このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第12時
観察12:蒸散、いろいろな植物の気孔

     2012 5 18(金)
     2012 5 21(月) 日食:6.18- 7.30(金環日食)7.33- 8.57
     理科室

はじめに
 今日は初めて一時プレパラートをつくります。上手くできるか分かりませんが、チャレンジしてもらいます。次時は作り方を復習し、生徒全員が自分で美しいプレパラートをつくることを目標にします。試料は植物表皮にある気孔です。

 それから、授業の前半は蒸散について机上の空論をします。今日は本当の空論ですが、テスト直前は実践を行います。実践といっても、点を取るための練習問題を解くための実践ですが、点を取ることは金を稼ぐことと同様、生きていくために必要なことなので仕方ありません。蒸散実験は教科書にありますが、今回は実物を見せた上での思考実験にする予定です。


上:葉の表皮をとり、プレパラートをつくる生徒


本時の目標
1 ヒトの心臓に相当するはたらきとして、蒸散を理解する
2 ワセリンの特性と蒸散実験の方法を知る
3 自宅からいろいろな植物を持参する
4 一時プレパラートの作り方を知る
5 植物表皮のプレパラートをつくり、気孔を顕微鏡観察する

 ※5が達成できた生徒は技能評価『A』

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧
  • いろいろな植物
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ワセリン
  • 光学顕微鏡(1/人)
  • 光源(1/班)
  • スライドガラス
  • カバーガラス
  • カッターナイフ
  • 柄つき針
  • A・Aピンセット


授業の流れ

(1) 始業のあいさつ、本時の内容紹介

(2) ヒトと植物の循環システム
 「(黒板にヒトの図を描き、その中に赤いハートを加えて)これな〜んだ? ・・・そのとぉ〜り! 心臓です。じゃあ、心臓のはたらきは何? ・・・え、ドキドキするため?? うん、心臓はドキドキするけれど、とくにドキドキするはとくにアレするためだけど・・・はい、そうですね。血液を送るためです。ということで、(心臓を通る赤い輪を描いて)こんな感じで全身を巡る血管を描いてください。学習プリントを見てください。ヒトの絵が印刷してあるので、同じように簡単に描いてください。(ほぼ全員が筆記用具を出し、描いたことを確認してから)プリントを見ると、ヒトの隣に植物の絵があります。植物も同じように水や養分を通す管、血管じゃない管の束、維管束があるけれど、心臓はないよね。ちょっと聞いておこうか。植物の心臓を見たことある人? ・・・え、A君見たことあるの? ・・・なんだ、冗談か。ということで、植物には心臓がないけれど、植物は、高さ100mまで水を運ぶことができます。人間の心臓では絶対にムリな力です。100mといったら、運動場の半分ぐらいの距離で、それを真上に運ぶのですから、物凄い力です。では、ここで問題! 植物の水は、どうやって水を運ぶのでしょう? ・・・(挙手がない場合)ヒントですか。そうですねえ。水がなくならから、あるいは、水が出ていくからその分だけ水が吸い上がるんだけど、そのはたらきを何と言いますか? ・・・え、一気に3人の手が挙ったけれど、他に知っている人? 2人追加ですね。では、5人そろって答えてもらいましょう。先生の合図でハモってください。外れた人は失敗かな? 大きな声でお願いします。『先生:植物の水が根から吸い上げられる原因は』・・・『生徒5人:じょうさん』・・・はい、綺麗にハモりました。全員、正解です! (黒板に平仮名でじょうさん、と書いて)ではみなさん、漢字で蒸散と書いてください。自分のプリントに書けた人の中から先着1名、黒板に書きにきてもよろしい! ・・・(後略)」


上:ヒトの植物の循環システムに関する板書

(3) 蒸散量を調べる実験
 教科書を開かせ、葉の裏、葉の表、茎からの蒸散量を調べる実験方法を紹介します。キーワードは、対照実験、ワセリン、油です。その他、この問題は、次回定期テストで唯一といえほどレアな計算問題を作成できるものなので、それを紹介します。ただし、今日の授業は数字には一切触れません。実験の方法について、本当に簡単に触れるだけです。

