このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第8.2章 いじめという犯罪
9 暴言を吐く生徒
1 暴言とは何か?
言葉による暴力を『暴言』といいます。暴言の目的は、悪意によって相手の心を傷つけることです。心の傷は見えませんが、何10年も消えることがない深い傷(トラウマ)になることもあります。ここで、女子生徒Aさんから教えてもらった小学校における暴言の例を紹介します。
卒業式を間近にひかえた底冷えのする3月の体育館でした。卒業式の練習を行っている時のことです。みんなが静寂を保って整然と着席し、名前を呼ばれた人から順に、1人ずつ卒業証書を受け取るために壇上へ向って歩いていく場面です。Aさんは、大きな声で返事をし、みんなが着席している脇を静かに歩いていきました。その時のことです。通りすがりに、後ろから小さな言葉で「キモ」と言われたのです。Aさんは振り向きませんでしたが、声の主は、普段から『いじめ』の首謀者だと思いました。Aさんは「もう忘れた」と言いましが、「この話を誰かにするのは初めて」とも言いました。3年間誰にも言うことができない心の傷を負っていたのです。この他にも、まだ誰にも言えない無数の暴言によって傷つけられていたことは容易に想像できます。 2 よくある暴言の例
(1)臭くなるからあっち行って
(2)とにかく消えて欲しいんだって
(3)@@@@@@@(名前を連呼する)
(4)デブ、チビ(身体的特徴を指摘する)
(5)ブス、バカ(主観によるレッテルを貼る)
(6)ハゲ、デカパイ(セクシャハラスメント)3 暴言の判断基準は、悪意の有無
「バカ」という言葉だけで、それが暴言になるかどうかは判断できません。愛情表現であることもあります。その状況から総合的に判断する必要があります。ここで一番大切なのは、その言葉に悪意があるかどうかです。言葉の表現力に乏しい生徒は『失言』することがありますが、悪意がなければ暴言ではない、と言えるでしょう。そのような場合は、正しい表現方法、自分の心の伝え方を教えてください。もちろん、先生自身の『失言』は十分に注意してください。4 暴言を吐く男子、その背後にある暴行、傷害
大きな声で暴言を吐く生徒の95%は、男子です。反抗すると殴ったり蹴ったりするぞ、という脅迫がセットになっています。実際、暴言から暴行や傷害事件へ発展することはよくあます。暴力事件になったとき、その原因になった暴言と暴力を切り離す必要がありますが、最近は、暴言そののもを『傷害の罪』として刑事事件で扱うようになってきました。暴言も犯罪の1つであり、身体の傷より大きな傷を心に負わせることがあります。5 女子による暴言
女子による暴言は、冒頭で示したように隠れた暴言です。攻撃対象は、心です。誰にもわからないように脅迫することもありますが、身体を攻撃するようなことはほとんどありません。まれに大声で暴言を吐く女子もいますが、そのような生徒は身体的攻撃を同時に実行する特徴を持っています。6 悪意や暴力に満ちた言葉の背景を聞かせてもらう!
悪意や暴力に満ちた言葉を耳にした時は、毅然とした態度で指導しましょう。指導する点は2つです。まず、悪意に満ちた心、他人を傷つけようとする心です。2つ目は、正しい言葉使いです。ただし、暴言を吐く生徒にも何らかの理由があります。先生は、その言葉を発しなければいけなかった理由を聞いてください。暴言にいたる背景を先生に語ることで、生徒の暴言は自然に収まるものです。それが暴言を根絶させる唯一の方法である、と私は信じています。7 犯罪レベルの暴言
自分の欲望を満たすことを目的とする暴言があります。それは、刑法で『脅迫の罪(命、身体、財産などに害を加えることを予告)』と『名誉に対する罪』2つの罪が規定されています。なお、私は1で紹介したAさんに対する暴言は、より悪質な憲法に触れる犯罪(人として生きる権利を奪う罪)であると考えています。
→ 関連ページ『生徒に脅迫されたら』8 先生の暴言、失言
最後に、先生へ注意しておきます。先生も生徒に対して暴言を吐いていないか十分に注意しましょう。容姿、学力、家庭環境、その他、とても小さなことで生徒は傷つくことがあります。先生に悪意がなくても傷つくことがあるので、言葉には十分に注意してください。もちろん、誰からみても明らかな暴言は、絶対に許されません。また、先生が生徒に対して『あだな』をつけることは、とても危険な行為です。私は、生徒を呼ぶ時、放課中でもできるだけ名字で呼ぶようにしています。
→ 関連ページ『ニックネームでこんにちは』2011年1月28日
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