このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第6時
観察6: ツツジの花のつくり

     2012 5 2(水)雨
     第1理科室→ 屋外→ 第1理科室

はじめに
 校庭のツツジが満開になりました。ゴールデンウィーク前は蕾だったのですが、大型連休前半の暖かさで一気に開花したようです。今日は生憎の雨ですが、ツツジの花は雨でも開いたままので、観察することにします。生徒達は、すでにサクラ、ナズナ、タンポポ、マツの花を観察しているので、今日はもう少し詳しく調べさせようと思います。とくに、蕾を保護する役目をする『苞(ほう)』を採取させます。第3時でタンポポを区別するものとして『総苞』を教えましたが、今日の学習でそのはたらきや位置がより明確になると思います。また、これだけでは時間が余るので、種子植物を4つに分類する方法を教えます。

 また、晴天ならツツジの前に集合させ、その場で採取する観点を説明しましょう。時間短縮になるだけではありません。先生が採取する現場を見ることは、生徒にとって最高の学習です。「これは蕾だから・・・これはまだ雄しべが成熟していないから・・・お、これは白い花粉が出ているから凄いぞ!・・・これは雄しべが1本足らないなあ・・・これは綺麗だけど花弁が変型して5枚に見えないから・・・」など、たくさんの観点を教えながら採取の演示をしてください。採取方法がより適切になります。


上:雨の中、校庭のツツジの花を採取する生徒(2012年5月2日)


本時の目標
1 ツツジの花を採取する観点を知る
2 ツツジの花を採取する

 ※とくに、苞(ほう)に着目して採取する
3 ツツジの花を分解し、そのつくりを調べる
4 種子植物を4つに分類する方法を知る

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • セロハンテープ
  • 傘(教室前の傘立てから)
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ(1/人)
  • ツツジの花(提示用を3つ)


授業の流れ
(0) 始業前の準備

 教師用実験台に置かれた学習プリントをもって座席につきます。ルーペは、授業中に準備します。

(1) 本時の流れの説明
 「(ツツジの花を見せながら)この花は何ですか? ・・・そうですね。ツツジです。今、満開のツツジです。この花を見たことない人はいますか? ・・・あれ! いますね。学校の中にも咲いているけれど、どこにあるか教えてくれる人? ・・・そうだよね。正門に咲いています。野草の多くは雨になると閉じていますが、ツツジの花は雨でも咲いています。ということで、今日は10分後に傘をさしてツツジの花を採りにいきます。それまでの10分間は、どのような点に注意して採取したら良いか確認します。」

(2) ツツジを採取するときの注意点
 「では、ツツジを採取する時の説明をします。まず、1人3つまでにしてください。ツツジさんのことや他のクラスの人のことを考え、よく見てよく選んでから3つまでとします。間違えて採ってしまったものは仕方ありませんから、ノーカウントして追加しても構いません。まず、よく見て欲しいのは花弁の模様です。ツツジの花弁は5枚が合体して1つになった合弁ですが、よく成熟した花の花弁は、1枚だけ物凄い模様ができています。しかも、その花弁の中心部は極端に凹んでいて、その下に蜜があります。花弁の模様は虫を誘き寄せる印になっている訳です。(時間に余裕があれば、模様がある理由を質問形式にする)

上:採取したツツジの花弁を観察する生徒
 写真の右下にぼんやり写っている5つの緑色の物体は『がく』

 「次のポイントは『がく』ですが、その数は5枚です。まあ、がくは確認しなくても大丈夫だと思います。次に、雄しべは重要です。何本だと思いますか。教科書で確認しましょう。はい、教科書を開いて! ・・・ということで、10本です。このうち1本だけは極端に短くなっていることがあります。その雄しべの位置は、模様がある花弁と一致しています。これも虫を誘き寄せるための工夫です。さらに雄しべは、その先端に注目してください。雄しべの先端は『やく』といって、あるものを作っていますが、何でした? ・・・そうですね。花粉です。実は、ツツジの雄しべのやくは2つの穴があり、それぞれから花粉が出ています。小指を出して、先端を優しくタッチしてみてください。白い花粉がつながって出てきます。5mmぐらいつながって、白い糸のように見えますが、教室に戻ってからルーペで見れば、小さな粒であることがわかります。5mmは小さくて短いように見えますが、(親指と人さし指で5mmの間隔をつくって、それに目を近づけて凝視しながら)こんなにあるんですよ。すごい量です。」

 「雌しべは花の中心に1本だけあります。雄しべよりも、どれよりも1番長くなっています。その先端はこんな感じで(黒板に五角形のような柱頭を板書して)五角形になっていて、漢字の『大』の字があるように見えます。これは理科室に戻ってからルーペで観察しましょう。」

