このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第10時
観察10:維管束の顕微鏡観察

     2012 5 15(火)雨
     2012 5 16(水)快晴、前日より気温が8度C程度高い
     理科室

はじめに
 中学になって初めての顕微鏡を使う実習です。小学校で何回か使っているので、操作方法の確認は簡単にする予定です。よくできるなら、絞り板の使い方まで指導します。また、観察するものは市販のプレパラートです。顕微鏡の使い方を確実にできることが第1目標なので、プレパラートの自作はさせません。使用するプレパラートは、ホウセンカの茎(横断面)とトウモロコシの茎(横断面)の2枚です。


上:シロツメクサの葉を探す生徒達(2012年5月11日)


本時の目標
1 光学顕微鏡の各部の名称、使い方を確認する
2 ホウセンカとトウモロコシの茎の横断面を顕微鏡観察する
3 双子葉と単子葉の維管束の違いを知る
4 導管、師管、維管束、形成層を知る

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 光学顕微鏡(1/人)
  • 光源(1/班)
  • ホウセンカ茎(横断面)のプレパラート(1/人)
  • トウモロコシの茎(横断面)のプレパラート(1/人)

※事前に、光学顕微鏡、プレパラートを点検しておきます。顕微鏡の点検はどれだけがんばっても3時間以上必要なので、理科室掃除当番や各クラスの理科係全員を集合させ、計画的に行ってください。根性が大切です。


授業の流れ
(0) 始業前に顕微鏡を触らせる

 理科室に移動してきた生徒から、顕微鏡、光源、プレパラートを準備させます。そして、「チャイムが鳴るまで自由に観察していなさい」と指示します。中学になって初めてのことなので、無茶をする生徒はいないでしょう。得意な生徒は、かなり本気で取り組みます。

 え、いきなり触らせても大丈夫? と思われる先生もいらっしゃると思いますが、彼らは13才です。中学1年生です。小学校で顕微鏡の使い方を学んできています。顕微鏡を投げつけるようなことはしません。信用して任せることが大切です。自分1人でさんざん触った後で、「忘れちゃった」「そうだったんだ」と思い出したり、「あ、そうすると良く見える」と教えてもらうことが大切です。始業のチャイムがなっても、「もうしばらく各自で観察しなさい。はっきり見えた人は手を上げなさい」と待ってみてはどうでしょう。教え合ったり、教えてもらう歓びが倍増すると思います。


上:始業前、教師用実験台に置かれた2種類のプレパラートを各自で準備する生徒

(1) 始業のあいさつ、本時の内容紹介
 始業のあいさつをしてから、本時の内容を紹介します。今回のメニューは次の通りです。
 1) 顕微鏡の使い方の確認(別ページ『光学顕微鏡の使い方』をご覧ください)
 2) 顕微鏡の各部の名称の確認
 2) 動物と植物のからだをめぐる管くだの紹介
 4) ホウセンカの茎(横断面)の観察→ 維管束(導管と師管)と形成層の紹介
 5) トウモロコシの茎(横断面)の観察→ 散在する維管束の紹介

(2) 光学顕微鏡の使い方
 別ページ『光学顕微鏡の使い方』をご覧ください。詳細に解説してあります。今年の生徒の様子で印象に残ったことは2つです。1つは反射鏡に平面鏡と凹面鏡があることを誰も知らなかったこと、もう1つは「絞り板」の説明でかなり盛り上がったことです。


上:平面鏡と凹面鏡を説明するための板書


上:小さなすき間をつくって覗き、『ピントが深くなること』を確かめる生徒


上:顕微鏡の使い方をまとめた板書

(3) 光学顕微鏡の各部の名称
 (2)で顕微鏡操作を指導している途中に、各自で学習させます。学習プリントに教科書の顕微鏡写真をコピーし、印刷しておくと良いでしょう。教科書で各部の名称を暗記してから、各自で小テスト(小テストを開始する時間も終了する時間も各自の自由)、間違えたものや漢字で書けなかったものはプリント裏面に5回ずつ書く、などと指示しておけば十分です。生徒は中間テストが近づいてきていることを知っています。自主的な学習意欲を高めるためにも、不要な指導は避けるべきです。


