このページは中学校1年理科『化学』/takaの授業記録2002です

 演示実験 液体窒素
              
                   2002 10 4(金)
                   第2理科室
                   2016年10月上旬追記

 <プログラム>
  1 いろいろな物を凍らせる <超低温との出合い>
  2 液体窒素に触れる <-196度Cに触れる>
  3 状態変化『気化』 <液体→気体の観察>
  
4 空気の状態変化  <液化・気化の観察>
  5 二酸化炭素の冷却 <ドライアイスを作る>
  6 酸素の液化    <液体酸素の性質を調べる>
  7 エタノールの冷却 <固体エタノールの観察>
  8 フィルムケース・ロケット <気化による膨張>
  1999年の実践もご覧下さい

 <準 備>
  液体窒素(10Lで1万円、容器は無料レンタル)
  ※上記 1〜8の実験に必要な量は700mL〜1L
  ※ 使用日の前日に納品してもらい、7学級を3日間行う
  50mLビーカー(2個)、300mLビーカー(2個)
  ピンセット(25cmと12.5cmの2種類)
  軍手(使わないほうが安全)、(安全メガネ)
  発泡スチルロール(20cm×20cm×3cm、20cm×80cm×3cmの2種類があると良い)
  野草の葉(校庭から採ってきた新鮮なもの、大きくて薄い葉が良い)
  ※子どもたちに、生花を準備させても良い
  軟式テニスボール、長いピンセット(25cm)
  ジェット風船(白、黄、水色、ピンク色など内部の液体が見えるものが良い)、空気入れ
  試験管(新品)2本、鉄製スタンド
  二酸化炭素ボンベ、水槽、金槌と紙(試験管を包んで割るためのもの)
  酸素ボンベ、線香とチャッカマン
  エタノール、 300mLビーカー2個、長いピンセット
  フィルムケース(数個)、雑巾


 <実験の様子>
  Y先生に撮影していただいた
  2クラスでの授業を編集してある
  
  写真1: 液体窒素との出会い
  「これは日常の世界とは違う、別世界の状態のものです」

  <ポイント>
  ・ 窒素は空気の78%を占める
  ・ 沸点-196度Cであるが、液体窒素の温度はそれより低温
  ・ 無臭、無色透明
  ・ ボンベに入った窒素を試験管にとると沸騰がよくわかる
  ・ 液体窒素を取り出す時、ビーカーの下に断熱材を使うより、黒い実験台
   の方が効果的
  ・ 数10秒間は激しく沸騰するが、温度が下がるにつれておさまってくる

液体窒素との出会い               2016年追記
 実験台中央に、小さな50mLビーカーを1つ置く。ビーカーは断熱材、発泡スチルロールの上ではなく、実験台に直接置いた方が、液体窒素が激しく沸騰するので面白い。実験台が黒色なら演出効果はさらに上がる。
※上の写真のビーカーは200mLであるが、50mLの方が良い

 液体窒素を入れる時は、 できるだけ高い位置から、ゆっくり容器を傾ける。白い煙のように見えるものが出てくると、子どもたちから期待の歓声があがるが、このタイミングでは正体(水)を紹介せずに、黙っていること。また、容器が重くて腕がプルプル震えないように、筋力が弱い人は上の写真のように両手でしっかり持てるように練習しておくこと。

 ビーカーに入れる時、わざと狙いを外さなくても、こぼれてしまうものである。すると、液体窒素が同心円状に広がり、同時に白い煙も広がる。なお、実験室の窓は開けておかないと、気化した液体窒素で酸欠になることがある。

 たくさんこぼれた場合、子どもたちの膝にかかることがあるが、ごく少量であれば全く問題ない。私の場合、わざとビーカーから外し、最前列の子どもたちに慣れてもらう。落ち着いた顔で「多少なら大丈夫です」と言えば良い。慣れてきた子ども達は、こぼれた液体窒素を手の平で触ろうとするが、これも制止する必要しなくて良い。

 ただし、調子に乗ってビーカーに息を吹きかける子どもがいたら、次のように解説すること。「息を吹きかけると、それに含まれる水蒸気がビーカーの表面で冷やされ、白い霜ができます。つまり、中の様子が見えなくなってしまうので、ちょっと我慢してください。よろしくお願いしま〜す!」

 ビーカーに入ったばかりの液体窒素は、注いだ時の勢いでぐるぐる回りながら激しく沸騰する。子どもたちの歓声でその音は聞こえないが、やがてビーカーと実験台の温度が-196度Cに近付くと、沸騰状態が安定していく。安定する直前に、沸騰による音の大きさが大きく変化するので、そのタイミングで、「音が変化するので静かに聴きなさい」と指示する。すると、音が急に静かになり、安定した沸騰状態になる。

