このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第5時
観察5:裸子植物 マツの花2012 4 26(木)、27(金)
第1理科室はじめに
今日のマツは、雄花だけが咲いるものです(写真下)。校内や瑞穂公園などいろいろな場所を探しましたが、雌花が咲いているものはありませんでした。ゴールデンウィークが終る頃には、雌花が咲き始めるでしょう。ただし、雄花は雌花と入れ代わるようにして朽ち果てるので、今のうちに雄花を調べます。そして、2週間後に散歩しながら雌花を観察する予定です。なお、授業日は雨のち晴だったので、私が雄花を採取してきました。それから、イチョウの雄花も大量に落ちていたので拾ってきました。
上:私が採取してきたマツの雄花の集まり(2012年4月27日)
これだけの雄花があれば、100人は十分に観察できます。もちろん、1人に1つ『雄花の集まり』を配付できます。
本時の目標
1 裸子植物の定義を知る
2 マツ、イチョウ、スギ、ソテツが裸子植物であることを知る
3 マツの花が種子になるまでを知る
4 マツの雄花の集まりを観察し、そのつくりをまとめる
5 マツの雌花のつくりを知る
6 受粉のしかたを知る
7 イチョウの雄花を学習プリントに添付する準 備
生 徒 教 師
- 教科書、理科便覧、ファイル
- セロハンテープ
- 本日の学習プリント (1/人)
- ルーペ(1/人)
- 雄花がついたマツ
- イチョウの雄花
授業の流れ
(0) 始業前の準備
教師用実験台に置かれた学習プリントをもって座席につきます。ルーペやマツやイチョウは、授業中に準備します。(1) 裸子植物とは何か
「今日のプリントのタイトルは何と書いてありますか? ・・・そうですね。らししょくぶつです。プリントにふりがなを書いてください。・・・黒板に『らし』と記述し、生徒が筆箱から筆記用具を出して書いたことを確認してから・・・では、裸子植物とは何か、みんなに説明できる人はいますか。・・・数秒間待ってから、黒板に『@@@が裸の植物』と記述して・・・裸子植物とは、@@が裸の植物なんだけれど、何が裸なの? 裸子植物なんだけど、この場合の『子』って何? ・・・(A君)「種子」・・・正解です。が、もう少し突っ込んでみましょう。種子ができる前は何だった? ・・・(Bさん)「花」・・・惜しい! 花のどの部分が『種子』になるんだった? これは次の中間テストに出題される可能性が高い重要ポイントなので、全員自分のプリントに書いてください。前の前の授業で習ったことです。最も重要、と説明した部分なので、しっかり書いてください。もちろん、漢字でなければ不正解です。では、どうぞ書いてください。・・・10秒間待ってから・・・では、自分のプリントの書けた人で、先着1名、黒板に書きに来てください。・・・先を争うようにして数名の生徒が席を立つ・・・(以下省略)」
裸子植物とは
- 胚珠が裸になっている植物
- 胚珠が子房に包まれていない植物
- 子房がない植物
- 果実ができない植物
- でも、種子はできる植物
- 原始的な植物
上:板書(2) 裸子植物の例
中学で学習したい裸子植物は、次の4つで十分でしょう。
・マツ(まつぼっくり、松かさ)
・イチョウ(銀杏)
・スギ(花粉症が有名です)
・ソテツ(理科便覧で確認しましょう)「中学で覚えて欲しい裸子植物は4つあります。裸子植物とは、原始的な花を咲かせる植物です。予習して知っている人はいますか? ・・・マツ! そうですね。本日の学習プリントのタイトルを見てください。今日は、裸子植物としてのマツを観察します。その他は? ・・・(A君)「ソテツ!」・・・ ソテツですか! ソテツという名前を聞いたことがある人? ・・・5人いますね。ソテツは南国ムード満点の植物ですが、後で理科便覧の写真で確認しましょう。その他は? ・・・(Bさん)「スギ」・・・ その通り。スギは花粉をたくさんばらまくので、花粉症の原因になります。・・・(C君)「イチョウ」・・・正解! ところで、イチョウの種子を何と言うか知っていますか? ・・・(Dさん)「銀杏」・・・その通りです。・・・えっ、酒のつまみですか! その通りですね。大人になるとたまらない美味しさです。茶わん蒸しに入っている黄色い大きな豆のようなものがイチョウの種子、銀杏です。」
(3) マツの雌花(の胚珠)が種子になるまで
上:板書
