このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 2年(2017年度)です

第28時
実習3 いろいろな物質をつくろう

     2017 7 10(月)
     各教室

はじめに
 元素周期表にある元素を使って、いろいろな物質をつくります。水、酸素、二酸化炭素などこれまでに学習したことがあるものだけでなく、元素を組み合わせてできる無限ともいえる可能性について紹介します。さて、物質は2つに分けることができますが、1つは1種類の原子からできている単体、もう1つは2種類以上の原子からできている化合物です。単体と化合物は、実験1『チョークはどこまで小さくなるか』で学習したばかりなのでほとんどの子どもが覚えているでしょう。

 なお、実際の授業では、元素周期表の小テストからはじめます(小テストは連続3時間行うことを予告してあります)。


上:Aさんの学習プリント


本時の目標
・元素周期表 & 16個の元素を覚えようとする
・物質は単体と化合物にわけられることを知る
・単体の作り方を知る
・化合物は男女のカップルのように組み合わせて作ることを知る

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 本日の学習プリント  1枚/人

授業の流れ
 休み時間のうちに教室へ入り、教卓に学習プリントをおきます。そして、「今日の学習プリントです。取りに来なさい」と指示します。さらに、「約束通り元素周期表の小テストを行います。始業のチャイムが鳴ってから2分後に開始します」と伝えます。

(1)元素周期表の小テスト(10分) 
 「さて、あと1分で小テスト開始です
(教室の時計の秒針をみて、正確に00秒になったところで指示すること。ほどよい緊張感ができる)。答えは本日の学習プリントに印刷してある元素周期表です。前回と全く同じ形です。答え合わせは、終わった人から行って構いません。答は前回のプリントにあります。間違えたものは元素記号と名前を10回ずつ書いてもらいますので、よろしく!」

 (時間になったら)時間です。始め!!」


上:私が板書した解答欄(元素周期表)
解答欄を板書するタイミングは、子どもたちが黙々と覚えている時間 & 解答している時間です。先生の所要時間は2分程度でしょうか。写真上で斜線を入れてある部分は、今後の化学反応式で出ないものです。

 「(解答欄を書き終えたら)黒板を見てください。斜線部分は、こらから授業で教える化学反応式で使わないものです。斜線を書いても良いし、そのままにしてすべて覚えてもよろしい!」

 その後、机間巡視で子どもたちの様子をみます。ほとんど書けずにぼんやりしている子には、赤ペンで答え合わせをするように指示します。すると、ほどんどの子は「イヤだ。もう少し頑張る!」と言いますので、静かにがんばれるようなら見守ってあげましょう。

 遅い子とは逆に、すべて書き終えている子がいたら、同じように赤ペンで答え合わせをするように指示します。そして、半数ほどの子どもが答え合わせを始めたところで、次のように指示します。

 「時間です。全員解答やめ! 全員、赤ペンで答え合わせをしなさい。答えは前の時間のプリントの通りです。間違えたものは赤ペン10回ずつで書きなさい(書けば覚えられるかもしれません)。元素記号と日本語の両方を書いてください。漢字を間違えた人もアウトです。すべてセットで完全正解なので、一部分でも間違えた人は10回ずつセットで書いてもらいます。描く場所はプリントの裏です。裏とはプリントの右側ではなく、(プリントの裏表を見せながら)プリントの裏側です」

 満点だった子は暇になりますが、休息時間にさせましょう。大文字・小文字の書き方について、先生が点検するのも良いでしょう。先生にほめられた子どもは満足するはずです。5分ほどのゆとり時間は、できない子どもたちにとっても自習できる時間が確保できます。なお、勉強ができない子どもは、HHHHHHHHHHと書いてから水素水素水素水素水素水素水素水素水素水素と書く傾向があります。そのような子を見つけたら、次のように勉強の仕方を教えてあげましょう!

