このページは『福地先生の教育の相談箱』です。

BOX2 中学校の先生

7 『中学理科授業開き』について

       長崎県の中学に勤務される元村義信先生

元村先生からのe-mail

福地 孝宏 様
           時津町立時津中学校 元村義信  

 年度初めのたいへんお忙しい中に、突然のメール、たいへん失礼いたします。わたくし、長崎県で中学校の理科教員をしております元村と申します。

 授業開きのネタに毎年悩んでいます。何か面白いと思うものを、と思い液体窒素を用いたり、ドラム缶をつぶしたりとした経験がありますが、ただの科学イベントに終わることが多くしっくりきたことがありません。

 いつもHPで授業記録を拝見させていただいてますが、先生の授業開きで「これは!」とうなるものがどのようなものかご教示いただけるとたいへんありがたいです。今年度は中3を担当します。どうぞよろしくお願いいたします。

元村義信  

 

福地先生の回答

元村さま、こんにちは。お問い合わせ頂き、ありがとうございます。さて、さっそく『授業開きのネタ』について回答させて頂きます。時間がないので長文になりますが、お許しください。

 まず、授業開きの目的を確認しましょう。目的のキーワードとして『面白い』は良いと思います。その対象が『自然』であるなら、『理科が面白い』となるでしょう。しかし、私の場合、授業開きでは『この先生は面白いことをやってくれそうだから、楽しみだな』ということを目的にしています。つまり、私自身が面白い人間であることを伝えることを第一の目的にていします。

 もちろん、自己紹介だけではありません。『教科書をパラパラ見たり』『授業の基本方針を伝えたり』『評価のつけかたを紹介したり』します。これらは一見すると堅苦しく感じますが、生徒の立場になれば最も重要なことなので、要点をきちんと整理して正確に教えることはとても重要です。中学3年生ならば、最終評定の付け方を詳しく知りたいと思っているので、それをきちんと教えてあげれば、先生を信頼してくれるようになります。

 したがって、私はいわゆる『ネタ』実験をすることはありません。実験をするなら、それは正規の授業カリキュラムに組み込まれたものです。これは平常授業においても同じです。

 また、元村さんは『今年度は中3を担当される』ということなので、もし、半数以上の生徒が先生のことをご存知なら、なおさらネタ探しをされる必要はないと思います。卒業までの理科の授業について、見通しを持たせてください。この1年でどんなことを学習するのか、どのように学習すれば自分の力を伸ばすことができるのか、そして、先生だけでなくみんなが納得する成績を修めることができるか、それを具体的に提示してみてください。

 このように、私の授業開きの第二目標は『高い山の頂きから今後1年間を俯瞰すること』です。見晴らしのよい高台で、いい景色を眺めることです。そして、最終ゴールまでの楽しい道筋がたくさんがあることを示すことができれば、生徒たちは安心してそれぞれの個性の伸ばせばよいだけであることを理解して毎日の授業に取り組むことができるでしょう。

 また、以下のページもご参考にしてください。
http://www.ons.ne.jp/〜taka1997/education/2018/physics/01/index.html

 それでは、さらなるご質問やご意見をお待ち申し上げます。乱文にて失礼しました。

名古屋市立御田中学校 教諭 福地孝宏
http://www.ons.ne.jp/〜taka1997/


元村先生からのe-mail

福地孝宏 様
                     時津中 元村

 先日は授業開きの視点をいただきありがとうございました。お陰様で無事に授業に入っています。先生の指摘をもとに行った内容1〜3を紹介します。

1 面白いことをやってくれそうな自己紹介
・アメリカ、ヒューストンで潮汐現象の教材を発表したことがあることを紹介。そのとき若田光一さんら宇宙飛行士が応援に来てくれたことの紹介
・私、長崎市在住で、「長崎くんち」に出演しており、その時の動画や写真を紹介
 →楽しいことをすることが好きなので、楽しく授業、行事等に取り組み、日々を楽しみたいことを伝える。

