけ進むこと(屈折)はないのです。したがって、答は直進です。


図4:光の直進、屈折、全反射

 図4は、5つの点A〜点Eから照射されたレーザー光線が書かれています。半円形に入る部分では、いずれも直進しています。その理由は、上で説明しました。すべての光は中心に向かいます。

 次に考えることは、中心にたどり着いた光が進む方向です。点Aと点B〜点Eの2つに分けて調べてみましょう。

点Aの光
 直進します。理由は、上で説明したように境界面に対して垂直だからです。

点B〜点Eの光
 屈折します。屈折する割合は、入射角によってかわります。初めは少しですが、どんどん急になっていきます。点Bと点Cの光は屈折しています。しかし、点Dと点Eは屈折し過ぎて出られなくなり、境界面で鏡のように反射します。この現象を『全反射』といいます。これらとまとめると、直進→屈折→全反射、となります。

 なお、点Dと点Eのより正確な表現は「光が(空気中へ)出られなくなる」ではなく、「光が空気中へ入れなくなる」です。空気中へ入射できなくなくなる、と考えるのです。

(3)演示実験:光の直進→屈折→全反射 (5分)
 大型水槽を使って、(2)の検証実験を演示します。詳細は別ページ『水槽を使った光の屈折2(全反射)1年(2002年)』をご覧ください。

(4)授業前半の点検(5分〜10分)
 生徒は自分のプリントに書いたら、先生のところへ持って行き、点検を受けます。点A〜点Eからの光線は、図4のように色分けしていれば問題ありませんが、ない場合は、確実に名称『A’〜E’』があることを確認してください。きちんとできていない場合は、何回でもやり直しをさせます。

 全員合格したら授業前半終了です。以下の後半に進んでください。

(5)生徒実験:茶碗の中に浮かぶコイン (理論:10分、実験:7分)
 学習プリント右半分を使います。まず、理論を学習してから、実際に確かめます。


図5:浮かぶコインの理論

 図5左図は、茶碗にコインを入れ、茶碗のぎりぎりのところに目を合わせた様子です。目の位置を動かさないようにして、茶碗に水を入れます。すると、水と空気の境界面で光が屈折します。この場合は、コインから出た光です。コインは光を出しませんが、コインが見えるのは(結果として)コインが光っているからです。その辺は正確に説明することなく、スルーすることをお勧めします。

 コインから出た光が屈折する方向は、図5右下図を書いて説明すると良いでしょう。前時『実験3光の屈折』 に学習したものと同じなので、大多数の生徒が納得します。


図6:茶碗に水を入れ、コインが浮かぶように見える現象を確かめる様子
実習6 光の直進、屈折、全反射の作図1年(2002年)から)

(6)生徒実験:丸底フラスコに消えるコイン (5分)
 実験手順だけを解説したら、すぐに各班で実験を行います。


図7:消えたように見える高さフラスコを持ち上げてくれたA君


図8:水を満たした丸底フラスコに、小さな赤い物体を入れる様子


図9:高さを変えて見ると、赤い物体が消えたように見える


図10:実験スナップ写真

 実験を十分に楽しんだら、その理論を考させます。以下は別ページ『消える石の秘密(1年2002年)』の転載です。(5)茶碗の中に浮かぶコインと同じです。応用になりますが、みなさんも考えてくください。


図11


図12


図13

図14

図15

図16


図11〜図16:角度を変えてみた丸底フラスコ(『消える石の秘密(1年2002年)』から)

(7)片付け、考察 (10分)


図16:本日の板書(クリックすると拡大します)


授業を終えて
 前半の作図は、全員できていることを個別点検できました。そして、後半の実験は全員で楽しんでいたようです。洗練された授業展開で、生徒が十分に満足できる1時間に近づいたと思います。

関連ページ
実習6 光の直進、屈折、全反射の作図1年(2002年)
水槽を使った光の屈折2(全反射)
1年(2002年)
消える石の秘密1年(2002年)
実験5 光の屈折2(全反射)
 1年(2002年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
第5章 目で見る 光   屈折する光  p.90、p.91
 屈折から全反射へ  p.92、p.93
 反射、全反射 p.94、p.95

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