このページは、旅行記『中央アジア2001夏/taka』です

  私の日記

  8月21日(火)                 晴
  =<休息日>=========================
  ・ アデレット婦人宅で休息
  ・ 羊の解体
                          コチコル泊
  ===============================

  1.20 起床
  トイレをすませてから外庭のまん中に寝転び星を見た。

  地上に近い部分は牛小屋や木々でさえぎられ、街明かりで真っ暗
  ではないけれど、180度見渡せる暗黒の『ソンクル湖』の想像し
  た。ミルキーウェイ(乳道、天の川)が天空を2分し、その中に
  カシオペアが埋もれる。スワン(白鳥座)は木の影で見えないけ
  れど、どまん中を飛んでいるはずだ。長く星が流れた。
  「すべての人々幸せになりますように」
  十分に祈れるだけの時間があった。何で、こんな願いをするのか
  わからないけど、何年も前から他者に願いごとをするならこれし
  かない。また、小さく流れた。ソンクル湖ならこの数倍以上流れ
  ているはずだ。今度は、太く太く輝くオレンジ色の流星だった。
  「すべての人々幸せになりますように」

  母屋の電気が1つ余分についたような気がして、急いで部屋に戻
  った。セーター2枚、ズボン2枚、靴下を脱いだ。

    リュックから寝袋を出した。
    暖かった。

  8.50 起床
  南に面した大きな窓に架けられた上品なレースのカーテンから薄
  日が漏れていた。8時前に起きるはずだった。今日はこれまでに
  書いた旅行記を読み返すだけなので、目をぱっちりと開けたまま
  白い天井の空間を見つめていた。私はこの家とアデレット婦人が
  気に入っている。この家の空間は広く、壁に絨毯が架けれれ、床
  に手作りの絨毯が敷かれ、食卓にはゆったり8人が座れるテーブ
  ルがある。そして、この家には近所の人が集まってくる。婦人に
  ついては、名前をずっと間違えて「ジャミイラ」と呼んでいたけ
  ど、それは彼女の母親の名前だった。彼女も彼女で訂正してくれ
  れば良いのに、私が何回「ジャミイラ」と呼んでも返事をするの
  で、そのまま数日が過ぎ、だんだん変な関係になってくるんだけ
  ど、間違いを訂正しないところが日本人的というか私的というか、
  間違いをそのまま受け入れるところが気に入ったのかも知れない。
  もちろん、彼女の上品な言葉使い、物腰、豊かな人生経験を感じ
  させる顔も好きだ。名前については昨夜、グル婦人が教えてくれ
  たので、朝一番にアデレット婦人に誤った。それはそれで何事も
  なかったように通り過ぎ解決してしまうから、そうした感覚も私
  に近い。

  
  (上:アデレット邸の中庭)

  中庭に出ると、近所のおばさん達が集まり、持ち寄ったウールの
  布を切っている。ユルタに被せる布を作っているそうだ。古い布
  を型紙にして、新しいウールを裁断していくんだけど、みんなで
  この布はここにおいた方が良いとか悪いとか言い合って楽しそう。
  裁断と縫い合わせは2日で完成するけど、ウールの布を作るのに
  5年もかかるそうだ(聞き間違えたかな?)。
  「男の人は手伝わないのか?」と訊ねると、返事は
  「怠け者だから何もしない。枠組みを作る時だけ、ちょっと手伝
  ってくれるだけ。あとは、ウォッカを飲んでトランプをする。だ
  けど、最近の男は一緒に手伝うけどね、、、」だった。

  
  (上:写真を撮りますと言うと、彼女達は頭巾を被り直した)

  物作り好きな私(最近の男)は大きな押え石を持ってきたり、布
  の組み合わせを考えたり、一緒に裁断をして楽しんだ。楽しんだ
  という表現は適切ではないかも知れないけれど、好きでやるんだ
  から楽しいよね。僕の目からすると、ウォッカを飲んでトランプ
  するより、おばさん達の方が楽しんでいると思う。(おじさん達
  は、何も楽しんでいない)

  12.55 羊の解体
  「羊の解体をしているか早くおいで!」と言われて外庭に出ると、
  4つ脚を縛られた羊、首元に置かれた『たらい』、刃渡り15cm
  のナイフが私の目に飛び込んできた。
  「ちょっと待って!」
  ビデオの電源を入れた。
  (→ 続き

