このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第72時
実験16 塩化鉄の電気分解

     2018 11 20(火)、21(水)
     第2理科室

はじめに
 すべての金属は電子を失い、プラスイオンになる特性を持っています。鉄の場合、失う電子の数は2個と3個の場合があり、2個失った場合はFe2+(U)、3個失った場合はFe3+(V)になります。どちらになるかは条件によって変わるだけでなく、それらが複合した形(構造)になるので、鉄は難しい金属の1つとして有名です。

中学で学ぶ鉄、鉄イオン、酸化鉄
 身の回りによく見られる鉄は、詳しく学習したい金属の1つです。中学では硫黄と化合させたり、スチールウール(鉄)を空気中で加熱し、酸化鉄をつくったりします。スチールウールの加熱では、その質量が増加すること、増加量=酸素量であること、を学びます。その変化は『鉄+酸素→酸化鉄』ですが、化学反応式で表すことは困難です。

 問題点は鉄イオンの価数が2つあることです。1つはFe2+(U)、もう1つはFe3+(V)です。そして、さらに大きな問題点は、鉄は単純な酸化反応をするのではなく、複雑な反応をする(結晶構造をつくる)ことです。酸化鉄の種類は、ウィキペディアで16種類紹介されています。

 次に、チャンスがあれば授業で教えたいものをまとめます。

鉄の酸化(酸素不足の場合)
鉄イオン:Fe2+
酸化鉄:FeO(U)
Fe + O2 → FeO

鉄の酸化(酸化十分の場合)
鉄イオン:Fe3+
酸化鉄:Fe2O3(V)(三酸化二鉄)(赤さび
Fe + O2 → Fe2O3

鉄鉱石(ヘグマタイト)
鉄イオン:Fe2+Fe3+
酸化鉄:Fe3O4(四酸化三鉄)(黒さび)(鉄鉱石の主原料の1つ)
鉄製品を酸素や水による腐食から守るために、Fe3O4で表面をおおうことがよくある。さらに、Fe3O4の表面は、Fe11O16(16酸化11鉄)であると仮定すると上手くシミュレートできる、という報告もあります(出展

 このように、実際の酸化鉄は非常に複雑で、中学生の手におえるものではありませんが、私は鉄原子や鉄イオンについて、できる範囲で学習させたいと思います。本時の実験は、鉄イオンの不思議さ、色の美しさに触れることができます。金属イオンの価数が1つではないことを紹介するために、時間があれば実践したい授業の1つだと思います。

 このページは本年度の授業スナップを中心にまとめます。詳細は7年前の実践『塩化鉄の電気分解3年(2011年)』をご覧ください。


図1: 塩化鉄(U)水溶液をつくり、電流を流す


本時の目標
・鉄イオンは、3+(V)と2+(U)の2つがあることを知る
・塩化鉄(V)を塩化鉄(U)にする
・塩化鉄(U)の電気分解の化学反応式、および、そのモデル図を正しく書く
・析出した鉄を採取、確認する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • シャー芯
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 塩化鉄(V)
  • 500mLビーカー
  • 50mLビーカー(1 / 班)
  • 100mLビーカー(1 / 班)
  • スチールウール(0.2 / 班)
  • 塩酸原液(0.2mL / 班)
  • 電 極 (1 / 班)
  • リード線(1 / 班)
  • ろ 紙 (1 / 班)
  • 電源装置(1 / 班)
  • セロハンテープ

授業スナップ


図2:塩化鉄(U)と塩化鉄(V)の電離式


図3:鉄イオン(V)を鉄イオン(U)にする手順
 詳細は別ページ『塩化鉄の電気分解3年(2011年)』をご覧ください。


図4: 塩化鉄(V)水溶液を混ぜる


図5:スチールウールを配布する


図6:塩化鉄(V)水溶液に鉄を入れる
 褐色の塩化鉄水溶液に鉄を入れて混ぜると、緑色に変化していくことがわかる。図6は鉄(スチールウール)が不足していたので、追加したもの。


図7:さらに、塩酸を加える


図8:よく撹拌したものをろ過する


図9:同上
 図8と図9を比較すると色が違います。これは鉄イオンの含有率が違うから、だと思います。


図10:電流を流して、電気分解する
 図11と対応させてください。


図11:電気分解のモデル図


図12:塩酸を入れすぎた(?)場合
 左右の電極 から泡(気体)が出ています。-極は水素、+極は塩素、だと思います。-極は鉄になるはずなのですが、いろいろな条件が複合して水素が発生しているのだと考えられます。


図13:2つの電極(左:プラス極、右:マイナス極)
 (クリックすると拡大します)


図14:鉄を取り、ガラス棒の先端でこする様子
 鉄はガラスよりも硬いので、金属光沢をつくることはできませんが、自主的に挑戦している生徒がいました。


図15:板書(部分、A組)


図16:板書(部分、B組)


授業を終えて
 期末テスト範囲(イオン全て)の学習を終え、ゆとりの実験授業として企画しました。得点に直結する授業ではありませんが、知的好奇心の深い部分をくすぐることができたのではないかと思います。

関連ページ
塩化鉄の電気分解3年(2011年)

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