 安定したら、軍手をはめてビーカーを持ち、腕を伸ばして高く上げる。そして、ビーカーを傾け、実験台の中央に液体窒素を5〜10mL程度こぼす。液体窒素が美しい同心円状になって広がり、子ども達が歓声をあげる。最前列の子どもの膝に落ちるが、気にしないこと。先生の落ち着いた態度によって、子どもたちは安全なことと危険なことの違いを正しく認識し、大声で騒がないようになる。ある子どもが騒いだ時、他の子どもが「君は大げさだなあ」と指摘したら、先生は「その通り!」とさらっとおさえる。

 1回にこぼす量にもよるが、5回程度見せてやると良い。慣れてきた頃に、少し多めにすれば、ぶよぶよと動く液体窒素が観察できる。3年生なら、「広がっていく速度をよく見てください。ニュートンの運動力学の法則にしたがっています。運動の第1法則、すなわち、慣性の法則にしたがって、同じ速さのまま、まっすぐに進んでいることがわかります。これを等速直線運動と言います」

 なお、軍手を使っても、先生の指はだんだん冷えてくるので注意してください。霜で軍手とビーカーが離れなくなることもありますが、その場合は焦らず外してください。

  写真2: 植物の葉を凍結させる

  <ポイント>
  ・ 校庭にある新鮮な葉を使う
  ・ ビーカーに水を入れて保存しておいてもよい
  ・ 初めは白い煙り(小さな水の粒)が発生するが、やがて収まる
  ・ これは植物の葉が液体窒素と同じ温度(-196度C以下)に達したことを示す

  写真3、4: 手で触わって凍結している状態を調べる


   <ポイント>
  ・ バラバラになるのは、葉に含まれる水が超低温で凍結しているからである
  ・ 上の写真は素手で操作しているが、慣れてから行うこと

野草の葉を冷やす               2016年追記
 野草の種類にはこだわならないが、大きさと柔らかさは良く選ぶこと。大きさは、300mLのビーカーに頭からドボンとつけられるもの。少し大きくても、しなしなっ、と入るならOK。葉はできるだけ薄く、茎はできるだけ細いものが良い。なぜなら、素手で完全に凍結させたものを握らせるからである。
※2016年10月は、脱離裏で大量に大きく育っていたキク科を使用した

 園芸用の花は、大きさも厚さ(花弁は葉が変形したもの)も理想的なものが多いので、事前に、子ども達に持参させても良い。「次回は液体窒素でいろいろなものを冷やします。テレビや科学館で見た人もあるかも知れませんが、花を凍らせて、手でバリバリっとする実験も行います。自分の手でバリバリっとしてみたい人は、家から花を持って来てください」

 野草の葉を使うなら、余分な葉はとっておく。全ての葉を液体窒素で凍らせておけば、1本の茎が残ることになり、演出効果抜群となる。なお、太い茎や肉厚の葉の場合は、手でくしゃっと握った後、そのまま持っていると凍傷になる危険性があるので、素早く離すように事前指導すること。

 液体窒素に入れる時は、一気に全部入れる。徐々に入れると、初めに入れた部分がだけが先に凍結し、バリバリとビーカー内で壊れてしまう。

 入れた植物の沸騰状態が収まったら、みんなが見えるように、できるだけ高く持ちあげる。白い煙が真下に落ちていく様子も面白い。そして、高い位置で代表の子どもに凍った植物を握らせる。バリバリッと音を立て、一瞬で粉々になり、破片が机に落ちる。もし、子どもがいつまでも握っていたら、手の甲を軽く叩く。強く叩くと、子どもが驚いて逆に握り締めてしまうかもしれない。

 なお、薄い葉に含まれる水分量は少なく、短時間のうちに温度が上がるので、さっさと操作すること。事前に、全ての手順を代表の子どもに説明しておけば、予想以上の手ぎわで友だちを喜ばせてくれるだろう。

 野草だけなら、男女別に2回行えば必要十分。


  写真5: 軟式テニスボールを冷やす

  <ポイント>
  ・ ビーカーの大きさはピッタリサイズを用意する
  ・ 今回は300mlビーカーに、液体窒素150mlを入れた
  ・ 菜ばし、あるいは、大型ピンセットで一気にボールを入れる
  ・ ゆっくり入れると冷えていない部分が潰れてしまう
  ・ 沸騰がおさまったら、できあがり

  写真6: ボールを落とす

  <ポイント>
  ・ 冷やす前に同じ高さから落下させ、比較させると良い
  ・ 高さは100cmあれば十分だけど、高い方が激しく割れる
  ・ ボールが割れる時の音に集中させる
  「真空の物体が割れる時の、ちょっと高い音がします。よく聴きなさい」

