このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 2年(2017年度)です

第29時
実習4 いろいろな物質をつくろう2

     2017 7 11(火)、12(水)
     各教室

はじめに
 ほとんど前の授業と同じ学習プリントを使って、同じような授業を行います。目的は化学の基礎となる粒、すなわち原子(元素)について深く理解することです。同じ内容を角度を変えてまとめたり、丁寧に復習したり、発展させたりします。どのように展開するかは、現場の子どもたちの様子から判断します。


上:Aさんの学習プリント


本時の目標
・指定された元素16個をがんばって覚えようとする
・元素16種類からできる単体16種類を知る
・物質をつくる原子の種類と数は、化学式から推測する
・化合物は男女のカップルのようにできるが、それは周期表の位置によって組み合わせが決まっていることを理解する。さらに、名前のつけ方にも規則性があることを理解する。

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 本日の学習プリント  1枚/人

授業の流れ
 前時と同じです。以下の囲み部分(黄色)は実習3『いろいろな物質を作ろう』の一部です。

 休み時間のうちに教室へ入り、教卓に学習プリントをおきます。そして、「今日の学習プリントです。取りに来なさい」と指示します。さらに、「約束通り元素周期表の小テストを行います。始業のチャイムが鳴ってから2分後に開始します」と伝えます。

※前時との違いは2つです。
(1)覚えなければいけない16個以外は斜線で消してあること
(2)2学期の覚えることになる原子団4個の枠が追加してあること
 追加された4つの枠については、今回書かなくてもよいことを指示してください。必ず質問されます。

(1)元素周期表の小テスト(10分) 
 「さて、あと1分で小テスト開始です
(教室の時計の秒針をみて、正確に00秒になったところで指示すること。ほどよい緊張感ができる)。答えは本日の学習プリントに印刷してある元素周期表です。前回と全く同じ形です。答え合わせは、終わった人から行って構いません。答は前回のプリントにあります。間違えたものは元素記号と名前を10回ずつ書いてもらいますので、よろしく!」

 (時間になったら)時間です。始め!!」


上:私が板書した解答欄(元素周期表)
解答欄を板書するタイミングは、子どもたちが黙々と覚えている時間 & 解答している時間です。先生の所要時間は2分程度でしょうか。写真上で斜線を入れてある部分は、今後の化学反応式で出ないものです。

 5人ほど終了したタイミングで、自己採点の指示をします。正解は前の学習プリントにありますが、忘れた子どものために先生も板書してください。ポイントは、あっという間に正解を書きあげることです。子どもは先生がすらすら答える姿に憧れるものです。また、できない子どもの指導法についても再掲しますので参考にしてください。

 満点だった子は暇になりますが、休息時間にさせましょう。大文字・小文字の書き方について、先生が点検するのも良いでしょう。先生にほめられた子どもは満足するはずです。5分ほどのゆとり時間は、できない子どもたちにとっても自習できる時間が確保できます。なお、勉強ができない子どもは、HHHHHHHHHHと書いてから水素水素水素水素水素水素水素水素水素水素と書く傾向があります。そのような子を見つけたら、次のように勉強の仕方を教えてあげましょう!

 「おっと、10回書いても覚えることができない人を発見しました。この学級には何とビックリ3人もいます。その人の方法は、初めにHHHあああ〜と10回書いてから、水素水素水素おおお〜と10回書いています。それではHと水素がつながりません。正解にならない理由は、Hと水素の2つがつながっていないからです。君たちはもう中学2年生ですから、Hも水素も書くことができるでしょう。間違えた人が間違えた理由は、Hと水素がつながっていないことです。だから、時間がかかってもHの次に水素を書かなければ無意味です。10回書けば覚えられるという保証はありませんが、多少つながります。目的は10回書くことではなく、2つを繋げることです」


(2)確認:周期表における位置について(2分)
 「今日のテストは16個だけですが、最終的に16個だけでよいです(
下図)。ただし、それでは面白くないという人は前の時間に紹介したように1番から20番まで覚えるとよいでしょう。宇宙をつくる元素について、一番軽い1番水素から20番までを知っていることは、まるで宇宙や自然のしくみを理解しているような気分にさせてくれます」

元素周期表
1 番
水素
  2 番
3番 4番 5番

6 番
炭素

7 番
窒素
8 番
酸素
9番 10番
11番
Na
12番
Mg
13番
Al
14番 15番 16番
硫黄
17番
塩素
18番
19番
20番
Ca
中学で覚える原子記号16個
 

