このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第55時

観測5 湿度100%のモデル図 

2017 11 2(木)
普通教室

はじめに
 前時は『大気を見える化』しましたが、本時は『水を見える化』します。


上:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
水の粒のモデルを書く
液体気体の状態を書きわける
蒸発する水の粒を書く
・水蒸気(気体の水)が飛び回っている様子を書き、理解する
・飽和するまで、同じ速さで蒸発し続ける様子を書き、理解する
・蒸発が止まったに見えても、蒸発していること(平衡状態にあること)を理解する
・平衡状態=湿度100%、であることを理解する
・湿度100%の装置を加熱・冷却した場合の水のモデル図を考える
・熱エネルギー量を、→の長さで表現する
飽和水蒸気量は、温度によって変わることを理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1
分)

(2)今日の天気図(3分〜5分)

(3)ある密閉した空間に、水が入った容器を放置した時の水をモデル化する(20分〜25分)
 水のモデルを書きます。正確には水分子ですが、あえて分子、という言葉は使いません。

 学習プリントに、図1のような密閉した空間と容器を印刷しておきます。そして、左端の容器に水の粒12個を書かせます。水のモデルです。12個の粒は、横6個・縦2列とします。


図1:水の粒12個

 次に、放置するとどうなるか考えます。


図2:粒2個が飛び出した様子

 図2は 粒2個が飛び出した様子です。2つの粒は自由に飛び回っている『気体』という状態になった水の粒です。いわゆる水蒸気です。

 なお、飛び出すことができる粒は、一番外(表面)にあるものだけです。このような飛び出し方を蒸発、といいます。似たようなものに沸騰、がありますが、沸騰は内部から飛び出すことです。水が沸騰するためには100℃という熱エネルギーが必要ですが、蒸発するための熱エネルギーは0℃以下でも構いません。

 ではでは、さらに放置するとどうなるでしょう。


図3:粒4個が飛び出した様子

 さらに放置すれば、さらに2個飛び出し、合計4個の粒が気体状態になります(図3)。


図4:粒6個が飛び出した様子

 図4は、これまでと同じペースで粒2個が飛び出した様子を表しています。そして、いよいよ最終段階になります。容器にある水の粒はいつまでも2個ずつ飛び出していきます。しかし、飛び出すことはできても、自由に飛び回る空間には限界があります。その結果、図5のような状態になります。


図5:さらに2個飛び出すと同時に、2個戻ることを表現したもの

 熱エネルギーが変わらなければ、容器の水はいつまでも2個ずつ飛び出していきます(単位時間当たり)。しかし、自由に飛ぶことができる空間に限りがあるので、いつか限界に達します。限界のことを飽和、といいます。したがって、その水蒸気の量を『飽和水蒸気』と言います。飽和=限界(100%)、です。

 空間にある水蒸気が飽和状態(限界)になると、気体になる水と液体へ戻る水が同じ量になります。図5では、気体になる粒を2個、液体へ戻る粒を2個として表現しています。このような状態を平衡(へいこう)、といいます。平衡状態になると、蒸発が止まったように見えますが、実は、水の粒は動き回っています。容器の中にある液体の水も、空間を飛び回っている水も動き続けています。液体と気体の温度は同じであり、その温度(熱エネルギー)に応じた運動量で、自由に動き回っています。

 このような動的な平衡状態をイメージさせることができれば、授業前半の完了です。

(4)水の蒸発、飽和、湿度100%のまとめ (3分)
 (3)で学習した内容をまとめます。


図6:授業前半のまとめ(クリックすると拡大します)

 図6の平衡状態のモデル図は、1年で学習した『水溶液』における溶解のモデル図とよく似ています。水の中に入れた食塩の粒が、常に一定にスピードで溶け出していく図です。水溶液が飽和状態になると、溶解しなくなったように見えます。しかし、実際は溶けだす量戻る量が同じなっただけで、食塩の粒は動き続けています。さもなければ、食塩の沈殿ができるはずです。

