このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第8時
観察8:双子葉植物の種子、果実、からだ

     2012 5 9(水)曇、正門→ 瑞穂公園→ 正門
     2012 5 10(木)晴、下駄箱→ 校庭→ 理科室

はじめに
 前時、単子葉植物のからだを調べたので、今日は双子葉植物です。双子葉植物の花のつくりは、すでに5種類サクラ(第1時)タンポポ(第2時)ナズナ(第3時)ツツジ(第6時)ノゲイヌムギ(第7時)を調べたので省略です。そのかわり、数週間前に花盛りだった野草の多くは種子や果実になっているので、それを観察させます。とくに、真っ赤なビイチゴは是非とも食べさせたいものです。ヘビイチゴは校内にないので、瑞穂公園で採取させます。ただし、本時のメインの目標は双子葉植物の『網状脈』と『主根と側根』です。欲張りすぎないようにしたいのですが、双子葉植物シロツメクサ(クローバー)も探させさたいので・・・と思いながら瑞穂公園で実習したのですが、生徒が十分にまとめることができたのか不安だったので、他のクラスは次のように変更しました。

 採取場所は校庭、ターゲットは(1)ヨモギの主根と側根、(2)カラスノエンドウの果実(種子)、(3)カタバミの果実(種子)、(4)サクラの葉(網状脈)です。なお、前に瑞穂公園で学習したクラスは、これと入れ替えで次の時間に同じ授業を行います。


上:下駄箱の裏で双子葉植物を採取する生徒(2012年5月10日)


本時の目標
1 双子葉植物ヨモギの根、葉、果実を種子を採取する
2 双子葉植物=主根と側根=網状脈、が多いことを知る
3 カラスノエンドウの種子を果実を調べる

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • セロハンテープ
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ(1/人)


授業の流れ
(0) 始業前、下駄箱に集合させる

 前時と同じです。(理科係を通して、下駄箱に集合するように連絡しておきます。理科の教科書やファイルなどの道具は、時間に余裕があれば理科室、なければ下駄箱の上に置かせます。下駄箱では体育科の授業で学習した背の順に整列させた方が良いですが、スペースがなければ構いません。ただし、学級委員に点呼をとらせてください。集合・点呼が終ったら、その場で始業のあいさつをすることが理想ですが、他クラスの迷惑になる可能性があれば、適切な場所へ移動してください。)

(1) ヨモギの主根と側根
 「前の時間は単子葉植物を調べましたが、今日は双子葉植物を調べます。まず、根の特徴を調べるので見ていてください。(背丈70cmほどのヨモギを数本、根こそぎ引き抜いて) これは何か知っていますか? (片手で葉をくしゃくしゃにして鼻につけて、「う〜ん、いい匂い。お餅に入れるとよさそう」と目を細めて鼻をくんくんさせながら)名前を知っている人! ・・・正解! ヨモギです。とても良い匂いがするので、全員、あとで確認してください。もちろん、匂いが嫌いな人もいると思いますが、これはよい匂いで、あんこの入った餅にいれたものをヨモギ餅といいます。」

 「さて、注目は根です。1本の太い根があり、太い根から細い根が生えています。太い根を主根といい、そこから出ている細い根を側根といいます。先生の髭が1本だけ太くて、それから細い髭が生えていたら凄いよね! こんな感じで(ジェスチャーを交えながら)大根みたいな1本の髭が生えていたら・・・、これは昨日話したかな?」

 「それから、ヨモギの葉も採取してきてください。理科室で葉脈を観察してもらいます。単子葉植物は平行脈でしたが、双子葉植物は網状脈です。ヨモギの葉は複雑な形をしていますが、その葉脈は網のようにつながっているので網状脈といいます。これも標本にします。」

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左:生徒が採取してきたヨモギの主根と側根
右:私が採取したヨモギを黒板にセロテープで添付したもの(根の構造に注目)

(2) カタバミの葉(網状脈)
 「次に、カタバミの葉を採取します。カタバミの葉は四葉のクローバーが1枚足りないような形、三つ葉の形をしています。カタバミも双子葉植物なので、葉脈は網状脈になっています。ちょと、あちらへ移動しましょう。カタバミがあるので、(約10m移動し、カタバミの群落から花が咲いているものを採取し、それを頭上に挙げて見せながら、)これがカタバミです。三つ葉になっていることを自分で確認してください。三つ葉は1つ葉が足りないように見えるので、『カタ葉ミ』ということもあるそうです。花があるのが見えますか。色は黄色、花弁は5枚、種子になっているものもあるので、採取できる人は採取してください。根元に近くにある、昔、花だったものです。種子のつくりは理科室で紹介します。」