 「おっと、10回書いても覚えることができない人を発見しました。この学級には何とビックリ3人もいます。その人の方法は、初めにHHHあああ〜と10回書いてから、水素水素水素おおお〜と10回書いています。それではHと水素がつながりません。正解にならない理由は、Hと水素の2つがつながっていないからです。君たちはもう中学2年生ですから、Hも水素も書くことができるでしょう。間違えた人が間違えた理由は、Hと水素がつながっていないことです。だから、時間がかかってもHの次に水素を書かなければ無意味です。10回書けば覚えられるという保証はありませんが、多少つながります。目的は10回書くことではなく、2つを繋げることです」

(2)復習:物質は単体と化合物に分けらる
 物質は、単体と化合物にわけることができます。単体は1種類の原子からできているもの、化合物は2種類以上の原子からできているものです。見分け方は簡単です。化学式を見れば一目瞭然です。例えば、水の化学式を調べるとなので、という2種類の原子からできていることがわかります。したがって、水は化学式です。

先生へのワンポイント・アドバイス: 純物質は、おあずけ
 本来なら『物質ではなく純物質』、として教えるべきですが、本日の授業では純物質という言葉を使いませんでした。純物質に対応するものとして混合物がありますが、子どもたちの意識に混合物はありません。そっとしておきましょう!
  教える内容を限定し、混乱を防いでください。物知り先生は何でも詳しく教えたくなりますが、がまんしてください! 先生が教えないように我慢すればするほど、子どもたちは1つの内容に集中していきます。

ここから本日のメインです!

(3)単体という物質の作り方
 「単体は1種類の原子からできているものです。例えば、炭素(C)は炭素原子1個からできているのでC、と書きます。正確には、C1個なので『C1』と書くべきですが、1は省略して『C』と書きます。硫黄(S)も同じように原子1個からできているのでS、と書きます。1は省略です。しかし、酸素は原子1個で存在することができません。みなさん! 酸素が酸素として存在するめには何個必要か分りますか? あれ、酸素の化学式を思い出せばわかると思いますが••• そうですね、2個です。酸素の化学式は『O2』であり、『O』ではありません。これは、酸素原子2個が結合していることを示しています。さらに、みなさんにはすでに紹介してありますが、酸素原子3個が結合してできている物質を何といいますか。••• すばらしい! オゾンです。オゾンは『O3』であり、これは酸素原子3個が結合してできた物質です。ここで酸素について復習しましょう! みなさんが一般に酸素といっている物質は、呼吸に使うものだったり物質を燃やすのを助けるたりする物質だと思いますが、それらは酸素原子2個が結合したもの『O2』です。酸素原子1個だけでは、呼吸に使うことも物質を燃やすこともできません。自然界には『O』という物質は存在しません。かならず2個結合した『O2』として存在します。その理由を知りたい人もいると思いますが、先生は教えません。高校で教えてもらってください。中学生はとにかく酸素『O2』、オゾン『O3』と覚えてください。なお、『O2』と『O3』はまったく違う性質を持った物質で、まったく似ていません。酸素原子という同じ材料からできていますが、まったく違う物質です」

 「黒板を見てください。原子1つだけでは存在できないものを塗りつぶします」


上:単体のうち、原子記号を書くだけでよいもの

 「さて、何個塗りつぶしましたか? 4つですね。水素、窒素、酸素、塩素です。それらは、いずれも原子2個が結合した状態で存在します。『H2』『N2』『O2』『Cl2』です。いずれも気体の状態で存在する物質であり、分子といわれるものですが、分子については明日以降にきちんと説明します。では、ここまでをプリントにまとめましょう」

単体のまとめ
(ア)原子1個からできているもの
  炭素(C)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシム)、Al(アルミニウム)
  硫黄(S)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Ag(銀)、Fe(鉄)
  Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ba(バリウム)の以上12種類

(イ)同じ原子2個からできているもの
   水素(H2)、窒素(N2)、酸素(O2)、塩素(Cl2)
(ウ)同じ原子3個からできているもの
  オゾン(O2)


