このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第56時

観測6 飽和水蒸気量の変化と湿度 

2017 11 6(月)
普通教室

はじめに
 今日も引き続き、見えないものを見えるようにする作業が続きます。最終的にどれだけの子どもが、どれだけできるようになるかはわからなくても行います。

 そもそも教育とは、子ども自身も知らない未知の可能性の扉を叩き続けることです。今日もがんばりましょう。私はその作業をとても楽しんでいます。

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上:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
・1立方メートルの空間における飽和水蒸気のモデル図を書く
・温度によってかわる飽和水蒸気量をモデル化する
・モデル図と飽和水蒸気曲線をリンクさせ、理解する
・飽和水蒸気量曲線から湿度や水蒸気量を求める

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)本日の天気図 (3分〜5分)

(3)1uの空間 (1分〜3分)
 1m四方の空間を1立方メートルといいます。この基本はとても重要なので、確実に確認してください。

 確認時は、先生が腕を使って1mという長さを示したり、腕を上下左右に動かして1u(平方メートル)という面積を示したり、腕と足を使って1?(立方メートル)という体積をイメージさせることはとても重要です。机上の空論ではない、教室という空間で身体を使って表現してください。

 黒板の高さはちょうど1mぐらいなので、黒板の縦横に1平方メートルの面積を描くことも有効です。

(4)空間1uの飽和水蒸気量のモデル、および、飽和水蒸気量曲線
 前時『湿度100%のモデル図』で、飽和水蒸気量は温度によって変わることを学習しました。それを覚えていれば話は簡単ですが、半数以上は忘れているはずです。それを前提にして、復習しながら授業を展開していきます。今日のメインはここからです。

 「前の時間には、温度によって飽和水蒸気量が変わることを学習しましたが、今日は、具体的な量、数値を調べます。学習プリントを見てください。ここには3つの箱があります。箱の大きさは、1立方メートルです。この中に、どだけの水蒸気を含むことができるか、調べてももらいます」

 「学習プリントを見てください(下図)。グラフと3つの箱が印刷してあります」


上:学習プリンに印刷したグラフと3つの箱

 「グラフの横軸を見てください。何と書いてあるでしょうか。・・・そうですね。気温と書いてあります。ポイントは、-5℃から始まっていることです。教科書は0℃からになっていますが、先生は-5℃からにしました。その理由がわかる人はいますか? ・・・誰もいないようですが、・・・水蒸気の温度は何℃か知ってますか? (100℃と答えるA君の方を見て)100℃ではありません。100℃、150℃、200℃などいろいろな温度がありますが、実は、20℃の水蒸気もあります。だって、今、この教室の中には水蒸気があるでしょ! そして、冷蔵庫の中にも水蒸気があることを・・・知っていますよね? よくよく考えれば、冬の北海道は0℃以下になりますが、その空気に水蒸気は?・・・含まれていますよね。・・・とうことで、先生は-5℃から始めましたが、実際はもっと低温から書いてもよいのです」

 「縦軸を見てください。名前を印刷していないので、書きましょう。何て書けば良いのかわかる人はいますか? ちょっと長くなりますが、・・・(中略)・・・空気1立方メートルが含むことができる最大限の水蒸気の質量(g)。あるいは、飽和水蒸気量(g/立方メートル)

 「では、0℃の飽和水蒸気量から調べていきましょう。教科書で調べてください。・・・そうですね。教科書◯◯ページの表の0℃のところをチェックしましょう。4.8と書いてあります。単位に着目してください。その単位もマーカーペンでチェックしてください。g/?になっていると思います。これは、1立方メートルに何gの水蒸気が含まれているか、ということを示しています。したがって、この箱に4.8gの水蒸気が飛び回っていることになります」

 「0℃の箱の中に、水(水蒸気)の粒を書きます。ポイントは粒の数です。4.8個書いてください。4個はそのまま、0.8個は微妙に小さくしてください。それから、この先、20℃の箱に20個ほど書いてもらうことになるので、いい感じに書けるように大きさを調節してください(下図)


上:気温0℃の飽和水蒸気のモデル、および、グラフ


上:気温0℃、10℃、20℃の飽和水蒸気のモデル、および、飽和水蒸気量曲線

 気温30℃のモデル図は書きません。省略します。省略しますが、数値は書きます。

 それから、

 子どもたちに飽和水蒸気量曲線を書かせるときは、「教科書にある表をみて、もっと細かく数値を取っても良い」と指示します。真面目な子どもは1℃ごとに点を打っていきますが、細かくしすぎるとガタガタのグラフになってしまいます。逆に、面倒くさがりの子どもは点をほとんど打ちませんが、中にはとても美しい1本の曲線を描くことができる子どもがいます。

