このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6.2章 アドバイス、説教と懲戒

10 先生が事件を解決する方法

1 解決するって何?
 ある事件が解決するということは、その事件に関係する全員が納得する、お互いの立場を理解して歩み寄る、ということです。事件の全容がわかっていないときは、自分だけが損をしているように感じて自分の正当性を主張しますが、話合いを進めていくにしがたって、相手の立場を知り、事件の全体のおける自分の位置がわかるようになってきます。当初は真っ二つに対立していても、話し合いで解決することができます。最終的なゴールは、100%満足することはできなくても、納得することや解決することは可能です。その条件は、自分と相手を同じように尊重し、対等なものとして考えることです。

2 先生が手助けする手順
 先生が手助けする手順は次の通りです。まず、事件の事実について確認します。その事実の中に感情を入れることは構いませんが、自分の感情と相手の感情は対等であること、相手の感情は否定できないことを教えることが必要です。事実について共通の認識ができたら、あとは冷静に判断させます。事件は、先生の判断を仰ぐことなく、生徒どうしの共通認識によって解決しているでしょう。

(1) 生徒全員が、自分の立場で言いたいことを言う
 → 誰かが発言している時は、途中で反論したくてなっても我慢させる
 → 先生は、発言の要点を全員が見ている前でメモする
 → 記録した内容は、発言した生徒に対して音読し、詳細に確認する

(2) 食い違っていること主張させる
 → 相手の感情については、文句を言うことはできない

(3) 客観的事実が完全に一致するまで摺り合わせる
 → 主な客観的事実は、時間、場所、人物、物品など
 → 必要に応じて、目撃者からの情報を使う

(4) 自分と相手を対等なものとして判断する
 → (3)までの作業を冷静に行うことができれば、誰でも同じ結論に達します

(5) 自分と相手の行動の正当性を認める
 → 食い違った部分は、自分の考え方を改めるようにさせる
 → 最終的に、配慮にかけた考えや行動だったことに気付かせてください

3 原因を絞り込めば、自然に解決する
 どんなに大きな事件でも、小さな事実に確認し、原因を絞り込んでいけば原因が小さくなっていき、自然に解決します。先生はそのお手伝いをするだけです。この絞り込み作業は、短時間でできるものではありません。ある程度の時間が必要です。時間をかけていくなかで、相手の立場に気付いていくからです。それが教育者としての仕事です。大人の一般ルールを押し付けることではありません。別ページ『生徒どうしの小さな喧嘩』では、大人の価値観やルールを押し付ける弊害について紹介しています。さらに、別ページ『事件を完璧に解決する方法』は、事件を完璧に解決しようとする先生の危険性を訴えています。

4 生徒の視点で解決すれば良しとする
 繰り返しますが、先生が間に入っても入らなくても、最終的に納得し解決するのは当事者である生徒です。先生は調整役であり、問題の焦点を絞り、問題を小さくしていくことに専念しなければいけません。先生の価値観を話す必要はありません。同様に、理想を求めたり、将来を約束しない姿勢が大切です。

5 保護者どうしが対立している場合
 生徒間は解決していても、保護者どうしが対立し、どうしても歩み寄ることができない場合があります。その場合は、保護者に集ってもらい、事実を報告する作業を行うことになるでしょう。ここでの注意点は、事実の報告に徹することです。先生の気持ちや思いは、できるだけ入れないようにすることです。入れないようにしていても、自然に入ってしまうものであり、自然に保護者へ伝わるものです。生徒に対する先生の思いは、保護者と同じです。

6 保護者と先生が対立している場合
 先生と保護者が対立することもありますが、それは両者が人間的に未熟な場合です。保身、責任転嫁をするために対立している場合は、問題外です。まず、先生が成長してください。自分の責任の範囲を明確にし、謝罪すべきところはしっかり謝罪してください。生徒が起こした事件は、保護者や先生を真似したもの、であることを認識してください。

2010年11月8日

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