このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第9時
観察9:5月中旬の瑞穂公園

     2012 5 11(金)、14(月)
     正門→ 瑞穂公園→ 正門

はじめに
 次の時間はイチゴ狩りに行きます! この一言で生徒のテンションはかなり上がっていたようです。正門に集合し、瑞穂公園まで散歩してヘビイチゴを食べます。その後、幸せを呼ぶ四葉のクローバー探します。


上:シロツメクサの葉を探す生徒達(2012年5月11日)


本時の目標
1 季節によって生活する植物が違うことを調べる
2 ヘビイチゴを食べ、花が果実や種子になることを実感する
3 シロツメクサの花、葉、根を採取する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • セロハンテープ
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ(1/人)


授業の流れ
(0) 始業前、正門に集合させる

 理科係を通して、正門に集合するように連絡しておきます。そして、学級委員に男女別、背の順に整列・点呼させます。瑞穂公園は2回目ですが、安全や公共のマナー(あいさつを含む)は確実に指導してから出発です。

(1) 瑞穂公園で始業のあいさつ
 始業のあいさつは、瑞穂公園のヘビイチゴ群落の前で行います。けじめをつけることが大切なので、全員口を閉じて集合していても、「姿勢が悪いものがいる」と一言注意すると、その後の活動がより豊かになります。

(2) 季節による野草の変化
 「ぱっと見れば誰でも分かりますが、2週間前と全然違います。前はタンポポがたくさん咲いていたのですが、タンポポはありますか。その場で見える範囲を探してご覧。・・・ほとんどないでしょ。花が終ると綿毛になりますが、その綿毛すらほどんと飛んでしまった後です。そのかわりに、たくさんイネ科の植物がたくさん咲いています。例えばこれは何ですか? (ノゲイヌムギを1つ採取して、それを示しながら) ・・・その通り、2時間前に観察したノゲイヌムギです。ノゲイヌムギは小さな花ですが、みなさんの力なら見つけられます。この他、10種類以上のイネ科の植物が背を伸ばし、花を咲かせています。今は比較的背の高いイネの仲間が花を咲かせる季節です。興味ある人は採取し、標本にしましょう。

 また、今日のプリントには、前と同じ野草の名前が印刷されています。採取したらチェックしてください。そのほとんどは種子や果実になり、植物のからだは枯れています。見つけ難いと思いますが、頑張ってください。前回咲いていた場所にあるはずです。」


上:タンポポの種子、綿毛の標本づくりをする生徒

(3) ヘビイチゴの収穫
 「さて、今日のメインはイチゴ狩りです。(「はい、拍手!」と言って先生自身が拍手し、全員が拍手するように盛り上げて、さらに、「はい、(1、2、3)」の動作で拍手を止め、さらに盛り上げる)・・・完璧です。イチゴはみなさんの目の前にあります。見えますか。・・・(イチゴ群落から、新鮮なイチゴを1つ採取して、それを頭上に挙げて)ちょっと小さいですが、真っ赤になったイチゴが見えますか。(生徒達が「わあ」「美味しそう」など言っているうちに、先生はぱくっ、と食べる。そして、満足げな顔をして「気分は最高です」と言って微笑み)食感はイチゴで、小さなつぶつぶがプチっ、と弾ける感じが最高です。でも、味はありません。美味しくもまずくもありません。甘いと思って食べるとまずく感じるので、味は全くない、と思って食べてください。ここは食べ放題、もちろん無料ですが、食べ過ぎるとお腹がいたくなります。食べ過ぎは何でも痛くなるから当然です。多くても3粒ぐらいにしておくのが無難でしょう。もちろん、ヘビイチゴに毒はないので安心してください。」

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左:ヘビイチゴの果実
右:ヘビイチゴの果実を食べようとする生徒


上:各自が収穫したイチゴを見せあう生徒達

(4) 幸せを呼ぶ四葉のクローバー探し
 「次に、四葉のクローバーがある場所を紹介します。後ろを向いてください。コンクリートでできた土手あるのがわかりますか? その上に四葉のクローバーがあります。正しい植物の名前は、シロツメクサです。シロツメクサの花は白いボールのような形で、よく見ると小さな花がたくさん集まっています。シロツメクサの花をたくさん集め、花束や花輪を作って遊ぶこともできます。できる人は遊んでも構いません。シロツメクサの葉は普通3枚ですが、よく探すと4枚のものがあります。それを四葉のクローバーといいます。見つけたら生徒手帳にはさんでおきなさい。3枚集めると願いが1つ叶う、という話もあります。頑張ってみましょう。先生からの話は以上です。何か質問はありますか? ・・・(ないことを確認して)解散!」


上:2012年5月11日のシロツメクサの様子(2日前よりは育っていましたが、まだまだ十分とはいえませんでした。しかし、ヘビイチゴの果実(正確には『花たく』)はすでに盛りを過ぎ、新鮮さを失っていました。


