このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第13時
観察13:いろいろな植物の細胞2012 5 22(火)、23(水)
理科室はじめに
本時は『実習:プレパラート作り』の2時間めです。目標は全員が美しいプレパラートをつくること、正しい顕微鏡操作で植物細胞を見ることです。これは生徒の目標であると同時に、私自身の目標です。そもそも、すべての授業において生徒と先生の目標は一致していますが、私は生徒実習にこだわってるので、何としても全員ができるように頑張ります。それから、本時のタイトルは『いろいろな植物の細胞』にしました。本当は、細胞を教えてから気孔や葉緑体、という順序が良いのですが、学習指導要領がそのようにできていないので仕方ありません。今日ここでタイトルに『細胞』を入れ、植物は小さな細胞が集まってできていることをおさえました。どのように考えても、細胞を教えなければ顕微鏡観察する意味がありません。先生これ何? の連発になります。「いろいろな形の細胞がある」「同じ植物でも、からだの部分によって形もはたらきも違う」「植物の種類が違えば、細胞も全く違う」この程度のことは教えなければいけません。さもなければ、気孔をつくる『孔辺細胞』、および、細胞内小器官『葉緑体』が行う光合成を1年生で教えるべきではありません。次回の学習指導要領改定は10年後かな? よろしくお願いします。文部科学省がんばってください。もちろん、もっと早く改定しても構いません。現場は大変になりますが、日本の将来をつくる子どものためなので頑張ります。誤りは1日でも早く訂正しましょう。大切なことは、間違いに気づいたらすぐに訂正することです。
上:植物は無数の細胞からできていることを示した板書
この図は教科書にあるものの写しです。葉の横断面と縦断面を同時に示した大変よいもので、この他に茎と根の図も1枚ずつあります。しかし、それが多様な細胞があることを本文で明示できないので、残念な結果になっています。以下は、今年度完全実施の学習指導要領の内容から、理科に関するもののタイトル、細胞、細胞より微細なもの、細胞レベルより深い内容のものを取り出したものです。1年:植物の生活と種類
ア 生物の観察
イ 植物の体のつくりと働き
(ア) 花のつくりと働き
(イ) 葉・茎・根のつくりと働き
いろいろな植物の葉、茎、根のつくりの観察を行い、その観察記録に基づいて、葉、茎、根のつくりの基本的な特徴を見いだすとともに、それらを光合成、呼吸、蒸散に関する実験結果と関連付けてとらえること。
ウ 植物の仲間2年:動物の生活と生物の変遷
生物の体は細胞からできていることを観察を通して理解させる。また、動物などについての観察、実験を通して、動物の体のつくりと働きを理解させ、動物の生活と種類についての認識を深めるとともに、生物の変遷について理解させる。上で示したように、細胞という語が初めて使われているのは、2年生で学習する『動物の生活と生物の変遷』です。しかし、細胞は中学生1年生が光学顕微鏡で十分に観察できるものです。さらに、細胞は肉眼と顕微鏡レベルの視点をつなぐ重要な鍵です。私は、以下の3点をくり返し提案します。
(1)細胞は1年からしっかり教えること
(2)細胞は視点を深めながら全学年でくり返し観察すること
(3)生物の調べる重要な鍵の1つとして、細胞を位置づけること
本時の目標
1 植物のからだは無数の細胞が集まってできていることを知る
2 細胞の形、大きさ、はたらきは様々であることを知る
3 美しい一時プレパラートの作る
4 正しい顕微鏡操作で一時プレパラートを観察する準 備
生 徒 教 師
- 筆記用具
- 教科書、理科便覧
- いろいろな植物
- テッシュペーパー
- 本日の学習プリント (1/人)
- 光学顕微鏡(1/人)
- 光源(1/班)
- スライドガラス
- カバーガラス
- カッターナイフ
- 柄つき針
- A・Aピンセット
- ろ 紙
授業の流れ
(0) 始業前
理科室に移動した生徒から顕微鏡、光源、スライドガラス、カバーガラスを準備させました。そして、自宅から持参した植物を観察するように指示しました。(1) 始業のあいさつ、本時の内容紹介
顕微鏡や光源などの準備で生徒が大きく動いている場合、始業のあいさつのタイミングを遅らせます。また、プレパラートづくりで生徒が非常に集中している場合、起立を省略して静かな声のあいさつにとどめます。あいさつのために集中力とやる気を削ぐのは本末転倒です。生徒と先生の気持とやる気と目標が1つになっていれば、いきなり本番に入るのが正解です。(2) 植物のからだは無数の細胞からできている
初めに、植物のからだは無数の細胞からできていることを教えます。学習プリントに教科書の図3枚をコピーしておき、その見方を教えます。まず、葉を縦や横に切った断面図になっていること。その次に、部分によって細胞の形や大きさやはたらきが違うことです。さて、生徒は前時にプレパラートを見ています。細胞を明確な観察できた生徒は少ないのですが、ごちゃごちゃな小さなものや粒が無数にあったことは観察できています。授業現場では、その経験を活かして、次のように話すと良いでしょう。「プリントを見てください。3つの図がありあす。これは教科書のコピーで、左から順に葉、茎、根です。じゃあ、葉、茎、根、と書いてください。・・・(予備のプリントに赤チョークで葉、茎、根と記入し)位置を間違えないように書いてください。書けた人から教科書p.38を開いてください。先生がコピーした葉の図があります。」