  写真7: 割れたボールの破片を観察する

  <ポイント>
  ・ 生徒達は我先に拾うけれど、しっかり持つと凍傷の危険がある
  ・ やがて、ゴムが元通りになることは説明するまでもなく体験できる

冷やした軟式テニスボールを落とす     2016年追記
 古いボールは凹んでいるので、空気を入れる。たくさん入れるほど派手に割れるので面白いが、入れ過ぎるとビーカーに入らないので、300mLビーカーで試しながら、最大限に入れると良い。

 ボールに空気を入れたら、ピンセットで挟んだまま、液体窒素の中にゆっくり入れる。しかし、ボール全体が一気に冷えるように液体窒素の中に入れないと、入れていない部分が凹む。また、冷却中にピンセットを離すと、同じ部分を挟めなくなり、持ち上げることが非常に困難になる。原因は、冷却によってピンセットで押さえている部分が少し凹むが、ボールがガラスのように硬くツルツルになるので、挟もうとしてもクルクル回転するからである。

 写真では菜ばしを使っているが、ピンセットの方が良い。ピンセットはボールの形に合わせて変形させておく。それでも慣れないうちは失敗するので、何度か持ち上げて落とす練習をすること。

 ボールを液体窒素から取り出す時は、左右に開くピンセットをにすると落ちにくい。縦にしたまま、ボールを持ち上げる。落下地点まで持ち上げたあら、ピンセットを90度回転させ、に開くようにする。力を緩めれば、ピンセットが左右に開いてボールが落下する。うまく開かない場合は、両手でゆっくりと押し開く。

 以下は、ボールを冷やす前に行う説明例である。

 「(ボールをピンセットではさみ、上から落とす様子を何度か見せながら)冷やしていないボールはこのように弾みますが、液体窒素で冷やすとゴムの状態が変化し、カチカチに硬くなります。落ちて割れた破片は、ガラスのようになって飛び散るので危険です。柔らかいゴムの状態とは違うので、十分に注意してください。(その後、実際に落とす高さまで持ち上げてから)本番は、この位置から落としますので、今とどのように違うか比較できるようにしておきなさい(このタイミングで、ボールを落とす)(何人かの子どもは、ガラスのボールをイメージして驚く)」

 「では、実際にボールを冷やしましょう」

 落下直後の破片はガラスのように硬いので、目に刺さらないように注意させる。私は両手で顔を覆い、指の隙間から見るように指導しているが、100%安全であるとの保証はない。

 また、落下直後の破片を金槌で叩くと、気持ちよいほど綺麗な小片に割れる。飛び散ると大変危険なので、手で覆うなど安全面に十分に配慮しならが見せてやるのも良い。

 なお、私は眼鏡をかけているので、いろいろな操作を平気でやっているが、先生は安全眼鏡を着用すること。

 割れた小片を学習プリントに添付するように指示すると、後片付けも楽になり、一石二鳥である。

  写真8、9: 液体窒素に触れる

  <ポイント>
  ・ 50mlビーカーに並々と注ぐ
  ・ 教師が演示する
  ・ ビーカーの底を触ること
  ・ 0.5秒まで許可する
  ・ あわててビーカーを倒さないようにする

  <ポイント>
  ・ 実際には、指の温度で液体窒素が沸騰し、指の周りを『気体の窒素』が取り
   巻くので触れることはできない
  ・ また、冷たさを感じることもほどんどない
  ・ 感じるようになったら指が凍りはじめていると考えてよい

液体窒素に触れる               2016年追記
 液体窒素を50mLビーカーになみなみと注ぎ、先生が演示する。「うぅ!」「おぉ!」など、先生が素敵な表情を見せれば、全員がやってみたいと思う。

 「ポイントはゆっくり入れて、ゆっくり指を出すことです。特に、慌てて指を出そうとすると、指が横に動いてビーカーをひっくり返します。どんなに驚いても、真上に動かすことだけは守ってください。指をまっすぐに入れ、ビーカーの底をタッチして、真上に上げます。所用時間は0.5秒になります。意外にゆっくりなので、ビーカーをよく見ながら、落ち着いて行ってください。では、先生がお手本を見せます。いぃ! 最高です!」

 子ども達にやらせる時は、大きな発泡スチロールの板(20cm×80cm×3cm)にビーカーを載せて差し出すと、高級料理店の板長から出された極上品のようになる。それを子どもたち1人ひとりの目の前に差し出す。

