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第11時
観察11 メダカの尾びれの毛細血管2017 5 12(金)
第1理科室・メダカの尾びれの血流を観よう(YouTube)
はじめに
メダカの尾びれの観察は何度も行ってきましたが、授業記録の公開は初めてです。初めてになった理由は私の怠慢ですが、授業の写真がないことも一因です。メダカの命をあずかる実験、精密さをもとめられる被写体なので、時間をかけられないのです。今年は授業をアシストして頂いたU先生お陰で、いくつかの記録を残すことができました。
メダカの入手方法、飼育について
学校に出入している業者に依頼すれば、高価なヒメダカ(一番よく出回っているメダカ)をもってきてくれるでしょう。ネット注文可能なら、日時を指定してください。クール宅急便で運ばれてくると思います。注文する時は、『メダカの餌』と『オオカナダモ』も依頼しましょう。先生はできるだけ大きな水槽を用意し、水を入れておいてください。水槽の設置場所は、直射日光が当たる場所の方が良いのですが、水温が異常に上がらないか確認してください。適温は18℃〜28℃でしょう。
メダカが学校に到着したら、すぐに水槽に入れるのではなく、袋のまま水槽に数時間入れておきます。水温や環境に慣れてから、水槽に放ちます。オオカナダモなどの水草は、メダカを入れる前にセットしておいてください。
餌は朝晩2回、残らない程度にやります。購入したばかりの高価なメダカは飼育状況が良いはずなので、すぐに産卵します(水温25℃〜28℃)。水草を入れておけば、そこに産卵します(卵には付着糸がついている)。ホテイアオイの根はたくさん生えていて、産卵しやすそうですが、採取が大変かもしれません。
空気を入れたり掃除をしたりする必要はありません。鑑賞には適しませんが、メダカは緑色の水の方が幸せです。直射日光をあて、葉緑体をもつ微生物がたくさん繁殖させてください。餌を与える必要もなくなるでしょう。
受精卵の卵割、発生、子どもを育てたい場合は、卵をみつけたら別水槽に移します。親と同じ水槽に入れておくと、すぐに食べられてしまいます。卵は水草ごと移動さますが、孵化したら水草は不要です(親には必要)。
受精卵は7〜10日ほどで孵化、子どもになります。子どもの口はとても小さいので、『子どもメダカの餌』を購入し、与えてください。水槽の壁や水が十分に緑色なら、何も与える必要はありません。すくすく育ちます。
受精卵を光学顕微鏡で観察すれば、驚くほどたくさんの発見と驚きと感動があります。ぜひ、観察してください。詳しくは、実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』をご覧ください。
時間のゆとりと興味がある先生は、ぜひ実践してください。卵の発生は簡単に観察できます。先生による演示実験、モニターによる観察であっても感動の嵐が吹き荒れるでしょう。なお、受精卵の発生はとても速く、狙ったものを観察できるとは限りませんが、いつのステップにおいても大きな発見が待っているでしょう。
上:メダカと小さな袋に入れ、尾びれを光学顕微鏡で観察する様子
本時の目標
・生命を大切にする心を育てる
・メダカの生命を守るための実験上の技術を身につける
・メダカの尾びれの毛細血管を流れる赤血球を観察する
準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
- ヒメダカ(1 /班)
- 50mLビーカー (1 /班)
- 小さなチャック付きビニル袋(1 /班)
- 光学顕微鏡(1 /班)
- 光源装置(1 /班)
- 教師用顕微鏡装置
- 大型モニター
- 指示棒
- リハビリ用の水槽
- たも
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)
メダカの生命を尊重することを伝える。(2)メダカの尾びれの観察の手順 (10分〜15分)
以下の内容を説明します。
1) メダカをからだのつくり
2)メダカと水を小さなビニル袋に入れる(写真下)
上:この状態なら数時間は生きていられると思います(ストレスで衰弱すると思いますが)、2014年3)5分間生存可能な最小限の水を残し、不要な水を捨てる
===水が多いとかだらや尾びれが動き、観察できない===
4) ビニル袋の空気をすべて出し、袋を密閉する
===ここから先は時間との勝負===
===制限時間5分 ===
===5分経過したら、観察できなくてもメダカを解き放つ===
5)時計の秒針を記録する
6)ビニル袋入りメダカを顕微鏡ステージに載せる(写真下)
→ 載せるだけですぐ見れるように事前にセットしておく
→ スライドガラスは使わない
上:顕微鏡ステージに載せられたビニル袋入りのメダカ7)尾びれを顕微鏡観察すると、骨がよく見える(写真下)
8)目的は骨ではなく、それに並行するようにある毛細血管(写真下)
上:メダカの尾びれ(600倍)、2014年ここで、上の写真を見て『骨』と『毛細血管』を識別してください。骨は2本あります。無色透明です。細長い細胞がつらなっています。黄色く見えるものは色素です。赤血球ではありません。黄色い色素は『ヒメダカ』という黄色いメダカを観察しているからです(細胞そのものは無色透明)。
目的の『毛細血管』は、ここまで識別できればわかるはず(?)です。上の静止画像ではわかりませんが、心臓がばくばく動いているメダカなら、それに合わせて無数の赤血球が、ぐっ、ぐっ、と流れます。子どもたちの歓声を聞いてください!
