HomeMr.Taka 中学校理科の授業記録1年(2016年度)

音速、モノコード(弦楽器)、ドップラー効果、マッハの壁、タイムマシン

     2016 11 18(金)〜24(木)
     理科室

はじめに
 今日で音の学習は終了です。本年度は4時間ありましたが、結果として詰め詰めな毎日でした。このページは盛りだくさんですが、学級によっては他の時間に振り分けています。


本時の目標
・音速と光速についてまとめ、理解する
・音速、山びこの問題ができるようにする
モノコード(弦による音)について理解する
ドップラー効果を理解する
マッハの壁を知る
タイムマシンの原理について話し合い、興味を持つ

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)音速=340m/秒=マッハ1 (5分〜7分)
 黒板の左右いっぱいに、長さ5mほどの直線を書きます。そして、直線を10等分するような目盛りを書きます。


図1:音速を説明するための図

 図1のような直線を書いたら、音は1秒間に340m進む、と教えてください。そして、窓の外を見るように指示して、遠くにある建物までの距離を目測させます。そして、その建物に向かって叫んだ時、何秒で声が届くかイメージさせます。マッハ1、という速さを視覚的な距離でイメージさせることは、今日の授業で最も重要な目標の1つなのです。

なお、14年前は『実験3 音の速さ、光の速さ1年(2002年)』で音速を観測する実習を行っています。本当に楽しい実験だったことを覚えています。


図2:天白川の堤防で音速を測る
実験3 音の速さ、光の速さ1年(2002年)から)

(3)音速の計算問題 (3分〜7分)
 とても簡単な問題を1問やります。とても簡単なので、算数ができない生徒を指名してください。そして、その生徒ができるようになることを目的とします。

同時に、できる生徒のために単位を正確に書いてください。どのように書くかは、図3の計算式、および、赤の斜線を真似てください。


図3:音が0.7秒で進む距離を求めるための計算式
 (計算式の中の斜線に着目!!)

(4)山びこの問題(3分〜7分)
 (3)に連続して、有名な問題を1問やりましょう。とても簡単な数字にしてあるので、みなさんも一緒に解いてください。暗算でできます。

問題: 山に向かって「ヤッホー」と叫んだら2秒後に声が返ってきました。
    さて、山までの距離は何mですか? 音速340m/秒、で計算しなさい。

 よくある答えは340m×2=680m、です。これは間違いです。2秒後に返ってくるということは、つまり、声が往復するために2秒かかっているわけですから、片道は1秒、です。つまり、山までの距離は『1秒間に音が進む距離』になります。したがって、正解は340m(340m/秒×1秒=340m)です。ここをクリックすると図示します。

(5)モノコード(弦楽器)(5分〜20分)
 弦を振動させて音を出す楽器を弦楽器といいます。弦の振動は横揺れなので、ほとんど聞くことができません。私たちが音として感じるのは、空気の縦揺れ(粗密波)だからです。そこで、弦の横揺れを縦揺れに変換する装置「共鳴箱」が必要になります。その多くは木製で、弦楽器の音色はこの共鳴箱によって決まるともいえます。楽器の値段を大きく左右するのも、この部分です。

 さて、弦の数はいろいろですが、二胡は2本、三味線は3本、バイオリンは4本、クラシックギターは6本の弦をもつ楽器です。日本の琴やピアノはたくさんの弦が張ってあります。さて、理科の授業では弦1本の実験装置「モノコード」を使い、弦の太さ・長さ・張力による音の変化をしらべてみましょう。


上3枚:モノコード(弦2本があるモノコード)
 2本の弦は太さが違う。写真は左が太く、右が細い。張力が同じ程度なら、弦が太いほど低音に(振動数が小さく)なる。 また、写真中央と写真右には、弦の途中に茶色い物体「琴柱(ことじ)」が置いてある。これによって振動する弦の長さを調節する。弦の長さが長いほど低音に(振動数が小さく)なる。

モノコードの実験のまとめ
(1)弦の弾き方の強さで、音の大きさが変わる。
   → 強く弾くと「大きな音」、弱く弾くと「小さな音」
(2)弦の太さ・張力・長さで、音の高さ(音程)が変わる。

  振動数(音の高さ)
小さくなる
(低い音になる)
←→ 大きくなる
(高い音になる)
弦の質量(太 さ) 太い弦にする 細い弦にする
弦の張力(張り方) たるませる ピンと張る
弦の長さ 長くする 短くする


図4:モノコードに関する板書 (とある練習問題の解き方の説明)

 時間とゆとりがある場合は、いろいろな弦楽器を使って演奏すると楽しい授業になります。音楽の先生と協力して行っても良いでしょう。なお、楽器演奏の基本は、正しい強弱と正しい音階です。もちろん、正しいリズムも必要です。


上:振動するギターの弦
 ギターの弦の数は6本が基本。弦は太さ・素材・質量などが違うが、弦の長さは全て同じになるので、演奏の前にその張力を調節して「ミ・ラ・レ・ソ・シ・ミ」になるように調弦する。次に、指で弦を弾くことによって振動させるが、その振動はブリッジ(駒)を通して表板やギター全体に伝わって増幅され、中央の穴「サウンドホール」から音として空気中に出る。