 「それでは順番に指を入れてもらいますが、全員にやって欲しいので、目の前にビーカーが来たら、さくっとお願いします。すぐに入れない場合は、すぐに隣に人に移動させるので、2回目の時に挑戦してください。2回目のチェンスを逃したら、それで修了です」

 大きな発泡スチロールの板に載せて動かすことができるなら、初めに最前列に座る子ども、次に2列目と3列目に行わせると良い。積極的に楽しむ友だちの姿が見れば、誰でもやりたくなるものである。しかし、自分の順番になった時、少しでもためらうようなら、無理強いはせず、次の子どもへ移動する。逆に、ちょっとでもやりたそうなら、ビーカーをほんの10cm近づけてやれば、トライするものである。ポイントは、子どもの目をしっかり見て、ニッコリ微笑むこと。先生の顔の表情を誰も見ていなくても、先生のゆとりは場の空気を良くする。このようにして第1回戦を修了したら、第2回戦を行う。

 「次に、まだやっていない人を中心に、もう1周します。ラストチャンスになりますので、よろしくお願いします!」

 このように声をかければ、勇気がない友だちに対して、近くの友だちが支援をするようになる。それでもダメな場合は、前回同様、さらっとスルーする。

 「実は、液体窒素を触ることはできません。なぜなら、みなさんの指が高温だからです。先ほど、実験台の上を転がる液体窒素を見ましたが、液体窒素にとって、実験台は熱い鉄板のようなもので、みなさんの指も同じように高温なのです。もし、液体窒素に触れたなら、それは指が液体窒素と同じ-196度Cに近づいたことを意味します。凍傷になったり、先ほどの植物のようにバラバラになったりする、ということです」

  写真10、11: 風船内の空気を液化させる


  <ポイント>
  ・ ジェット風船を使うと冷やしやすい
  ・ 普通の風船では時間がかかり過ぎるか失敗する
  ・ 風船内部の空気が液化を始めると、上部の方がしぼんでいく

  写真13 風船内部の液体空気を観察する

  <ポイント>
  ・ 風船のゴムが完全に固まる前に取り出して観察する
  ・ 数mlの液体が観察できるはずである
  ・ この液体は激しく沸騰して気体に戻り、風船を膨らましていく

ジェット風船内の空気を液化する     2016年追記
 ジェット風船の色は、内部にできた液体空気を見るために薄い色のものが良い。黄色、ピンクがベストであるが、水色も悪くない。赤、緑、青は使いものにならない。

 空気を入れる時は、電動空気入れがあると便利だが、なければ自転車用のものを使う。ポイントは、(1)吹き込み口から1.5cm程度は膨らませないこと、(2)できるだけたくさん空気を入れること、(3)先端部をしっかり膨らまして、先端部のゴムが透けるようにすること、である。(1)のように吹き込み口を残しておけば、パンパンに膨らんだ風船でも縛ることができる。

 冷やすためのビーカーは、私は小さい50mLを使うが、慣れないうちは大きな100mLを使用した方が良いだろう。先端部をビーカーに入れると、30秒ほどで凹みはじめる。凹む部分は、手で強く持っている部分になるので、遠くの子どもにもわかるように中央部を持つと良い。それから、どんどん凹んでいくが、ゴム風船を冷却する部分は、初めにビーカーに入れた部分だけ(8cm程度)にする。その他の部分は、常温のまましぼんでいくことになる。ただし、50mLビーカーを使用した場合、途中で液体窒素を追加することになる。追加すると風船が膨らむように見えるが、実は、ビーカーに入れた液体窒素の上に風船が浮いているだけなので、しっかり押し込んだままなら、膨らんでしまったように見えることはない。

 風船が完全に萎んだら、ビーカーから先端部を取り出し、至近距離で子どもに見せる。先端部を揺すってやると、中の液体が揺れていることがわかる。なお、先生と子どもの位置は正反対なので、先生からはよく見えても、子どもからは見にくいことがあるので、先端部の角度や揺らす速度をよく考えること。

 「それでは、液体空気ができたようです。できたといっても、風船内の空気だけなので、量は多くありません。4mm程度の液体が、風船の中にあるだけです。できるだけ近づいて見てください」

 また、先端部の高さも重要で、真横からよく見える時もあるし、下から見た方が良い時もある。とにかく、先端部にできた液体の状態を見て、一番よくわかる高さで示すこと。

 写真13 気体の二酸化炭素を確認する

  <ポイント>
  ・ 二酸化炭素ボンベで試験管に入れる
  ・ 無色無臭、何も見えないことを確認する

 写真14 ドライアイスを作る

  <ポイント>
  ・ 二酸化炭素の凝固点は-79度C
  ・ 勢い良く入れると、一瞬のうちに凍った二酸化炭素が『雪』のように
   試験管内から飛び出す
  ・ その後は、ゆっくり入れてドライアイスの量を増やす

