このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第7章 悩んでいる生徒

5 重くて深い相談をされた時

1 基本的な姿勢
 生徒の全てを肯定し、受け入れて下さい。例え、先生が理解できなくても認めるのです。完全に間違っていることでも、その生徒は真剣にそう思っています。それは、その生徒にとって「正解」なのです。それを先生が「違う」と言ったとき、生徒は口を閉ざし、相談は終了します。

2 生徒へのアドバイス
 アドバイスは必要ありません。うん、うん、と頷いているだけで十分です。とても辛い内容であっても、「君の気持ちはわかるよ」と言ってはいけません。簡単にわかってしまうような悩みだと思われるような相手(先生)には、二度と悩みを打ち明けなくなるでしょう。生徒が求めているのは、黙って話を聞いてくれる大人です。どうしてもアドバイスしなければならないような事態であっても、数10分〜数時間は我慢して、生徒の話を聴いて下さい。
→関連ページ『基本姿勢:黙って聞く』『基本姿勢:君の気持ちはわからない

3 誰かに話すことで自然に解決する
 生徒は話をしているうちに、悩みが軽くなっていきます。解決へ向けて一気に進むこともあります。心に溜まっていた感情を吐き出し、真剣に話をするなかで気持ちが整理されていくからです。先生にとっては「まだまだ」と思っても、生徒にとっては十分な解決となっている場合が多いので、完璧を望んで『だめ押し』をしてはいけません。また、あなたに時間のゆとりがないなら、悩みを聴いていはいけません。

4 いきなりツッコダ話をされたら
 当たり前のように聞き流すか、本当にビックリして聞くかのどちかです。例えば、幼い時に両親と生き別れになったことを、さらりと話す生徒がいます。先生はかなりビックリすると思いますが、そんな時は、さらりと「大変だったね」で流すしかありません。生徒は、信頼がおける大人であるあなたに対して、過去の事実とそれを乗り越えた自分を知らせたかっただけですから、そこでうろたえたら生徒が失望します。おそらく、あなたがうろたえたり、何度も大変だね大変だね、と繰り返すような人間なら、深い悲しみを経験した生徒は、これから先、あなたに多くを期待しなくなります。子どもであっても、大人より深い悲しみを背負い、それを今も背負いながら生きていることがあります。自分が一番大変だと思っていたら、大間違いです。

5 先生自身の話を聞いてもらう
 先生自身の同じような経験があったなら、その経験を話します。事実を中心に語ります。その時の感情や、その時の解決策は、ごく簡単に一言ですませます。ただし、あなたの成功例は、生徒に役立つとは限らないので、1分以内で切り上げてください。私の経験では、1対1で悩みを相談された場合、私の経験談を長々と聴きたがる子どもはほとんどいませんでした。

6 先生がアドバイスするための条件
 「@@してはいけないと思うよ」とアドバイスするのは、少なくとも10時間以上、黙って話を聞いた後のことです。良識がまったく欠如しているように見える子どもでも、本心から悪いことをしていることは多くありません。自分の心に「わだかまり」をもっていることがほとんどです。苦労をしている子どもは、あなたよりも誰よりも、常識や良識や普通であることを求めています。

7 犯罪行為については一刀両断で
 犯罪行為に対しては、毅然とした態度で厳しく注意、制止します。相手の話を聞く必要は一切ありません)。しかし、罪を犯している生徒が全く問題意識を持っていないとすれば、もはや、普通教育にたずさわるあなたの守備範囲を超えています。別の専門機関に任せてください。あなたができること、しなければならないこと、あなたを必要としている生徒に専念しましょう。

2002年

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(C) 2002 Fukuchi Takahiro