このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録:物理学 2年(2003年度)です

 実験14 モーターを作ろう
              
                   2003 9 24(水)
                   第1理科室
                   2016年9月追記 (このモーターの原理)

  理論はともかく今日はモーターが回ることが先決である。モーターが回れば、磁界の強さや
  磁界の方向に着目できるようなり、左手の法則が成り立つことを確認できる。ちなみに、制
  作時間は5分もあれば十分である(私の場合)。


  (上:クラスで一番にできたモーター)

  <モーター・セット>
   前時、次の材料を自宅から持参するよう指示した
  1 かまぼこの板、段ボールの切れ端
  2 クリップ、針金(ビニールがいていないもの、塗装されていないもの)
  3 磁石(どんな形でも良い)

  <参考>
  授業記録モーターを作ろう(2000年度、中2物理)


 <授業の流れ>
 1 モーターの作り方の説明

  作り方のポイントはたくさんあるが、1度にたくさん教えても混乱するので、基本的な説明にと
  どめる。また、左手の法則を使って、モーターの回転する方向は「電流と磁界の関係」で決まっ
  ていることを確認する。これも全員の生徒が理解するまで徹底しようとすると失敗するので、回
  転する方向が決まっていることだけを押さえれば良い。

  (上:この板書には、下記の欠点がある)
  ・ エナメル線のエナメルは
コイルの根元から剥がす
  ・ コイル片方の端(上の板書では「右」)は、
半分だけ剥がす、と指示すると良い
  ・ 他にも、たくさんの欠点があるが、制作しながら指導した方が良い

 2 モーターの制作
  バランスの良いコイルを作れば100%成功すると考えて良いので、次にコイルの作り方を述べる。
  しかし、実際の説明では丁寧すぎると混乱を招くので、生徒の反応を見ながら説明内容の量を調
  節する。
  <コイル作りの手順>
  1 直径0.5mmのエナメル線を1メートル用意する
   → 参考 
2000年度の実践では、0.4mmをメインにして制作した
   → 結果として、直径0.3〜0.5mmのエナメル線が適していることが分かった

  2 普通試験管に、エナメル線を8〜10回巻く
   → 直径0.4mmなら12回、直径0.5mmなら8回ぐらいが適切

  3 両端を2、3回くるくるっと巻いてとめる(下の写真
  4 一方のエナメル(絶縁体)をすべて剥がす(下の写真
  5 もう一方の端のエナメルの下半分を剥がす
  6 横から見て、コイルの中心を合わせる(下の写真C・D
  
  
(写真: エナメル線を8回巻いてコイルを作る)

  

  
(写真: カッターナイフを使い、エナメル下半分を剥がす)

 
  
(写真: コイルを真上から見ると中心がずれている)

 
  
(写真: 真上から見ても中心なるように、根元からぐっと曲げるのが最大のポイント)


  (上:このモーターは、コイルを変型させている)

  
  (上:三角形の形をしたコイルのモーター)

  ◎ Aさんの学習プリント
   ・ クラスで5番目に成功した
   ・ コイルは添付されている
 
  ・ 工夫したことが記録されている
  ・ 成功したモーターのコイルが添付されている
  ・ 自宅から、磁石など4つの材料を持参したことが確認されている
 

  ◎ B君の学習プリント
  ・ 通常のモーターを制作した後、コップ型モーターも成功した
   → その詳細については、次の実践を御覧下さい
  




 <評価基準>
 1 自然事象への関心・意欲・態度
  A 自宅から、磁石やかまぼこの板など『モーターセット』を持参することができる
  B 自宅から、クリップや段ボールなど『モーターセット』のうち1つを持参できる
  C 何も準備することができない

 2 科学的な思考
  A 電流や磁界の方向、そして、大きさに注意しながらモーターを作ることができる
  B モーターが回らなくても、その原因を考えながら制作を続けることができる

 3 実験・観察の技能・表現
  A 電圧1.5Vで、10秒間以上回り続けるモーターを作ることができる
  B 正しい手順・方法でコイルを作り、最終的に失敗しても、それをプリントに添付できる

 4 自然事象についての知識・理解
  A モーターの回転する方向を正しく予想しながら制作することができる
  B 磁界の中でコイルに電流を流すと、コイルに力がかかることを理解できる


  授業を終えて
  制作の合間をぬって持参した『モーターセット』の確認を行ったところ、約半数の生徒が
  意欲的に材料を持参した。複数の材料をビニール袋から取り出して見せてくれるときは、
  本当に嬉しい。しかし、逆に視点から見れば、持参していない生徒が半数もいるので、結
  果として成功する割り合いが半数以下になるのは必然である。

  とはいえ、生徒の意欲を高めるのも教師の仕事なので、準備室の段ボールを切り刻みなが
  ら、明日のモーター作りに賭けるしかない。「次の時間もモーター作りをしますので、チ
  ャイムが鳴らなくても理科室に来た人から制作を開始しなさい。」

  <参考>
  授業記録
モーターを作ろう(2000年度、中2物理)

このモーターが一方向へ回転する原理
             2016年9月29日追記

 このモーターには整流子がありません。そのため、コイルが半回転すると電流の方向が逆になります。その結果、半回転ごとに逆方向へ回転する力が生じるので、同一方向へ回転することができません。

 下図@〜Bは、その原理を示しています。原理を理解するために必要な知識は、左手の法則(下図A&B)です。

 この問題を解決するために、このモーターではエナメルを半分だけ残す、という方法を使います。この方法によって、半回転毎に電流が遮断されるので、逆回転することはありません。遮断されている時間は、それまでの勢い(慣性の力)によって回転を続けようとします。したがって、このモーターは「ぐるぐるぐるぐる」と回るのではなく、「ぐるっ・ぐるっ・」と半回転毎に力を生じて回るように見えます。

 ただし、実際のモーターは微妙な条件や作りによって回転するので、エナメルを全て剥がしたものでも回転し続けることがあります。このようなモーターは、回転する方向が決まっておらず、一度回転を始めた方向に連続して回り続けます。回り続ける原因は不明ですが、よく回転するモーターによく見られることから、(1)細かい振動が発生して非接触時間が発生している、(2)回転速度が速いので慣性の力が大きい、のではないかと推測しています。新しい知見が得られましたら、ご一報ください。みんなで正しいことを分かち合いましょう。

 なお、実際の中学でモーターを指導されていらっしゃる先生は、この原理を教えることより、モーター作りを優先させてください。日本の現状と将来を考えたとき、子どもたちに「理論の理解をさせること」よりも、「ものづくりの楽しさと技術と成功体験をさせること」を優先させるべきです。

 もう一言と付け加えさせて頂きますと、「電流と磁界と力が、フレミングの左手の法則のような関係になる理由」「電流によって磁界が発生する原理」を数式や言葉や図などによって他人に説明できる人はごくわずかです。現象を正しく理解できても、その原理を理解し、他人が納得するよう説明できる人はごくわずかです。

 理科の授業で大切なことは、自然を100%理解させることではなく、自然に感動する力を高めさせていくことである、と私は信じています。

 

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