 写真15,16 ドライアイスを観察する

  <ポイント>
  ・ 試験管内部に白い固体ができている
  ・ 次に、この試験管を割って水を入れた水槽に入れる
  ・ 家庭や小学校で遊んだ経験があるはずである

ドライアイスを作る     2016年追記
 ドライアイスは二酸化炭素ボンベを使えば、簡単に作ることができる。

 2002年は試験管を手に持って行ったが、2016年は鉄製スタンドに固定した。現場の様子は、下の写真『酸素を液化する』とほぼ同じである。

 「次に、ドライアイスを作ります。(CO2ボンベを示しながら)その原料はこれです。そうです、二酸化炭素です。(試験管に二酸化炭素を吹込みながら)これを試験管の入れ、(試験管の下から、空っぽの50mLビーカーを押し当てる操作をしながら)試験管を液体窒素で冷やせばできあがりです」

 「それでは、早速作りましょう。まず、試験管を先に冷やします。そうすることで、二酸化炭素の無駄遣いを防ぎます。•••そろそろ試験管による沸騰が収まってきたので、-196度Cになったようです。この試験管内に二酸化炭素を吹き込むと、一気にできます。なぜなら、二酸化炭素が固体になる温度は、何度でしたか? そうですね、-79度Cで、これは100度C以上の温度差があるので、すぐにできてしまうのです。今から二酸化炭素を3秒間だけ吹込みますが、それで十分に見えるほどできます。それではやってみます。(しゅっ、と吹き込む)そうそう、みなさんに紹介するのを忘れていましたが、今、試験管内部から、白い小さな塊がたくさん上がったのが見えましたか? 見えた人は手を挙げてください。ほう、5人いますね。それがドライアイスです。このように吹き上がるドライアイスを観察できるのは、初めの3回ぐらいなので、しっかり見てください。もう一度やりますよ。(しゅぅうぅぅぅ、と吹き込む)(子どもたちの歓声が上がる)ほら、見えたでしょ。見えた人は手を挙げてください! 見えない人は手を挙げてください。見えない人は、もう一度やるのでよく見てください。先ほどのようには見えないかもしれないので、がんばってください。(しゅぅうぅぅぅ、と吹き込む)•••このような小さな塊は、試験管内に十分なドライアイスができていない今だけなので、逆に、吹き上がらなくなったら、ドライアイスが試験管にできていることを示しています。ちょっと見てみましょうか! 試験管の内部に白いものがしっかりできていますが、それは、水ではありせんよ。気体の二酸化炭素が冷され、固体になった白いものです」

 この時までの操作で、50mLビーカーには白い霜がしっかり付き、内部が見えなくなっている。もし、霜の付着が足りないなら、息を吹きかけながら、次のように解説する。

 「ちょっとビーカーに息を吹きかけてみましょう。最前列のみなさん、お願いします! おぉつ、それで十分です。もう真っ白になりました。どうして白くなったのですか? そうですね、水蒸気が水じゃなくて、氷になったからですね。みなさんの息に含まれていた水蒸気が冷やされ、固体の水になったのです。ただし、この真っ白な固体の水はただ者ではありませんよ。触ってはいけません。温度が違います。氷が0度Cだと思っている人は大間違いです。この氷は-196度C以下です。したがって、ドライアイスを触るよりも危険です。簡単に君の細胞を凍結させ、破壊する力を持っています。絶対に触ってはいけない氷です!」

 このようにして、試験管の内部をビーカーが隠している状態になっていることを確認してから、ビーカーをゆっくり外す。すると、子どもたちの歓声「本当だ!」が聞こえる。

 その後、もう一度、試験管の先端部を液体窒素で冷やし、二酸化炭素を15秒吹き込む。吹き込んだら、ビーカーを外し、試験管を鉄製スタンドから外し、試験管を古い紙に包んでから金槌で叩いて割る。ドライアイスを取り出すためである。ドライアイスは、割った試験管ごと水槽に入れる。

 ドライアイスが水に浮くことを知らない子どもが半数程度いるので、事前に知らせておいても良い。また、最近の大型スーパーは無料でドライアイスを配布しているので、家庭でも簡単に確かめられることを知らせると良い。

 なお、二酸化炭素は液体にならず、気体から固体に変化する。これは昇華という珍しい(相)変化であることをおさえる。次に行う酸素は、気体から液体、液体から固体に変化するが、-196度Cでは液体に変化するだけで、固体に変化させることはできない。

