このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第21時
観察21:コケ植物

     2012 6 13(水)、14(木)
     理科室

はじめに
 「次の時間はコケを調べるので、コケを持って来てください」と連絡しただけなのに、予想より多くの生徒が持ってきました。1番多いクラスでは10人以上でした。


上:A君が持参したゼニゴケの雄株
スギゴケは比較的簡単に見つけられるが、ゼニゴケはやや難しい。しかも、雄株(造精器)は雌株(造卵器)より珍しいので、A君がゼニゴケの雄株(造精器)を持参しなければ、実物の観察はできなかった。彼は豆腐の入れ物の内側にビニールを敷き、その上にゼニゴケを入れてきた。興味関心意欲Aマル。彼だけの努力でないとしても、他の生徒より努力して運んできたことは間違いない。

本時の目標
1 コケ植物の特徴をまとめる
2 コケ植物の一生をまとめる
3 胞子のうやからだを観察、スケッチする
4 ゼニゴケの仲間とスギゴケの仲間に大別できることを知る

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • コケ植物
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ルーペ (1/人)
    または、双眼実体顕微鏡、光学顕微鏡セット
  • A・Aピンセット (1/人)
  • バット(1/班)
  • コケ植物


授業の流れ

(1) 始業前に行う、コケの点検
 理科室に入ってきた生徒に、「コケを持ってきた?」と声をかけます。そして、持ってきたコケを見て、興味関心のポイントを与えます。専用の容器やビニール袋に入れて湿度の高い状態で運んで来たり大きなものを持ってきたりした場合はA、そこそこの場合はB、です。A、Bの評価は、私が学習プリントの評価欄に手書きします。生徒は持ってきたコケの種類を自分で記入します。

 なお、理科室へ入るタイミングで点検するのは、事故を防ぐためです。友達から分けてもらったものを自分のものとして申告する、という事故を防ぐためです。生徒を信用していないみたいで、嫌になりますが、真面目な生徒、本当に自然が好きな生徒を正しく評価することは先生の責任です。雰囲気は多少悪くなりますが、年間を通した授業の結果は良くなります。


上:始業前、各班のテーブルに配付されたコケ植物
 バットに入っているコケは2種類。手前の生徒がピンセットで摘んでいるのは、前の時間の生徒が持参したスギゴケ。授業後、不要になったコケはバットに入れていくので、進度が遅いクラスはいろいろな種類を観察できる。私が準備したものは、造卵器があるゼニゴケの雌株。

(2) 始業の挨拶と本時の紹介
 始業の挨拶をしてから、コケの点検を受けていない生徒がいないか確認します。その後、本時の授業プログラムを紹介します。主な流れは、前時のシダ植物と同じです。

 「今日はコケ植物を調べます。前の時間のシダ植物を同じ手順で調べていきましょう。まず、コケ植物の特徴をまとめ、次に、コケ植物の一生をまとめます。残り時間はコケの観察です。」

(3) シダ植物の特徴
 今日の発表はスムーズでした。前時のシダ植物で、考え方が分かったからでしょう。生徒の発言や思考を活性化する発問方法は、別ページ『観察20 シダ植物』をご覧ください。


上:あるクラスでの板書

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上2枚:別クラスでの板書

(4) コケ植物の一生
 シダ植物で植物の生活史(一生)のまとめ方を学習したので、コケ植物は簡単に扱いましょう。生活史のスタートは、2つ考えられます。1つは胞子、1つは雌株と雄株です。胞子からスタートする場合は「ある胞子は雌株、ある胞子は雄株になります」と紹介します。雌株と雄株からスタートする場合は「コケは雌と雄があるけれど、知っていた? ・・・ちょっとびっくりですが、コケ植物には雌と雄があるのです。その模式図を描きますので、どちらが雌でどちらが雄か、教科書で調べください。(黒板に造卵器と造精器の模式図を描き)この図はテストで出題されることがあります。(などと話ながら、生徒が教科書を開いて調べる時間をつくる) では、全員に聞きます。(造卵器を指して)こちらが雌だと思う人? ・・・はい、正解です。これが雌で雌株、下が雄で雄株です。雌は卵子を守るような形、雄は精子を出すような形になっています。では、プリントに雌株、雄株、と書いてください」と進めていきます。


