このページは、Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスンです。

第9章 評価は不要物?

16 観点別評価と評定の未来 2018(平成30年)

─ 観点別評価=評定、ではない ─

はじめに
 平成29年12月11日、中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会の児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第2回)『学習評価の現状と課題』において、燒リ展郎氏は「質的評価を数値によって示すことには、無理矛盾がある」 と指摘しています。観点別評価と評定は本来的に違う、前者は『学習の質』であり、後者は『総括的な数値』である、と提言しています。端的にいうなら、観点別評価から評定が機械的に算出される、という考えが間違っているわけです。

 とても恥ずかしいことですが、観点別評価が始まった頃の私は「評定は機械的に算出される」という誤った考えを持っていました(観点別評価について 2008)。ただし、各学校の実態に合わせ、教職員の共通理解のもとに枠組みをつくっておくことは間違いではありません。各校で工夫するように、文科省も指示しています。下表は『ある公立中学校における観点別評価と評定の関係』ですが、これは豊かな人間性や多様性を育てようとする学校にとって危険な枠組みであることを、本HPで示します。

表: 機械的な算出による観点別評価と評定の関係(一例)
観点別評価について 2008』から抜粋

観点別評価 . 評 定
 AAAA
 AAAB
 AABB(AAAC)
 ABBB(AABC)
 BBBB(AACC、ABBC)
 BBBC(ABCC)
 BBCC(ACCC)
 BCCC
 CCCC
 ほとんどの学校の評定は、観点別評価から機械的に算出されます。この計算方法は中学校によって異なりますが、ほとんどの場合同じです。この関係については、初めて中学校の通知表を手にする新1年生の保護者に対して、1学期の通知表と同時に配付されることが多いようです。

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目 次 ページ
  はじめに
  目  次
1 このページを執筆する動機

(本ページ)
2 文科省が示す観点別評価と評定の関係
3 学校の先生がよく勘違いしているポイント
4 オールA=5、という枠組みによる弊害
5 文科省が示すこれまでの観点とこれからの観点
6 観点は重みづけをしなければいけない
7 実際に、観点はどのようにつくれば良いのか
8 観点別評価は子どもにさせれば良い
9 定期テストにおける観点別の得点の価値
10 テストの得点をどう処理するか
11 私の観点別評価、評定のつけ方
12 これまでの評定、これからの評定
13 私の記述(2008年7月13日公開)を振り返る 10
14 観点別評価、評定の未来へ向けた提言 11

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1 このページを執筆する動機
 最近私の周辺で、評価と評定を画一的に数字合わせさせよう、とする動きが活発になってきました。

 5,4,3,2,1という評定を機械的に算出することは、ある程度可能です。しかし、機械的にすればするほど子どもの『学習の質』の正しい評価から離れていきます。現場の先生は、数字合わせという作業•弊害を強いられます。もちろん、子どもの結果を受けてからの微調整•微修正は当然です。しかし、冒頭の紹介した平成29年12月の中央教育審議会の指摘から考えても、数合わせのための調整は教育を歪める行為、といえるでしょう。

 とくに、観点の組み合わせと評定を1対1で完全対応させるという考え方は危険だと思います。それは、文科省の指導要領にしたがい、子どもたちの実態に合わせた授業を工夫しようとする現場の先生の情熱を奪っていくように感じます。子どもや保護者は必要以上に観点別評価を気にするようなり、戦略的に観点別評価をあげる方法を選択しようとする傾向•危険性が高まります。弱い子どもにとっては、学習の喜びを奪われたり不登校になったりする原因になるのではないか、と私は危惧しています。もし、あなたが文科省が示している正しい評価•評定のあり方を知らないなら、このHPで学んでいただければ幸いです。

 私の危惧はまだあります。これから完全施行される新しい学習指導要領は『観点の数』を4つから3つへ減らします。それは教師の負担を減らすという点で歓迎すべきものです。しかし、観点が減ることは画一化しやすくなることを意味します。これに合わせて画一化への外圧が高まれば、ますます教育現場は疲弊し、先生だけでなく子どもと保護者も画一化された教育の枠にはめ込まれていくことになるでしょう。豊かな教育現場が1つ、また1つと日本から失われていきます。

 私は文科省に厳しい意見を出すことが多いのですが、今回は違います。文科省が学校現場の先生と子どもを守ってくれているように感じています。この問題の本質は『子どもを取るか、それとも、形式を取るか』です。私は子ども(保護者)第一主義の立場です。本気で子どもたちに向いあっている先生は、いつでもきちんと自分の授業と評価について説明できます。どのような授業をして、どのように評価•評定したかを説明できるはずです。

 学校管理者は、豊かな教育現場を維持したり創造したりするため、先生を信じ、応援してくれる、守ってくれるものと信じています。私は、本気で子どもたちに向う先生、すべての子どもの個性を認めようとする先生、弱い立場で苦しんでいる先生、若い先生を応援したいと心から願っています。

 私は評価と評定の問題について文科省の考えにしたがって理論を展開し、子どもたちや現場の先生を守りたいと切望しています。

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 『文科省が示す観点別評価と評定の関係』

 
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