 写真17 液体酸素を作る

  <ポイント>
  ・ 融点-183度C
  ・ やがて、液体になった時、色がついていることを教えて期待させる
  ・ 『うすい青色』であることを観察することを知らせる
  ・ 試験管の真下からたなびく一本の白い筋は、空気中の水である

 写真19 液体酸素中における燃焼

  <ポイント>
  ・ 暗幕を閉めてから行うと効果的
  ・ 線香は、試験管の上からストンと入れる
  ・ 超低温の液体の中での燃焼であることをイメージさせる
  ・ 反応後の線香が、完全に燃え切っていることを確認させる

液体酸素を作って、その中で線香を燃焼させる     2016年追記
 液体酸素も酸素ボンベを使えば、簡単に作ることができる。作る手順は、前の二酸化炭素とほぼ同じ。

 「ドライアイスは-79度Cなので簡単にできましたが、今回の酸素は-183度Cまで冷やす必要があります。これは液体窒素の-196度Cと近いので時間がかかります。1分ほど使いますので、よろしくお願いします」

 「気体の酸素は無色透明ですが、液体になると青色透明になります。透き通った青です。ただし、とても薄い青なので、色に鈍い人はわからないかも知れません。至近距離、できれば、1m以内で見てください。さらに、観察時間は2秒だけです。それ以上になると、試験管の表面に白い霜が付着し、白く見えなくなるからです。それほどデリケートな青色なので、合図をしたら、本気で見てください。写真やテレビでみた人もいるかも知れませんが、本物は違います。本物をみたことがある人、になってください。」

 このような説明をしながら時間を稼ぎ、液体酸素を作る。1分ほどしたら、試しに観察する。

 「そろそろできたかも知れないので、試しに観てみましょう。液体酸素は、試験管の底から5mm程度しかできていない、はずです。試験管の底に目をロックし、ズームインしてください。いいですか。ズームイン!」

 このように説明しておけば、少ない量の液体酸素でも大きな歓声が上がる。歓声がどれだけ上がっても、先生は期待に応えず、約2秒で、再び試験管の底を50mLビーカーで覆うこと。さもないと、試験管の表面に氷が付着し、感動を失なわせるだけだから、である。

 そして、再び酸素を注入し、約1cm液体酸素を作る。できたら、前と同じように色を確認させる。確認できない子どもがいたら、前の子どもと場所を交代させる。

 「次に、超低温で燃焼する線香を観てもらいます。ドラマチックな演出をしたいので、カーテンを全て閉めてください」 この指示は、時間を節約するため、液体酸素を作っている最中に行った方が良い。カーテンを閉める時は、教室の電気を消しておくと、子どもたちはわずかな隙間も丁寧に閉める。なお、風ある日は窓を閉めておかないと、クライマックのときにカーテンが風で開くことがある。

 2回目の色の確認を終えたら、再び試験管の底を50mLビーカーで覆う。そして、線香に火をつけ、次のように話す。

 「それでは線香を投入します。色を見るチャンスがもう一度だけあるので、まだ見ていない人は、しっかり見てください。電気を消す係の人は、先生がビーカーを外し、みんなが液体酸素の色に別れを惜しんでいることを確認したら、スイッチを押して消してください。••• それでは、みなさん、よろしいでしょうか。はじめます!」

 そして、線香を試験管の中に入れる。慌てなくて良い。線香が美しく燃える様子に、子どもたちは思い思いの言葉を発する。誕生日の子どもがいれば、ハピバースデーの歌を歌ってもよい。信じられないほど盛り上がる。途中で燃え尽きそうな時は、先生が手拍子をしながら速度をあげる。

 「燃え尽きそうです。みんな・はやく・歌って!」

 仲がよくないクラスでも、この時ばかりは一緒に歌をうたってしまうほど、ドラマチックな時間となる。そして、自発的な拍手で幕を閉じる。

 写真20 エタノールを冷やす

  <ポイント>
  ・ エタノール300mlを、300mlビーカーに入れる
  ・ そこからエタノール50mlを、200mlビーカーに入れる
  ・ その上に直接、液体窒素を注ぐ
  ・ ゆっくりかき混ぜているとだんだんゼリー状になってくる
  ・ エタノールは液体から固体に変わるとき、その中間の状態になる珍しい物質である

 写真21、22 水飴状になったエタノールの観察


  <ポイント>
  ・ ビーカーをゆっくりまわすと、内部の様子がかわってきている
  ・ はしでつまみ出すと、溶けて『鼻水』のようにしたたり落ちる
  ・ この後、液体中に沈む『固体エタノール』を観察させる
  ・ 一般に、液体と固体の密度を比較すると、固体の方が大きいので沈む
  ・ しかし、氷は水に浮くので常識を逆転させてやる
  ・ ビーカーの底に凍り付いた『固体エタノール』を取り出すテクニックは、
   ビーカーを常温の実験台の上に置くことである