上:板書例

 「雌株と雄株は、条件がそろうと卵子と精子をつくります。まず、雄株を拡大すると、(黒板に造精器の拡大図を描きながら)精子をつくる部分があって、その中に精子ができます。・・・(中略)・・・さて、精子と卵子が合体すると何ができますか? ・・・そうですね。受精卵です。受精卵は細胞分裂をくり返して成熟します。そして、あるものをつくるようになります。さて、あるものとは何ですか? (答えが出ない場合、次のヒントを与える「答えは、今日の授業で教えました。黒板にも書いてあります」)・・・そうですね。胞子です。受精卵は、胞子をつくる胞子のうになり、胞子をつくるようになります。これを正確に理解するのは難しいので、黒板には、『卵子+ 精子 →(受精)→ 受精卵→ 胞子』とまとめておきます。」

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上2枚:別クラスでの板書

(5) 雌株と雄株、からだ各部の観察、スケッチ
 生徒実習の時間は、シダ植物よりも長くなりました。


上:左はA君が持参したゼニゴケの雄株、右は私が準備したゼニゴケの雌株


上:雄株の造精器
 上部にあるぼつぼつした部分で精子が造られる。精子は、もちろん単相(n)。雨の日に泳ぎ出す。精子を放出した造精器は、比較的短時間で朽ち果ててしまうので、お目にかかることが少ない。これに対して、雌株の造卵器は、比較的長期間観察できる。受精した卵(受精卵)を成熟させ、胞子をつくらなければならないからである。なお、卵子は核相はn、受精卵は2n。ここまでは簡単だと思うが、実際は難しい。受精卵(2n)は細胞分裂をくり返して胞子をつくる『胞子のう(2n)』になるが、コケ植物の2n時代はここまで。胞子のう(2n)がつくる胞子は、単相(n)である。単相の胞子が細胞分裂して、雄株や雌株になる。雄株や雌株はいずれも単相(n)であり、それらがつくる精子や卵子も単相(n)である。なお、核相は難解なので、中学1年生には教えてはいけない、と思う。


上:ピンセットを使い、ゼニゴケの雌株の造卵器の裏にある『胞子のう』を調べる生徒
 よく成熟した胞子のうは黄色くなっている。受精は雨の日に行われるが、胞子は晴の日に飛び散る。


上:教科書を参考にしながらゼニゴケの一生をまとめたり、スケッチしたりする生徒

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上:ゼニゴケとスギゴケを観察する生徒

左:双眼実体顕微鏡で造卵器を観察する生徒

(5) コケ植物の分類
 コケ植物は、苔類(たいるい。ゼニゴケの仲間)と鮮類(せんるい。スギゴケの仲間)の2つに分けられます。前者は横に広がり、後者は縦に伸びます。いづれも雌株と雄株がありますが、見分けるポイントになる造卵器と造精器がない時期は区別できません。


上:生徒が持参したスギゴケ
 注意深く観察すると、写真中央に雌株にできた胞子のうが見られる。ただし、胞子を出した後なので、枯れ始めている。


上:A君の学習プリント


上:Bさんの学習プリント(クリックすると拡大)


上:C君の学習プリント


授業を終えて
 多くの生徒がコケを持参した場合、授業冒頭に分類方法を紹介しましょう。そして、自分が持ってきたコケの名前を確認させます。ゼニゴケの仲間、スギゴケの仲間、という分類で十分です。

関連ページ
観察13 コケ植物 
1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第5章 花と植物 根がない植物『コケ植物』
植物の分類
p.106〜 p.107
p.100
第8章 進化と分類 水との距離から体の構造を考える p.146〜 p.147

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観察20 シダ植物

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観察22 藻 類

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