このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第22時
観察22:藻 類

     2012 6 14(木)、15(金)
     理科室

はじめに
 乾燥ワカメ、コンブ、海苔などを持ってくるように連絡しておいたところ、約半数の生徒が思い思いの乾物を持ってきました。理科室に入ってきた生徒から順に点検し、始業前から顕微鏡観察をさせます。家庭から持ってきたものを少しでも長く調べることが大切です。


上:持参したコンブを顕微鏡で観察する生徒

本時の目標
1 藻類の特徴をまとめる
2 藻類の一生をまとめる
3 からだを顕微鏡観察、スケッチする

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 藻類(乾燥した海藻)
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 光学顕微鏡セット (1/人)
  • ビーカー(1/人)


授業の流れ

(0) 始業前:藻類の点検、および、実習開始の指示
 前時の『コケ植物』と同じように、藻類を持ってきたか点検します。そして、藻類を顕微鏡観察するための準備をさせます。光学顕微鏡、スライドガラス、カバーガラス、光源、ビーカーです。藻類を持参した生徒は、水を入れたビーカーの中に乾燥した海藻などを入れ、戻します。


上:持参した海苔とワカメを戻している様子
右手奥にあるビニール袋は、持参するためのもの。


上:乾燥ワカメを戻している様子
多いクラスは80%の生徒が何らかの藻類を持参した。

(1) 始業の挨拶と本時の紹介
 始業の挨拶をしてから、藻類の点検もれ生徒がいないか確認します。そして、本時は授業の合間を見つけて実習を行っても良いことを伝えます。つまり、水で戻した海藻をごく少量とり、一時プレパラートをつくります。プレパラートは向こう側が透けるほど薄いものができれば、美しく顕微鏡観察できます。それを顕微鏡で観察、スケッチするという実習です。このような授業形態は2回めなので、生徒は要領を得ているはずです。その後、一斉授業のプログラムを紹介します。主な流れはシダ植物やコケ植物と同じです。

(2) 藻類の特徴
 今日の発表はスムーズでした。シダ植物とコケ植物の学習で、特徴のとらえ方が分かったからでしょう。ポイントは、種子植物やシダ植物やコケ植物と比較させること、『@@がある』という形で答えさせることです。生徒の発言や思考を活性化する発問方法は、別ページ『観察20 シダ植物』をご覧ください。

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上2枚:2クラスでの板書

 2クラスとも葉緑体がある、という特徴を発表しました。藻類はもっとも簡単なつくりをした植物なので、ここで植物を他の生物を区別するポイントして、葉緑体を指摘することは重要です。授業では、葉緑体をもつ生物、光合成をする生物を植物、としました。この他、藻類の特徴として、一生水中生活することがあります。また、維管束がない、花がさかない、種子がない、根茎葉の区別がない、など「ない」による分類は極力取り上げないようにすると同時に、顕微鏡で観察したときの特徴の1つとして、『すべての細胞がほぼ同じ』という点を紹介しました。

(3) 藻類の生活史
 これまでにシダ植物とコケ植物の生活史(一生)の学習したので、生徒はまとめ方の要領を得ています。胞子は、その存在だけに触れます。「めかぶ、って知っている? 食べたことある?」と発問するだけで十分でしょう。もう少し時間あれば、自ら泳ぐ胞子、生殖細胞は『遊走子』ということがあることを知らせても良いでしょう。ただし、コケ植物と同じように、胞子(遊走子)に雌雄があることは教えるべきではありません。雌雄って何? 男女って何? 胞子の雌雄はどうやって区別するの? という有性生殖の本質まで迫る必要が発生する可能性が高くなるからです。雌雄の区別や生殖の多様性については、3年で学習します。今日はさらっと流しましょう。


上:板書例

 めかぶ、として売られている部分は、ワカメの胞子のうをつくる部分です。漢字で書けば『雌株』になるのでしょうか? その由来は不明ですが、植物学的には、雌雄がない世代、両性の世代(2n)、『雌株』でも『雄株』でもない世代が胞子をつくります。ということで、めかぶは商品名と考えるべきでしょう。

(4) 藻類の分類
 植物は、葉緑体の中の葉緑素(クロロフィルなどの色素)によって分類できます。これは藻類に限ったことではありませんが、海水中で生活する海藻で紹介するなら中学1年でも可能です。海藻は食卓に並ぶ植物であり、色の違いを日常的に感じているからです。授業では、緑藻、紅藻、褐藻の3種類に分けました(下表)。海藻の色が違うのは、葉緑体の種類が違うからであり、種類が違うのは太陽の光(色)が深さによって変わるからです。水深40m以下は、光合成に必要な太陽エネルギー(光、色)が届かないので植物は生活できません。

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上2枚:2クラスでの板書


上:アオサ
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上:左はワカメ、右はヒジキ

いずれも褐藻に分類されます。ワカメが緑色をしているのは、加熱したからです。生ワカメはヒジキと同じような褐色ですが、茹でると鮮やかな緑色に変わるのです。緑色の緑藻の例を挙げるときは「アオサって知っている?」と発問しましょう。数人の生徒が「味噌汁に入れるやつ!」と答えるはずです。

(5) 藻類のからだの顕微鏡観察、スケッチ
 (4)を終えるまでに、美しい細胞の配列を観察できた生徒が各クラス数人いました。

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左:小分けして持ってきた乾燥ワカメ
右:カットわかめ(袋の表示を読ませてみるのも良い)


上:ワカメの一時プレパラートをつくる様子


上:想像以上、数10倍に膨らんだワカメ


上:海苔(のり)は、もちろん海藻の1種
 数分間に水につけておくだけで、顕微鏡観察できる状態になる。

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上2枚:ヒジキ
写真右はヒジキの端をビーカーにかけ、戻る様子をより詳しく観察しようとする生徒。


上:A君の学習プリント


上:Bさんのスケッチ
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上:C君のスケッチ


上:D君のスケッチ
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上:Eさんのスケッチ


授業を終えて
 海藻の細胞はとても簡単に顕微鏡で観察できます。是非、実習させてください。また、時間があれば、水中の微生物の中から植物を探すのもの面白いでしょう。植物は、葉緑体をもつ多細胞生物です。ただし、これは私独自の定義です。生物の分類はとても難しく、毎年のように新しい方法が提案されています。文部科学省は「藻類は植物ではない」としていますが、私は「植物:葉緑体で光合成をおこなう多細胞生物」と定義しています。「光合成をおこなう単細胞生物ミカヅキモ、クロレラ、ミドリムシなどは除外し、ゾウリムシやアメーバーと同じ単細胞生物の仲間として分類しています。詳細は別ページ『生物の分類』をご覧ください。

 このように、生物を植物と動物と単細胞生物の3つに分類した上で、水中の微生物を分類させると楽しい時間になるでしょう。細胞の数、葉緑体の有無で分類させるのです。微生物(微少な生物)を観察させるだけなら小学校で可能です。

関連ページ
観察14 藻 類 
1年(1999年)
観察9 微生物 
1年(2002年)
観察4 水中の微生物 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第5章 花と植物  水中で生活する植物『藻類』
 植物の分類
 p.108〜 p.109
 p.100
第1章 生命とは何か   単細胞生物から多細胞生物へ  p.14〜 p.15
第8章 進化と分類   水との距離から体の構造を考える  p.146〜 p.147
 生物を5つの仲間に分ける  p.150〜 p.151

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観察21 コケ植物
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→ 第23時
実習23 生活場所による植物の分類

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