 写真25 超伝導物質の紹介

  <ポイント>
  ・ 黒っぽい物質が超伝導物質、その上にあるのが磁石
  ・ 安っぽい発泡ポリスチレン容器には、液体窒素が入っている

 写真26 マイスナー効果の観察

  <ポイント>
  ・ 黒い超伝導物質は常温で何も作用しないが、冷やすと『完全反磁性』を持つ
  ・ 磁石のN極にもS極にも反発する
  ・ 磁場が入れない
  ・ 1933年にマイスナーが発見した『マイスナー効果』
  ・ 上の写真では磁石が水平になっているが、斜めや垂直の状態でも静止する
  ・ また、磁石が半永久に回転するのは摩擦がゼロに近いためであり、超伝導と
   は関係ない

 写真27、28 フィルムケースロケット

  <ポイント>
  ・ 小学校で、ドライアイスを使って同じ実験をした経験があるかもしれない
  ・ 方法は、まずフィルムケースに液体窒素を5〜7mm入れる
  ・ 液体窒素の沸騰がおさってから、蓋をのせる
  ・ 手のひらで蓋を閉める
  ・ 少々避難する
  ・ 液体窒素が2000倍の体積になって、蓋を吹き飛ばす様子を観察する

フィルムケース・ロケット     2016年追記
 フィルムケース入手が困難になってきた。それ以前に、フィルムケースを知らない人がいるかも知れないので解説しておくと、その昔、写真撮影のためにフィルムという感光剤を塗ったプラスチックのロールが市販されていた。写真に興味があった頃の私は、1回の撮影で10本程度使用し、大変貧乏な思いをしていたが、そのフィルムを入れるケースがフィルムケースである。最近はデジタルカメラが主流になり、フィルム撮影ができるカメラ本体も見かけることが少なくなってきた。今回の実験に使用したフィルムケースは、もう10年以上前のものであろう。プラスチックは劣化するので、保存状態のよいもの選んで行った。

 代用品はあるかも知れないが、自分で調べたり検証したりしていない。

 フィルムケースロケットを成功させるポイントは以下の通り。
(1)蓋を開けたケースを、硬い机に置く
※天井に、何もないことを確認する。
(2)液体窒素を3mL程度(1cm程度)入れる
※注いでいる間に、液体窒素が無くなっていくが、よく見ながら、だいたいの量で入れる。液体窒素は、あらかじめ50mLビーカーに入れておくと良い。また、軍手をはめて行わなければいけないが、ビーカーに付着した氷が溶けて軍手が取れなくなることがある。それよりも危険なのは、次の(5)でフィルムケースの蓋をする時に、軍手が取れなくなることである。これは、氷の温度が低く、軍手で押さえた時にその温度で融解し、次の瞬間に、ケースの低温によって凝固するからである。その結果、フィルムケースが軍手の中で爆発したり、思いもよらない方向に倒れるので、蓋をする時は、必ず素手で行うこと。
(3)ケースの上に、蓋をそっと載せる
(4)沸騰が収まるまで待つ

※すぐに蓋をすると、すぐに蓋が吹き飛ぶ。沸騰速度が速すぎるからである。蓋をしてから、約10秒後に爆発するタイミングが適切なので、蓋の動きが穏やかな、安定した沸騰状態になるまで待つ。実際の待ち時間は、10秒〜20秒だろう。
※長く待ち過ぎたり、液体窒素を入れ過ぎたりしていると、ケースがカチカチに凍結して割れることがある。特別な危険性はないが、そこから気体が漏れるので失敗となる。古いケースを使った場合も、同様に失敗する。蓋も繰り返し使うと割れることがある。
(5)手のひらを使って蓋を押し、閉める
※素手で行うことは(2)で説明した。
※かなり強く押さないと閉まらないが、手は正確に上下に動かさないとケースが倒れる。倒れた方向に蓋が飛ぶので、大変危険な状態になる。倒れた時のために、事前に十分注意しておくこと。目に当たらないように指の隙間から見る。あるいは、フィルムケース高さと同じ高さに目を置かない。当たるなら腹になるように立って見る。なお、私は経験がないが、椅子に立って見学する子どもいたら、驚いて椅子から転げ落ちるかも知れないので、事前に転ばないように注意しておくべきだろう。また、大きな音が出るが、完全に耳を塞ぐと面白くないので、塞ぎたいならちょっとだけにするよう指示する。
(6)10秒待つ
※十分な事前説明があれば、子ども達が自発的にカウントダウンを始める

