このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録:生物学 3年(2001年度)です |
卵 割
2001 7(短縮期間中)
各教室(実験なし)このページは2005年夏、4年後の当時を思い出しながら書き起こしたものです。私の手許に残されているのは教科書、理科便覧、そして、Tさんの学習プリント1枚です。
卵割という言葉を扱う必要はありません。教科書では「1個の細胞である受精卵は細胞分裂をくり返し、細胞の数をふやして胚※1になる。胚の細胞は、さらに分裂をくり返しながらしだいに形やはたらきのちがういくつかの部分に分かれていく。この過程を発生という。(新版中学校理科2分野下41ページ、大日本図書、平成12年)」と記述しています。15分程度で学習する内容ですが、私はできるだけ深く学習するために1時間使いました。その理由は、1:卵割は細胞分裂の延長線上にありながら、2:次に学習する減数分裂を比較対象させるために重要である、と判断したからです。高校入試対策としても有効です。さて、これから学習を始めますが、図1を見て細胞分裂の種類を確認して下さい。また、2004年度の実践観察7アフメリツメガエルの一生も参考にして下さい。
名 称 体細胞分裂 卵 割 減数分裂 細胞の数 ふえる ふえる 1つが4つになる 染色体の数 変わらない 変わらない 半減する 細胞の大きさ 変わらない(分裂直後は半分になるが、もと大きさに戻る)
小さくなる 変わらない? 細胞の形 変わらない いろいろな形(機能)に分化する 大きく変化する(精子および卵子)
備 考 ・前時までに学習
・いわるゆ普通の細胞分裂・本時の学習内容
・体細胞分裂の1つとして分類することもできる
・動物の受精卵だけ・次時に学習
・連続した2回の有糸分裂によって完了する
・生殖細胞をつくる以外にも減数分裂が行われる生物がある
図1 細胞分裂の種類※1胚について
1 定義が難しい術語の1つ
2 多細胞生物(動植物)に使われる
3 受精卵が卵割を始めてから、自分で栄養を摂取したり、光合成によって栄養をつくりだせるまでのある期間をさす
4 動物では、桑実胚期から神経胚期までをさすことが多い(哺乳類では胎児=胚)
5 植物では、ある程度組織(幼子葉、幼根、幼茎など)が分化してきたもの
6 中等理科は詳細に説明できるレベルではないので、結果として、教科書の本文にあるように何の説明もないまま流されてしまうことになるでしょう。誤解がないようにつけ加えておきますが、私は教科書を非難している訳ではありません。私の授業でも、胚=赤ちゃんとして説明していますが、これは一般的な定義から外れています。しかし、中学生にとって、次のように理解することは自然であり、小高校での学習につながると思います。
受精卵 雌の核と雄の核が合体したもの ↓ 赤ちゃん
(胚)自分で栄養を摂取できない ↓ 子ども 自分で食べたり(動物)、光合成(植物)することができる ↓ 大 人 有性生殖によって子孫を残すことができる
授業の流れ
1 学習プリント配付と導入(3分)
冒頭に述べたように、細胞分裂における卵割の位置を説明しますが、1分以上はいけません。図1のようにまとめるなら10分ほど使っても悪くありませんが、中学生にとっては実際の卵割の観察・スケッチから始める方がはるかに効果的だと思います。まとめは中間部、あるいは、最後に配置するべきでしょう。
2 卵割とは(2分)
図2のようにまとめると良いでしょう。ただし、子とするよりも赤ちゃんとした方が分りやすいかも知れません。今回はカエルの発生なので、受精卵(卵割)→ おたまじゃくし(カエルの子ども)(体細胞分裂)→カエル、と説明しました。
図2 卵割とは3 スケッチ(前半15分、後半15分)
前半は先生が説明しながら一斉に書き進めます。後半は教科書の美しい写真を見ながら各自でスケッチさせましょう。前 半
(1) 受精まで
図3のように受精までを書きますが、これには重要な事柄が抜け落ちています。受精とは雄の核と雌の核の合体なので、精子と卵子の核を書き込む必要があるからです。洞察の鋭い生徒がいる場合は、2つの核を合体させることによって遺伝子が2倍になることを推測してしまい、混乱を招くおそれがあるので、ここではあえて口頭による復習にとどめたほうが良いでしょう。