学習プリントには事前に、マツの雌花の集まり、雄花の集まり、1年前の雌花の集まり、2年前の雌花の集まりを印刷しておきます。学習プリントと同じ図を板書してから・・・「(雄花がたくさんついたマツを見せながら)これは何ですか? ・・・そうです。マツです。では、この茶色いものは何ですか? ・・・(E君)「雄花」・・・よく知っていますね。正解です。雄花はオスの花、男の花、雄しべのようなものです。正確には雄花ではなく、『雄花の集まり』といいますが、集まり、という意味はすぐ後に紹介します。」
「さて、この雄花は花粉をつくります。(マツを軽く叩きながら)・・・ほら、花粉が見えますか? ・・・「花粉症になる!」 ・・・確かに大量にあると花粉症になりますが、基本的に気のせいだと思ってください。ところで、このクラスには花粉症の人が何人いますか。花粉症の人は手を挙げてください。・・・え、ざっと10人いますね。花粉でなくてもチョークでも運動場の砂でも何でも、それが大量に目に入れば痛くなったり痒くなったりします。本当の花粉症の人は、どんなに少量でも赤くなったり痒くなったりしますから、敏感にならないことが大切です。先生も目が痒くなることがありますが、いつも気のせいだと思って、できるだけ掻かないようにしています。」
※雑談をすることで、雄花という言葉印象に残ります「では、プリントにもまとめましょう。(おばなの集まり、と板書して)・・・おばなを漢字で書いてください。お、を正しく書けますか。自分のプリントに丁寧に書けた人から先着1名、黒板に書きにきてもよろしい! ・・・数名の生徒が席を立ち、顔を見合わせて誰が書きに行くか話し合う。・・・中略・・・(マツをもう一度見せながら)ここには雄花しかありませんが、あと2週間もすると(雄花の中央から出ている突起を指しながら)ここが10cmぐらい伸びて、その先端に雌花が咲きます。理科便覧p21で確認しましょう。全員、便覧のp21を開いてください。・・・(ほぼ全員が開いたことを確認してから)雌花の写真を指で指してください。そうですね。p21の右上にある写真です。雌花が赤い色をしているのがわかりますか。はい、雌花を指差して! ・・・わからない人は周りの人が指差しているところを見てごらん。 ・・・全員わかったようですね。では、プリントにめばな、ではなく、めばなの集まり、と書いてください。漢字でめ、と書けますか。・・・中略・・・次に注目して欲しい部分は、雄花の集まりの下にある『ちょっと大きなもの』です。これは『1年前の女の子』です。女の子、というのは不正確ですが、印象深く覚えてもらうために女の子、としました。正確には『1年前の雌花の集まり』です。・・・えっ、おばあさん! ま、そんなところでしょう。でも、男の子は悲惨です。何しろ2週間ぐらいで終了ですからね。花粉をつくって出したら、枝から落ちて終了です。・・・女は強い! まあ、そんなところでしょう。男の子は頑張ってくださいね! では、プリントにまとめておきましょう。・・・(1年前の女の子『雌花の集まり』と板書して)・・・実は、1年前の雌花の集まりは、もう1年かけて『松ぼっくり』になります。種子になるまでに2年かかるわけです。プリントに松ぼっくりが印刷してあるのがわかりますか。・・・はいはいはい、わかったようですね。では、同じように松ぼっくりを1つ追加して書いてください。そして、そこに『2年前の雌花の集まり』と書きましょう。・・・後略」
(4) マツの雄花の集まりを観察し、そのつくりをまとめる
「本物の雄花のつくりを観察しましょう。先生が採ってきた雄花は花粉をほどんと出してしまったので、あと1週間もすると、(雄花の集まりを手で1つずつむしり取って、下に落としながら)こんな風に下に落ちてしまいます。あー、男子はちょっと残念ですね。でも、花粉をつくる仕事が終ったので、仕方ありません。(と、話をしながら40本ほどむしって落として)・・・いうことで、雄花は地面に落ち、やがて腐ってしまいます。ただし、先生が準備した雄花の集まりは、まだ少しだけ元気です。これから皆さんに観察してもらいますが、1人雄花を1つ選んで持っていき、ルーペで観察してください。そして、発見したことを書きましょう。必要なスケッチします。花粉をプリントに張るのも良いでしょう。理科便覧には雄花や雄花の集まりの構造が書いてあるので、比較しながら観察してください。やくと花粉がかけると最高ですね。何か質問がある人! では、解散。観察始め!」
上:教師用実験台に置かれたマツの『雄花の集まり』を選ぶ生徒ちょっと疲れましたので、簡単に記述します。
- ルーペで観察させてください。
- その1つ(雄花の集まり)は、たくさんの鱗(うろこ)があることを確認させてください。
- 鱗みたいなものが雄花(1つの雄花)です。
- 1つの雄花を鱗片(りんぺん)ということもあります。
- だから、1つのかたまりは雄花の集まり、というわけです。