 上手く精巧したら、男女別に1回ずつ、代表の子どもに蓋を閉めさせると良い。大変面白いので、子ども達はもっとやりたがるが、合計3回でさっくり終わる方が良い。これを終えたら、自席に戻り、感想や発見を書かせる。大満足の直後となるので、取り掛かりがとても良い。

 なお、フィルムケースロケットで教えたいことは、液体が気体に状態変化すると、体積が約2000倍になることである。これは、実験中のどこかのタイミングで必ず紹介すること。私は実験冒頭に『体積2000倍』と板書、解説する。100倍程度まで、と思っている子どもが大多数なので、それを教えるだけで期待が膨らむ。危険性についてもイメージできる。

 また、蓋が飛ばなかった場合は、静かに雑巾をかけ、蓋を外す。飛ばない原因は、(1)ケースや蓋の亀裂、(2)液体窒素が少な過ぎた、(3)ケースと蓋が超低温の氷で付着した、などが考えられる。

 写真28 金魚の生還

  <ポイント>
  ・ 生命尊重の立場からやらないという考えもあるが、先ほどの『葉』を
   ばらばらにすることも同じである。考えてみれば、私たちは他の生命を
    殺して自分の生命を維持しているのであるから、明確な目的をもって食
    べたり実験すればよいと思う。最近は、魚釣りの世界ではキャッチ&リ
   リースが 流行っているが、自分の口に針を引っかけられて釣り上げら
   れる自分を想像したまえ。ピーマン、キュウリなど嫌いだといって残す
   人に、金魚がかわいそうなんて言う資格はない。美味しそうな肉じゃが
   は何も言わないけれど絶対に残してはいけない。米粒1つも残してはい
   けない。これらは金魚を同じように何も言わないけれど、もし人間の言
   葉を発っしたなら、それは絶命の悲鳴でしかありえない。そうしたこと
   を考えるチャンスとしてこの実験を位置付けることは大変価値があると
   思う。
  ・ この実験は1クラスしか行わなかった
  ・ 金魚は、女子生徒が持参したものである

動物を使った実験     2016年追記
 最近は行なわないが、人の精子や卵子を凍結保存する技術が確立されていることに触れても良いだろう。ただし、クラスによっては、この話題で異常に興奮することがあるので注意する。


 <評価基準>
 1 自然事象への関心・意欲・態度
  B 本時の感想を意欲的に表現することができる

 2 科学的な思考
  A いろいろな物質の状態変化を関連づけて考えることができる

 3 実験・観察の技能・表現
  A 自分の視点から演示実験を観察することができる
  B 教師の指摘したポイントから観察することができる

 4 自然事象についての知識・理解
  B いろいろな物質の状態変化を正しく理解することができる

  ◎ 生徒の感想文

  ・ 状態変化が今日のメインテーマである






  


  授業を終えて
   朝の打ち合わせの紙に<実験内容>と<日時>を記載し、学校職員
   に『公開授業』として参観を呼びかけた。初日は2人だけだったので
  翌日も呼びかけたが、最終的に3日間で6人という自分の非力を悲し
  み、もう一歩んだ学校生活を歩み出すことがいかに困難な現状である
  かを思い知った。
   分かっている、などと思っている者にろくな者はいない。やってみ
  なければ分からないし、生徒は毎日飛躍的に成長し続ける生き物であ
  る。自主的に授業を公開する先生は数少ないから、そうしたチャンス
  を逃すのは、私は教師失格だと思っている。
   さて、上記感想は14年前に書いたものだが、今読み返すと高慢な自
  分が見える。しかし、同僚の授業を見学したり、学級の子どもが他の
  教科でどのような活動をしているのか参観する時間は、今も昔もない。
  現場の教師は忙殺され続けている。マスメディアはこの現状を広く正
  しく伝える責任がある。そして、教師の多忙化を解消できる人が、そ
  の仕事をしなければ、日本の子どもと日本の未来は暗い。自分のこと
  しか考えていない政治家、とくに安倍と自民党員で安倍の言いなりな
  っている者は、人の道を学ぶ必要がある。通常国会が始まったばかり
  だというのに、自分の権力基盤強化のため、衆議院解散を言い出すと
  は、外道の極みである(2016年10月7日に記す)。

   ひどい脱線になりましたが、液体窒素の実験は、子どもにとって一
   生の思い出になるほど印象的なものです。このページを読まれた中学
  理科の先生は、是非行ってください。よろしくお願いします!

← 前 時
第2章のまとめ

次 時 → 地学
観察1化石を含む地層
↑ TOP

[→home(C) 2002-2016 Fukuchi Takahiro