(4)飽和水蒸気量曲線から湿度を求める(8分〜12分)
 (3)で飽和水蒸気曲線はできました。できたけれど、理解できている、というレベルにはほど遠い状態です。ここから、湿度を求めることを行い、少しずつその意味を理解していくことになります。

 まず、下図4のように気温30℃における、100%の棒グラフを書かせます。


図4:気温30℃における、100%の棒グラフ

 上図4の棒グラフは、曲線上の点(30℃、30.3g/立方メートル)から真下に書いたものです。たったそれだけの作業ですが、丁寧に説明することで、子どもたちから「なるほど〜」の声が聞こえるはずです。聞こえないとすれば、先生の説明方法がよほど不味い、と考えてください。


図5:気温30℃、水蒸気量10gの場合の湿度を求めるための図

 上図5を見てください。これは図4にオレンジ色を書き加えたものです。オレンジ色は、水10gを示しています。したがって、この図は、気温30℃・水蒸気量10gの湿度を求める問題です。この問題を考えさせる方法は2つあります。1つは計算式を使うもの、もう1つは感覚的に正解を求めるものです。

計算による湿度の求め方   感覚による湿度の求め方


湿度=現在量÷飽和水蒸気量
湿度=10g÷30.3g
湿度=0.33
湿度=33%
※面白いのは、0.33=33%
%は単位ではない
%は
桁を変える語のよう
33%=0.33、33%は0.33という数値
置き換えることができる

 


===を見て感じてください。

100%が
==========なら、
===       何%

答えは30%です!

 以上2つの求め方を教えることで、算数嫌いの子どもの何%かが湿度に対して興味を持つようになります。

(5)飽和水蒸気量曲線から、水蒸気量を求める(3分〜5分)
 (4)と逆の作業を行います。(4)はある水蒸気量における湿度(%)を求めましたが、ここではある湿度における水蒸気量(g)を求めます。 下図6を見てください。


図6:気温10℃、湿度50%の場合の水蒸気量を求めるための図

 上図6の横軸、10℃のところを見てください。緑色は100%のとき9.4gあることを示しています。では、オレンジ色は50%を表していますが、そのとき何gあるでしょう。できる人は感覚で「半分!」すなわち、9.4÷2=4.7、と答えるでしょう。ふふふ、すごい計算をしているものですね。公式によって求める人は、次のようになります。

現在量=飽和水蒸気量×湿度
現在量=9.4g×50%
現在量=9.4g×0.5
現在量=4.7g

(6)湿度、水蒸気量の練習問題(5分〜15分)
  (4)と(5)の練習問題を行います。下図7・下図8を参考にしてください。


図7:A組における練習問題


図8:A組における練習問題(その2)

(7)本時のまとめ(3分〜5分)


上:A組におけるまとめ

(8)本時の感想、考察 (5分)


上:A組の板書(クリックすると拡大します)


授業を終えて
 湿度を公式だけでなく、感覚で求められるようにすることはとても重要です。

 私は数学が好きではありませんが、大学入試の共通一次試験は200点満点でした。他教科は難しかったのですが、答えが1つしかない数学はとても簡単だったのです。

 今ではさっぱり数学の問題を解くことができなくなりましたが、数学で得た感覚は死ぬまで忘れないでしょう。その感覚とは、正解がたった1つならそれは直感で得られるものであり、その正解は突然に舞い降りる、というものです。

 この感覚を信じるようになった原因は、高校生のときの数学における体験です。私の数学的直感は学習を積み重ねるごとに正確になっていきました。そして、高校を卒業する頃には、問題を読んだ直後に答えが浮かぶようになり、その後、その答えが正しいことを確認したり証明したりする作業をするようになりました。テスト問題を読んでいるうちに、それを解く前に答えが浮かんでしまう、という事実が原因なのです。

 実際は、答えが見えてしまうほどたくさんの練習問題を解いたからだと思うのですが、真実はベールに包まれたままです。私は感覚を信用するタイプの人間であることは間違いなく、しかも、数字が嫌いなのにもかかわらず、他の分野と比べて高校レベルの数学に強かったことも間違いありません。この不思議な過去とともに今の私は存在しています。

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実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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