上:生徒が採取してきたカタバミの葉、花

(3) カラスノエンドウの種子
 「次にカラスノエンドウを紹介しますが、すでに標本をつくった人もいると思います。前に瑞穂公園に行った時に咲いていました。カラスノエンドウの標本を持っている人? ・・・お、いますね。大変よろしい。持っていない人は、花も探して欲しいのですが、今はほとんど種子になっています。カラスノエンドウがある場所へ移動します。(約10m移動し、カラスノエンドウの群落から適当に採取し、それを頭上に挙げて見せながら、)これがカラスノエンドウです。花は紫色をしていたのですが、おっと、(小さな花を指で指し示して)これは枯れて乾涸びた花弁が引っ付いているだけですが、よく探せば1つ2つあるかも知れません。それよりも注目は豆です。(根元に近い大きな『さや(子房)』を取り)根元にいくほど豆は大きくなっていますが、これを分解すると(さやを2つに割って、その中にある種子を見せながら)種子が入っています。数は決まっていて、花弁やがくの数の2倍、つまり、・・・10個です。しかも、食べられます。(種子を取り出して頭上に挙げ、1つ1つ落としながら)後ろの人、種子が見えますか。小さな緑色の種子です。もうしばらくすると真っ黒になって人は食べられなくなりますが、今なら食べられます。もちろん好んで食べる人はいませんが、食べてみましょう。(ひと粒口にくわえ、しばらく生徒に見せてから、美味しそうにもしゃ、もしゃと食べ、「新鮮な野菜は最高です!」と言ってうなる) みなさんも旬の野菜を食べてみてください。


上:カラスノエンドウの果実を開き、種子が見えるようにしたもの
 種子は9個しかないように見えるが、よく観察すると、左から3個目の次に小さな未成熟の種子がある。

(4) サクラの葉
 
「最後にサクラの葉を採取しましょう。サクラの葉は、とても綺麗な網状脈なので1枚お願いします。先生からの説明は以上です。何か質問はありますか? ・・・(ないことを確認して)解散!」

(5) 双子葉植物の採取
 生徒は思い思いの場所で採取を始めました。短い生徒は10分、遅い生徒は15分で理科に移動しました。前時の単子葉植物より時間がかかったのは、主根を掘り出したり、カラスノエンドウの種子を食べていたからです。


上:大きなノゲシの主根を掘り出そうとしている生徒達


上:採取したノゲシ(中央上)やススメノエンドウを見せあう生徒達

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左:大きなヨモギとノゲシの根を片手に持ち、カラスノエンドウの種子を調べている生徒
右:思い思いの植物を採取した生徒

(6) 双子葉植物の観察実習
 最後の生徒が正門から移動したことを確認して理科室に戻ると、生徒達はそれぞれ観察実習を始めていました。


上:ヨモギの根についた土を落とす生徒


上:左から、カラスノエンドウ、ヨモギ、カタバミ


上:ヨモギの葉を添付し、その網状脈をスケッチした生徒のプリント


上:カラスノエンドウの葉の網状脈をスケッチする生徒


上:カタバミの黄色い花が成熟してできた果実(種子が入っている)


板書例 

上:板書(画像をクリックすると拡大)


生徒3人の学習プリント


上:A君の学習プリント


上:Bさんのプリント(クリックすると拡大)


上:C君のプリント(クリックすると拡大)


授業を終えて
 かなり盛り沢山になってしまいました。欲張らないようにしたいのですが、ついつい色々教えたくなってしまうので反省することしきりです。生徒からの質問をゆったりと待つようにしたいと思います。そらから、今日の授業のハイライトをここで紹介します。

双子葉植物の定義を指導する方法
 指導する予定はなかったのですが、カラスノエンドウの種子の子葉を教えました。D君が大きな声で「豆の中に豆がある!」と叫んだからです。彼に声はクラスに大きなインパクトを与えました。私はすかさず「D君が大発見をしたので、このクラスだけに紹介します」と言い、下の写真左のように板書しました。

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左:カラスノエンドウの種子の内部構造を示した板書
右:カラスノエンドウの種子の子葉や芽をルーペで探す生徒

 そして、D君が発見したのは小さな芽(幼芽)であること、種子は「ぱかっ」と2つ分かれること、2つに分かれたものこそが2つの子葉、すなわち双子葉であること、を教えました。双子葉植物の名前の由来は、種子が発芽したときに子葉2枚が出ることです。こんな教え方もあったんだ、とD君の叫び声に感謝した事件でした。もちろん、他の生徒もD君に負けないように本気で観察していました。

関連ページ
・ 観察5 根と葉脈と子葉 1年(2002年)
・ 観察10 葉脈と根のつくり 1年(1999年)
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第1章 生命とは何か   観察の基礎  p.20
第5章 花と植物   花が種子になるまで
 胚(種子、果実)を探そう
 p.96〜p.97
 p.98〜p.99

第7時 ←
観察7 単子葉植物の花、からだ

→ 第9時
観察9 5月中旬の瑞穂公園

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