亜鉛
Ba

 「また、覚え方は「水兵リーベ•••」という方法もありますが、そのような覚え方は価値を半減させます。1番『水素』は左の一番上、2番『ヘリウム』は右の端の一番上、3番から10番まではその下の位置する、11番から18番まではその下にある、という位置が重要です。原子周期表のおける位置、ポジションから即答できるようになれば本物です。例えば、軽くて周期表の中央部にある原子番号6番は•••? •••炭素、といえるようになれば、なぜ炭素が有機物と言われ、無限ともいえる化合物をつくることができるのか説明できるようになります」

(3)元素16種類それぞれの『単体』をつくる(15分)
 「今日は、元素16種類の単体をすべて確認します。元素1つにつき1つの単体をつくります。では、原子番号1番から順にまとめていきましょう。原子番号1番『水素』からできる物質『水素』の化学式は? •••そうですね。H、ではなく、H2です。これは水素原子2個が結合して、水素という物質になっていることを示しています。H1でもH3でも物質『水素』としての性質を持っていません。水素爆発を起こす水素はH2です。次に覚えるものは原子番号6番『炭素』です。炭素の化学式は? •••そうですね。Cです。C2でもC3でもありません。これは炭素原子1個で炭素の性質を持っていることを示しています。次は原子番号7番『窒素』ですが、物質『窒素』の化学式は? •••そうですね。N、ではなく、N2です。これは •••(中略)••• 19番からはすべて金属になります。金属は原子1個で金属としての性質をもっているので原子記号を書くだけでよいです」

 下表は、元素16種類について、それぞれの単体の作り方を2つに分けたものです。
 @ そのまま、でよいもの
 A 右下に小さな2書くもの

元素16種類からできる単体16種類
※単体の作り方は2つあります
H2
水素
  2番
   


炭素

N2
窒素
O2
酸素
   
Na
ナトリウム
Mg
マグネシウム
Al
アルミニウム
   
硫黄
Cl2
塩素
 

カリウム
Ca
カルシウム
原子1個で物質となる
そのまま、でよいもの
原子2個で物質となる
右下に小さな2書くもの

Ag
Fe
 

Cu

Zn
亜鉛
Ba
バリウム

(4)金属の位置の確認(2.5分)
 「ここで、金属について確認しておきましょう。金属は16個のうち10個です。かなりの割合ですね。元素全体からみても同じように割合は高く、元素92種類のうち金属は70種類もあります。さて、金属の作り方はさきほど紹介したように簡単です。原子記号を書くだけです。また、金属の位置についても確認しておきましょう。すべて周期表左側(下図)で、すべて『女の子』です。なぜ、左から2列目にたくさん並んでいるのかは、これからすぐに教えます」

中学で覚える金属10種類
1   2
3 4 5

6

7 8 9 10
Na Mg Al 14 15 16 17 18
Ca  
Ag Fe
 

Cu

Zn
Ba

(5)原子2個からできる単体=気体、と覚えればよい(2.5分)
 「また、原子2個からできている物質についても確認しておきましょう。全部でいくつありますか? •••そうですね。水素、窒素、酸素、塩素の4つです。では、もう1つ質問です。これら4つの共通点はありますか? •••よくわかりましたね! すべて気体です。もちろん絶対零度に近づければ液体窒素や液体酸素になります。みなさんには1年生の時に、液体酸素を使って液体酸素をつくる実験を見せたと思います。しかし、常温、つまり普通の温度、25℃の場合はすべて気体の状態で存在する物質です。これらは分子とも言いますが、これについては2学期になってから教えます。予習したい人は教科書に書いてありますので、自分で調べておいてください

原子2個からできている物質=気体
2
水素
  2
3 4 5

6

2
窒素
2
酸素
9 10
11 12 13 14 15 16 Cl2
塩素
18
19 20

 ここまでが授業前半です。5分ほど休息時間をとってもよいでしょう。本気の休息です。先生からの雑談もなし、です。何か発見した子どもは自主的にまとめ活動をすると思います。頭をフル回転させた子どもは机に伏せて休息すると思います。思い思いの方法でリフレッシュしてから、授業後半に入りましょう。以下は授業前半の2クラスの板書です。参考にしてください。ただし、それぞれのクラスの子どもに合わせて授業展開をしているので、違うまとめ方になっています。ご了承ください。


