このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第25時
実験1 1円硬貨の密度

     2012 6 20(水)、21(木)、25(月)
     理科室

はじめに
 今日から始まる1年化学分野の配列は、生徒の発達段階に即していません。原因は文部科学省の学習指導要領(2012年完全実施)です。1年生の主な内容を拾い出すと、有機物と無機物の違い、金属と非金属の違い、プラスチックの性質、固体・液体・気体の性質、物質の性質や変化の調べ方の基礎、密度、いろいろな気体の発生と性質、水溶液、拡散する粒子、質量パーセント濃度、溶解度曲線、再結晶、状態変化、粒子のモデル、融点と沸点、蒸留です。これらの内容と配列は、子どもと乖離しています。

 被害者は生徒、現場教師、日本国民の順です。しかし、この事実を正しく理解、指摘できるのは現場教師です。がんばりましょう。一般の方々には応援をお願いします。1日も早く改善、改定するように要求します。私からの中学3年間を通した提案は別ページ『化学』にあります。この配列は生徒の発達段階にもとづいていますが、中学を卒業された方は中学理科の化学(福地孝宏著、誠文堂新光社、2011年)をご覧ください。自然の事象を小さな粒子から解き明かしていく、化学という学問により適した配列になっています。

 なお、校内事情により『密度』から入りましたが、1年化学分野の第1時間目は『ガスバーナーの使い方』が適しています(参考ページ『化学』)。


上:持参した1円、5円、10円硬貨を見せる生徒
 銀行で両替してきた生徒と保護者には頭が下がります。


本時の目標
・1円硬貨は水に沈むことを知る
・その理由を、密度(質量÷体積)から説明する
・1円硬貨の密度2.7g/cm3を求める

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 1円硬貨(できるだけたくさん)
  • 5円硬貨、10円硬貨
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 電子てんびん
  • メスシリンダー200ml,100ml,50ml,20ml(各1/班)

授業の流れ
(0) 始業前に1円、5円、10円硬貨を持参した生徒を確認する

(1) 問題1:1円硬貨は水に浮くか?
 生徒に1円硬貨は水に浮くか発問したところ、大多数の生徒が沈む、と答えました。ごく少数の生徒が浮くと答えたので、その理由を聞きました。私は3クラス担当していますが、いずれのクラスでも「表面張力」というキーワードがでてきました。さすがです。1円硬貨は水面にそっと載せると表面張力によって浮きますが、通常は沈みます。


上:問題1と問題2の板書

(2) 問題2:1円硬貨はなぜ沈むのか?
 この問題に正確に答えられる生徒は各クラス数人です。複数の生徒が挙手した場合、間違えてくれそうな生徒から指名しましょう。「1円の方が重いから」と答えてくれと思います。この考えの賛成者を挙手させると、半数を超えます。しかし、その考えは不十分なので、何が足りないのか考えさせましょう。重さを比較するためには条件を揃えなければいけないよ! とヒントを与えてください。複数の生徒が『体積を同じにすること』に気づくはずです。

質量と重さの違い
生徒は質量と重さの違いを知りません。小学校でも習っていません。教科書では数週間後に配置されていますが、ここは無理矢理教えてください。
・物質そのものの量を『質量』という
・質量の単位は『g(グラム)』

・重さの単位はg(グラム)ではない


上:別クラスにおける、ここまでのまとめ

(3) 基準となる体積は1cm3
 密度の基準となる体積は1cm3です。なぜ1cm3なのか、その理由は不明です。おそらく、金属やいろいろな固体の密度を扱う時に都合が良いからだと思いますが、その程度のことです。私はこの基準の取り方に賛成ですが、気に入らないことが1つあります。それは文部科学省の姿勢です。単位は国際単位系(SI単位系)を使用する、として子どもの実態に合わない単位NやPa、Jなどを押しつけていますが、密度に関しては g/cm3 を採用します。おそらく、国際単位系がkg/m3を採用していることを知らないことが原因だと思いますが、うっかりして頂いたお陰で現場は助かっています。本当に助かっています。皮肉を言う余裕は、現場にありません。子どもにもありません。確認しておきますが、中学校で密度を教えるなら、体積の単位は1cm3のままにしてください。1m3に変更しないよう、今から強く釘をさしておきます。国際単位系に囚われ、これ以上子どもの実態から乖離しないよう強く要求します。絶対にしないでくさい。どうしてもするなら、すでに押しつけているニュートンを日本国に押しつけてください。日本にある体重計の単位を全てN(ニュートン)にしてからにしてください。日常生活と乖離しているかどうか、国民にとうべきです。体重計は質量を測る計測器ではありません。その単位はkgではありません。例えば、60kgは完全な間違いで、正しい国際単位系による表記は600Nです。明らかな間違いです。学習指導要領と同じような現実的な拘束力、検定教科書のような現実的規制をすれば、横暴な政権の実態が明らかになるでしょう。弱い立場にある子どもや現場教師をこれ以上いじめないでください。