上:学習プリントの一部分(画像をクリックすると全体図


上:教科書を見て、顕微鏡各部の名称を確認する生徒

(4) 動物と植物のからだをめぐる管
 「(ヒトをごく簡単に板書し、それに赤チョークで血管らしきものを描き加えてから)さて、ヒトの身体にある繋がった管を何と言いますか? ・・・その通りです。血管です。で、実は植物のからだにも同じような管がはり巡らされているのですが、その名前を予習してきた人はいますか? 塾で習った人もいるかも知れないけれど・・・はい、その通り。維管束です。これは重要語句で、次のテストに出題される可能性がとても高いので漢字で書いてください。自分のプリントに漢字で書けた人は黒板に書きに来てください。先着1名です。」

写真右:「維管束」を板書する生徒

 人の心臓やリンパ管を紹介したクラスもありますが、本時の狙いは植物の維管束なので、たとえ1分で紹介したとしても時間の使い方を間違えたなと反省しました。このクラスのように、さくっとヒトと植物の共通点を認識させるだけで十分です。もちろん、ヒトと動物の共通点を指摘している教科書はほとんど見られませんが、、、

 ただし、2013年度の実践では、ヒトの血管とリンパ管をしっかり教えました。

(5) ホウセンカの茎(横断面)の観察
 ホウセンカの茎(横断面)のプレパラートを観察させてください。ポイントは維管束(導管と師管)と形成層です。そして、それらをスケッチさせます。教科書や理科便覧の写真を参考にさせても構いません。分りにくい生徒には、模式図を見るように指示します。黒板では、模式図を使った説明をしますが、実際のプレパラートは模式図のように見えません。プレパラート1枚1枚、すべて違いますが、「真っ赤に染まっている丸いものが動管です。師管は薄い青紫色です。」などと具体的に指示してください。板書も有効です。


上:板書

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左:スケッチに重要語句を記入する生徒
右:ホウセンカの茎

(6) トウモロコシの茎(横断面)の観察
 双子葉(ホウセンカ)の次に、単子葉植物のトウモロコシの茎(横断面)を観察させます。双子葉を先に学習することで、ばらばらに散在する単子葉の維管束が明確になるからです。また、「トウモロコシの中には宇宙人がたくさんいるよ!」「宇宙人はみんな中心を向いているよ!」「骸骨みたいな宇宙人もいる!」などと話をしてください。学級のテンションが一気に上がります。



上:タケの茎(横断面、観察6維管束(道管と師管)1年(2002年)から
 目と口、合計3つの赤い丸が動管。師管は宇宙人の脳みそに当る部分。また、この宇宙人は金太郎飴のように、切っても切っても宇宙人が出てきます。金太郎飴の構造が理解できると、横断面と縦断面、および、長く伸びたチューブとしての維管束が本当に理解できたことになります。


上:理科便覧を開いて、確認しながら観察を進める生徒


授業を終えて
 顕微鏡でピントを合わせる時、対物レンズを横から見てできるだけ下げる、という操作を知っている生徒は何人かいました。これは対物レンズを傷つけたり、プレパラートを割らないようにするための大切な操作で、教科書にも大きく載っています。しかし、ピンと合わせで本当に重要なことは、まず低倍率を使うこと、低倍率でピントを合わせること、低倍率で一番良い部分を探すこと、低倍率で拡大したい部分を中心に移動させることです。この操作ができれば、あとはレボルバーを回すだけで高倍率になります。ピントを合わせ直す必要も、対物レンズとプレパラートがぶつかるのではないかと心配する必要もありません。顕微鏡は、回すだけ高倍率になるように設計されています。中心は中心になるように造られています。ピントが違っていたり、中心がずれたり、対物レンズがぶつかるようなら修理に出してください。もちろん、ピントの微調節は必要ですが、1mm上下させるだけなので、対物レンズとプレパラートがぶつかることはありません。という最重要な操作を知っている生徒は1人もいませんでしたが、これをしっかり指導すると、プレパラートは本当に割れなくなります。また、最も高倍率の対物レンズ(40倍だと思います)の先端部はバネによって凹む構造になっていることも確かめさせてください。「安全装置で5mmも凹むのに、それも気づかず対物レンズを下げてプレパラート割る、なんていうのは考えられません!」と教えてあげてください。

関連ページ
 観察6 維管束(道管と師管) 1年(2002年)
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上
・ 光学顕微鏡の使い方同 上

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第1章 生命とは何か 顕微鏡を使うときのポイント
科学的スケッチの書き方
p.21
p.22
第3章 動物が動くしくみ 光を感じる目 p.48〜p.49
第8章 進化と分類 野菜の維管束を調べよう
単子葉植物と双子葉植物
p.143
p.145

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観察11 いろいろな植物の維管束

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