このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録:生物学 3年(2001年度)です

減数分裂
                 2001 7(短縮期間中)
                 各教室

 このページは2005年夏、4年後の当時を思い出しながら書き起こしたものです。私の手許に残されているのは教科書、理科便覧、そして、Tさんの学習プリント1枚です。減数分裂ついて知りたい人は、2004年度の実践ヒトの染色体と減数分裂を参考にして下さい。

 さて、授業のタイトルは減数分裂となっていますが、2001年度の生徒の記録を見直すと、減数分裂の過程について触れていませんでした。主な授業の流れは、下の図1のようになっています。

遺伝と形質

DNA
遺伝子

生殖細胞

減数分裂

ヒトの男女の違い

図1 本時の主な授業の流れ


授業の流れ

1 学習プリントの配付
(1分)
 ほとんど白紙状態のプリント(授業タイトルとプリント番号だけ印刷)を配付します。

2 遺伝と形質について
(10分)
 親の形質が子に伝わることを遺伝といいます。では、形質とは何でしょう。授業では、形質の具体例を生徒に発表させて下さい。肌の色、視力、頭髪、身長、血液型、二重まぶたなどが出てくるでしょう。意見が出ないクラスの場合は、次のように1つの形質から視点が広がるように先生が話をして下さい。ある程度の脱線も必要かも知れません。また、不必要な差別や劣等感を抱かせないような十分な配慮が必要なことは言うまでもありません。逃げることなく、現実をしっかりとらえながら形質の遺伝について学習を深めて下さい。

肌の色から視点を広げるための助言例
 「あなたの肌の色は? 日本人は黄色人種だと言われていますが、本当ですか?・・・白っぽいですか、黄色っぽいですか、黒っぽい黄色ですか、日焼けしやすいですか、蚊に刺されやいですか、洗剤にかぶれやすくありませんか。肌の色にもいろいろありますが、肌まで視点を広げるだけでたくさんの形質ができます。ちなみに、先生の肌は本当に黄色っぽい色をしているので、黄土色の服が似合います。ほら、今日のくすんだ色のシャツが似合うでしょ。本当に真っ白な人には似合いませんし、ほんのりと赤みを帯びた人にも似合わないはずです。とくに頬がピンク色をしている人は男女を問わず、赤やピンク色が似合います。また、先生は蚊に刺されすいタイプです。家族全員で食事をしていても、刺されるのは私だけです。友達といる時も自分だけ刺されるので、先生より刺されやすい人がいると本当に嬉しいです。」


図2 Tさんが記録した形質の例

 図2では、形質の例として性格を取り上げていますが、これは後天的な環境による可能性が多分に含まれいます。ただし、生後まもない赤ちゃんでも、おおざっぱな性格は決まっているようです。

3 形質を決定するもの(2分)
 形質を決定するするものを遺伝子と言います。遺伝子という言葉は、ほとんどの中学生が耳にしたことがあるでしょう。また、DNAやゲノムという言葉も聞いたことがあるかもしれません。しかし、授業では語句の解説はしませんでした。ほぼ同じ意味で使っても問題ない、と説明を加えたに過ぎませんでした。

4 生殖細胞(10分)
 子の形質は、父母から半分ずつ伝わります。形質を決定するものは、細胞内の核(DNA、遺伝子、染色体)です。図3のように、文と図でまとめましょう。


図3 形質をつたえるもの

 さて、人の染色体数は46本です。父母から全部もらうと、子の染色体数は92本、孫では184本になります。これではどんどん増えてしまうので、その生物の染色体は爆発してしまうでしょう。ですから、先に子の形質は父母から半分ずつ伝わりますと説明したように、染色体数を半減させる必要があります。 図4のように、染色体数が半分しかない特別な細胞を生殖細胞(精子や卵子)といいます。


図4 生殖細胞の染色体数

5 減数分裂(10分)
 15分を限度にして、簡単に説明して下さい。学習指導要領でもまったく触れられていない内容です。これまでに学習した通常の細胞分裂と異なる点は、1:染色体の数が半減する、2:2回連続して分裂する、です。表5では、少し詳細に違いをまとめてみますが、授業ではここまで詳しく説明する必要はありません。

表5 体細胞分裂と減数分裂の比較

体細胞分裂

減数分裂
分裂後の
染色体数
1/1 1/2
分裂後の
大きさや形
変わらない 大きく変化する
生殖細胞と呼ばれる
分裂中の特徴 ・前期、中期、後期、終期に分けられる。
・後期では、染色分体が分かれて、2つ染色体になる(DNA量は半減するが、染色分体および染色体の数は変化しない)。
・間期(通常の細胞の時期)のとき、染色体はDNAに戻る。そして、DNA量を増やして次の分裂の準備をする。

染色分体:46本(2n)(4倍量)
 ↓
染色体:46本(2n)(2倍量)
・2回連続して分裂する
・第1分裂:前期では、遺伝情報の多様性を確保するため数カ所組み替えをした二価染色体をつくる。
・第2分裂:染色体数が半減する。

 二価染色体:23組(2n)(4倍量)
 ↓
 染色分体:23本(2n)(2倍量)
 ↓
 染色体:23本(n)(1倍量)

 図6ではTさんがまとめた生殖細胞のつくり方を紹介しています。染色体数を具体的に書くと分りやすいです。さらに、男女を決定する性染色体を紹介することも有効です。その紹介例も下に示しました。


図6 Tさんがまとめた減数分裂の流れ図

6 ヒトの男女の違いができる理由
 図7のように、染色体(46本)の違いから説明しました。つまり、ヒトの染色体は常染色体(44本)と性染色体(2本)の2つに分類できます常体染色体(44本)は男女共通ですが、性染色体(2本)は男女で違います。男性はX染色体とY染色体の2本ですが、女性はX染色体とX染色体です。なお、ヒトの男女を区別するために、便宜的に体染色体を省略して、男性をXY、女性をXXで表します。

参考: ヒトの染色体と減数分裂3年(2004年)(生殖細胞)


図7 男性の染色体と女性の染色体

◎ Xさんの学習プリント

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(C) 2005 Fukuchi Takahiro