上:シロツメクサの花でつくった輪


上:シロツメクサの根
 シロツメクサは双子葉なので網状脈、ということになっていますが、実際ははっきりしません。しかも、地面を這うようにして伸びた茎から根を伸ばすので、やっかいです。双子葉=網状脈、という方法で分類できない植物はたくさんあるので、神経質にならずに自然を観察し、事実を記録させる態度を育てることが重要です。


上:左からヘビイチゴ、シロツメクサ、ムラサキカタバミ
 ムラサキカタバミは、花の色が紫色をしている。普通のカタバミの花は黄色。また、花が黄色で葉が赤いものをアカカタバミといいますが、葉が緑色と同じカタバミ、とすることもあります。今回は誰も葉が赤いカタバミを採取しなかったったので、黙っていました。


上:採取した野草を添付する生徒
 ルーペを持参した生徒もいます。観察している時間は少ないのですが、あるとなしでは、大きな違いが出ます。


実習中のスナップ写真 2012年5月14日(月)晴
 1クラスだけ、前時に続き瑞穂公園へ行きました。朝の短学活の時間を少し頂き、生徒に学習内容と場所を選択させたところ、瑞穂公園を希望する生徒が圧倒的に多かったからです。同じ場所を嫌うのではないか、という私の予想は外れました。前時よりも移動が早く、たくさんの種類が採取できたので、価値ある時間だったと思います。やはり、生徒に目的とやることを事前に明示すると、学習意欲とその効果は上がるものです。他クラスの生徒が全員採取、観察した双子葉植物ヨモギも調べることができ、ほっとしました。

上:チチコグサを採取する生徒(2012年5月14日)
 生徒全員が楽々採取できるほどの大きな群落を見つけました。生徒達は白い葉(双子葉)に興味を抱いていました。


上:マツの木の根元に巣を作ったハナアブ(節足動物門>昆虫綱>ハエ目>ハナアブ科)
 「先生、こっち来て! ハチがいっぱいいる!」と呼ばれました。ハナアブです。ハナアブにはたくさんの種類があるので種名は不明ですが、これは蜂ではなく蠅の仲間です。彼らは、花の蜜や花粉、小さな動物などを食物にしているので、とても忙しい時期を迎えています。


上:瑞穂公園のベンチを使って植物をまとめる生徒達
(私も生徒になりたいな)


上:ノゲシを採取する生徒
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上:シソ科の植物(クリックすると拡大)


上:花期を終え、果実と種子をつけたヤエムグラ
 花期を終えたヤエムグラは、長く伸びて絡まり、緑色ののまま枯れているようです。私はそれを採り、「動物に種子を運んでもらうために毛が生えていて、ほら、ひっつくんだよ」と言ってヤエムグラをA君に引っ付けると、それからヤエムグラの投げ合いが始まってしまいました。どうしたものか困りましたが、このクラスは通算3回めの瑞穂公園で、今日は誰もいないところまで歩いてきたので、しばらく見ていることにしました。黙ってみている方が大変なんだよね。


上:ハルジオンを採取する生徒


上:ヨモギの主根と側根を採取した生徒
 手頃な大きさのヨモギの群落を見つけたので、生徒全員に紹介し、根を採取させました。これでノルマ達成です。


上:種子になったカタバミ
 写真下に見える先が尖った5角柱のものが子房で、その中にたくさんの種子が入っています。黄色い花や、根もあります。


授業を終えて
 ヘビイチゴを30個以上食べた生徒が何人かいました。腹をこわすのではないかと心配していたのですが、大丈夫だったようです。自分の判断で食べるなら、これもまた立派な学習の1つです。

カタバミの葉とシロツメクサの葉
 カタバミ(およびムラサキカタバミ)とシロツメクサ(およびアカツメクサ)の葉の形はほぼ同じです。いずれもトランプのクローバーのような三つ葉です。教科書による区別は、白い模様がないもの(カタバミ)、白い模様があるもの(シロツメクサ)になっています。しかし、今回採取させたシロツメクサの群落は模様があるものが少なく、指導できませんでした。遺伝子は『模様あり』が優性のようですが、ここは違うようです。いずれにしても、当てが外れてしまい、事前調査の甘さを反省です。また、カタバミとシロツメクサの花は全く違います。花で見分けることは非常に簡単ですが、生徒の多くはシロツメクサの花を三つ葉が一致しないので驚きです。四葉のクローバー探しも良いのですが、その前に花と葉を一致させることが重要です。個別にまわって指導し、採取・標本づくりをさせたのですが、これも1つずつ教えなければいけないことを反省した材料です。

 なお、今年のシロツメクサの盛りはもう少し後でした。


上:終業時間8分前になり、瑞穂公園内の集合場所に移動を始める生徒達

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観察8 双子葉植物の種子、果実、からだ

→ 第10時
観察10 維管束の顕微鏡観察

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