このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録:化学 3年(2001年度)です

実験12 塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応
              
 2001 5

 塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応は、基本の基本。これだけは丸暗記させたい逸品です。また、実験に使うBTB液は、酸・アルカリによって色を劇的に変化させるので、生徒は目の色を輝かせます。さらに、今日の実験では、中和してできた食塩水から食塩の結晶を取り出し、顕微鏡で形を観察します。

→ 2002年度の実践 実験12塩酸と水酸化ナトリウムの中和(1年)がよくまとまっているので参考にして下さい


<授業の流れ>
1 塩酸と水酸化ナトリウムの紹介(2分)

・ これらは酸とアルカリの代表です

2 2つを混ぜるとどうなるか、予想させる(3分)
・ 生徒から予想が活発に出る場合は、時間を十分に取って下さい

3 中和反応式をまとめる(3分)
塩酸+ 水酸化ナトリウム→ 水+ 食塩(塩化ナトリウム)

<ポイント>
・ 中和によって生じる物質を
えんといいます。しおではありません。塩酸と水酸化ナトリウムの中和で生じるえんは塩化ナトリウム、通称『食塩』です。

4 実験手順の演示、説明(7分)
1 50mlビーカーを3個を用意する
2 1つのビーカーに塩酸10ml、もう1つのビーカーに水酸化ナトリウム10mlとる
3 空のビーカーにそれらを混合し、完全に中和させる
4 先生の確認を受け、合格印をもらう
5 中和液の味を調べる
注意: 塩酸や水酸化ナトリウムがビーカーの側面や縁に残っていると危険なので、教師が確実に撹拌して100%の安全を確認すること。また、生徒に味を調べさせる時は、ビーカーの中に自分の指を入れさせる方がよい。汗の塩味が混じって効果が上がる。

6 中和液から食塩を取り出し、その結晶を顕微鏡で観察する
 ・ 中和液を1滴、スライドガラスに乗せる
 ・ ガスバーナーを弱火にして、中和液を加熱する
 ・ 余熱を利用して、水を蒸発させる
 ・ 食塩が出てきたら、スライドガラスを燃えかす入れの上に置き、十分に冷す
注意: どんなに余熱を使っているつもりでも、スライドガラスが割れることがあるので、その危険性を知らせるために、わざと強火で割れる様子も演示すること。もちろん、正しい余熱の使い方も演示する。

7 先生の確認を受け、合格印をもらう


5 生徒実験(30分)

1 手際の良い班は、塩酸と水酸化ナトリウムを中和させるまで5分です。しかし、今日は食塩を取り出し、その結晶を顕微鏡で観察することまで予定しているので、ぼちぼちやっている暇はありません。逆に、どんなに遅い班でも15分あれば何とか中和できますし、中和できなくとも、色が黄色と青色を劇的に変化するので飽きることはありません。

(上:左からBTB液を入れた
塩酸中和したできた食塩水水酸化ナトリウム水溶液。)


(上:素手で操作しています。強火で加熱してスライドガラスを割って飛び散らかすより、火傷した方が安全です。それぐらい弱火と余熱を使うことを意識させる必要があります。)


(上:顕微鏡テレビ投影装置を使って、食塩の結晶を全員で確認した。なお、結晶観察は個人プレーとしたが、合格印をもらった生徒は学級の約1/4だった。時間が短い割には、まずまずの結果だと思う。)


<授業を終えて>
 塩酸と水酸化ナトリウムの中和を演示するときの説明例を紹介します。BTBの色が劇的に変化するので、必ず生徒から大歓声が上がります。水溶液の準備から中和まで、教師が話ながら操作・説明して下さい。興味関心が高まり、先生のように手際よく操作・中和してみたいという欲求が高まります。

 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の準備 「まず、塩酸を薄めます。A君、500mlのビーカーに400mlの水を入れて下さい。・・・はい、ありがとうございます。これに、先生が100mlの塩酸を入れます。・・・はい、これで完成です。これは薄めてありますが、手についたらすぐに水で洗って下さい。そのままにしておくと、トンでもなく痛くなります。また、間違っても舐めてはいけません。舐めたら、一生、何を食べても味が分からなくなってしまいます。危険過ぎます。」 「次に、水酸化ナトリウム水溶液を準備しましょう。500mlのビーカーに、こうして水酸化ナトリウムの粒を入れて、・・・白い米粒のようですが、これも大変危険な薬品です。1粒で胃袋が溶けて死にます。大袈裟に話しているようですが、本当に死んでも、やっぱり、と言われるほど危険です。これに水を100ml入れて、くるくるくると掻き混ぜて溶かします。あっ、ビーカーが熱くなってきました。ほら、A君、ビーカーの底を触ってごらん。
・・・わっ、あち!・・・水に溶けるだけで反応熱がたくさん発生するのですから、本当に危険です。あまりに危険なので、水を400ml追加して合計500mlにしておきましょう。」

