このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第11時
観察11:いろいろな植物の維管束

     2012 5 17(木)、18(金)
     理科室 ←(各自)→ 校庭

はじめに
 今日も反省の効果なく、盛り沢山の内容になってしまいました。メインは前時おろそかになった平行脈と網状脈を確実におさえることです。それぞれの模式図を描かせ、さらに、イチョウを含めた維管束の発達を指導します。二又脈(イチョウ)→ 平行脈→ 網状脈、になりますが、イチョウは原始的な『開放系』、平行脈と網状脈は『閉鎖系』としてまとめると生徒の興味は大きく膨らみます。


上:レタスの葉の横断面をつくり、維管束(葉脈)を観察する生徒


本時の目標
1 平行脈と網状脈を正しくスケッチする
2 植物の維管束の発達を知る
3 ツバキの葉の横断面図を観察、スケッチする
4 葉脈=維管束であることを知る
5 自宅からいろいろな植物を持参する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧
  • いろいろな野菜
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 光学顕微鏡(1/人)
  • 光源(1/班)
  • ツバキの茎(横断面)のプレパラート(1/人)
  • カッターナイフ
  • 赤インク
  • ビーカー

※光学顕微鏡を使うのは2回目なので、細かい説明はしません。毎回、僅かな時間でも触らせることが大切です。顕微鏡に限らず、実習は自分で手を動かすことが大切です。先生の説明より生徒が実習時間を優先させましょう。


授業の流れ
 この記録をまとめる時点で反省しているのですが、理科室に移動した生徒からプレパラート『ツバキの葉(横断面)』を観察させるべきでした。時間の節約だけでなく、生徒の技術も向上したと思います。授業の流れより、生徒の学習チャンスを広げることを優先させるべきです。

(1) 始業のあいさつ、本時の内容紹介
 始業のあいさつをしてから、本時の内容を紹介します。今回のメニューは次の通りです。
 1) 網状脈と平行脈を正しくスケッチする
 2) イチョウの葉、平行脈と網状脈の葉、合計3種類を採取する
 3) ツバキの葉を顕微鏡観察する
 4) 持参した野菜の維管束を染色し、観察する

(2) 野菜を持参した生徒の確認
 次の手順で確実にチェックします。まず、野菜を持参した生徒を起立させます。そのうち、友達からもらった生徒を着席させます。学級全員の前で、嘘をつくことは通常ムリだからです。次に、起立している生徒に学習プリントを前に持って来させ、プリントに合格印を押します。そして、持参した野菜の名前をプリントに記入させます。植物名はカナタナです。

(3) 野菜を赤インクにつける
 植物を赤インクにつけさせます。赤インクは、水性の赤ペンを水の中に入れて置けばできあがりです。野菜の大きさに合わせてビーカーのサイズを選ばせます。赤インクの量は1cm程度で十分です。ティッシュペーパーを使って、毛細管現象について簡単に説明することも大切です。

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左:赤インクにつけられた野菜
右:約30分つけておいた大根の根
 つけておいたものの観察は、授業終了10分前に指示します。

(4) 維管束の発達
 イチョウの葉、2つの先細りの葉を板書して(イチョウの葉を指差し)この葉は何ですか? ・・・その通り、イチョウです。では、矢印のあとは何の葉ですか? ・・・(サクラ、ササ、ホウセンカ、タンポポなどいろいな解答が出るので、先生は、それらを平行脈と網状脈に分類して板書し)・・・ さて、先生が2つに分類して書きましたが、その違いが分かる人? ・・・その通り、左が平行脈、右が網状脈です。(黒板にひらがなで、へいこうみゃく、もうじょうみゃく、と板書して ※単子葉と双子葉、の答えが返ってきた場合は、それで進めるでは、プリントに漢字で書いてください。書けた人の中から先着2名、黒板に漢字で書きに来てください。・・・(黒板に正しく書かれたことを確認して)黒板で確認してください。正しく書けた人は手を挙げてください。・・・大変よろしい。これらは、それぞれ、子葉の数が違いますが、何と言うかわかりますか?(※前に、単子葉と双子葉で進めた場合は、葉脈の違いを答えさせる)・・・その通り、単子葉と双子葉です。

(5) 平行脈と網状脈の模式図を描く
 「次に、プリントに平行脈と網状脈の模式図を書きなさい。教科書や理科便覧で調べてもよろしい。もちろん、学習プリント見たり、プリントに貼ってある本物を見てもオッケーです。ただし、今回はテスト用の答えなので、できるだけ少ない数の線で、はっきりと書いてください。スケッチよりも単純な模式図です。ポイントが合っていたら正解とします。3分間あげます。では、始め! (1分ほど経過してから、黒板に平行脈と網状脈の模式図を描くスペースをそれぞれ3つずつ用意して) 自分のプリントに2種類書けた人の中から6人、黒板に発表に来てください。」


上:教科書を調べながら、自分の考えをまとめたり確認したりする生徒


上:自分の考えを発表に来た生徒
 この前に紹介したイチョウ→ 平行脈→ 網状脈、という維管束の発達は、黒板の右半分にある。この後、原始的なイチョウの開放系の二又脈→ 閉鎖系の平行脈と網状脈、という順に解説、答え合わせをする。