 とうことで、ツツジはがく5枚、花弁5枚、雄しべ10本、雌しべは1本ですが先端が五角形ということで、5の倍数が基本です。

右:ツツジの雌しべの柱頭

 「ここまでの雌しべ、雄しべ、花弁、がくは学習したことですが、今日はもう1つ追加します。(黒板に『苞』と書いて)何と読むか分かりますか? ・・・よく読めましたね。草かんむりに『ほう』、包むと書いて『ほう』です。苞は、花になる前の蕾を覆っていたもので、2枚あります。今は役目を終えて下に落ちていることがほとんどですが、それを見つけてきてください。拾っても良いですよ。色は枯れてしまって茶色。触ると、べたべたしています。・・・え、蜜ではありせん。蕾や花を狙う昆虫やアリなどから守るためのもので、良く見ると小さな昆虫が着いていることがあります。ゴキブリホイホイみたいなものです。ツツジを採取するためのポイントは以上ですが、教科書を一目見ておきましょう。(全員教科書を開いたことを確認してから)綺麗にまとめてありますね。みなさんには教科書以上のことを説明しましたので、教科書よりも素晴らしいものを作ってください。何か質問はありますか。では、解散!」

(3) ツツジの採取
 生徒は傘を持ち、下駄箱で靴にはきかえ、正門へ向しました。私は傘を持たずに玄関に移動しました。そして、玄関のひさしの下で、生徒からの質問を受けつけました。
 「何か分からないことがある人は、質問に来なさい!」
 (数分後)
 「採取できた人から理科室に戻り、観察、標本づくりを始めなさい!」


上:採取したツツジを私に見せて確認する生徒達

(4) ツツジの花の観察実習
 最後の生徒が正門から移動したことを確認して理科室に戻ると、生徒達はそれぞれ観察実習を始めていました。


上:ハンカチの上に濡れたツツジをおいて分解する生徒


上:1つになった花弁のどの部分を引き裂くとわかりやすくなるか、工夫しながら実習する生徒


上:ある生徒が発見した、がくに付着した小さな黒い昆虫


上:雌しべの下部を『子房』という。この子房はたくさんの白い毛が生えている。この毛のはたらきは大切な子房と保護することであるが、子房に限らず、大切なものには毛が生えていることが多い。ヒトの頭髪も同じである。と話をすると、生徒達は喜ぶ。


上:学習プリントに展開した花弁。画面中央には雌しべ1本、その左に雄しべ7本が写っている。雄しべは10本のはずだけれど・・・


上:柱頭について記述する生徒


上:学習プリントいっぱいにツツジを添付した生徒。2つの花を使用している。


上:苞の内側を外側の違いをまとめた生徒

(5) 種子植物を4つに分類する
 終業10分前になったら、種子植物の復習を兼ねて、次のような分類方法を紹介します。できるだけ簡単に行うことが大切です。ポイントは、キーワードを漢字で正確に書けるようにすることです。その他、くどくどと説明する必要は一切ありません。実物を使った実習、実物を使った確認作業に時間を使うべきです。また、ツツジの実習の前に行ったクラスもあります(とくに雨天時)。
種子植物の分類
被子植物 双子葉 合弁花 タンポポ、ツツジ
離弁花 サクラ、ナズナ
単子葉 チューリップ、イネ、ムギ
裸子植物 マツ、イチョウ、スギ、ソテツ

※一般に、上にいくほど進化した形態を持っている


生徒3人の学習プリント
 いずれも画像をクリックすると拡大します。
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上:板書(画像をクリックすると拡大します)


授業を終えて
 ツツジの採取方法を丁寧に説明したので、実際の採取にかける時間は3分〜5分になりました。短いように思いますが、ほぼ全ての生徒が明確な観点をもって花を選ぶことができた結果、短時間になったのだと思いました。


上:ツツジと傘を持って返ってきた生徒。お疲れさまでした。


上:学校の中庭に咲いていたハナミズキ

 終業1分前に「この花を知っている人?」と質問しましたが、誰も知らないので吃驚しました。現在、中庭に咲いていること、花のように見える部分は『総苞』であることを教えましたが、大丈夫だったかな? もっとたくさんの生徒が知っていると思ったので、もう一度教え直すか、スルーするしかないようです。どうしようかな。この『総苞』はタンポポの『総苞』と同じなんだけれど、蕾みをまもっていた沢山の『苞』なんですが・・・。 おお、名案を思いついた! ドクダミの白い花、すなわち『総苞』が開いたらそれを採取、標本にさせ、苞と総苞の復習することにしよう。ただし、これは教えなくても良い範囲だから無理しないようにね。楽しむことと感動することが目的だから、間違えないように!

関連ページ
・ 観察4 ツツジの花 1年(2013年)
・ 観察1 花のつくり(つつじ) 1年(2002年)
・ 観察5 花のつくり 1年(1999年)
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第1章 生命とは何か   観察の基礎  p.20
第5章 花と植物   花の構造とはたらき
 ツツジの花の観察
 p.88
 p.89

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観察5 裸子植物 マツの花

→ 第7時
観察7 単子葉植物の花、からだ

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