このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第23時
実習23:生活場所による植物の分類

     2012 6 18(月)、20(水)、21(木)
     理科室

はじめに
 地球に生活する生物の歴史をおおざっぱに見ると、(1)地球の誕生、2)水の生成、(3)生命の誕生、(4)光合成による酸素の生成=植物の誕生、(5)動物の誕生、(6)水中から陸上への生活圏の拡大、です。今日は植物を学習する最後なので、生活圏の拡大に触れながら、生活場所から植物を以下の7つに分類します。
藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類

水 中 ←--------------------→ 陸 上

※教科書は、藻類を植物として扱っていません。しかし、私は光合成をする多細胞生物を植物として分類しました。藻類は、生まれてから死ぬまで光合成をしながら水中生活する多細胞生物です。詳細は、別ページ『観察22 藻類』をご覧ください。

 なお、本時は三重県の中学校で理科を教えていらっしゃる市川先生が見学にいらっしゃいました。写真を撮ってもらいましたので、ありがたく使わさせて頂きます。また、諸般の都合で受け持っている3クラスのうち、2クラスは2時間分の内容を1時間で終りました。先へ進まなければならないのです。泣く泣く次の第24時『自己評価』を先に行い、残りの20分で本時『生活場所による植物の分類』を終了しました。


上:自分の考えを発表する友達の話を聞く生徒と私
 黒板の表をよく見ると、下から2行目に『あ、い、う、え、お、か』と書かれています。これは『赤ちゃんできる場所の境界線』の選択枝です。セキツイ動物の赤ちゃんは子宮でできますが、植物も同じように『体内』でできるものがあるのです。答えはこのページの下にあります。

本時の目標
1 植物の分類は、生活場所によってできることを知る
2 生活場所とからだのつくりは密接に関係していることを知る
3 植物を次の7つに分類する

 (藻類、コケ植物、シダ植物、裸子植物、単子葉類、離弁花類、合弁花類)
4 4月から学習してきた植物全体について振返る

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)


授業の流れ

(1) 始業の挨拶と本時の紹介
 本時の流れを紹介してから、市川先生に自己紹介して頂きました。年齢が生徒と近いので、短時間のうちに盛り上がりました。さすがです。

(2) 植物を7つに分ける
  学習プリントに藻類、コケ植物、シダ植物、裸子植物、単子葉類、離弁花類、合弁花類の7つに分けた表を印刷しておきました。これは大前提です。植物に限らず、生物の分類は明確な基準がないので、指導者がぶれないようにします。私は、藻類を植物に含め、単子葉類=ひげ根、とします。前者は文部科学省から、後者は研究者からクレームが来ます。文部科学省と研究者の見解は一致していないから当然です。私は現場で働く教師なので、1番に優先するのは生徒です。将来を担う子どもに適したものを選択し、選択したことによって生じるクレームを受け入れること、それが私の仕事です。目の前にいる生徒の力や発達段階を分析し、最適な指導内容を決断しなければ、人が人を教育する価値はないと思うからです。若い先生には難しいと思いますが、生きた授業をしましょう。そして、自然を追求する基本姿勢を育てましょう。


上:授業後半になり、ほぼ記入完了のA君の学習プリント

(3) 生活場所による分類
 学習プリントと同じ図表を板書します。そして、生活場所によってからだのつくりが変化したことを知らせます。1番初めの分類基準『生活場所』は、水中と陸上で分けます。そのボーダーは『コケ植物』です。ポイントは、さらっと進むことです。

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藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類
生活場所 水 中 湿った場所 日 陰 陸 上

(4) 受精場所による分類
 水中か否か、で分類します。藻類は100%水中です。問題になるのは、コケ植物からですが、コケ植物は雨の日に精子が泳ぐことを覚えていた生徒がたくさんいました。問題はシダ植物です。みなさんはわかりますか。生徒の考えは真っ二つに分かれていました。
 「シダ植物は意見が分かれましたね。では、ヒントを出します。シダ植物のポイントは前葉体です。前葉体は小指の爪ほどの大きさで、その中に卵子と精子ができました。受精するためには精子が泳ぐ必要があるので、つまり、答えは・・・そうですね。水中、雨の日に受精します。(生徒から「晴の日じゃないの?」というつぶやきが聞こえたら)晴の日に出るのは何だった? ・・・精子じゃくて、・・・そうだよね。胞子です。胞子を飛ばすためにドライヤーで乾燥させたことを覚えているかな。胞子が飛ぶのは晴の日、精子が泳いで受精するのは雨の日です。」

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藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類
受精場所 水 中

雨の日
陸 上

※この内容は教科書にありません。受精は3年生で扱いますが、その分類方法は『体外か体内か』であり、本時の『水が必要か否か』ではありません。

(5) 水の吸収場所による分類
 これは簡単です。
 「次は水を吸収する場所で分類しましょう。からだ全体か、根か、で分類します。藻類はもちろんからだ全体なので、コケ植物から順に聞いていきましょう。・・・(後略)」

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藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類
水を吸収する場所 からだ全体

根(維管束がある)

※ここで維管束をおさえます。時間に余裕があれば、シダ植物の茎が地下にあることを確認してください。ただし、維管束の配置を確認してはいけません。裸子植物の位置を明確にできないからです。

