このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第3時
観察3:種子植物の花の一生

     2012 4 23(月)雨
     2012 4 26(木)雨
     第1理科室

はじめに
 雨が予想されたので、私が花を持ってきました。いろいろ探したのですが、ナズナにしました。種子は熟していませんが、成長していく種子が連続的にわかるからです。なお、傘をさして植物採取するのは大変ですが、土壌が弛んでいるので根っこからスポンと抜けました。主根と側根が綺麗に採取できましたが、今回は利用しません。

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左:出勤前に採取したナズナ (2012年4月23日)
右:同上 (2012年4月26日)
 わずか3日の違いで、ナズナの花はほとんど終り、種子になっていました。その間の火曜日と水曜日が今年初めての夏日だったことが原因の1つですが、それにしても大きな違いに驚きました。花が終っていただけでなく、下1/3の種子は弾け飛んでしまった後でしたからね。


本時の目標
1 種子植物
※1の定義を知る
 
※1花を咲かせ、種子をつくる植物
2 花のつくりを知る
3 花の一生を知る

(1)雄しべ(花粉)ができる
(2)雌しべ(卵)ができる
(3)花粉が雌しべの柱頭につく(受粉)
(4)雌しべの下部が成熟する
 (ア)卵  → 赤ちゃん
 (イ)胚珠 → 種子
 (ウ)子房 → 果実
4 ナズナの花が種子になっていく様子を調べる

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • セロハンテープ
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ (1/人)
  • ナズナ (1/人)


授業の流れ
(0) 始業前の準備

 理科室に移動した生徒は、教師用実験台に置かれた『本日の学習プリント』と『ルーペ』を1つずつ取り、自分の席につきます。

(1) 種子植物は、花を咲かせ種子をつくる植物
 「種子植物って何か知っていますか。知っている人? ・・・「(A君)その名の通り、種子をつくる植物です」・・・正解ですが、少し足らないことがあるので三角です。つけ足せられる人! ・・・(関係ない答えがいっぱい出る)・・・「うーん、ピントが合っていないのでヒントを出します。種子になる前、種子は何だった? ・・・そうですね。花でした。ということは・・・「(Bさん)花を咲かせて種子をつくる植物」・・・大正解です。」

(2) ナズナ、および、本時の授業内容の紹介
 「さて、今日は雨なので先生がある種子植物を用意してきました。 (ナズナを見せながら)この植物の名前を知っている人? ・・・そうですね。ペンペン草です。正しくはナズナと言います。雨の日は花が閉じているので良くわかりませんが、どこに花があるかわかりますか? ・・・そうです。てっぺんの白くなっている部分が花です。この花はやがて種子になりますが、ほら、見てごらん! 下にハート形をした種子がついていることがわかりますか。下にいくほど大きくなっていることがわかりますか。今は若い種子ですが、十分に成熟すると弾けて周りに飛び散ります。ということで、今日はナズナを使って花の一生を調べます。授業前半は一般的な種子植物の花のつくりをまとめ、後半はナズナの花が種子になる様子を調べてもらいます。もちろん、白い小さな花びらの数もかぞえてくださいね。」


上:ナズナ(月曜日の授業で使用したもの)

 「種子植物の例を10個出してから、一般的な種子植物の花のつくりをまとめます。では、書きましょう。まず、ナズナ。その他に知っている人? ・・・タンポポ、サクラ、いいですね。その他は? ・・・マツ? えっ、マツの花を見たことある人? ・・・いませんね。では、マツの種子を見たことある人? ・・・そうそう、松ぼっくりですね。種子があるということは、その前に花が咲いていたということですから、マツも花を咲かせます。実は、最近咲き始めましたので、来週調べましょう。マツは種子をつくりますが、果実をつくらない原始的な種子植物なのです。マツの他に、変わった花を咲かせる種子植物、意外な種子植物を知っている人はいますか? ・・・」
 ここまでの導入は『本時のねらい』に焦点を絞り、ゆったり進めるとよいでしょう。


上:もう1枚上の写真のナズナを採取してから3日後に採取したナズナ(木曜日の授業で使用したもの)
 多くの種子が成熟し、弾けとんだ後だったことがわかる。もう少し花が残っているだろうと予想していたが、ナズナは比較的弱い野草なのだろう。あっという間に花を咲かせ、種子をつくり、飛ばすタイプなのだと思った。なお、私が採取したのは雨の中だったが、それを職員室の私の机の下に置いておいたところ、ハート形の果実が2つに割れ、中から沢山の緑色や茶色の小さな種子が散らばってしまった。乾燥しているからだと思う。

(3) 花のつくりを知る ・・・5分
 花の中心から調べます。雌しべ(柱頭、花柱、卵細胞、胚珠、子房)、雄しべ(やく、花糸、花粉)、花弁、がく片の順です。できるだけ、さらさらっと教えます。実際の植物の花は多様で、単純な模式図に当てはまるものは限られていますからね。本物の花を1つでも多く観察させ、その各部を一般的な名称で示すことができるようになることが大切です。私の授業の目的はテストで点を取ることではありませんからね。
※別ページ『観察3花のはたらき1年(2002年)』も参考にしてください。


上:板書


上:私が準備した授業用プリントに、胚珠と子房を記入する生徒


上:教科書で花のつくりを確認する生徒
 ここで漢字を正確に抑えさせるようにしましょう。とくに、雌しべの『雌』、雄しべの『雄』、胚珠の『珠』。

(4) 花の一生を知る ・・・5分
(1)雄しべ(花粉)ができる
(2)雌しべ(卵)ができる
(3)花粉が雌しべの柱頭につく(受粉)
(4)雌しべの下部が成熟する
 (ア)卵  → 赤ちゃん
 (イ)胚珠 → 種子
 (ウ)子房 → 果実

上:板書
 ポイントは2つ。胚珠→種子、子房→果実です。そして、もっとも重要なのはナズナの種子に当てはめることです。すなわち、ハート形の部分は果実、ハートの果実の中に種子があることです。生徒は、ナズナの種子が果実であったことに驚きの声を上げました。私は、その中にいくつの種子があるか数えるように指示しました。答えは、・・・お楽しみに!

(5) ナズナの花が種子になっていく様子を調べる

上:ルーペで花弁の数をかぞえる生徒
 花弁とがくは、それぞれ4枚ずつあります。


上:ルーぺを使って観察する生徒


上:1人1本あるナズナで調べる生徒


上:木曜日の授業で、ハート形の果実と成熟して弾け飛んだあとの違いをまとめる生徒


上:A君の学習プリント(月曜日の授業)


上:Bさんの学習プリント(木曜日の授業)


上:板書1


上:板書2


授業を終えて
 同じような授業は、カラスノエンドウでも可能です。もちろん、種子植物なら何でもできます。その季節に応じた植物を選んで観察させましょう。

 おっと、ナズナの種子の数を教えるのを忘れていました。ハート形の左右それぞれ6個ずつで、合計12個です。今回のように十分に成熟していない種子を数えるためには、ルーペや双眼実態顕微鏡が必要でしょう。

右:ナズナでペンペンと音を鳴らす生徒
まず、種子の部分を下に引っぱり、ぶらぶらの状態にします。次に、それを両手に挟んで回すと「ペンペン」と音がなります。
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関連ページ
・ 観察3:花の一生(種子植物アブラナ) 1年(2013年)
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第1章 生命とは何か   観察の基礎  p.20
第5章 花と植物  花が種子になるまで  p.96〜p.97

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観察2 タンポポの花

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実習4 瑞穂公園の野草標本

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