このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録:物理学 2年(2003年度)です

実験16 電流による発熱
              
                   2003 10 2(木)
                   第1理科室
                   → 資料:世界各地の電源(電圧と周波数)

 電力(電圧×電流)を教えるために、発熱量の実験を行うことにした。電力の計算問題だけではあまりに単純なので、電力の違いを実感してもらいたいのである。


(上:電源装置と熱量測定装置)


<本時のねらい>
・ 電力= 電流× 電圧
・ 熱量測定装置を使った実験
   (電力量= 電流× 電圧× 時間)

<熱量測定装置を使った実験について>
この実験で変化させる条件は、次の4つ。
1 電圧(電力)
2 時間
3 水の量
4 電熱線(の抵抗)
 これらを変化させて、発熱量との間に比例関係を求めることは簡単であるが、希望に燃えた本時の実験は、ジュールの発見した比例定数『4.2』を求めることを目標とした。


<授業の流れ>
1 電力について

 1) 教科書を読み、重要な部分にアンダーラインを引く
 2) 学習プリントに電力についてまとめる

  <公式> 電力= 電圧× 電流
      ワット= ボルト× アンペア

3) 教室内にある電気製品の電力を調べる
<説明の例>
 「教室の天井には蛍光灯がありますが、もちろんそれにも電力表示があります。視力が2.0以上の人は座ったまま読めると思いますので、みんなに教えてくれませんか?」
 「そうですね。40ワットと書いてあります。すると、この蛍光灯の電圧と電流が計算できるので、早速やってみましょう。まず、電圧ですが、日本はどこでも同じです。アメリカは120ボルト、ヨーロッパ諸国では220〜240ボルトですが、日本は何ボルトでしょう?」
           → 資料: 主な世界各地の電源(電圧と周波数)
 「えっ、みなさん意外に知りませんね。正解は日本の常識100ボルトです。すると、電圧×電圧が電力なので、100ボルトにいくつかえると40ワットになりますか?」
 「そうですね、0.04Aです。」
 「次に黒板消しクリーナーを調べてみようかな。B君、どこかに書いていあると思うので調べてくれませんか。(後略)」

(上:若干の間違いと記入漏れがあるけれど、頑張って書いています)

2 発熱量を調べる実験
1) 先生から実験手順の説明を受ける
2) 実験する
3) 水の上昇温度などを調べて、結果をまとめる
4) 途中でチャイムが鳴ってしまうので、次も同じ実験をすることを知る
5) 本日終了


  (上:C君が学習プリントに書いた実験装置)

<実験手順の説明例>
 「みなさんの家には、電気で湯を沸かすポットはありますか。今日はそれと同じ実験をします。ポットの中は見たことがありますか。熱を逃がさないような構造になっていますが、この実験装置も、ほら、中に発泡スチルロールが入っています。これは何のためか分かりますか。」

  (上:ばらばらにした熱量測定装置)

「そうですね。熱を逃がさないためです。さらに内側の容器には目盛りが付いているので、正確に水100gを入れましょう。ここでいい加減な量を入れると、実験誤差が大きくなって、あとから合格の印がもらえませんよ。そして、その水の中に「温める装置」を入れます。装置といっても、ただの電熱線です。電熱線は2種類あります。それらの表示を読むと、どれどれ、2.5Ωと5Ωと書いてありますが、意味は分かりますか。」


  (上:電熱線の拡大)

 「そうですね。抵抗です。どっちが早く湯を沸かすことができるかは実験すればすぐ分かるので、みなさんで確認して下さい。あとは、温度計を差し込んで、電流を流せばお終いです。おっと、その前に、ふたに付いているこれは何でしょう。そうです。水をかき混ぜるための道具です。そんなに早く動かさなくても大丈夫ですよ。ゆっくりと上下に掻き混ぜて、水全体の温度が同じようになるようにしましょう。」

 「最後に、結果のまとめ方を確認します。学習プリントに印刷してあるの表の左端に、項目を書いて下さい。まず、変化させれるのは電圧とします。5V、10V、15Vでお願いします。他の条件は全て同じにします。これができた班は、他の条件を変えるとどうなるか予測し、オリジナル実験をしてみなさい。なお、この実験データが正確な班にはボーナス・ポイントがつきます。黒板に同じ表を書いておくので、代表者の人が発表して下さい。これは班単位で合格を出します。」


  (上:A君の学習プリント)


  (上:板書案)

===
 さて、生徒実験を開始したものの、チャイム5分前に発表できた班が半数に満たないので、次時、開始15分間同じ実験をすることにした。
===

◎ B君の学習プリント

◎ Cさんの学習プリント





 <評価基準>
 1 自然事象への関心・意欲・態度
  B 電力について、学習プリントに正しく丁寧にまとめることができる

 2 科学的な思考
 3 実験・観察の技能・表現
  B 電圧を変化させれば、発熱量も変わることを確かめることができる
  B 発熱量の実験データを正確に求め、黒板に発表することができる

 4 自然事象についての知識・理解
  B 電力=電流×電圧であることを理解できる


授業を終えて
 中途半端な実験に終わったが、電気ポットの中には電熱線が入っていて、その電熱線の種類によって発熱量が違うことは実感できたと思う。また、電圧を大きくすれば、発熱量が増えることも確認できた。次時は、欲張ってジュールの発見した『4.2』に迫ろうと思う。ただし、この部分は理解し難い分野なので、理論を説明し練習問題をこなすべきか迷うところだけれど、やっぱり実験を優先しようと思う。風当たりは強くとも、学校でしかできない教育を実践しなければ!

 実際のところ、今日の実験が終わり、私に4.2を求める計算式の質問に来た生徒は2人だった。もちろんヒントは与えたけれど、正解はお預けである。

 それよりもっと重大な問題点は、本時のねらいが不明確なことだった。電力については問題ないが、電力量=発熱量まで指導すべきかせぬべきか、それが問題だ。本来なら、電力量=電力×時間まで指導したいが、ぐっと今日は堪えて我慢した。次時、何とかそこまで持ち込もうと思っているが、生徒が自宅で復習してくれることを願う。

 Mr. takaは、次回も同じ実験をすることを予告し、さらに、正確なデータを得た班にはボーナスを与える指示することで意欲を高めたつもりである。

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