このページは、Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスンです。

第3章 理科の授業

17 光学顕微鏡の使い方

 顕微鏡の使い方を教える前に、正しいルーペの使い方、道具の扱い方を指導してください。その方法は別ページ『ルーペや顕微鏡の使い方』です。また、顕微鏡の基本操作も重要ですが、プレパラートを自作させる場合は、その方法の非常に重要です。別ページ『プレパラートの作り方』をご覧ください。

1 実験台を片付ける
 中学1年生に初めて指導するなら、実験台の上の道具はすべて台の下に置かせます。そして、雑巾がけをさせましょう。顕微鏡の扱いに慣れてきた場合でも、顕微鏡を使う前に台を綺麗にさせることはとても重要です。

2 光源を実験台の真ん中に置く
 光源は、顕微鏡より先に準備させます。光源のタイプによりますが、4人で同時に使用できる蛍光灯の場合、それを中央に置き、点灯するか確認させます。光学顕微鏡で1番大切なものは光です。反射鏡を使って、試料の下から光を当て、試料を通過した光を観察するわけです。つまり、反射鏡で取込む光がなけれが、プレパラートの観察はできません。

3 顕微鏡の運ぶ
 両手で持ち運ぶことを教えてください。片手はアーム、もう一方は下に添えます。顕微鏡の種類によって上半分がすぽっ、と抜けるものがあります。弛んだ反射鏡やクリップが落下する場合もあります。顕微鏡を良く見ながら手を添え、持ち上げ、ゆっくり運ぶようにさせましょう。

4 顕微鏡を置く
 直射日光が当る場所は失明の危険があるので絶対にいけません。また、上半分を傾けられるタイプのは、まっすぐにさせます。ステージを傾いていると、自作プレパラートを観察する時に、水が流れてしまいます。

5 反射鏡で光を入れる
 ほとんどの反射鏡は、表裏があります。平面鏡と凹面鏡の違いを教えてください。板書すると良いでしょう。初めは平面鏡を使い、次に小さくて暗いレンズ(高倍率のものに多い)に変えたとき、光量が不足したら凹面鏡に変えます。高倍率は視野が狭くなるので、凹面鏡で光を一部に集中させても問題が生じません。

6 対物レンズの汚れを点検する
 対物レンズの汚れを点検する方法は、外から見る方法と内側から見る方法があります。内側から点検する方法は、生徒が正しく反射鏡で光を取込むことができたか、同時に点検できるのでお勧めです。ただし、顕微鏡内部に埃が入る可能性があるので、確実に指導しましょう。私は中学1年生だけでなく、全学年で担当クラスが初めて顕微鏡を使う時、必ず指導します。その手順は次の通りです。

  • レボルバーを回し、対物レンズを1番低倍率にする
  • しぼり板の穴を1番大きいものにする
  • 反射鏡を平面鏡にする
  • 平面鏡を動かし、光を入れる
  • 接眼レンズを外す
  • 光源(蛍光灯なら蛍光灯、窓なら窓)の形が見えるか確認する
  • 同時に、対物レンズの汚れが見えないか確認する
  • レボルバーを回し、他の対物レンズの汚れを確認する
  • 同時に、高倍率は視野が狭くなることを確認する
    ※汚れている場合は、先生がエタノールを使ってふき掃除してください。高倍率のレンズの大半は、まったく見えないほどに汚れています。水中の微生物や酢酸カーミンでこてこてになっているものがたくさんあります。脱脂綿にエタノールを含ませ、1つのレンズにつき10秒程度で清掃してください。初めの状態に比べれば、100倍見やすくなるでしょう。清掃した後は、生徒に綺麗になったか確認させます。もし、まだ汚れているなら、もう一度拭いてあげてください。
  • 7 しぼり板を開く
     絞り板の穴を小さくすると、ピントが深くなります。これを指導するのは、顕微鏡操作に十分に慣れてからにしましょう。初心者は、絞り板があることを知らず、「暗い、見えない」というレベルで悩んでいます。絞り板の存在を教え、その穴を1番大きくして観察することを伝えてください。上級者には、初めに十分な光を入れてから、光を絞り込むことでピントを深くする方法を教えます。

    8 対物レンズを最低倍率にする
     レボルバーに複数の対物レンズがついている場合、1番低倍率のものにセットします。多くの顕微鏡は4倍、10倍、40倍がついているので、4倍にセットしてください。セットする時は、レンズではなくレボルバーを回してください。低倍率は明るく、見える範囲が広いレンズです。プレパラート全体を調べ、最適なポイントを探すのに適しています。また、低倍率は短く、どれだけピント調節ねじを回してもプレパラートに当たりません。

    9 観たいものをステージの中央に置く
     プレパラートをステージに載せる前に、肉眼でプレパラートを良く観てください。何か見えたなら、それを中央に置きましょう。ほとんどの顕微鏡の最低倍率は28倍(7×4)、または、40倍(10×4)です。これらの倍率で観察する場合、肉眼でも何かが見えるはずです。それをステージの中央に置くことで、ピント調節ねじでピントを合わせも何も見えない、さっぱりわらない、という状況を打開できます。

    10 対物レンズの倍率を上げる
     対物レンズは、倍率によって長さが違います。低倍率は短く、高倍率は長くなっています。低倍率で合焦させれば、あとはレボルバーを回わすだけでピント調節は不要です。1mm以内の微調整は必要ですが、それでも合わない場合は修理に出してください。つまり、初めは低倍率で良いポイントを探し、それを中央に移動させてからレボルバーを回して高倍率にするわけです。この操作をくり返し、少しずつ倍率を上げていきます。ただし、高倍率の方が良く見えるとは一概にいえません。100倍と400倍においても、(1)レンズが汚れていない、(2)光量が十分にある、(3)プレパラートが薄くて光を良く通す、(4)反射鏡を凹面にできる、(5)しぼり板でピントを深くすることができる、(5)ピンと調節ねじを動かしながら試料の立体構造を見抜くことができる、などの操作ができなければ、100倍の方がクリヤーに見えます。

     なお、顕微鏡の性能は接眼レンズではなく、対物レンズで決まります。例えば、100倍になる接眼レンズを対物レンズの組み合わせで紹介しましょう。接眼10倍×対物10倍、接眼25倍×対物4倍を比較した時、前者の方が明るく解像度が高くなります。10倍の対物レンズは、4倍のものより高価で性能が高いからです。接眼レンズは、対物レンズの像をヒトの網膜に写すための道具、と考えてください。したがって、接眼レンズを交換して倍率を上げる方法は、優れているとはいえません。

    関連ページ
    ・ ルーペや顕微鏡の使い方
    ・ プレパラートの作り方

    2012年5月13日

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