上:もう1枚上の写真に『毛細血管』と赤血球を書き込んだもの、2014年
骨 毛細血管 (1)簡単に見える
→骨が見えない人は、毛細血管は無理
(2)直線的
(3)節目のような長方形のもの
が並んでいる
(4)無色透明
(5)途中で2つに枝分かれする
→尾びれが広がっているから
(6)観察倍率100倍(1)無色透明
(2)太さは骨の1/5以下
(3)くにゃくにゃ曲がっている
(4)骨の横だけでなく、上や下にもある
(5)たくさんの小さな粒が流れる
→小さな粒=赤血球
→赤血球は無色&透明
→血球は、心臓の拍動に合わせて動く<動脈>
→メダカが弱ると、動かなくなる
→静止したら、3分以内でもメダカ解放
→さらさらと流れるのは<静脈>
(6)観察倍率400倍
→対物レンズがぶつからない最高倍率
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上:観察ポイントの板書(A組)
上:前に集まり、私が演示実験するモニターを見ながら観察ポイントを再確認する生徒たち
上:もう1枚上の写真のモニター画面(メダカの尾びれ)2014年(3)メダカの配付 (3分)
配付手順は、次の通りです。
- 体力温存のため、メダカは直前まで大型水槽の中で生活
- アミでメダカを捕獲
- 50mLビーカーに水と一緒に入れる
- 生徒に配付する
その後のメダカの扱いにつて、連続して示します。
- 生徒は班に戻り、ビニル袋にメダカと水を入れる
- ビーカーの水は、メダカ回収のために残しておく!
- 不要な水、空気を押し出す
- 袋のチャックを閉める
- 顕微鏡観察開始(制限時間5分)
- 終了後、すぐにビーカーの中に入れる
- その後、先生に渡す
- 先生は、リハビリ用水槽に入れる
(4)生徒実習(15分〜30分)
班によって、所要時間はさまざまです。すぐに顕微鏡が準備できるところから、誰も動こうとしない班まで。とてもよくできるメンバーが揃うと、準備から観察成功まで10分です。その後、記憶や教科書、資料集を参考にしてスケッチしたり感想をまとめたります。
上:ステージに載せられたメダカ(がんばれ!)
上:観察のポイントをまとめた板書
100倍で『骨や色素』、400倍で『毛細血管や血流』が観察できる(5)ヒトの組織の観察 (0分〜15分)
それでも時間があまる班があるので、ヒトの組織の細胞を観察させました。肝臓、膵臓などです。
(5)本時の感想、考察 (5分)
授業を終えて
ほぼすべての班が成功しました。3分でできなかった班には、新しいメダカを配付しました。メダカを2匹使用した班の割合は数10%です。実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』
第3章 動物が動くしくみ メダカの耳石 p.53 第6章 生命の連続性 受精後3日目(のメダカ) p.114 第8章 進化と分類 卵膜に包まれて成長するメダカ p.154 (YouTube)
・メダカの尾びれの血流を観よう
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