上:授業前半の板書(A組)
※周期表の縦列を意識させるため、水素•ナトリウム•カリウム•銀の順にまとめている
※O3(オゾン)が追加されている
※大気の組成(窒素78%、酸素21%、アルゴン1%)について記述されている
←女子→ おかま ← 男子→ ニート、は授業後半開始に板書したもの


上:授業前半の板書(B組)
※前時のプリントと同じ手順(金属、希ガス、非金属のいくつか)(単体の分子)でまとめた
※O3(オゾン)が追加されている
←女子→ おかま ← 男子→ ニート、は授業後半開始に板書したもの

(6)化合物の作り方(20分)
 「前回も男女カップルのように化合物をつくりましたが、今回は名前から化学式をつくってもらいます。元素周期表を見てください。まず、男女の位置を確認しますね。左から3列は?••• その通り女子ですね。その次の列は?••• その通りおかまです。おかまとは、男女どちらとも仲良くできる、という意味です。次の3列は?••• その通り男子です。そして、残された右端1列は?••• その通り、誰とも仲良くならないという意味でニート、として紹介しました(上図参照)

 「化合物は『男女が化合してできて質』ですが、その名前のつけ方は『男女』です。(ここまでを上図のように板書してから)男子を確認すると、原子番号17番『塩素くん』だけです。この塩素くんを4人の女子と化合させてみます」

(6-1)男女の両サイドのものを化合させる
女 子 おかま 男 子 ニート
水素    

 

       
           
ナトリウム         塩素
カリウム    
 

 「まず、男女とも両サイドのものを化合させてみましょう。周期表見てください。女子は4人いますが、男子は1人しかいませんね。したがって、組み合わせは何通りできますか? •••そうですね、4通りできます。この4通りすべてをまとめます」


上:男女の両サイドのものを化合させてできる化合物4種類

 「原子番号1番の女子『水素さん』と化合した場合は、『塩素くん』『水素さん』なので、塩素の素を取って『塩』化『水素』になります。(黒板に塩水素と板書し、さらに、をつける)塩化水素の化学式はとても簡単です。そのまま書くだけです。つまり、HCl(HClと板書する) これで完成です! 次の女子は『ナトリウムさん』もまったく同じよう化合させてみましょう。名前も化学式も同じように考えてください。ではここから順番に指名していきます。今日は11日なので11番の人から順に出席番号順に当てていきます。簡単なので近くの友だちに聞かないようにしてください。で、11番は誰ですか? はい、A君ですね。ではA君に問題です。塩素とナトリウムが化合した物質を何と言いますか? •••えっ、いきなりヒントですか! 簡単過ぎてヒントが難しいのですが、言いますよ。塩素と化合した水素は、塩化水素でしたね。塩素の素ととって『塩』にして、塩と化合した水素だから塩化水素でした。今の問題は、水素がナトリウムになっただけなので••• そうですね。塩化ナトリウムです。A君着席してください。次に、塩化ナトリウムの化学式を答えてもらいます。出席番号12番の人、お願いします! •••完璧です。NaClです。ただし、大文字と小文字の区別がしっかりできていない人はテストで×になりますので注意してください。次は、『カリウムさん』です。•••(後略)•••

(6-2)男女の中央のものどうしを化合させる
女 子 おかま 男 子 ニート
     

 

       
        酸素  
  マグネシウム     硫黄  
  カルシウム  

 「次は、男女の中央のものをどうしを組み合わせます(上図)。原子番号20番までの場合、女子は2人、男子も2人になりますから、組み合わせとしては何通りできますか? •••ちょっと難しいかな? •••よくできました! 4通りです」

 「名前も化学式もまったく同じようにつくります。つまり、酸素とマグネシウムが化合したものは? •••そうですね、酸化マグネシウムです。その化学式は? •••そうですね、MgOです。 酸素とカルシウムが化合したものは? •••そうですね、酸化カルシウムです。その化学式は? •••そうですね、CaOです。これら2つは酸素と化合したものなので、酸化物といいます(下図)」 


上:2つの酸化物

 「もう1人の男子『硫黄くん』と化合したものも同じように名前と化学式をつくることができます。ただし、酸素は素(そ)を取って『酸化』としましたが、硫黄は黄(おう)を取って『硫化』とします。硫化の読み方ですが、硫化(いか)ではありませんよ。硫化(りゅうか)です。硫化の硫(りゅう)は硫酸の硫(りゅう)で、硫酸にはS(硫黄)原子が含まれます。さて、『硫黄くん』との化合物を2つ作りましょう。まず、マグネシウムが化合したものは? •••そうですね、硫化マグネシウムです。その化学式は? •••そうですね、MgSです。 酸素とカルシウムが化合したものは? •••そうですね、硫化カルシウムです。その化学式は? •••そうですね、CaSです。これら2つは硫黄と化合したものなので、硫化物といいます(下図)」 