「(生徒全員が間違いなく記述したことを確認して)この図のポイントは葉を2つの方向から切っていることです。縦と横です。ツバキの葉を観察したことを覚えていますか。市販のプレパラートです。綺麗な色になっていてものです。・・・はいはい、思い出したようですね。あれは、横に切ったもので、薄く切断するのは非常に大変です。で、この図を良く見てください。縦にも切ってあります。皆さんは表面の表皮をはがすだけですが、これは縦と横に切る、という難しい切り方を2つした時の図です。それを黒板に書くと、(写真下の『葉をつくる細胞』を左上から描きながら)・・・」
「細胞は、縦に並んでいたり横に並んでいたり、太かったり細かったり、中に葉緑体がたくさんあったり少しだったり、水を通す管をつくっていたり栄養を通す管をつくっていたり、気孔をつくっていたり、いろいろあります。昨日、顕微鏡で観察してごちゃごちゃだった人は、これらを全部一緒にしたからごちゃごちゃだったわけです。一番良く見えるようにするためには、1種類の細胞だけを取り出してプレパラートにすれば良いわけですね。おっと、細胞細胞と先生は言ってしまいましたが、細胞って知っている人? 小学校で習った人はどれぐらいいますか? ・・・なんと! ほぼ全員が習ったようですね。細胞は、小さなものでいろいろなものがあって、それが集まって生物をつくっています。これはヒトも同じで、例えば、(先生の皮膚をつまんで)これを顕微鏡で見ると、皮膚をつくる細胞や毛をつくる細胞が見えます。ヒトの皮膚の細胞は約10列、10層ありますが、その下には脂肪がたくさんある細胞、筋肉をつくる細胞、骨をつくる細胞、血液をつくる細胞、その他には脳細胞、心臓をつくる細胞もあります。植物ももちろん同じです。教科書の図を見ると、先生の皮膚にあたる細胞は、表皮細胞、ということになっています。とりあえず横に1列、その下に縦に2列、合計3列になっていますが、これは模式図なので、本物は植物によって全て違います。その他、この図には、動管、師管、維管束、気孔、孔辺細胞、水蒸気などのキーワードがあります。では、みなさん、教科書をみて、キーワードを書き込みなさい。全く同じように書けばよろしい。質問は? ・・・では、始め!」
上と同じようにして、茎と根の模式図について、いろいろな細胞があることを教えます。教えていく過程で、生徒は『試料を薄くしなければいけない』ということに気づきます。これは細胞レベルの視点が養われたことを意味します。その視点やイメージをもって、次の『実習:プレパラートづくり』に入ります。
上:教科書を見ながら、学習プリントに重要語句を記入する生徒
上:細胞レベルの根の模式図に重要語句を記入する生徒
上:A君の学習プリント(3) プレパラートの制作実習
一時プレパラートの作り方は指導済みなので、基本的に教えません。実習時間は30分近くあるので、できない生徒はできる生徒の操作を見て学びます。初めは自分のことで精一杯ですが、先生から合格印をもらうと、自然に教えあうようになります。先生は、顕微鏡で美しいプレパラートを正しい操作で観察できた生徒を点検してまわります。「それでは、ここからは実力勝負です。全員、個人プレーでお願いします。美しいプレパラートができたらA、正しい顕微鏡操作ができたらAです。2つAがそろったら終了で、あとは好きなものを自由に観察してよろしい。なお、今日は全員に2つのAをあげることが先生の目標です。お互いがんばしましょう。プレパラートの作り方を確認して欲しい人はいますか? ・・・ゼロ! 素晴らしい! できるだけ薄くすること、水を吸い取ってカバーガラスで圧縮するようにすることがポイントです。何か質問は? ・・・始め!」
上:左から順に、生徒が持参した植物名、持参証明印、プレパラート技能A、顕微鏡技能A(4) プレパラートの制作の特別演示
終業10分前になってもプレパラートができない生徒を前に呼び出します。そして、プレパラートの作り方を初めから最後まで教えます。
1) 葉の引きさき方
2) 薄い部分の見分け方
3) 薄い部分の切り取り方
4) 不要な部分の見きわめ方
5) 不要な部分の捨て方
6) 水1滴の加え方
7) カバーガラスのかけ方
8) 不要な水の吸い取り方
9) 水を吸い取り過ぎた時の加え方
10) 適切な水量の見極め方
授業を終えて
今日は、前の時間よりも忙しくなりました。全員合格という目標は達成できませんでしたが、95%以上合格でした。合格できなかった生徒も、いくつかのステップはできるようになりました。関連ページ
・ プレパラートの作り方(若手教師のためのワンポイントレッスン)実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』
第1章 生命とは何か 食卓にならぶ多細胞の植物
顕微鏡を使うときのポイント
一般的なプレパラートのつくり方
科学的スケッチの書き方p.18〜 p.19
p.21
p.22
p.22第2章 進化と分類 植物が呼吸するための穴『気孔』 p.44〜 p.45
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演習14 1年理科1学期中間テスト