このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です

観察1 太 陽          
                   2004 9 3(金)
                   各教室

 今日から天文分野が始まります。多くの人にとって宇宙は興味深い分野ですが、解明されていないことがたくさんあります。

 中学校3年理科の授業では、教師からの説明は学習指導要領の内容にどどめ、生徒の興味関心を引出すことに専念したいと思います。無理して難解な部分を説明することは避けます。

 生徒から出てきた「太陽はどうして丸いの?」「太陽はどうして燃えているの?」といった子どもらしい質問や、発展的な質問については、『自由研究レポート』を渡して家庭学習させようと思います。後日、調べてきた内容を学級で発表させることで、ますます興味関心が高まり、また、週2時間減った理科の授業を思い出させるきっかけにしたいと考えています。

(右:Aさんの太陽のスケッチ)



◎ 授業の流れ
1 導 入

 ・ 教科書、2分野下を持参した生徒に『印』を押す
  → 時間を節約するため、太陽のスケッチをしている間に行う

 ・ 2学期から、理科の授業時間数が激減したことを確認する
  → 自由研究レポートを利用して、継続的な学習ができるように配慮する
  → 自由研究レポート用紙は、太陽のスケッチをしている間に紹介する

2 太陽のスケッチ
(10〜15分)
 「それでは、太陽をスケッチしましょう。時間は10分。色鉛筆を使うと良いと思います。また、重要語句も記入して下さい。ただし、教科書や理科便覧の写真や説明を全て書くことはできませんので、自分の気に入ったものだけにしましょう。10分後、先生が覚えなければならないことを確認しますので、みなさんは興味をもったことや覚えておこうと思うものを中心にまとめまて下さい。」
  ↓
  しばらくしてから、
  ↓

 「スケッチしていて疑問が出た人は、黒板に発表して下さい。質問に対する答は、まず、みなさんの中から解答者を募集し、なければ先生が答えますが、それでも分からない場合は、先ほど紹介した『自由研究レポート』で調べてきて下さい。」

(上:ここまでの板書例)



3 重要語句の確認
 次の順序で説明すると、スムーズに思考できます。
1 恒 星
 太陽のように自分で光り輝いている星を恒星と言います

 → 半数近くの生徒が、「月は自分で光っている」と考えていました。私はとても吃驚して、「月が輝いているのは太陽の光が反射しているからです。」と説明したけれど、正確に理解できていないと思う。また、彗星や流れ星についても同じ質問が出たので、時間をあらためて恒星・惑星・衛星の違いを説明する必要があると思う。

2 プロミネンス(紅炎)
3 表面温度は6000度C
4 黒点は4500度C
 → 黒点が黒く見える理由は、周りより温度1500度Cも低いから相対的に暗く見えるだけで、実際は水素爆発によって明るく輝いています。また、平均的な表面温度より高い部分は『白点』と言います。

5 自転している(25日/周)
 → 太陽は気体の集まりなので、赤道付近は25日/周の速さで動いていますが、両極部分では回転速度が遅くなり40日/周ぐらいです。ただし、深入りすると失敗するので、質問が出た時だけ簡単に解説するようにしましょう。

6 立体的な球である
<上記6の説明例>
 「太陽の自転によって黒点が移動していくとき、周辺部にくると黒点が横に潰れて見えるのは何故か考えてましょう。」「まず、中心部分に真ん丸の黒点を書いて下さい。」「書けましたか。この黒点は、太陽に自転によって少しずつ動いていきます。」「こんな風に動いて行きますが、周辺部にくると横の長さが短くなってきます。そして、やがて見えなくなります。しばらくすると反対側から潰れた形で出てきて、25日後には元の形に戻って同じ位置に来ます。さて、周辺部来ると潰れた形になるのは何故でしょう?」「そうですね。太陽は平面ではなく、ボールのような立体的な球だからです。太陽がぺらぺらの円盤のような形をしているとは誰も思っいないですよね!」


7 その他、必要に応じて説明する事柄
 深入りすることは絶対にさけること。次の質問コーナーにふった方が、分かっていることと分からないことが明確になって良い。また、生徒の興味関心も高まる。

・ 水素ガスとヘリウムガスの集まり(固体ではない)
・ 銀河系の回転にまで話をふくらませても良い
・ 太陽の誕生の話をしても良い
・ 宇宙には、太陽と同じような恒星がたくさんある
・ 恒星までの距離を表わす単位は『光年』(シリウスまで4.3光年)

4 質問コーナー

1) 解答者を生徒から募集し、説明してもらう
2) 説明できなかったものを、教師が説明する
3) 新たな疑問を発表したり、説明すしたりする
 → 授業でできなかった問題は『自由研究レポート』とし、後日、調べてきた生徒に発表させる



5 本時のまとめ 

 自由に感想や発見をまとめさせる。



<参考資料:自転周期の算出方法>
 黒点の観測によって簡単に分かりますが、ドップラー効果による『太陽スペクトルの偏移』によっても計算できます。つまり、太陽の東西両端のスペクトルを観測すると、西は観測者に近づいてくるので波長の短い青へ、東は波長の長い赤へ偏移しています。

6 次時の予告

 「次の時間は、同じ方法で地球について調べます。教科書や色鉛筆を忘れた人は必ず持ってきて下さい。」「さて、ちょっとだけ地球について紹介しておきますと、今日印刷してきた太陽の直径は10.9cmになっています。これに並べて地球を書くとすると、地球の直径はどれくらいでしょう。1cm以上でしょうか。? それとも、1cmより小さいでしょうか?」「理科便覧を調べると、太陽の直径は地球の109倍なので、つまり、太陽が10.9cmなら地球は1cm、ではなくて、1mmになります。」「今日はこれでお終い。さようなら。」

◎ D君の学習プリント

(上:画像をクリックすると拡大します。176k

◎ 板書例


<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
 B 2分野下の教科書を持参できる
 B 太陽を正確かつ丁寧にスケッチできる

2 科学的な思考
 B 太陽の自転によって黒点の形が変わることから、太陽が立体的な球であると推測できる

3 実験・観察の技能・表現
 B プロミネンスや黒点など太陽のつくりを正確にスケッチできる

4 自然事象についての知識・理解
 B 太陽について正しい知識を持ち、説明することができる


授業を終えて
 月が反射して光っていることは知らないだろうと思っていたが、挙手させて調べると半数以上が知らなかった。あるクラスで、太陽の光が反射して地球に届いていることを説明してみたが、ほどんどの生徒はぼけーっとしているので、納得するまで説明するには少なくとも1時間(50分)は必要である。10分では無理。中途半端な理解になるので、これも自由研究の1つにしてしまった方が良い。また、自分で光り輝く恒星の定義にも時間がかかった。

 恒星と惑星の違いは10分で何とかなるが、身近な月が光り輝いている現実や、地球も宇宙から見れば光があっているところだけが光っている(昼)現実を説明するためには1時間必要でしょう。でなければ、地に足がつかない教育になりそう。どこかで、1時間追加することも頭に入れて、今後の授業を展開しよう。

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