このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第2時
観察2:タンポポの花

     2012 4 19(木)晴
     2012 4 20(金)雨
     第1理科室→ 屋外

はじめに
 中学生になって2時間の授業です。自分でも飛ばし過ぎと思うほどですが、今日はタンポポの花を調べます。ここ数日のうちに、一気にタンポポが開花し初めたことが原因の1つです。前時と同様、授業の後半に屋外へ出て、タンポポ2種類を採集をさせます。なお、通常第1時と第2時の内容を行うためには3時間必要です。焦らないようにしてください。


上:タンポポを思い思いの場所へ探しに出かける生徒 (2012年4月19日撮影)
 課題は日本在来のタンポポとセイヨウタンポポを1つずつ採取することです。採取する前に良く観察し、他クラスの友達のぶんを残しておくように注意しました。それから、上の写真を撮影した日は暖かい日射しで多くのタンポポが開花していましたが、翌日は雨。タンポポは光によって開花運動をするので本日は閉じていること、閉じていても花を分解して開いた状態にして標本にすれば良いことを知らせた上で採取に向わせました。


本時の目標
1 ルーペを正しく使い、タンポポの花のつくりを調べる
 
そのポイントは次の通り。
(1)総苞で『日本在来のタンポポ』と『セイヨウタンポポ』を区別する
(2)1つに見える花は、たくさんの花の集まり(集合花)
(3)1つの花の花弁は、5枚の花弁が合体したもの(合弁花)
(4)雌しべの先端の形
(5)雄しべの位置と花粉
(6)がくが綿毛に変わること
(7)子房が種子※1になること
※1後日、子房は果実、子房の中の胚珠が種子になることを知らせる。本時は、雌しべの下部が膨らんでいること、それが変化して種子になること実物で観察できることを目標とする。
2 1つの花のつくりを正しくスケッチする
3 日本在来のタンポポとセイヨウタンポポを採取し、標本をつくる

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • セロハンテープ
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ (1/人)
  • タンポポ (1/班)
    ※日本在来のものとセイヨウタンポポ
    の2種類を混ぜておく


授業の流れ
 前半は教室でタンポポについての学習、後半は屋外採集です。屋外採集の時間は15分で、本時は理科室から直接屋外へ自由に行かせることにしました。前時きちんとできたからです。

(0) 始業前の準備
 理科室に移動した生徒は、教師用実験台に置かれた『本日の学習プリント』と『ルーペ』を1つずつ取り、自分の席につきます。そして、各班の代表者が『タンポポの花』を1つ持っていくように指示します。

(1) 『日本在来のタンポポ』と『セイヨウタンポポ』
 タンポポを区別する方法を知っているかたずねたところ、各クラス5、6人が挙手しました。総苞(そうほう)という言葉は知りませんでしたが、正しい方法を発表してくれました。私はそれを確認するだけです。

上:あるクラスでの板書

 「タンポポを班のテーブルの中央に置きなさい。さて、そのタンポポは日本在来のものですか。それとも、セイヨウタンポポですか。全員、どちらかに手を挙げてください。・・・おや、みなさんセイヨウタンポポを持っていったようですね。セイヨウタンポポは比較的大きく、採取しても閉じるまでに時間がかかりますからね。・・・教師用実験台に残されたタンポポの中から日本在来のタンポポを1つ取り出し、両手に2種類のタンポポを持って・・・どちらが日本在来で、どちらがセイヨウタンポポかわかりますか。後ろの座席の人は見難いかも知れませんが、ここを見てください。がくではなくて、そうほうです。裏側を見るとわかります。」

(2) タンポポは集合花
 1つに見えるタンポポの花は、実はたくさんの花の集まりです。前時、サクラの花の雄しべと同じように、5の倍数の数の花が集まったもので、具体的には60〜250あります。これはタンポポが所属するキク科の植物の特徴です。キク科の植物は、すべて同じように無数に見える5の倍数の花が集まったもので、頭花とよばれます。1/4ぐらいの生徒は無数の花の集まりであることを知っていましたが、集合花という言葉は知りませんでした。合弁花と答えた生徒は各クラス5人程度いましたが、合弁花は次の説明、確認します。

左:タンポポの花を解剖して、1つの花を取り出す様子

 タンポポの花は周辺部から開花します。この写真の中心部は『つぼみ』です。

 「では、1つの花を取り出してみましょう。取り出し方は、そうほうの部分を左右から両手で摘んで2つに引き裂きます。・・・実演しながら・・・こんな感じで、茎まで真っ2つになれば完璧です。そして、1つの花を取り出しますが、黄色い花びらの部分を引っぱると千切れてしまいます。根元から取るようにしましょう。種のような部分を切らないようにしてください。もう1度2つに裂いてから取り出しても良いでしょう。それでは、班で1番器用な人が2つにして、それから各自で取り出してください。質問はありますか? では、始め!」