(4) ワセリンの紹介
 事前に、理科準備室から敏に入ったワセリンを取り出しておきます。

 「みなさんに、ワセリンを紹介しましょう。(ワセリンの茶色い瓶を全員が見えるように持ち上げて)これです。茶色い瓶に入っているのは、光から守るためです。蓋を開けると、白いクリームみたいな、油みたいなものがはいっています。(おもむろに、ワセリンを指に取り、それを反対側の手の甲に塗りながら)潤います(ハート) ワセリンは全ての化粧品に入っているともいえる保湿材です。家に帰ったらお母さんの化粧品の成分表示を見てください。入っているものがたくさんあります。(さらにワセリンを腕に伸ばしながら)先生の肌はちょっとお年ですが、これを塗ってしばらくするとすべすべになります。皮膚から出てきた自然な水分を保つからです。外部からの雑菌や外敵からも皮膚を守ります。塗り薬には100%入っている、といえるもので、塗り薬に含まれる薬は、ワセリンに薬を錬り込まれたものです。錬り込む薬の量によって、強い薬、弱い薬になるわけです。とうことは、ワセリンは薬にも毒にもならない、ほぼ全ての人が安全に使うことができる物質です。値段も安く、副作用もないので、お肌が弱い人にはお勧めです。では、ワセリンを自分の肌に塗ってみたい人、前に出てきなさい。手の甲と甲を合わせるようにして伸ばすと、手の平がべたべたしません。」


写真右:ワセリンを塗る生徒達
 クラスの雰囲気にもよりますが、ノリが良いクラスは半分ぐらい出てきて行列をつくります。

「ということで、植物の表面にワセリンを塗れば、その部分からの水分の蒸発がなくなる、とうことです」

(5) プレパラートの制作実習
 一時プレパラートの作り方を.3分程度で簡単に紹介します。内容は、別ページ『プレパラートの作り方』をご覧ください。


上:プレパラートの作り方の板書


上:持参したキャベツ、レタス、ニラを準備する生徒


上:ジンチョウゲの葉の表皮を剥ぎ取ったもの


上:正門横に大量に生えているユリの仲間の葉
 単子葉植物の葉は、簡単に表皮を剥がせるものが多い。


上:学習プリントンの上で一時プレパラートをつくる生徒


上:顕微鏡を観察する生徒


上:同上


授業を終えて
 プレパラートづくりが始まると途端に忙しくなり、写真を撮る余裕がなくなりました。各クラス5人ぐらいの生徒が素晴らしいプレパラートを作り、実験観察の技能『A』の判定をもらっていました。見れなかった生徒は、できた生徒の顕微鏡を一目見せてもらうことで、次時の目標物が明確になったと思います。次時は、本時と同じように自宅から植物を持参し、理科室に移動した人から顕微鏡、光源、スライドガラス、カバーガラスを準備し、植物細胞の観察をするように指示しました。


上:上:教師用実験台の上に置かれたスライドガラスとカバーガラス(ろ紙の上)
 生徒は自由にスライドガラスとカバーガラスを持っていくことができます。割れたガラスは、先生に一言申し出てから専用のごみ入れに捨て、新しいものを持っていきます。

関連ページ
 観察7 気孔のはたらき(蒸散) 1年(2002年)
 観察8 葉、気孔(顕微鏡) 1年(1999年)
・ プレパラートの作り方若手教師のためのワンポイントレッスン

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第8章 進化と分類 生体内の液体を一定に保つシステム p.142
第2章 細胞の構造とはたらき 植物が呼吸するための穴『気孔』 p.44〜p.45
第1章 生命とは何か 顕微鏡を使うときのポイント
一般的なプレパラートのつくり方
科学的スケッチの書き方
p.21
p.22
p.22

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観察11 いろいろな植物の維管束

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観察13 いろいろな植物の細胞 

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