 BTB液の紹介 「これで塩酸と水酸化ナトリウム水溶液が準備できました。しかし、両方とも無色透明なので、見ただけでは区別がつきませんね。ほら、先生が、くるくるっとビーカーを回すと、どちらが塩酸か分からなくなりました。B君、当てて下さい。・・・おっ、えっ、正解?かな。どうしたら分かるかな。今日は酸とアルカリの両方を調べられる指示薬を使いましょう。何ですか?・・・紫キャベツ、でも悪くありませんが、・・・そうですね、BTB液を使いましょう。」

 「今、ピペットにとったものがBTB液です。何色をしていますか?・・・茶色。・・・うーん、確かにそうですね。原液は濃いので茶色に見えますが、適当な濃さに水で薄めると何色になるでしょうか?・・・そうですね。緑です。一度、確認してみましょう。水の中に入れますよ。見ていて下さい。・・・生徒から、ほー、と歓声が上がる・・・ほら、きれいな緑色になりましたね。濃くても薄くても色は分かりにくいので、皆さんも適切な濃度になるように気をつけて下さい。実験の途中で薄いようなら、先生が原液を追加しますので教えて下さい。」

 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の確認 「さあ、先ほどの2つのビーカーにBTB液を入れてみましょう。まず、B君が塩酸だと予想した方からにします。皆さん、何色になるはずですか?・・・そうですね。黄色になるはずです。それでは入れてみましょう。あれっ、赤色になっちゃった。おかしいなあ、先生の予定でも黄色になるはずだったんだけれど、、、そうか。塩酸が強過ぎて黄色じゃなくて赤くなったんだ。ま、皆さん気をつけて実験して下さい。気を取り直して、もう1つのビーカーに入れてみましょう。これは何色になるはずですか?・・・そうですね、青色です。入れますよ。・・・良い感じですね。真っ青です。これも強力なアルカリのようです。取扱いに十分注意して、もし、皮膚についたら1分間以上は水で洗い流して下さい。ぬるぬるしているようなら、皮膚が溶けている証拠です。」

 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和 「いよいよ本番です。どちらから始めても構いませんが、初めに塩酸を空のビーカーに入れましょう。たくさんはいりません。5mlで十分ですが、今は、皆さんによく見えるようにしたいので、ワンサイズ大きい100mlビーカーに25ml入れます。・・・これぐらいかな。そして、この塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えて行き、中和させます。皆さん、中和した時の色は覚えていますか?・・・そうですね、緑色です。では、さっそく入れますよ。もし、2つの水溶液の濃度が同じなら、同じ量を加えれば良いのですが、今回は先生が適当に作ったので、同じ量ではいけません。今、ピペットでどんどん加えていますが、塩酸の方が濃いので、青色の水酸化ナトリウムを加えても一瞬にして黄色に変わってしまいますね。もっと、加えていきますよ。・・・ほら、ちょっと様子が変わってきたのが分かりますか? 青色が消えるのに時間がかかるようになってきましたね。 もう少し加えますよ。おやおや、が残って、、、よくビーカーを振りながら混ぜると、・・・あ、青色が消えましたね。この辺りからとても微妙になってきますから、慎重に入れて下さい。最終的には1滴の誤差で成功したり失敗したりします。じゃあ、そうだなあ、あと3滴入れてみようかな。入れますよ。あれ、青になっちゃった。・・・でも、よくビーカーを振って掻き混ぜると戻るかも知れないから、、、あああ、駄目でしたね。とうことは、今度は塩酸を入れなければなりません。ここで注意ですが、水酸化ナトリウムのピペットと塩酸のピペットを絶対に間違えないで下さい。最後はとても微妙なので、いい加減に扱うと失敗します。じゃあ、塩酸を入れますよ。そうですね。まず、1滴にしましょう。・・・ほら、いい感じ。緑色みたいだけれど、、、こうして振ってみると・・・あああに戻ってしまいましたね。ここからは先生の感ですが、おそらく、1滴入れると黄色になって失敗すると思うので、半滴入れることにします。テクニックを見ていて下さい。こうして半滴入れます。そして、振ってみると、、、おおお、・・・おおお、・・・ほら、緑色になりました。拍手!!!今、先生は簡単に操作しましたが、実際はとても難しいです。1滴間違えたら全然駄目です。それから、緑色になったら手を挙げて下さい。先生が確認に行きますから、合格したら合格印を差し上げます。それでは、始め!」

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