上:基準になる体積1cm3を確認するための板書

 1立方センチメートルという体積は小学校で学習しています。しかし、その意味を確実に理解している生徒は意外に少ないものです。頭の中で立方体を組み立てるのは中学1年にとって簡単ではありません。立体を平面に描くことも大変です。授業では、上のように立方体の書き方を示しました。読み方や意味も示しました。定規を使わず、ささっと立方体をかけるようにならなければ、密度を正しく理解すること絶対に不可能です。数学的な計算力は、理科本来の力ではありません。理科で育てたい力は、立体を立体として感じる力、自分の頭脳で再構築する力です。平面に描くことは美術や技術の範囲ですが、私は計算の前にそれを自分の手で紙面に描き、自分の頭脳にイメージを描くことができる力を育成したいと考えています。数学はそのイメージの延長線上に生まれた思考のための道具であり、自然を理解するために生まれたものです。理科の使命は、自然を理解するために自分の頭脳で再構築することにあります。


上:定規を使って立方体を描く生徒


上:メスシリンダーで体積を測定する生徒

(4) 密度= 質量÷ 体積
 密度は、体積1cm3あたりの質量(g)で表します。


上:密度の公式を示した板書
 割るという演算の意味を確認しました。また、『/』の読み方や意味も紹介しました。


上:アルミニウム、金、白金の1cm3あたりの質量(g)を発表する生徒
 純粋な物質の密度は決まっています。アルミニウム2.7g/cm3、金19g/cm3、白金21g/cm3 です。


生徒実習:1円硬貨の密度を求める
 実習を行う前に、実験器具『電子てんびん』『メスシリンダー』の使い方を確認します。いずれも小学校で使ったことがあるものなので、ごく簡単に済ませ、生徒の実習時間を確保しましょう。


上:1円硬貨の質量は1g/枚
 この場合、1円硬貨の数をかぞえなくても65枚あることがわかります。


上:1円硬貨の数をかぞえる生徒


上:メスシリンダーの使い方を確認するための板書

メスシリンダーの確認事項
・水平な台の上に置く
・上のア、イ、ウのうち、アの位置を読む
・上の場合、25cm3ではなく、25.0m3と目盛りの1/10まで目分量で読む
・初め30.4cm3、あと35.6cm3の場合、物体の体積は5.2cm3
(初めもあとも、切りがよい数字である必要はない)


上:メスシリンダーに適切な量の水を入れる生徒


上:水面と目線の高さを合わせて読み取ろうとする生徒


上:持参した1円硬貨を使って体積を測定する生徒


上:実験後の1円硬貨の水を拭く生徒


上:1円、5円、10円硬貨が見られる


上:実験データから密度を計算する生徒


上:自分の班のデータを板書する生徒




上:A君の学習プリント(クリックすると拡大)


上:B君の学習プリント(クリックすると拡大)


授業を終えて
 5円硬貨と10円硬貨を持参させずに、1円硬貨だけに絞った方が良かったと思いました。その他、盛り沢山の授業になりました。ごめんなさい。次の時間、もう1度確認します。


上:授業冒頭、水の表面張力で1円硬貨が浮く理由を説明する生徒とそれを応援する友達(掲載許可取得中)


上:1円硬貨が水に浮く様子

関連ページ
実験16 1円の密度 
1年(2002年)
基本操作 メスシリンダー、上皿てんびん 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第2章 原 子 1円硬貨の密度 p.26〜 p.27

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
第1章 量と単位 国際単位系(SI単位系) p.8〜 p.10
長さと面積と体積の関係、そして、密度へ p.9
誤差と目盛りの読み方 p.12〜 p.13
重さと質量の比較 p.17
重力単位系 p.17欄外
Nと重gの単位変換 p.17欄外

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