  ===

  ユルタは昼過ぎに全て完成していた

  
  (上:柱、太い帯など全て手作り)

  
  (上:屋根は、昨日縫い合わせた羊皮です)

    17.15 消灯
        ↓
        19.50 起床

  20.10 夕食
  フランス人のカップルと一緒だった。

  彼等は4ヶ月かけて、フランスから陸路でここまで来たそうだ。
  節約しながら旅をしているので、明日予定しているソンクル湖
  は大変な出費になるので、私は知っている限りのアドバイスを
  した。欧米では、インターネットが非常に早く旅の情報が得ら
  れるから、このソンクル湖についても詳しい情報を持っていた
  けれど現地の価格は混乱状態にある、というか悪質なタクシー
  やガイド、ツアーコーディネイターによって最悪の状況にある
  と言って良い。彼らは、「来年以降しばらくの間、欧米観光客
  は減少するだろう。」と言っていたが私も同感である。それか
  ら、彼等は年齢は私より上で落ち着いたもので、会話をしてい
  て楽しかった。

  21.00 バーニャ
  フランス人男性と一緒に行った。キルギスで体験するのは初め
  てだと喜んでいた。本当に身体がリラックスできたようで、私
  も嬉しかった。なお、3回目の私が15スム払っているのにも関
  わらず、彼に20ソム請求しているバーニャのおばさんの顔は歪
  んで見えた。バーニャを所有しているくらいだから、ここでは
  大金持ちのはずなのにアデレット家に人々とは大きな違いだ。

  23.10 グルとアデレットと
  相談したいことがあるからと言われて食卓に集まった。

  今日解体したばかりの肉と玉葱をいためたキルギス料理とチャイ
  を持ってきてくれた。話の内容は、グルが大変悪い立場にあると
  いうとことで、詳細は、今日ここに泊まっているフランス人2人
  をグルが自分で招き入れたという疑いがかかり、それに腹を立て
  たツアー・コーディネイターの婦人が「もうアデレット(グル)
  の家にはツーリストを派遣しない」かもしれないと恐れているの
  だ。実際は、フランス人観光客は、コーディネイターの家に行く
  途中、たまたまユルタを作っていたアデレットの家を覗いたら、
  1人の老婆が手招きしたのでそのまま宿泊するとことになっただ
  けだ。だから、グルは全く無罪なんだけど、コーディネイターの
  息子であるウルマットも私とトラブルを起こしたばかりなので八
  つ当たりをしているのだろう。「英語で観光客と話をするな」と
  まで言っているそうだ。私は「心配することはない。今、観光客
  の持っているガイドブックはロンリープラネットしかないから、
  全ての観光客は1番始めに書かれているウルマットの家に行くけ
  ど、彼は怪しいし、他の外国人観光客も多くのトラブルに遭遇し
  ているから、今度発刊するときには正しい方が勝つに決まってい
  る。それに欧米ではインターネットで素早く情報交換されるから、
  来年は観光客の数が減少すると思うけど気にせずに待っていたほ
  うがよい。5年後には、正しい心のこもったサービスをした方に
  観光客が来るようになるから。」と話した。グルは、「分かった
  わ。だけど、できることならフランス人の人に直接、自分達だけ
  で歩いてきたことを説明してもらい誤解を解いて欲しいわ。私達
  は夏休みの間だけ、母親を手伝いに来ているだけなので、近所に
  悪い評判を作りたくないから。」と話した。全くその通りで、金
  だけを目当てにしたウルマットの話に迷惑をしているのは、この
  コチコル村全体だけど、若い人達の中には目先の事だけで行動す
  る人が多いので頭が痛い。小さな村だけに、グルやアデレットは
  可哀想だなあと思う。「会話が一番大切です。話し合うことが一
  番大切だから、英語の話せるグルは黙っている必要はありません。
  たくさん観光客と話をして下さい。心のある方が最終的に生き残
  ります。」

  

続きをどうぞ!

→ 私の日記
8月22日

 

  ↑このページのTOPへ



  [
→home] (c) 2001 fukuchi takahiro