上:2つの硫化物

(6-3)男女の内側のものどうしを化合させる
女 子 おかま 男 子 ニート
     

 

       
      窒素    
    アルミニウム      
     

 「次は、男女の内側のものをどうしを組み合わせます(上図)。原子番号20番までの場合、女子『アルミニウムさん』、男子『窒素くん』しかいないので、組み合わせは? •••その通り、1通りしかありませんね」

 「名前も化学式もまったく同じようにつくります。名前? •••そうです! よくわかりましたね。窒化(ちっか)アルミニウムです。聞き慣れないことばですが、正解です。窒素の素(そ)をとって窒素と化合したアルミニウム『窒化アルミニウム』になります。この物質は無色透明のとても固い物質です。さて、その化学式は? •••そうですね、AlNです(下図)」 


上:窒化アルミニウム


上:授業後半のここまでの板書

 ここまでの(6-1)(6-2)(6-3)は男女比が1:1でカップルをつくっていましたが、次は男女の割合が違う場合を教えます。例えるなら、男好きな女子、女好きな男子がカップルをつくる場合です。

 水の化学式は2ですが、H:O=2:1です。つまり、女子(Hさん)2人に対して、男子(Oくん)は1人です。

(6-4)男女比が1:1でない化合物
 水は女:男= 2:1です。これは化学式『2』を見ればわかります。2は『21』と同じです。 1 は省力されているだけです。問題は、『酸素くん』が2人の『水素さん』と化合するかです。その答えは元素周期表の位置をみればわかります。下表を見てください。
女 子 おかま 男 子 ニート
1人 2人 3人

4人
男女不問

3人 2人 1人 誰とも×
自分だけ
水素          
      窒素 酸素  
ナトリウム マグネシウム アルミニウム   硫黄 塩素
カリウム カルシウム  

 これと同じように、アンモニアも作ることができます。アンモニアは、水素と窒素の化合物です。それらの比は、元素周期表を見ればわかります(下図)。
女 子 おかま 男 子 ニート
1人 2人 3人

4人
男女不問

3人 2人 1人 誰とも×
自分だけ
水素          
      窒素 酸素  
ナトリウム マグネシウム アルミニウム   硫黄 塩素
カリウム カルシウム  

 水素さんは1人、窒素くんは3人必要としています。したがって、水素:窒素=3:1、3になります。ただし、アンモニアの化学式は3です。例外的に男子•女子の順になります。この例外はアンモニアだけです。

 化学式はすべて女子•男子の順に書く、と覚えてください。そして、男女比は小さな数字で表すこと、男女比は周期表を見ればわかることも覚えてください。


上:ここまでの板書全体


◎ 生徒の学習プリント

上:Aさんの学習プリント(クリックすると拡大)


※プリント右側に『酸化物』と『硫化物』がまとめてあります


上:Bさんの学習プリント(クリックすると拡大)


授業を終えて
 同じような授業を2回繰り返すことで、かなり定着したと思います。私は3クラス教えていますが、クラスによって2時間の内容はかなり違います。興味がどんどん膨らむタイプのクラスは、1時間目にたくさん教えることになりますが、わからなくなる子どもができてしまうので、2時間目はじっくりと丁寧に教えることにします。逆に、几帳面なタイプのクラスは、1時間目に基礎的なことをしっかり教え、2時間目は応用となるものを教えます。以下写真2枚は、他クラスの最終板書です。


上:C組の最終板書
※ポイントは右側『化合物を作る』ですが、これは基礎編を消した応用編です

 クラスによって教え方を変えることはとても重要なことですが、若い先生には難しいことでしょう。このページと前のページを何度も読み、骨子となる考え方と細かい技術を学んでください。大切なことは、目の前にいる子どもに聞くことです。すべての答えは、子どもたちの中にあります。彼らの声を聞くことができれば、とても豊かな授業になることでしょう。

 完璧な授業は世界中どこを探してもありません。生きているあなたと子どもたちの間だけに存在します。このHPが後世のみなさまのお役に立ちますように!

関連ページ
単体と化合物(2年、2003年)
分子と原子(2年、2000年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学

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