図3 受精のようす(2) 8細胞期までの卵割
図4のように、縦、縦、横の順に分裂します。核(染色体)の動きは第4時細胞分裂で詳しく学習したので、ここでは触れない方が良いと思います。また、教科書の写真では、8細胞期になるとき、動物極と植物極による片寄りを見つけることができますが、生徒からの指摘がなければ知らないふりをしておいた方が無難でしょう。なお、アルリカツメガエルなどの受精卵を使って本物の観察ができる場合は、受精卵の色が異なること、卵割を始める前に黒い動物極がが上になることを確認しなければなりません。
図4 8細胞期までの卵割(3) 8細胞期から桑実胚期まで
図5のように、2倍、2倍と加速度的に増えていくことを説明します。そして、外見上、クワの果実のようになったものを桑実胚と言います。教科書の発達段階の写真に合わせて説明したですが、ちょっと詳細過ぎたのではないと反省している。いずれにしても、テストには出題されないことを授業前に明言しておけば、気楽に深く追求できる。
図5 8細胞期から桑実胚期までの卵割後半
ここからは、生徒に鉛筆を置かせて下さい。そして、おたまじゃくしの誕生まで先生が説明してから鉛筆を持たせ、黒板と教科書の写真を参考にしてまとめさせることをお勧めします。一斉に書かせても良いのですが、図が複雑になってくるので、生徒によって書くスピードに大きな差が出るからです。
(5) 桑実胚期から原腸胚期まで
図6のように、細胞分裂が進み、肉眼では1つひとつの細胞を識別できないほど小さくなった時期を胞胚期といいます。さらに分裂すると、表面の一部に原口と呼ばれる穴ができ、そこから内部に細胞が陥没するかのようにして1本の管ができます。この管は将来、口→食道→胃→小腸→大腸→肛門になります。このように、内側の細胞ができてくる時期を原腸胚期といいます。なお、昆虫や軟体動物などの前口動物は口→食道→胃→小腸→大腸→肛門の順にできますが、ヒト(哺乳類)やカエル(両生類)などの後口動物は肛門→大腸→小腸→胃→食道→口にできます。さらに少し脱線させていただきますと、私がこの事実を知ったのは高校の生物の授業でしたが、しばらく頭から離れませんでした。昆虫が口からできるのに、自分が肛門からできたなんて、何度生まれ変わっても昆虫には絶対に勝てないと思ったのです。
図6 桑実胚期からおたまじゃくしまで
(6) 神経胚期からおたまじゃくしまで
さらに細胞分裂が進み、表面の一部が盛りあって神経(脊髄や脳になる)になるもとを作り始めたものを神経胚といいます。そして、尾芽胚期とよばれる時期を経て、おたまじゃくしとして一人立ちします。おたまじゃくしになると、自分で栄養を取り込むことができるので、体が大きくなります。つまり、これまで卵割では細胞分裂をするたびに細胞の大きさが小さくなってしまったのですが、これからは、もとの大きさに復活することができるので体全体が大きくなります。もちろん、細胞分裂もどんどん繰り返し、体全体の細胞の数も増えていきます。繁殖能力をもった大人になるまでは、どんどん成長していきます。5 まとめ(5分)
各自で本時の感想や疑問をまとめさせます。6 復習問題(5分)
市販の問題プリントを配付して、これまでの学習内容の定着をはかります。
(上:Tさんの学習プリント)2004年度の実践観察7アフメリツメガエルの一生も参考にして下さい。
授業を振り返って
カエルの卵を観察しながら授業を進めることができるなら、発見と驚きが連続する授業の1つになると思うけれど、タイミングよく受精卵を準備するのが難しいからなあ。/ 私は大学生の時、篠島でバフンウニの卵割を観察したことがありますが、一緒にいった学友との付き合いが忙しく集中していませんでした。もう一度実習したいなあ、と思う今日この頃です。
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(C) 2005 Fukuchi Takahiro