このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第54時

観測4 手作り湿度計で湿度を求めよう 

2017 10 31(火)、11 1(水)
普通教室

はじめに
 湿度は、空気中の水蒸気量によって決まります。よく間違えるのはその単位です。例えば、気温22℃、湿度60%の場合、気温の単位は℃ですが、湿度の単位はありません。%は割合を表す記号(百分率、ひゃくぶんりつ)です。つまり、湿度60%は、全体を100としたときに60ある、という意味ます。

気象の学習のポイント

(1)気象でもっとも重要なことは、水の状態
 気象でもっとも重要なことは水である、といえるでしょう。水は温度にって、氷・水・水蒸気という3つの状態に変わります。固体・液体・気体に状態変化します。一般に『水』というと、液体の水をさしますが、気象の学習ではこれらを区別することがとても重要です。

(2)見える水と見えない水
 氷・水・ 水蒸気のうち、目に見える状態は2つです。すなわち、氷(固体)と水(液体)は見ることができますが、水蒸気(気体)は見えません。例えば、空の浮かぶ雲は、氷・水・水蒸気のうち、どれでしょう。これまでの説明をきちんと理解できていれば、答えが氷と水であることがわかります。水蒸気は見えない状態の気体です。気体は水に限らず、どのような物質でも目に見えない状態です。

(3)見えないものの見える化(モデル図)
 見えないものを理解することは大変なので、モデル図にしてみましょう。見えるようにすれば、視覚情報を使って思考することができるようになります。モデル図の書き方はいろいろありますが、できるだけ単純な図形を使う方がよいでしょう。私の授業では、目に見えない水蒸気の粒のモデルを◯とします。そして、目に見える氷や水は◯の集合として表現しますが、場合によって、水色の色鉛筆で塗ってしまうだけにすることもあります。

(4)大気の見える化(モデル図)
 大気はいろいろな気体の集まり(混合物)です。窒素78%、酸素21%、アルゴン1%、二酸化炭素0.04%であることはみなさんご存知でしょう。それらは目に見えませんが、私は見えるものとして、水色の色鉛筆で塗らせることにしています。何気ない作業のように見えますが、見えないものを見えるようにするという意味でとても重要です。水の見える化(水分子のモデル図)はその延長線上にあるからです。先生がきちんと意識して色塗りをさせるかどうかで、子どもたちの理解度は大きく変わります。

 大気の見える化は前時『大気圧と風』に行いました。の見える化は本時から3時間かけてゆっくり行います。

関連ページ
実験3湿度の測定2年(2003年)


上: 本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
・湿度は、空気中にある水蒸気量によって決まることを理解する
・湿度100%の場合、水は蒸発しないことを理解する
・湿度が低いほど水の蒸発スピードが大きくなり、単位時間あたりの気化熱をたくさん必要とすること。その結果、湿球の温度が低くなることを理解する。

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 100℃温度計(2)
  • ガーゼ(適量)
  • 水(適量)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)本日の天気図 (10分〜15分)
 本時の学習内容は簡単なので、たっぷり時間をかけて読み取ることにします。

(3)だだ今の気温(乾球)、湿球が示す値(5分〜10分)
 100℃温度計2本を用意し、それらの値を読みます。この温度は『乾球』の温度=ただ今の気温、です。なお、温度計を球を持つと、すぐに体温の影響を受けるので注意してください。

温度計の誤差、誤差の学習
  生徒用の温度計(1本600円程度)は、1℃の誤差があります。演示実験する場合は、事前に同じ温度のものを選んでおきましょう。

 子どもたちに誤差を教えたいなら、温度計はとても良い教材です。

 理科室にある全ての温度計を配布し、それらの全ての温度を読ませます。そうすれば、誤差の存在に気づくだけでなく、誤差の正しい扱い方も教えることができます。正しい扱い方とは、明らかな誤差を持っている温度計を無視したり、平均を求めたりすることです。

 次は湿球です。湿球とは文字通り、温度計の球を濡らしたものです。ガーゼを水で湿らせ、それを球に巻きつけます。温度計の温度が下がっていきますが、ある一定の温度で止まります。その温度が湿球の温度となります。

 なぜ温度が下がるのか、なぜ一定のところで止まるのか、それら2つの問題については、これから後の時間でジッックリ考えます。思考時間は15分以上確保します。これが理解できれば、その後の飽和水蒸気量、雲のでき方など、ほとんど全ての気象現象が理解できるといっても過言ではないからです。


上:A組の板書(クリックすると拡大します)

(4)湿球の温度が下がり、一定の温度で止まる理由
 湿球の温度が下がる理由は簡単です。水が状態変化する時に、熱エネルギー(気化熱)を奪うからです。この場合の気化熱は、液体の『水』が気体の『水蒸気』になる時の熱です。体温調整のために体からでる汗も同じように蒸発熱を皮膚から奪うので、その分だけ体温が下がります。

 問題は、だんだん下がっていった温度が、ある一定の値で止まることです。これは、蒸発スピードによって説明できます。蒸発が始まってからしばらくの間は、温度がどんどん下がっていきます。これは蒸発熱を奪っていくことから単純に説明できます。しかし、ある一定の温度まで下がると、周りの空気がもっている熱(気温)から供給される熱と蒸発熱が釣り合います。つり合うのは、供給される速さと奪われる速さです。

 乾燥している空気の場合は、蒸発熱を奪う速さが大きいので、それと同じ量の熱の供給を受けるためには大きな温度差が必要になります。その結果、乾球と湿球の温度差が大きくなるのです。逆に、湿度100%の場合は蒸発熱を奪われることがないので、乾球と湿球の温度差はありません。


上:B組の板書(クリックすると拡大します)

(5)乾球と湿球の温度差から、湿度をもとめる一覧表 (3分〜5分)
 (4)の原理が理解できれば、いとも簡単なことです。単純に、乾球(気温)と2つの温度差の交点を調べれば良いことですからね。

(6)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 目に見えない水蒸気の粒をイメージさせられるかがポイントです。この作業は、これからの授業でも繰り返し行うことで、だんだん見えないものを形をもつモデルとしてイメージできる力がついてきます。1時間ずつ、確実におさえていきましょう。

 また、この記録には授業中、子どもたちに見せた乾湿計の写真がありません。ガーゼを巻いた湿球の写真もありません。すみません。別年度の実践『実験3湿度の測定2年(2003年)』をご覧ください。

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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観測5 湿度100%のmodel図
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