2 授業に当たって
・2分前学習という学校の取組があり、その取組内容の確認
 →以前勤務した学校で開発した脳トレの理科バージョンを実施する予定です
・毎時間の宿題の取組
 →県教育センターが活用を奨励している問題を10分で取り組めるように作り直して毎時間配布する予定です

3 自己紹介作文
・理科の好き嫌いを4段階で評価し、そのあと自由に自己紹介作文

 授業の基本方針については伝えることができましたが、「評価のつけかた」と「卒業までの見通し」はしっかりと伝えきれませんでした。  また、「どのように学習すれば自分の力を伸ばすことができるのか」は具体的に提示できなかったです。よかったら「評価の付け方」と「力を伸ばす方法」についてご教示いただけないでしょうか。よろしくお願いします。

 2分前学習と宿題の例を添付させていただきます。これもコメントいただけるとうれしいです。

元村義信

添付ファイル
3年BEST
@光の屈折・反射 問題 済み
@光の屈折・反射 解答


 

福地先生の回答

元村義信 様、こんにちは。返事が遅れて申し訳ありません。授業開きが無事にできたようで何よりです。また、実践もご報告頂き嬉しく思います。

評価の付け方の提示方法
(1)持ち上がり学年でいらっしゃるなら、1年、2年でどのようにして評価したのか紹介すれば良いと思います。包み隠さず全てを話すことができれば最高ですが、微妙な部分があるなら、そこはあえて触れる必要はありません。明確な部分だけで十分です。
(2)同学年を複数の先生と担任している場合は、事前に評価方法を打合せする必要があります。それは当然のことです。その中から、元村先生がとくに生徒に学んで欲しいことを取り上げ、それを提示してください。生徒は、先生が望む力を伸ばすように努力することでしょう。
(3)私は次の(ア)〜(オ)を宣言します。
  (ア)評価は4観点あること
  (イ)それらを均等に評価すること
  (ウ)定期テストと授業プリントを均等に評価すること
  (エ)最終評定は総合的に行うこと
  (オ)ある個人の評価・評定は、全員が納得すべきものであること

力を伸ばす方法
 好きにさせること、に尽きるでしょう。好きにさせる方法はいろいろありますが、生徒にとって一番簡単で幸せなことは「先生が魅力的=先生が好き」ということです。その逆は、生徒にとって不孝なことですが、仕方ありませんね。
  次に、理科の対象は自然である、と示してください。基本的に、自然が嫌いな生徒はいないと思います。自然は4つの分野にわけられおり、とても3年間では概観できないほど多種多様です。それを示すために、理科便覧や資料集を概観させても良いと思いますが、それはとてつもない時間を必要とするので、私は「目次」を読むだけにとどめています。
  今年は中学1年生担当ですが、その初日の様子を紹介しましょう。中学理科について概観させる部分です。ます、私が教科書の目次を読み、生徒に4つの単元から好きな単元を選ばせ(8分)、私が理科便覧の目次を読んでから生徒に読ませ(4分)ました。そして、4月から学習する植物分野を1ページずつめくりながら「各項目」を紹介、教科書33ページまでめくりながら読んで読ませました(4分)。たったそれだけの作業ですが、どんな内容を学習するのか分るだけでなく、たくさんの写真を見て楽しんでいたようです。生徒に中には、「え、もうこれでお終いなの? 夏休み!」という声も聞こえました。嬉しいことです!

添付ファイルについて
 私はPCでは、残念ながら開くことができませんでした。
(1)は、見ることができませんでした!
(2)と(3)は配置がズレていましたが、(3)の解答についてはよくできていると思います。シンプルで美しい図版を使っているので、とても好感がもてます。明晰な頭脳の生徒に育つことと思います。

それでは失礼します。

福地孝宏

追伸、
アメリカ、ヒューストンで潮汐現象の教材を発表したことがあることを紹介。そのとき若田光一さんら宇宙飛行士が応援に来てくれたこと•••凄いですね! 
「長崎くんち」に出演•••これも素晴らしい!

 


元村先生からのe-mail
 

 

福地先生の回答
 

 

メールをやり取りした期間:2019年4月
掲載日:2020年3月7日

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