このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第26時
実験2 いろいろな物質の密度2012 6 22(金)、25(木)、27(水)
理科室はじめに
1時間目に続いて、自宅から密度を測定したいものを持参させました。
上:自宅から持参した色とりどりのガラス玉の体積を測る生徒
本時の目標
・私たちの世界はいろいろな物質からできていることを感じる
・純粋な物質は、固有の密度を持つことを知る
・密度について復習する
・いろいろな物質の密度を測る準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- いろいろな物質
- 本日の学習プリント (1/人)
- 電子てんびん(1/班)
- メスシリンダー200ml,100ml,50ml,20ml(各1/班)
- 上皿てんびん(演示実験)
- 薬包紙(演示実験)
授業の流れ
(0) 始業前に持参した物質を確認する
上:スプーン(スレンレス合金)、消しゴム(プラスチック)、1円硬貨などが見られる
上:色とりどりの岩石、鉱物、ガラス(二酸化ケイ素)、サンゴ(炭酸カルシウム)、硬貨が見られる(1) 密度の復習:水に浮くか沈むか
密度について十分に理解できていない生徒がいるので、もう1度復習することにしました。
上:A君の学習プリントの一部あらかじめ印刷しておいた4つの立方体(体積1cm3)に、物質名を記入します。クラスによって物質は違いますが、左端は水に浮くもの、左から2番目は水、3番目と4番目は沈むものにします。そして、教科書や理科便覧でそれぞれの質量を調べさせます。そして、質量÷体積=密度であること、密度が水より小さい物質は浮くこと、大きい物質は沈むことを確認します。このとき、浮き沈みの基準になるのは水ですが、その他の液体でも同じように考えることができます。例えば、液体エタノールに入れた場合、エタノールの密度を基準にして、密度がエタノールより小さい物質は浮き、大きい物質は沈みます。これは問題集に掲載されている問題なので、すでに学習した生徒を確認すると良いでしょう。その他の生徒のやる気が出ます。
(2) 密度の復習:質量と体積から計算する
いろいろな物質の質量と体積を測定させる前に、測定で得られた数値から密度を求める練習をしました。これから行う実習に使う表を使った計算練習です。練習問題の内容は、前時の学習内容によって違うので、以下に2つのクラスの例を紹介します。
A 組
A組の第1問は『くぎ10本』です。くぎ10本を電子てんびんで測定したら27g、メスシリンダーに水を入れたら52.0cm3、それにくぎ10本を入れたら62.0cm3になった場合です。さて、くぎの密度はどうなるでしょう? ・・・計算方法は、62.0cm3 ー 52.0cm3 = 10.0cm3 = 10cm3(体積)、次に、27g ÷ 10cm3 = 2.7g/cm3 (密度)、以上です。密度2.7g/cm3 はアルミニウムの密度と同じなので、このくぎ10本はアルミニウム製だったことが分かります。
第2問は『とうめいな靴』です。質量200g、メスシリンダーの初めの体積300cm3、として考えさせました。これだけの条件では不足しているので、透明な靴がガラス製であること、そのガラスの密度=2.4g/cm3 とすることを追加しました。これで、靴をメスシリンダーに沈めた後の体積を求めさせます。計算式は、体積=質量÷密度なので、200g÷2.4g/cm3 = 83cm3(体積) 、次に、300cm3 + 83cm3= 383cm3 (体積)、以上です。
第3問は『リンゴ』です。リンゴを水に入れたら浮きました。ということは、リンゴの密度は水より大きいか小さいか? ・・・水の密度は1g/cm3 なので、例えば、0.9g/cm3 にしておきましょう、ということで終了しました。
第4問は『1円硬貨27枚』です。質量27g、体積10cm3 だったら、密度は? ・・・27g ÷10cm3 = 2.7g/cm3 (密度)になります。
第5問は『1円硬貨54枚』です。質量54g、体積20cm3 だったら、密度は? ・・・54g ÷20cm3 = 2.7g/cm3 (密度)で、第4問と同じ結果になります。
第6問は『1円硬貨100枚』です。質量100g、体積37cm3 だったら、密度は? ・・・100g ÷37cm3 = 2.7g/cm3(密度)で、第4問、第5問と同じ結果になります。第4問〜第6問から、1円硬貨はアルミニウム100%であることが分かります。
. B 組
上:B組で、銀色のくぎ10本の質量と体積の測定結果から、その密度を求めるB君B組の第1問は『鉄』です。鉄を電子てんびんで測定したら15.8g、メスシリンダーに水を入れたら30.0cm3、それに鉄を入れたら32.0cm3になった場合です。さて、鉄の密度はどうなるでしょう? ・・・計算方法は、32.0cm3 ー 30.0cm3 = 2.0cm3 = 2cm3(体積)、次に、15.8g ÷ 2cm3 = 7.9g/cm3 (密度)、以上です。これで、純粋な鉄の密度は7.9g/cm3 であることが分かりました。