(3) ルーペの使い方
 「1つの花は小さいですね。とても小さくて肉眼では詳しく観察できないので、ルーペを使います。ルーペは小学校で使ったことがありますか。ある人? ・・・結構いるようですね。では、みんなに正しい使い方を説明してくれる人? では、A君お願いします。・・・A君が完璧に説明する(補足が必要な場合は、他に補足説明ができる生徒を指名する)」

左:板書
 この板書は、授業の最後に復習を兼ねて書いたものです。実際の授業では、ルーペの正しい操作を修得させることを優先させました。

 「みなさんが持っているルーペは、レンズが2枚ついています。1枚でも2枚でも良いですが、2枚使うと倍率が高くなります。2枚使うときの注意点は、レンズの中心をきちんと重ねることです。ずれていると・・・レンズをずらしたものを見せながら・・・なにも見ることができなくなります。これと同じように、ルーペを目に近づけて持つとき、目の中心とルーペの中心が重なるようにします。目とルーペの距離は1cm以内です。やってみなさい。・・・うまでくきない人は『タコヤキ』をつくってみましょう。・・・ほっぺたにタコヤキをつくって、それを見せながら、・・・これがタコヤキです。タコヤキをつくった親指と人さし指の2本でルーペを持てば、ルーペの位置がしっかりと固定されます。やってごらん!」

(4) 1つの花のつくり
 
花のつくりは中心から調べます。雌しべ、雄しべ、花びら(花弁)、がく(がく片)、苞(ほう)、総苞(そうほう)の順です。ただし、種類によって形や色や大きさが大きく異なります。さて、今回は中心からではなく、次の順に学習しました。
花びら(花弁) ・先端5つに分かれている。もともと5枚あった花弁が1つに合体した合弁花であることがわかる。
雌しべ ・1本であるが、先端が2つに分かれて、くるくるっとなっている。くるくるっとなっていないものは、十分に咲いていない花なので、もう一度、2つに引き裂いたものの中から探させる。なお、タンポポの花は周辺部から開花する。
雄しべ ・雌しべの先端から2〜5mm下にあるちょっと膨らんだ部分から、花粉が出ていることが観察できれば、その下の部分が雄しべであることがわかる。花粉が出ていない場合は、雌しべと同様、2つに引き裂いたものの中から探させる。なお、よく観察すると、雄しべと雌しべの成熟する順序は違う。まず、雄しべが成熟して花粉を出してから、雌しべの柱頭が2つに分れて受粉できる状態になる。裸子植物『マツ』の雄花と雌花も同じように、雄花・雌花の順に成熟する。
がく(がく片) ・将来、綿毛になる部分。正確に数えると5の倍数になっている。


上:屋外に出て、よく開花した1つの花を探す生徒


上:板書

(5) スケッチのしかた
 「理科の科学的なスケッチは美術と違います。まず、全部かかなくて構いません。授業の初めに先生が、集合花としてのタンポポの花弁を適当に書いたことを覚えていますか? 逆に、『そうほう』の形を正確に書いたことを覚えていますか? タンポポの種類を見分けるポイントはそうほうなので、ここではそうほうだけを書けば良いわけです。そのとき、線と点だけで書きます。できるだけ細い線、小さな点が良いことは言うまでもありません。また、影をつけて雰囲気を出すことは、目的とするものがぼけてしまうだけです。では、みんなが自分のプリントに書いた1つの花を見てください。どうですか?」

左:板書
 この板書は、授業の最後に復習を兼ねて書いたものです。実際の授業では、ルーペの正しい操作を修得させることを優先させました。

 「それから、小さなスケッチはダメです。ごまかしがききますからね。大きく書けば、花弁の先端が5つかどうかはっきりします。同じように花粉も点ではなくて、丸で書くことができます。綿毛のようながく片がついている位置も正確になります。つまり、自分が正確に見たことを正確に書こうとすれば、自然に大きなスケッチになるはずです。今回、全体の大きさが3cmだった人は、もう1度書直しましょう。書直すときは消しゴムで消すのではなく、そのままにして、もう1度新しく別なところに書きます。自分が成長した証拠を残しておいてください。」

(6) 屋外で2種類のタンポポを採取する

上:タンポポの集合花の裏にある『総ほう』を調べる生徒


上:採取したタンポポをその場でまとめる生徒


上:屋外でまとめる生徒


上:教室に戻ってまとめる生徒


上:同上


上:本日の板書の一例


授業を終えて
 傘をささずに雨の中で熱心に探す生徒達には驚きました。採取できなかった人は宿題にすればいいよ、と言ったのが悪かったのかな。


上:採取したタンポポを持って戻ってくる生徒達

関連ページ
・ 観察2 タンポポの花1年(2013年)
・ 観察2 タンポポの花1年(2002年)
・ 観察3 タンポポを調べる1年(1999年)
・ 科学的なスケッチの描き方若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ ルーペや顕微鏡の使い方同 上

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第1章 生命とは何か   観察の基礎 p.20
第5章 花と植物   タンポポの花(集合花) p.90〜p.91

第1時 ←
観察1 サクラの花

→ 第3時
観察3 種子植物の花の一生

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