上:ギターの指板(フィンガーボード)上にあるフレット
 フレットとフレットの間を押さえることで、弦の長さを正確に変えることができる。つまり、正確な音程を作ることができる。これに対して、後述するバイオリンはフレットがないので、自分の感覚で音程をとる必要がある。


上:撮影に協力してくれたウインドオーケストラ部の生徒
 弦の張力を調節する部分をヘッドといい、6個の糸巻(チューニングヘッド)がある。弦の長さは、ヘッドの付け根にある「ナット(第1フレットの前)」から 「ブリッジ」まで。


上:ピアノの内部構造
  ピアノは「弦」をハンマーで叩いて振動させ、その振動を駒や響板によって共鳴(増幅)させる楽器。「弦」は叩けば正確な音程(音の高さ)が出るように調弦する。調弦方法は、チューニングハンマーを使って弦の張力を変えることで行う。自分でもできるが、専門業者に任せることが多い。


上:バイオリンの音を出す仕組み
 太さや材質が違う4本の弦の張力を調節し、「ソ・レ・ラ・ミ」が出るよう調弦(チューニング)する。調弦の基準になるのは高い方から2番目の「ラ」の音。演奏するときは、ネックという黒い部分で弦を指で押さえ、弦の長さを変えることで音程を作る。ギターやピアノのように物理的に弦の長さが決まっていないので、自分の感覚だけによって押さえる。弦の長さが決まったら、馬の毛を張った弓でこすって振動させる。弦の振動は「駒」から「表板」、そして、楽器内部にある「魂柱」を通して「裏板」に伝わり、楽器全体が共鳴して豊かな音を出す。

(6)ドップラー効果(5分〜10分)
 ドップラー効果は、救急車や消防自動車など緊急車両に使われています。楽しい説明・演示実験などをしながら、その原理を理解させましょう。


図5:ドップラー効果に関する板書

ドップラー効果確かめる実験例
(1)アラーム付きの時計を糸に結んで回転させる
(2)F1レースの物真似をする
(3)緊急車両の物真似をする
(4)大声を上げて教室を駆け抜ける


図6:大声を上げながら駆け抜けるE君
(『実験10 音の三要素をオシロスコープでみる1年(2012年)』から)

(7)マッハの壁(5分〜7分)
 飛行機は速い乗り物ですが、ほとんどの飛行機(ジェット機)は音速よりも遅く飛行します。音速より速い場合は、超音速と言われます。

 さて、飛行速度をだんだん上げていくと、いくつかの問題が発生します。そのうちの1つが音の壁(マッハの壁)と言われるものです。図7をみてください。そのには4つの図があります。


図7:マッハの壁

 左端は、飛行機を中心とする3つの同心円が書かれています。この円は、飛行機が出す騒音です。エンジンが出す『ゴー』という音、と考えください。それらを1秒ごとに表している模式図です。同心円になっているのは、飛行機が静止しているからです。

 左から2番目の図は、飛行機が右へ向かって進んでいる時の騒音です。3つの円が中心がずれているのは、騒音を出す飛行機が進んでいるからです。この飛行機の速度が音速(マッハ1)になると、左から3番目の図のようになります。飛行機の進行方向にすべての円が重なる部分『音の壁』ができています。音は振動ですから、音速で飛行を続けると空気の振動がどんどん重なり、大きな衝撃波となって、飛行機や物体を破壊するほどのエネルギーを持つようになります。

 さらに飛行速度を上げると、騒音が積み重なることはなくなりますが、今度は、過去に出した騒音を聞きながら飛行することになります。図7の右端がそれです。

(8)タイムマシン(5分)
 マッハの壁を理解できた生徒は、次に紹介するタイムマシンの原理を理解することができます。(7)が理解できたなら、タイムマシンにも挑戦してみましょう。今度は先生が解説するのではなく、代表生徒に解説させることも可能です。もちろん、以下の説明は不完全ですが、中学生の知的好奇心をくすぐるには十分です。


図8:タイムマシンの原理の説明図

 図8は、左端からピストルを打った時の模式図です。このピストルは特殊で、『こづか』という音を出します。右端にいる人には、まだ聞こえていませんが、やがて『こ』『づ』『か』の順に音が届きます。これは通常の音の聞こえ方で、タイムマシーンの説明ではありません。

 次に、ピストルを打った人が、その音を追いかけるように走った場合を考えてみましょう。はじめに聞こえる音は『か』です。その次は『づ』、その次は『か』です。つまり、音が逆順なり、『かづこ』と聞こえるわけです。実際、人類はマッハ1以上の速さで移動することができますから、この実験を行うことが可能です。過去にあった音を調べることが可能なのです。超音速で移動すれば、過去の音を体験することができるのです。

 光速は音速の100万倍です。秒速30万kmですが、超光速で移動することができれば、過去の現象を体験することができるはずです。これがタイムマシーンの原理です。ただし、この説明では、タイムマシーンで過去へ行くことは可能でも、未来へ行くことは不可能です。

(9本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 次から力学です。三角定規を持参してもらいます。

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