 とうことですが、子どもの発達段階から考えると、中学2年生であっても動的な平衡状態を理解するとことはぎりぎりです。一方的に先生が解説する講義形式ではなく、いろいろな子どもに説明させたり、子どもがまちがった説明をした時にそれをじっくり取り上げたりする、子どもの思考レベルに合わせた粘りづよい作業が不可欠です。

(5)湿度100%の装置を加熱・冷やした時の水のモデル図 (8分〜10分)
 湿度100%の装置全体を加熱・冷却した場合について考えます。 空間を飛んでいる水は6個、容器の中で動いている水は6個、同数です。

 まず、加熱する場合について考えます(図6)。熱エネルギーをもらった水は元気になります。気体の水(水蒸気)も液体の水も、動き回る量が大きくなります。


図6:実験装置を加熱した場合

 容器のは簡単です。元気になれば、空間に飛び立ちやすくなります。図7を見てください。容器に残っている水は2個だけです。この2個には書いてありませんが、実際は飛び出そうとしています。

 空間を飛んでいる水蒸気について考えると、同じ空間でもたくさんの水蒸気が飛べるようになります。そもそも、水蒸気とは1粒ずつが単独で飛んでいる状態のことです。飛んでいるうちに他の粒とぶつかることは当然ありますが、そこでひっついてしまったら液体(水)の状態に変わります。四角い箱の内側にひっついてしまった場合は、(つゆ、液体)という名前になります。


図7:加熱した空間に水10個が飛び回っている様子

 図7を確認します。気体10個・液体2個、です。合計12個であることは、初めからずっと同じです。気体は10個に増えましたが、湿度は100%のままです。100%は限界まで飛んでいる、という意味です。%(百分率)は割合を表す記号であり、水やリンゴなど物質の数を表すものではありません。

 図7では、もう1つ確認しておきたいことがあります。それは装置全体の熱エネルギーが大きいこと。つまり、水、容器など、装置全体が加熱されています。水に長い矢印を書き、元気いっぱいに飛んでいる様子を表現してください。

 次に、冷却する場合を考えます(図8)。


図8: 冷却した場合

 図9は冷却した場合のモデルです。空間に2個、容器に10個書いてあります。ポイントは空間を飛んでいる水蒸気に書かれた矢印の長さです。とても短くなっていることがわかるでしょうか。


図9: 冷却した場合の実験装置

 図9の湿度について考えます。湿度は空間を飛び回る水(水蒸気)の量と深い関係、があります。図9の水蒸気は2個に減りました。単純に考えると、湿度も減るように思いますが、実は湿度100%のままです。冷却された空間では、水が飛ぶことができなくなるからです。限界値が下がるので、少ない数で100%になるのです。


図10:飽和水蒸気量、湿度100%のまとめ

 図10を見てください。ポイントは加熱した場合も冷却した場合も湿度100%、であることです。飽和水蒸気量(限界値)は、温度によって変わります。加熱すると限界値は高くなり、冷却すると低くなります。

 図11は、これまでの(3)〜(5)の板書全体です。
図11:(3)〜(5)の板書(A組、クリックすると拡大します)


図12:B組でのまとめ


図13:B組の板書(クリックすると拡大します)


図14:C組の板書(クリックすると拡大します)

(5)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 難しい内容だと思うのですが、1時間かけたことで、ほとんどの子どもが理解できていたようです。理解できたかどうかは、終業直前に理解度を挙手させたり終業後に個別に内容質問をしたりすることで調べます。

 この学習は、本文中にも書きましたが、教師の一方的な説明では成立しません。子どもたちのつぶやきを丁寧に拾い、子どもたちの間違った考えを丁寧に受け止め解決していく作業が必要です。多様な子どものつまずきによって成立する授業であり、深い理解を求められる学習内容です。 このような、子どもの声を聴く授業を展開したい方は私の著書『一斉授業の教科書』をご覧ください。

関連ページ
気温と飽和水蒸気量2年(2003年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

第54時 ←
観測4 手作り湿度計で
湿度を求めよう

→ 第56時
観測6 飽和水蒸気量の
変化と湿度
↑ TOP

[→home
(C) 2017-2018 Fukuchi Takahiro