第2問は『くぎ』です。質量23.7g、メスシリンダーの初めの体積51.1cm3、くぎを入れたら54.1cm3になった場合です。計算方法は、54.1cm3 - 51.1cm3 = 3.0cm3 = 3cm3(体積)、次に、23.7g ÷ 3cm3 = 7.9g/cm3 (密度)、以上です。これで、測定したくぎが鉄であることが判定されました。
第3問は『銀色のくぎ10本』です。質量27g、メスシリンダーの初めの体積66.6cm3、くぎを入れたら76.6cm3になった場合です。計算方法は、76.6cm3 - 66.6cm3 = 10.0cm3 = 10cm3(体積)、次に、27g ÷ 10cm3 = 2.7g/cm3 (密度)、以上です。これで、銀色のくぎがアルミニウム製であることが分かりました。
上:B組の板書第4問は『ガラスの靴』です。質量200g、靴を入れたあとの体積450cm3 、ガラスの密度2.7g/cm3、としてメスシリンダーに初めに入れた水の体積を求めさせました。計算式は省略しますが、上の写真の右下にある赤字は、代表生徒がみんなの前で解説したときに使ったものです。私は理科室の後ろで、その様子を見ていました。答えは私が消してしまいましたが、左から順に370cm3、80cm3です。よくできました!
上:プリントの余白で密度を計算する生徒. C 組
上:C組の板書授業展開は省略。
(3) 実習:いろいろな物質の密度を測定する
残り30分弱は、持参したいろいろな物質の密度を測定します。純粋な物質、いくつかの物質が混じった物質、明らかに違う物質が組み合わさってできている物体など、いろいろありますが、1つの物体としての密度を求めることができれば合格です。今日は実習2回目です。メスシリンダーを正しく使えるようになり、複雑な形の物体の体積を正しく求められるようになれば実験の技能はAです。
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上6枚:生徒が持参したいろいろな物体
上:理科準備室にある密度測定用の物体
アルミニウム、鉄、銅の3種類がある。その表面は、同じ水色で塗装してある。
上:自分の測定結果を発表するD君
測定器具は、目分量で目盛りの1/10まで読みます。しかし、最終的な密度は、適当な位置で四捨五入させます。だいたい2桁ぐらいで良いと思います。教科書の有効数字の桁は統一されていません。上の写真の左端にある『銅』を見てください。8.96を四捨五入して9.0にしています。もっと積極的に解釈して、銅は9g/cm3でも正解です。新しい学習指導要領は、数学で『有効数字』を教えることになったので、その後に教えれば良いことです。本当は理科で教える内容ですが、これを指導するためには最低10時間必要です。有効数字の大切さは痛いほど分かっていますが、相手は中学生です。有効数字に限らず、実感を伴わない数や数式などの数学的思考を要求することは、子どもを自然から遠ざける行為です。理科の相手は自然です。自然の本質に迫るために学ばなければならないことが他に山積しています。
上:測定結果をプリントにまとめる生徒
上:前の時間にできなかった硬貨の密度を調べようとする生徒
上:B君の学習プリント
授業を終えて
「先生、絵具を持って来たから測っていい?」と聞かれた時は、えっ、と思いました。密度測れるかなあ? でも、勇気を出して「やってみなさい」と答えました。
上:オレンジ色の絵具の密度を測定しようとする生徒粒子の沈澱は、粒子の密度が水より大きいことを意味します。乾燥させてからもう1度測定する時間があれば、水の粒子と絵具の粒子の関係についても考察できます。水溶液、物質が水に溶けることについて考察できます。これは新しい教材としての可能性を秘めています。何でもやってみなければ分からないし、新しい着想は本物を見ることから生まれます。
水性絵具の密度を測るという子どもの発想に脱帽した瞬間でした。
関連ページ
・実験17 密度の測定 1年(2002年)
・実験6 密度の測定 1年(1999年)
・密 度 1年(1999年)
・基本操作 メスシリンダー、上皿てんびん 1年(1999年)実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』
第2章 原 子 1円硬貨の密度 p.26〜 p.27 いろいろな物質の密度 p.28 実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学』
第1章 量と単位 国際単位系(SI単位系) p.8〜 p.10 長さと面積と体積の関係、そして、密度へ p.9 誤差と目盛りの読み方 p.12〜 p.13
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練習3 密 度