- 鱗片を1つとり、裏返すと『やく』が2つあります。
- 『やく』は花粉をつくるところで、一般的な植物を同じです。
- 『やく』の中に花粉が入っているものもあります。
※以上を理科便覧の図や写真と比較させます。
※そして、スケッチさせたり、実物をセロハンテープで添付させたりします。
上:F君の学習プリントの一部
(5) マツの雌花のつくりを知る
雌花のつくりは、雄花とよく似ています。
- 雌花はたくさん集まっています。
- だから、雌花の集まりといいます。
- 1つの雌花を、雄しべと同じように『鱗片(りんぺん)』といいます。
- 1つの雌花には、2つの『胚珠』があります。
※2つの『胚珠』は、雄花の2つの『やく』と比較できます。- 胚珠はやがて種子になります。
- 種子になるには2年かかります。
- 種子は『まつぼっくり』の中にありますが、1つに2つずつ入っています。
- ゴールデンウィーク明けに『まつぼっくり』探しをするとき、種子が飛ばずに入っているものを探すことを予告します。
(6) 受粉のしかたを知る
学習プリントに雌花の集まりの断面図を印刷しておきます。その断面図を使って説明します。
- 断面図の見方を説明します。
- 胚珠と卵(らん)を着色させます。
※第3時の『花のつくりの図』を確認させ、同じ色を使わせると大変良い。- 子房がないことを確認します。
- 胚珠がむき出しになっていることを確認します。
- 胚珠が裸です。
上:第3時で調べた種子植物( > 被子植物)の花のつくり
- 花粉が風で運ばれることを知らせます。
- そのような花を『風媒花』といいます。
- 受粉した胚珠は、種子になることを知らせます。
- 松ぼっくりの種子は、かさの中に入っていることを再確認します。
上:G君の学習プリント
1番上の図だけ、事前に印刷しておきました。
(7) イチョウの雄花を学習プリントに添付する
「窓の外を見てください。何の木かわかりますか? ・・・葉っぱが十分にできていないので、分かりにくいと思いますが、あと1ヶ月もすれば全員知っている形の葉になります。・・・イチョウです。イチョウも裸子植物ですが、銀杏をつけるイチョウと銀杏をつけないイチョウがあることを知っていましたか? 銀杏をつける木は女、つけない木は男です。女の木と男の木があるわけです。・・・えっ、おかまの木はあるかって! ありません。でも、よく考えてください。ほとんどの花は雌しべと雄しべがありますよね。つまり、女と男があるわけですから、それをおかまというならおかまです。・・・ということで、女と男が別々になっている植物は、植物の世界では珍しいのです。動物は雌雄、メスとオスが分れているものがほとんどなので、(女子の列を指しながら)この列は女の子で、(男子の列を指しながら)この列は男の子ですよね。・・・ということで、さっき先生が男の木の下から拾ってきたものが『これ』です。(両手いっぱいに『雄花の集まり』を持っち、それをばらばらと新聞紙の上に落としながら)・・・何だと思いますか? ・・・そうです。雄花の集まりです。すでに花粉を飛ばした後で、仕事を終えてしまったものです。男の木(これを雄の株、雄株といいますが、、、)の下にはいっぱい落ちていましたが、女の木(すなわち雌の株、雌株)の下は何もありませんでした。しかし、雌株を見上げて葉っぱの近くをよく観ると、雌花があります。受粉した雌花は、秋になると銀杏になります。拡大写真は理科便覧にありますので、確認しておきましょう。・・・後略」
上:イチョウの雄花の集まりを選ぶ生徒たち
授業を終えて
1時間かけてたっぷり喋った気がします。原始的な植物、マツの不思議さを感じてくれたなら成功でしょう。マツとイチョウの雄花が似ていることにも気づいくれたと思います。本当は随分違いがあるのですが、裸子植物としての共通性を感じられれば、1時間目としては合格でしょう。
上:G君の学習プリントに添付されたマツの雄花の集まり(中央)とイチョウの雄花の集まり(右)関連ページ
・ 観察6 裸子植物 マツの花 1年(2013年)
・ 観察4 マツ・イチョウの花 1年(2002年)
・ 観察7 マツ、イチョウ 1年(1999年)
・ 科学的なスケッチの描き方(若手教師のためのワンポイント・レッスン)
・ ルーペや顕微鏡の使い方(同 上)実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』
第1章 生命とは何か 観察の基礎 p.20 第5章 花と植物 子房がない植物『裸子植物』
マツの花と種子の観察p.101
p.102〜p.103
第4時 ←
観察4 瑞穂公園の野草標本→ 第6時
観察6 ツツジの花のつくり