このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第20時
観察20:シダ植物

     2012 6 11(月)梅雨入り3日目
     2012 6 12(火)、13(水)
     理科室

はじめに
 生徒に用意させれば良かったのですが、連絡を忘れてしまいました。土日を利用して名古屋市内の山へ入り、やぶ蚊と格闘しながらシダを根こそぎ採取してきました。葉の裏に胞子ができている大型のベニシダです。

.

上2枚:私が採取する前のベニシダ
 ベニシダは良く見られる種類で、冬でも緑色の葉が見られる。葉の裏にある紅色のぼつぼつは、『胞子のうの集まり』を覆っているもので、とくに名称はない。この部分が紅色になっていれば、ベニシダと考えて良い。サイズは比較的大きい。


上:理科室に運ばれたベニシダ
 45リットルのゴミ袋が小さく見えるほど、このシダは大きい。観察後、理科室掃除当番と一緒にプール裏の木陰に穴を掘り、このシダを植えた。上手く根づくといいな。

 また、本時から連続して3時間、シダ植物、コケ植物、藻類の生活史をまとめます。生物の一生、連続したサイクルの表し方を教えます。


本時の目標
1 シダ植物の特徴をまとめる
2 シダ植物の一生(生活史)をまとめる
3 胞子のうの集まり、胞子のう、胞子を観察する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 双眼実体顕微鏡 (1/人)
    または、光学顕微鏡セット (1/人)
  • A・Aピンセット (1/人)
  • 光源(1/班)
  • シダ植物


授業の流れ

(1) 本時の内容紹介
 本時の学習プリントを見せ、新しい植物、シダ植物を学習することを知らせます。初めの10分でシダ植物の特徴、次の10分でシダ植物の一生をまとめ、残り30分は観察実習を行います。

 「この植物を何というか知っていますか。・・・その通り、シダ植物です。このシダは、先生が@@から採取してきたもので、最大級の大きさのものです。普通はもう少し小さいのですが、これは立派なシダです。葉の裏側にはぼつぼつがついています。これが大きな特徴の1つですが、あとからまとめましょう。シダ植物の特徴を10分でまとめ、次に、プリントに印刷してある図を利用してシダ植物の一生をまとめます。最後に、葉の裏川にあるものを観察しましょう。観察時間は30分。できるだけ長く取りたいので、前半のまとめは先生がさくさく行います。」

(2) シダ植物の特徴
 私が受け持っている3クラスとも、学習プリントを配った時点で、「今日からシダ植物だ!」のつぶやきが聞こえました。つまり、シダ植物という名前を知っているわけです。小学校で学習したか、塾で習ったのかも知れません。授業では、これまでに学習した植物とシダ植物を区別するための特徴を発表させました。下は、生徒の考えをまとめたものです。時間があれば、生徒に板書させるのですが、シダ植物に割り当てられた時間は1時間なので私がまとめました。所要時間は10分以内です。

.

上2枚:シダ植物の特徴のまとめ例
 左右は、それぞれ別クラスの板書例。クラスによって順序が違う理由は、生徒が発表した内容、キーワードをそのまま採用しているからである。キーワードが違うことも多々あるが、重要なキーワードが出ない場合は、ヒントを出す。むしろ、教師に力量を問われるのは、僅かに外した考え、非常に細かい内容を発表されたときである。それらをどのようにして認めた上で不採用にするか、という教師の一言と判断の方が難しい。また、多少抜け落ちたキーワードがあっても、無理に出す必要はない。次のステップで出れば良いからである。そのクラスの自然な流れ、生徒の思考にそった授業を展開するように心掛けること。本時は、次の『シダ植物の一生』でまとめるチャンスがある。

 「シダ植物の特徴をまとめましょう。特徴を発表できる人! ・・・(意見が何もでない場合)これまでに学習した植物はサクラ、タンポポ、マツのように種子をつくる植物でしたが、シダは違います。どのように違うのか、キーワードを入れて発表してください。キーワードが合っていれば、先生がそれを使ってまとめていきます。さあ、これまでに調べた植物と何が違うのかな? ・・・(意見が行き詰まった場合)今日はシダ植物をまとめていますが、次はコケ植物を調べます。コケ植物は、シダ植物よりさらに簡単なつくりです。シダとコケを区別するのは何か、見分けるポイントは何かな? ・・・」

(3) シダ植物の一生
 「(本物のシダ植物を良く見て形の良い葉を1本選び、それを切断し、セロハンテープで黒板に添付して)さて、シダ植物の一生をまとめましょう。プリントに印刷してある流れ図にキーワードを書き込んでいきましょう。初めは、黒板に張り付けた葉です。これは1枚の葉です。1枚の葉に、2回切れ込みが入って細かくなった1枚の葉、と考えることできます。茎はどこにあるかというと、地下です。地下にあるので地下茎といいます。茎から出ているものは当然、根です。以上がシダ植物のからだです。」