上:答え合わせをした後
 単子葉は2つ正解、双子葉は全員不正解

(6) 開放系から閉鎖系へ
 「それでは答え合わせをしましょう。教科書にはありませんが、まず、イチョウです。イチョウの葉は末広がり、先端が広がった形をしています。その理由は葉脈が2つに分かれているからです。(1本の葉脈が2つに枝分かれすることを板書して) 2つに分かれた葉脈は、それぞれまた2つに分かれて(さらに板書して) また分かれて(それも板書して) ということで広がっています。しかし、よく考えてください。他の植物も枝分かれしているのに、どうしてイチョウだけ広がっているのでしょう? ・・・それは、葉脈の先端が繋がっていないからです。外に開放しているからです。水が外に出てしまい、戻って来ないわけです。例えが悪いのですが、ヒトの5本の指先から血がピューッと出ている(この表現は十分に注意してください)、ということになります。イチョウは原始的な植物で、種子が裸、ってことを覚えていますか。裸子植物と言いましたね。イチョウの維管束は、原始的ということです。」

 「さて、いよいよ平行脈の答え合わせですが、もう分かったと思います。ポイントは維管束が繋がっていること、つまり、先端部で1つになっていることです。葉の根元で枝分かれして、平行に真直ぐ走っていることは書けたと思いますが、先端が1つになっていますか。なっている人は正解です。もちろん、根元も1つでなければ間違っています。正解だった人? ・・・よろしい! ちょっと黒板の3人も答え合わせしておきましょう。(順に指差しながら)みなさんが先生なら、これは正解にしますか? ・・・はい、正解ですね。これはどうですか? ・・・葉脈が切れているので、これはダメです。これは? ・・・はい、正解です。」


上:イチョウの葉を顕微鏡に直接載せて検鏡する生徒クリックすると採取したイチョウの葉)
 こんな方法教えてないんだけれど・・・ それで分かるなら良いでしょう。

 「次に、網状脈のポイントは、平行脈よりも発達して、網目状になっていることです。ということは、まず、平行脈と同じように先端部が繋がっていて、さらに、他の葉脈もすべて繋がっている、ということです。教科書のスケッチや模式図は、先生の基準ではバツです。中心の葉脈は太いものが多く、周辺にいけば細くなることも事実ですが、それよりも重要なことは繋がっていること、網状につながっていることです。ということで、全ての葉脈が繋がっている人を正解にします。正解だった人? ・・・おやおや、全員ダメでしたか。本物の葉を見てごらん。前のプリントに貼ってあるでしょ。」

 ※生徒の興味関心が十分に高まっている場合は、イチョウよりも原始的な維管束がないコケ植物や藻類(水中生活する植物)の存在を1分程度で紹介しても良い。今回の授業実践では、全クラスで簡単に紹介した。ただし、シダ植物(維管束をもつ、胞子でふえる)の存在はあえて触れない方が良い。


上:開放系から閉鎖系へ発達した維管を説明するための板書(クリックすると全体図)
 黒板右端のピンクは、ツバキの葉の横断面の作り方を示したもの。ツバキの葉は、全体が反り返っている。中心部が太いのは、中心の太い葉脈があるからで、それは維管束に他ならない。維管束は葉において葉脈という名称にかわる。また、枝分かれした細い葉脈が横断面で観察されることも赤で示している。

(7) 2つの生徒実習の同時進行
 以下のAとBを同時進行させました。実習時間20分強になってしまい、余裕を失ったからです。理科室の窓から見えるイチョウを確認し、自由に行かせることにしました
  実習A 3種類の葉の採取→観察→標本づくり
  実習B ツバキの葉の横断図の顕微鏡観察

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上2枚:協力して葉を採取する生徒達(2012年5月17日)


上:ササを採取する生徒

右:A君の学習プリント

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上:B君の学習プリント


上:顕微鏡でツバキの葉を観察する生徒

(8) 野菜の維管束の観察
 授業の初めに赤インクにつけておいた野菜の観察です。


上:レタスの葉の葉脈
 短い赤い糸のように見えるものは、維管束そのもの。レタスは網状脈。


上:キュウリの果実(子房が発達したもの)の中を走る維管束


上:学習プリントに添付された水分たっぷりのダイコンの根
 他の生物が繁殖する前に乾燥ダイコンになることを願っております!


上:B君の学習プリント


授業を終えて
 赤インクを使う実験は、軽く扱うことにしました。10年ぐらい前は本気でやっていましたが、今は葉脈の発達を教えるほうが面白いからです。生徒はどちらも面白いと思いますが、インクの面白さは小学校へお譲りしたいと思います。次の教科書の全面改定は10年後になると思いますが、全国の出版社の皆様、よろしくお願いします。文部科学省の締め付けが再開するとできなくなると思いますが、内容的には小学校レべルだと思います。小学生が楽しめるものは、どんどん降ろしていき、逆に、小学校では難しいと思うものは上げてきてください。

関連ページ
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・ 観察11 維管束 1年(1999年)
・ 維管束の別の実験例のページ
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上
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実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第8章 進化と分類  野菜の維管束を調べよう
 雑草で調べる葉脈と根の関係
 p.143
 p.144〜p.145
第1章 生命とは何か   顕微鏡を使うときのポイント
 一般的なプレパラートのつくり方
 科学的スケッチの書き方
 p.21
 p.22
 p.22

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観察10 維管束の顕微鏡観察

→ 第12時
観察12 蒸散、いろいろな植物の気孔

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