(6) 主な器官
 テスト用にキーワードをまとめておきましょう。重要語句はいくつも考えられますが、水中から陸上へ進出するためにつくった器官に注目させます。
 「藻類はとくにありません。とくにないことが、特徴です。(生徒がプリントに記入したことを確認してから)コケ植物は何にする? ・・・(複数の生徒が挙手すると思うので、全員に発表させてから)仮根も悪くないけれど、ここはやっぱり雌株と雄株にしましょう。ところで漢字で書けるかな。(めかぶ、おかぶと平仮名で板書してから)自分のプリントに書けた人の中から先着2人、黒板に綺麗な字で書いてください。(生徒の板書を確認して)では確認しましょう。正解だった人! ・・・素晴らしい。一応、確認しておきましょう。(と言いながら、漢字の一部を板書して確認する)ここで、雌株と雄株の模式図も書いておきましょう。よくテストに出題されますからね。・・・(中略)」


上:シダ植物の主な器官を発表しようと挙手する生徒達

 「裸子植物のキーワードは何にする? ・・・子房がない、はダメです。何かができた、と考えてください。・・・とすると、胚珠ですね。では、胚珠と書いてください。書けるかな? (平仮名ではいしゅ、と板書してから)書ける人? (半数以上の生徒が挙手したことを確認して)手を挙げている人の中で、胚珠が成長すると何になるか知っている人? (まだ挙手している生徒の反応を見ながら)この中で、前に出て漢字を書いて、さらにみんなに説明してくれる人?  (A君だけ残ったら)では、A君、前に出て来てみんなに教えてあげてください。」

--- 藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類
主な器官 特になし 雌株、雄株 前葉体 胚 珠 平行脈、ひげ根 網状脈、主根と側根
双子葉類

※胚珠が種子になること、をしっかり確認する
※子房は、次の『赤ちゃんができる場所』でおさえる
※単子葉類は、離弁花と合弁花を合わせた双子葉類、と比較させる
※単子葉類と双子葉類の維管束の配置の違いは、最後におさえる

(7) 赤ちゃんができる場所による分類
 赤ちゃんができる場所とは、受精卵が細胞分裂して胚になる場所、発生する場所です。難しく考えると大変ですが、『子房』の有無で指摘させることは簡単です。中学1年生でも、植物がより高度な器官を形成していったことが良くわかる事例です。このページの冒頭の問題の答えは『子房』です。

 「次は、赤ちゃんができる場所で区別します。具体的には、子房のあるなし、で分けましょう。簡単ですね。(黒板の表に『あ、い、う、え、お、か』と書いて)あ、い、う、え、お、か、のどこが境界線になるでしょうか? 1回だけ手を挙げてください。全員正解でオネガイシマス。では、あ、だと思う人? ・・・しーん。い、だと思う人? ・・・(後略)」

上:境界線『お』で挙手した生徒に、その理由をたずねる私
 私が用意していた正解は『え』ですが、別な視点から考えれば『お』が正解になる可能性があります。間違い、と決めつけるのではなく、そのように考えた理由を聞くようにしましょう。教師の発問が不適切だった場合もあります。

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藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類
赤ちゃんができる場所

体 外
体内(子房がある)

(8) ふえ方による分類
 胞子か種子か、で分類します。(7)と同じ手順で行います。

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藻 類 コケ植物 シダ植物 裸子植物 単子葉類 離弁花類 合弁花類
ふえ方 胞 子 種子(花が咲く)


上:胞子、種子を板書する生徒

(9) 7つに分けた植物の例
 最後に、7つに分けた植物の例を挙げます。授業で観察したものを中心にすると良いでしょう。


上:別クラスの板書(クリックすると拡大)

(10) 4月から学習してきた植物全体を振返る
 残り5分で、植物全体について振返ります。植物とは何か、生物とは何か、生命を調べるための基礎技術や姿勢について振返ります。


上:学習プリントをめくりながら、これまでの学習を振返る生徒

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上2枚:プリントに感想を書く生徒


上:B君の学習プリント(クリックすると拡大)


上:C君の学習プリント(クリックすると拡大)


上:D君の学習プリント


上:板書


授業を終えて
 植物の進化、植物が水から陸上へ進出していくために複雑な器官を獲得していったことを感じてくれたのではないか、と思います。生活場所による分類は、2年で学習する動物でも行います。さらに、セキツイ動物と植物を対比させる予定です。2つの対比は、私の著書 中学理科の生物学の『水との距離から体の構造を考える(p.146〜p.147)』にあります。


上:生徒達に心温かい激励の言葉をかけられる校長先生

 授業後、生徒達は、校長先生からお言葉を頂きました。積極的、かつ、熱心に授業に取り組んでいること、友達と教えあいながら学習を進めていること、その他たくさんのお言葉を頂きました。私は、真剣に耳を傾ける生徒達の姿勢をみて、ますますやる気がでてきました。やっぱり校長先生の一言は価値が違う、みんなのやる気が出る、と思いました。ありがとうございました。

関連ページ
植物の分類 
1年(1999年)
1年植物のまとめ 1年(1999年)
生物の分類

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第5章 花と植物 植物の分類 p.100
第1章 生命とは何か 単細胞生物から多細胞生物へ p.14〜 p.15
第8章 進化と分類 水との距離から体の構造を考える
生物を5つの仲間に分ける
p.146〜 p.147
p.150〜 p.151

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観察22 藻 類
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→ 第24時
観察24 1学期の自己評価

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