※実は、授業では違うまとめ方をしました。理想を追い求めて、難しくしてしまいました。
(ア)金属
(イ)希ガス
(ウ)非金属

 さらに、
(作り方1)そのまま書くだけ』
(作り方2)原子番号の右下に小さな数字を書く

 としました。しかし、これらのまとめ方は子どもの自然な思考の流れとは違うので、このページに紹介した上記方法でまとめることをお勧めします。なお、以下の(作り方3)男女のカップルのように組み合わせるについては悪くない方法です。中学3年生なら悪くない方法ではなく、とても優れたお勧めの方法になります。子どもの発達段階に適合するからです。

(4)化合物という物質の作り方
 「これまでは1種類の原子からできているものでしたが、化合物は2種類以上の物質からできているものです。例えば、水、二酸化炭素です。いずれも化学式は知っていますね。何ですか? •••そうですね。H2O、CO2です。これらは2種類の原子からできています。つまり、水『H2O』は水素原子『H』と酸素原子『O』からできています。では、ここでみなさんに問題です! 水という物質は何個の原子からできていますか? おっと、答えがわかっても言ってはいけません。全員に答えてもらいますからね。正解は2個、または、3個です。2択問題なので、絶対にどちらかに答えてください。正解だと思う方に勢いよく手をあげてください。手のあげ方が遅い人やしっかりあげない人は不正解とします。では、もう一度問題を言います。『水は何個の原子からできていますか。答えは2個または3個です』 では、聞きます。準備はいいですか? いきます! 正解は2個だと思う人! あれっ、1人しか手をあげていませんね。大丈夫でしょうか。次に、3個だと思う人! なるほど、そうですか。3個は正解ですが、みんなに説明できる人はそのまま手を挙げていてください」

 ここで、代表生徒に説明させます。ポイントは化学式です。化学式を調べれば、原子の種類と数がわかります。つまり、H2Oは原子の種類は『H』と『O』の2種類ですが、原子の数は『H』2個+『O』1個=3個、になります。子どもたちに説明させる方法については、私の著書『一斉授業の教科書(学陽書房、2015年)』に詳しく書いてあります。

 次に、男女のカップルのように組み合わせてつくる方法を教えます。この方法は3年生『イオン』で大好評のものですが、2年生でも軽く教えてみました。指導例は次ページ『実習4いろいろな物質をつくろう2』の授業後半の最後にあります。ご覧ください。


上:本日の最終板書
※ポイントは右側『化合物を作ってみよう』です

(5)本時のまとめ & 次時の予告
 本時のまとめを自由にさせます。また、次の時間も元素周期表の小テストを行うことを予告します。


◎ 生徒の学習プリント

上:Aさんの学習プリント(クリックすると拡大)


上:Bさんの学習プリント(クリックすると拡大)


授業を終えて
 子どもたちの感想から判断すると、まずまずのできだったと思います。ただし、今日は授業計画の段階で理想を求めてしまいました。次のように授業展開するべきでした。

A 単体の作り方
(1)元素(原子)記号を書くだけ
    → 原子1個だけで物質となる

(2)元素(原子)記号の右下に小さな数字を書く
   → いくつかの原子が結合して物質となる(物質としての性質をもつ)
   → 結合した原子の数は、右下の小さな数字で表す

B 化合物の作り方
 化合物は本時の方法で良いと思います(詳細は次ページ)。唯一 & 最大の懸念事項は、男女、カップル、おかま、ニートなどの表現が適切かどうか懸念です。2017年現在、いずれも放送錦衣用語ではありませんが将来は不明です。それよりも、子どものたちの反応の方が気になりましたが、何とか大丈夫のようでした。これらの表現はとても有効ですが、使い方を少し間違えると大変なので、社会情勢や学校の現状をよく見ながら、そして、目の前の子どもの反応をよく見ながら適切に使うようにしてください。現場の先生、がんばってください! 私もがんばって執筆しています。

関連ページ
単体と化合物(2年、2003年)
分子と原子(2年、2000年)
チョークはどこまで小さくなるか(2年、2017年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学

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