このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第50時
個体から地球へ

     2018 9 26(火)、10 3(水)、4(木)
     普通教室

はじめに
 あなたの名前は何ですかと聞かれたら、私は「福地孝宏です」と答えます。それは私の個人名(個体名)ですが、私にはもう1つ「ホモ・サピエンス」という種名があります。その一方、理科の授業で『ある生物の名前』を質問すると、子どもたちは種名を答えます。タンポポ、ミミズ、イヌなどです。もし、家庭で飼っているイヌの個体名(太郎、じま次郎など)を答えたなら、教室中に笑いの花が咲きます。

 授業では、初めに個体名と種名について確認します。次に、種(しゅ)とは何か、同じ種類の生物とはどういうことなのかを考えます。生態系の学習はその次です。また、同種間・異種間の関係は、次の時間に学習します。


図1: 2つの名前に関する板書


本時の目標
・生物個体、および、生物種について考え、話し合う
・種を区別する視点の1つとして生殖、があることを理解する
・個体、種、生態系について理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)個体名と分類名(3分〜5分)
 
学級の人気者を指名し、名前を教えてもらいましょう。名前を板書したら、それは生物学的には「個体名」であることを教えます。個体名とは、1つの生物につけられた固有の名前です。ここまで確認したら、次に、分類名を考えさせます。「この学級にいるみんなは、生物学的に同じ種類ですが、その名前を知っていますか」と発問すれば良いでしょう。


図2:個体名「◯合◯太郎」、種名「ホモ・サピエンス」

(3)私たちの名前(5分〜15分)
 (2)に連続し人類、ホモサピエンス、ヒューマン、その他いろいろな名前を考え、発表させます。図3はある1つの基準にしたがって、細分化していったときの分類名です。


図3:霊長類という生物がもつ、いろいろな段階における名前


図4:私たちのいろいろな名前

 図4でいろいろな名前があるは、複数の視点があるからです。名前は視点の数だけあります。ある視点が段階的になっている場合(図3)もあります。学習ポイントは、異なる視点から分類できることに気づくことです。これまでの学習の総復習、とも言えるでしょう。

(4)ホモサピエンスをさらに分類する (5分〜10分)
 現代人(ホモサピエンス)をさらに分類します。これは差別や人権など難しい問題に関係してくるので、自信のない先生は取り上げないほうが無難です。しかし、先生が毅然とした客観的態度で話し合いをコントロールすれば、とても豊かな学習になります。社会科や道徳ともリンクします。


図3-2: 霊長類をさらに細分する

 図3,図3-2の学級では、階層を上げる作業で「日本人」という分類名がでてきました。


図4-2:同上

 図4,図4-2の学級では、分類名に階層番号をつけました。大きなものが1番です。図4-2の1番は「地球」、2番は「生物」、3番は「動物類」と「真核生物ドメイン」、4番は・・・(後略)のように番号をつけてあります。

真核生物ドメイン
 真核生物ドメイン類、という名称が出てくるところは、現任校の知的好奇心の高さを示しています。このような名称が飛び出した時の対応は、褒めるだけです。素晴らしい! よく知っていますね! で終了です。先生が知らなけ内容なら、発表した子どもに説明させてください。必要に応じて、その子どもの自由研究(掲示物)にさせても良いでしょう。
 なお、現場での私の対応は次の通りです。

 地球 > 生物 > 動物、真核生物ドメイン > (後略)

地球と生物の、階層関係
地球
以外にも生物が存在することは間違いないと思いますが、現在のところ確認できていないので、1番地球、2番生物としました。

動物と真核生物ドメインの、階層関係
動物と真核生物ドメインは、ちがう視点からの分類なので併置しました。


図4-3:同上

 図4,図4-2、図4-3の学級では、12番ホモサピエンスをさらに分類する名称を募集しました。そこで発表されたものが図4-3です。国名による分類、日本国内をさらにわける分類、身長による分類、肌の色による分類、男女による分類、子と親(生殖能力)による分類、親指がそるかそらないかによる分類、まぶたの形状による分類などです。

 私は、これらを同じ番号13番ダッシュとしました。分類は悪いことでも良いことでもありません。主観を混えない客観であれば、それは単なる事実でしかありません。ただし、分類のための基準や定義は、何らかの目的や意図によって行われるものなので、「主観を100%排除することは不可能である」ことを知らなければ、真に科学的であるとは言えないでしょう。

 学校の先生がもつべき視点は次の2点です。
(1)それらは、同じ基準(定規)で比較できるものか
(2)そもそも、その基準は客観的か
 上記2点について問題提起することこそが、先生の仕事だと思います。「100%正しいことはない」という事実は知性ある人なら誰でも認めるところです。すべての事実・真実・真理・歴史、教科書にある記述、客観的といわれるもの全てを疑ってかかる態度こそ、先生が教えなければならない科学的な姿勢です。

国境のない世界(私の主観)
 ごく一部の人は自分勝手な利益や主観を主張するために、ホモサピエンスを分類します。そして、優劣をつけ(主観にすぎない)、憎み合わせたり、殺しあわせたりします。主観を押し付ける行為は、知性のあるホモサピエンスの行為ではありません。

 ジョンレノンは曲『イマジン』で「国のない世界」を提案していますが、国境問題が戦争の主要原因の1つになっていることを考えると、国や国境という基準そのものが、ホモサピエンスにふさわしいものではない、と私は思います。人類は殺し合いの歴史を繰り返しています。個人的な殺人の原因は個人にありますが、国・政党・宗教による殺し合いは原因は国・政党・宗教です。どちらかが良い悪い、という問題ではなく、国・政党・宗教の存在そのものが問題です。人類は、ジョンレノンが提唱する次のステップへ進むべきです。

 日本国憲法は『恒久の平和を希求』しています。私は日本国憲法にしたがい、恒久の平和を実現したいです。そのためには日本国・国民・国境という言葉、国歌・国旗を乱用したり強要したりすべきではない、と考えています。

 また、授業では政党や宗教による分類は出ませんでしたが、先生は予測しておく必要があります。

(5)種(しゅ)とは何か (5分〜10分)
 種とは何でしょう。同じ種類とは、どういうことなのでしょう。


図5:種について考えるための板書

 本「種の起原」を書いたダーウィンは、ガラパゴス諸島で生物を調べました。ガラパゴス諸島は小さな島がたくさんありますが、それぞれの小島で生活する生物たちは、天敵が少なかったことがあり、それぞれ固有の形質をもつようになったことを発見しました。もともとは同じ種であると考える生物が、長い年月によって別な種になった可能性を指摘したのです。


図6:同上

 授業ではいろいろな意見が出ましたが、最終的に『生殖可能であること』としました。生殖とは、子孫をつくることです。

あいのこ
 授業で紹介した『あいのこ』は、人工的な雑種です。2つの異なる種(親)から、人工的につくった子です。あいのこの多くは、小さなうちに死んでしまったり、生殖して孫をつくることができません。このような理由から、最近は研究されていないともの紹介しました。


図6:授業で紹介したあいのこ

 他年度では、子供達に2つの生物であいのこを作った場合の空想画を書かせました。生物種を私から指示すると問題が起こりそうなので、組み合わせは子どもたちに任せます。ヒトと魚で人魚、タコとトリで◯◯、花とゴキブリで△△など、子どもたちの発想は無限大でした。

(6)個体から生物圏へ (10分〜15分)
 下図7のように、階層順に紹介します。


図7:個体から生物圏への階層


図8:同上(クリックすると拡大します)

(7)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 生物学的な自分の位置を知ることに、興味深い様子でした。

note:生徒と先生の会話

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

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