このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第62時

実験10 空気の圧縮、断熱膨張
 ペットボトルロケットによる実験  

2017 11 17(金)
普通教室→運動場→普通教室

はじめに
 ペットボトルロケットを教室で飛ばします。ただし、水は入れません。100mも飛んでしまうからです。ロケットに入れるものは、わずかな水と線香の煙です。自転車空気入れで10回ほど空気を入れてから飛ばすと、ロケットは教室後ろまで飛びます。大きな歓声も上がります。ロケットは、黒板後ろいる元気な生徒にチャッチさせてください。

 その生徒にロケットを持ち上げ、その中身をみんなに見せるように指示します。真っ白に煙っていることがわかります。目に見えない水蒸気が、目に見える水(液体)になったからです。その中心にあるものは線香の煙(凝結核)です。これを核にして、水蒸気が集まり、目に見える状態になったのです。

 ロケットの実験はとても面白いので、「先生もう一度やろう!」とリクエストが飛びます。先生はロケットを空気入れにセットしてください。セットする場所は教卓の上です。そして、空気を入れると、ロケットの中の白い煙(雲)が消えることを観察させてください。雲が消える理由は、雲ができる理由よりもわかりやいです。

 つまり、狭いペットボトルの中に空気を詰め込むと、まるで、狭い教室の中にいっぱい子どもを詰め込んだのと同じように温度が上がります。空気は圧縮することによって温度が上がるのです。温度が上がることで、水が水蒸気になるのです。

 2回目の実験は、雲が消えたことを確認してから、さらに空気を前回と同じようにしっかり入れてから飛ばします。飛び方は同じですが、今度は雲があまりできないので、生徒にその理由を考えさえてください。みなさんはわかるでしょうか?

 理由は1回目の実験で、ペッポトボルの中に浮遊していた線香の煙がなくなっていたからです。これを確認してから、線香の煙を入れ、3回目の実験をしましょう。しっかり雲がができるはずです。これで雲ができる2つ理由がわかりました。1つは空気の膨張による冷却(圧縮による上昇の逆)、もう1つは凝結核(線香の煙)です。

 さてさて残念なことに、この実験の写真がありません。私の著書『中学理科の地学』をご覧ください。また、2003年には小規模な実験『実験1−2雲を作ろう2年(2003年)』を行っていますが、圧倒的に、上記演示実験がおすすめです。


本時の目標
・雲ができる理由を理解し、ペットボトルロケットでそれを確かめる

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • ペットボトルロケット装置
  • 自転車の空気入れ
  • 線 香
  • チャッカマン
  • 200mLビーカー(2)
  • 100mL (少々)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)本日の天気図 (5分)

(3)自然界で雲ができる手順 (15分〜20分)
 自然界で雲ができる理由を、3つのステップでまとめます。 下図1を見てください。


図1:自然界で雲ができるステップ

 まず、ある特徴をもった空気の団体(気団)ができます。それがなんらかの原因で上昇すると、周りの気圧が低いので、相対的に体積が大きくなります(気団が膨張します)。熱の出入りがない場合、空気は膨張すると温度が下がります(断熱膨張)。温度が下がる理由は、次のように説明すると良いでしょう。

 「みなさんは教室の中で学習していますが、もし、この教室が突然体育館の大きさになったらどうなるでしょう。驚くことは当然ですが、問題は温度です。暖かくなるでしょうか、それとも、寒くなるでしょうか? ・・・そうですね。常識で考えればわかるように、寒くなります。これと同じように、ある空気の塊の体積が突然大きくなると、その空気の温度は下がるのです。逆に、みなさんが小さな小さな部屋に押し込まれたらどうなるでしょう。室温上昇することが予想されます」

(4)雲のできかたのまとめ (5分)
 下図2を参考にしてまとめてください。


図2:雲のできかたのまとめ

(5)ペットボトルロケットによる実験 (15分〜25分)
 ペットボトルに入れる水は、ごく少量です。どれだけの量かというと、ペットボトルに水200mL入れ、栓をしてから勢いよく振ります。そして、中の水を全て出してください。内側に水滴がついていると思いますが、それで必要十分です。

  そして、線香に火をつけ、「良い香りですね」などと言いながら、ペットボトルの中に煙を入れます。線香はよく見ていないと、入れる途中で水がついて消えてしまったり、酸欠によって十分な煙りを充満させることができません。

 ペットボトルは線香の煙で白くけむってしまいますが、この先できる『白い雲』は、それとは違って圧倒的な『白い煙り』として観察できます。生徒には、「ペットボトル内は真っ白な雲で満たされます。その違いを見てください。ただし、さっさと見ないと雲は消えてしまうので、空気を出して飛び立ったロケットを捕まえた人は、すぐに真上に挙げて、みんなにみせてください!」と指示しておきます。

 その後は、冒頭でも紹介したように嬉々とした生徒たちを観察できるでしょう。

(6)本時の感想、考察 (5分)


図3:本時の板書(A組、クリックすると拡大します)


図4:本時の板書(B組、クリックすると拡大します)


授業を終えて
 ペットボトルロケットによる雲の演示実験は、本当にすらばしいものです。ぜひ行ってください。雲ができる理論を完璧に理解できます。生徒による実験よりもはるかに効果があります。

関連ページ
実験1−2雲を作ろう2年(2003年)

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