上:板書例

 「大人のシダ植物は、条件が整うと葉の裏にぼつぼつをつくります。(黒板に添付したシダの葉の一部を裏返して、その部分を観察する様子を見せながら) これは、かなり気持悪いです。ハッキリいって、先生は怖いのですが、好き、という人もいます。先生のように嫌いな人もいますが、本気で観察できるチャンスはこれで最後かも知れないので、頑張りましょう。授業後半は、全部これの観察です。この部分を拡大して図示すると、(黒板に図を描きながら) これが、ぼつぼつで、その裏側に、こんな形の袋があって、その中に胞子ができます。では、みなさん。胞子に色を塗ってください。前に特徴をまとめたときに使った色と同じ色で塗ってください。(生徒が着色したことを確認してから)ということで、胞子を包んでいた袋を胞子のう、といいます。のうは袋、という意味です。それから、ここが混乱しやすいところですが、葉の裏にあるぼつぼつは、胞子でも胞子のうでもありません。それらがたくさん集まったものです。つまり、胞子のうの集まり、です。プリントにも、しっかり書いておきましょう。(生徒が記入したことを確認してから) 次に、風で飛んだ胞子が発芽します。発芽、という言葉はちょっと意外な感じがしますが、種子の発芽、と同じようなものです。胞子と種子。種子植物は種子、シダ植物は胞子を発芽させます。さて、発芽はつまり、1つの細胞が分裂して増えていくことです。1個が2個、4個、8個、と倍々に増えていきます。(黒板に小さな細胞を1つずつ描きながら)16個、32個と増えていき、やがて、ある特徴的な形になります。(さらに細胞を1つずつ板書しながら) 何かの形に見えてきませんか? ・・・ そうです、ハートです。小さなハート形になります。その大きさは直径1センチメートル。みなさんの小指の爪を見てください。(生徒が各自の爪を見たことを確認してから)自分の爪がハート型をしている、と想像してください。それが、シダの胞子が発芽してできた前葉体です。前葉体は、葉っぱができる前のからだ、と覚えると良いでしょう。この前葉体には、先生の髭のようなものが生えていますが、その名前は『仮根』です。仮根は次のコケ植物で学習するものですが、仮根はからだを固定するためのもので、水を吸収することができません。だから、かりの根、というわけです。さてさて、この前葉体はとても凄いことになっています。小さな体ですが、雌と雄ができるのです。女と男、というわけです。どこにできるかというと、ハートの上の方に雌、下の方に雄ができます。これを拡大したものをプリント印刷してあるので、詳しく紹介しましょう。(造精器の細胞を1つずつ描きながら)これが精子をつくる部分の細胞で、細胞とその核、細胞とその核、細胞とその核、細胞とその核です。そして、細胞が造るのが精子です。プリントの図では、ぐるぐるっとした形をしているものが精子です。上にあるのが雌の細胞で、卵子を造ります。これが卵子をつくる細胞で、(造卵器の細胞を1つずつ描きながら)細胞とその核、細胞とその核、細胞とその核、細胞とその核です。卵子は、その中に1個だけできます。雌の卵は、大切に守られいるわけです。では、精子と卵子を記入してください。(生徒が記入したことを確認してから)では質問です。卵子と精子が合体することを何、といいますか。・・・正解です。受精です。え、保健体育で学習しましたか。それは良かったです。植物も受精します。種子植物は花粉だったけれど、シダ植物は精子なので、受精という言葉がぴったり当てはまりますね。さて、授精した卵、すなわち受精卵は、細胞分裂をくりかえします。そして、赤ちゃんになります。受精卵はシダの赤ちゃんになり、赤ちゃんはさらに細胞分裂して成長し、子どもになり、やがて、大人になります。赤ちゃんのステップを確認しておきましょう。プリントに、前葉体から小さなシダが出ている図があります。シダの赤ちゃんは雌の部分、卵の部分から出ています。確認してください。そして、仮根ではなく、水を吸収できる本物の根も生えてきています。確認してください。」


上:黒板の全景

(4) 胞子のうの集まり、胞子のう、胞子の観察
 残り時間は、生徒の観察実習です。双眼実体顕微鏡の使い方を簡単に確認してから、観察スタートです。


上:双眼実体顕微鏡で観察する様子
 テーブルの中央に光源を置く。光源の上には、各班に配付したシダがある。


上2枚:双眼実体顕微鏡を1人1台使わせるために用意した2種類の顕微鏡


上:顕微鏡を覗きながら、先端が尖ったA・Aピンセットを使って『胞子のう』を調べる生徒


上:光学顕微鏡で観察している様子
 双眼実体顕微鏡で十分観察した生徒は、自主的にプレパラートをつくり、光学顕微鏡で胞子のうや胞子を調べていた。


上:お勧めできない方法で観察している生徒


上:ドライヤーで胞子のうを乾燥させる生徒達
 用意したドライヤーは1つでしたが、結果として、私が監督できたので良かったです。生徒の任せると、乾燥させる度合がわからないので、何度も途中で様子を確認させることができるからです。一部が見え始めたら終了です。その他のものは、順に弾けていきます。


上:肉眼で観察する生徒
 これが基本であり、もっとも大切な観察方法。


上:A君の学習プリントの一部


上:Bさんの学習プリントの一部


上:C君の学習プリント


授業を終えて
 気持悪い、という生徒が少ないことに驚きました。胞子、胞子のうの観察が楽しかったのでしょうね。教師として嬉しい限りです。時間があれば、胞子から前葉体をつくってみたいです。楽しいだろうな。

関連ページ
観察10 シダ植物 
1年(2013年)
観察12 シダ植物 
1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第5章 花と植物  花がない植物『シダ植物』
 植物の分類
 p.104〜 p.105
 p.100
第8章 進化と分類  水との距離から体の構造を考える  p.146〜 p.147

第19時 ← 
実験19 光合成と呼吸

→ 第21時
観察21 コケ植物

↑ TOP

[→home
(C) 2012 Fukuchi Takahiro