このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 3年(2018年度)です |
第73時
電気分解と化学電池(理論)2018 11 21(水)、22(木)
第2理科室はじめに
電気分解と化学電池は、同じような模式図を使います。ビーカー、水溶液、電極、それに、電子の流れを描きます。今日はこれら2つを同時にまとめることで、共通点と相違点を明確にします。今日の授業は、期末テストを直前にした子どもたちにとって頭の整理ができる1時間になると思います。
表1:電気分解と化学電池 比較する項目 電気分解 化学電池 電 源 あ り な し 水溶液
・よくある水溶液電解質
・NaOHを加えた水
・塩酸
『塩酸の電気分解』
・塩化銅水溶液
『塩化銅の電気分解』
・塩化ナトリウム水溶液
『食塩と食塩水の電気分解』
・塩化鉄水溶液
『塩化鉄の電気分解』
電解質
・塩酸
『HClと金属2種類による化学電池』
・果汁
『フルーツ電池』
・塩化ナトリウム水溶液(食塩水)
(備長炭電池、11円電池)電 極
・よくある素材同じ物質
・炭素棒2種類の金属
・Mg(-極)とCu(+極)
・Zn(-極)とCu(+極)
・Al(-極)とCu(+極)-極の変化
・はたらき
→よくできる物質変化なし
・電源からの電子を放出
→ 水素
→ 銅
→ 鉄なくなる(溶けて+イオンになる)
・電子を残す
→ なし
(溶けてなくなるだけ)
※ イオン化傾向(大)+極の変化
・はたらき
→よくできる物質変化なし
・電子を奪う
→ 酸素
→ 塩素変化なし
・-極から流れてきた電子を放出
→ 水素
※ イオン化傾向(小)個別ポイント -極は電子を出し、
+極は電子を奪う2種類の金属をつなぐと、その間に
電流が流れる。その導線の電子の流
れが『化学電池』の正体である。そ
の方向は2種類の金属のイオン化傾
向の大小によって決まる『イオン化
傾向(AlとCuの置換反応)』。な
お、金属どうしをつながない場合、
2種類の金属はそれぞれ個別に反応
する。ポイント 電子を放出する電極に着目する
・電気分解は-極、化学電池は+極、が電子を放出する
・放出された電子によって、水溶液中の+イオンが原子や分子になる
・それは銅や鉄などの金属原子、水素分子のいずかである
本時の目標
・電気分解と化学電池について、正しいモデル図で表す
・それらの−極と+極の電子の受け渡しについて正しく理解する準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)(2)電気分解の模式図 (10分〜15分)
ポイントは乾電池です。乾電池のマイナス極に『たくさんの電子』を描いてください。普通の乾電池は1.5ボルトなので、触っても大丈夫です。電子が飛び出す勢い(電圧)が1.5ボルトだからです。もし、電圧が1万ボルトの乾電池があったとしたら大変です。電子が空気中に飛び出してきてしまうかもしれません。
乾電池のマイナス極にいっぱい電子を書いたら、それに導線、電極をつなぎます。すると電子が流れ出て、導線と電極が電子で満たされます。電子で満たされた電極を水溶液の中に入れるとどうなるでしょう。水溶液中の+イオンが電子を求めて近づいてきます。そして、電子をもらい安定した原子や分子になります(図2)。
図2:電気分解の模式図次に、乾電池のプラス極について考えます。プラス極には電子がありません。プラス極は、電子を奪う性質をもっていると考えてください。そのような性質をもった電極を水溶液に入れるとどうなるでしょう。答えは簡単です。電子が余っているマイナスイオンから電子を奪います。電子を奪われたマイナスイオンは電気的に安定した原子や分子になります。
もう一度、それぞれの極にできる物質を確認します。マイナス極に集まる+イオンは、『水素イオン』と『金属イオン』しかありません。したがって、マイナス極にできる物質は『水素』または『金属』です。一方、+極に集まるマイナスイオンは、『酸化物イオン』か『塩化物イオン』のいずれかです。もちろん、その他にもありますが、中学生で学ぶものはこの2つです。したがって、マイナス極にできる物質は『酸素』または『塩素』のいずれかです。
図3:周期表における黄色の点は『水素』『銅』『酸素』『塩素』を示す
参考『中学で覚えるイオン』(3)化学電池(15分〜20分)
化学電池は、金属が水溶液に溶けてしまうことから始まります。金属を溶かす水溶液はいろいろありますが、授業では図4のように塩酸を選びました。
図4:化学電池の模式図塩酸の中にマグネシウムを入れると、マグネシウムが溶けます。そして、ぶくぶく泡を出します。何の泡かというと・・・『水素』です。金属を塩酸の中に入れると水素が発生する、この現象は小学校で学んでいます。
これは、塩酸(HCl)に含まれる水素イオンが電子をもらい、安定した水素(H2、分子)になる反応です。マグネシウムが溶けてしまう理由は、マグネシウムと水素を比較した場合、マグネシウムの方がイオンになりやすいからです。なぜ、マグネシウムの方がイオンになりやすいかについては、マグネシウムに聞いてください。そういう性質なのです。
図5:塩酸にマグネシウムを入れた場合図5を見てください。塩酸にマグネシウムを入れただけでは、電流は発生しません。電子はマグネシウムと水素の間で、瞬時に受けわたされるので、流れないのです。電流=電子の流れ、だからです。
したがって、電流を取り出すためには、マグネシウムがイオン化したときに放出した電子を、他へ導き出す必要があります。もう一度、図5を見てください。黄色い→、これが化学電池です。黄色い→にある電子(−の粒)の位置に、豆電球をはさめば点灯し、電子オルゴールをはさめば音が鳴り、モーターをはさめば回ります。
ここで、下図4をもう一度見てください。
図4:化学電池の模式図マグネシウムと銅をつなげると、その間に電子が流れます。それが電流、化学電池です。電子は銅へ移動するので、水素は銅から発生します。化学電池の+−を考えるポイントは、どちらがイオンになりやすいか(イオン化傾向が大きいか)です。そして、イオンになりやすい方が電子を放出するので、−極になります。+極は、成り行きに任せることが大切です。
図6:化学電池の説明図(図5と図4)(4)本時の感想、考察 (5分)
図7:本時の板書
授業を終えて
電気分解は電子を流すことから始まり、化学電池は金属が溶けることから始まる。そのことが理解できたでしょうか。ではでは。
第2時 ←
実験 塩化鉄の電気分解
→ 第74時
2学期期末テスト返却↑ TOP
[→home]
(C) 2018 Fukuchi Takahiro