このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第63時

観測11 日本の四季をつくる4つの気団
 季節の変わり目にできる停滞前線  

2017 11 20(月)、22(水)
普通教室

はじめに
 本時は前半と後半に分かれます。前半は日本の四季、後半は停滞前線です。それぞれで20分〜25分完了する内容です。

 日本は春夏秋冬、四季に恵まれた国です。海外旅行を経験したことがない人はピンとこないかもしれませんが、モンゴルのような内陸部やサイパンのような海洋の孤島を旅した人なら分かると思います。明確な四季がある国は意外に少ないのです。日本人の情緒あふれる季節感覚は、その四季の変化によるものです。最近は天候不順で、私が幼い頃(50年前)からは想像できないことになっていますが、夏や冬の厳しさは生活にメリハリを与えています。

 日本に四季ができる原因を2つ紹介しましょう。1つは赤道でも極地でもない、中緯度に位置していることです。そのため、日本は温暖で、寒暖の差が感じやすくなります。2つめは、大陸と海洋にできる2種類の気団を影響を受けることです。大陸からはシベリア気団と揚子江気団、海洋からはオホーツク海気団と小笠原気団、合計4つの気団が1年周期で日本に影響を与えます。大陸でできたものは乾燥、大洋でできたものは湿潤な性質をもっています。

 授業後半は停滞前線です。中学で学習する前線は、(1)停滞然線、(2)寒冷前線、(3)温暖前線、(4)閉塞前線、の4つです。これらのうち(2)〜(4)は中緯度地方でよく見られる温帯性低気圧によってできる前線です。これに対して、(1)停滞然線ができる原因は違います。季節の変わり目に、暖かい空気と冷たい空気がぶつかり合い、停滞することによってできます。 なお、2003年度の実践『4つの前線2年(2003年)』では4つの前線を1時間で学習していますが、授業時間にゆとりがあれば、本時のように停滞前線から指導することをおすすめします。


上:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
・日本の四季は、4つの気団によってできることを理解する
・季節の変わりに目にできる停滞前線の模式図を書き、その成り立ちや構造を立体的に理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 色鉛筆
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)本日の天気図(5分)

(3)日本周辺にある4つの気団 (10分〜15分)
 下図2のように、日本周辺にある4つの気団をまとめます。この内容については、14年前の実践記録『日本の天気2年(2003年)』もご覧ください。


図2:日本周辺にある4つの気団

(4)日本に四季ができる理由 (5分〜7分)
 下図3、4のようにまとめます。なお、日本列島は南北に長く、地域によって四季に特徴があります。日本の四季としてひとまとめにすることがないよう、各中学校がある地方の特徴を中心にして、日本の多様性を知らせてください。


図3:日本に四季ができる理由


図4:同上

(5)停滞前線 (15分〜20分)
 季節の変わりめは、複数の気団が勢力争いをします。2つの勢力が釣り合っていると、2つの気団は動きません。その結果、2つの境界線が同じ場所にとどまることになります。この境界線を前線、といいます。前線とは、地面と2つの気団の境界面がつくる線であり、地面に引かれた線です。ポイントはこの線ではなく、その線から上に広がる前線面です。前線面は広がりがある境界面であり、そこには雲ができ、雨を降らせる原因になります。下図5は、その断面図です。


図5:停滞前線の断面図


図6:同上(別学級)

前線と前線面のスペシャルな指導方法
 上図6をもう一度見てください。地面が書かれていますが、その上下で視点が90度切り替わっています。上下で一致しているポイントは、地面中央に書かれている『点』だけです。つまり、地面より上は『閉塞前線の断面図』、地面より下は『閉塞戦前を平面図』になっています。

(ア)閉塞前線の断面図
 断面図は、垂直方向の断面をあらわしています。寒気と暖気が接するところは、図では曲線になっていますが、実際は曲面です。この曲面を前線面といい、前線面にそって雨雲が発達します。
 断面図における前線面は、(イ)平面図で表現することはできません。平面図で表現できることは、前線面にそってできる雲を書き表すことです。

(イ)閉塞前線の平面図
 地面から下の部分は、一般的な平面の『地図』と同じです。教室前に日本地図や世界地図がかけれているなら、それらと同じです。新聞やテレビでよくみる天気図も、これと同じです。つまり、平面図は真上から見た2次元の図になります。

 これを理解させるために、私はスペシャルな方法を使います。先生の大胆な意外性ある行動によってのみ成立する方法ですが、勇気ある先生はお試しください。効果バツグンです。

(1)地面中央にある『』を確認する
(2)そのより左は寒気、右は暖気であることを確認する
(3)そのより左に座っている生徒は寒気、右に座っている生徒は暖気の中にいることを確認する
(4)これから先生が、教室床に前線を書くことを宣言する 
(5)黒板は垂直面床は水平面、であることを確認する
(6)黒板のの真下にあたる教室床面に、チョークで『』を打つ
(7)教室床面の『』にチョークを押し付ける
(8)その点から教室真後ろに向かって、床に直線を書く
(9)子どもが「わー」と言うので、先生は「これが前線です」と解説する
(10)直線は、しゃがんだ姿勢でゆっくり歩きながら書く
(11)床面に直線(前線)を書き終えたら、教師用机に登る
(12)高い位置から子どもたち(暖気と寒気)、および、床面に書かれた前線を見おろしながら、「上空から見ると暖気と寒気の境界線、前線がよくわかりますね」とつぶやく
(13)教師用机に登って観察したい子ども、を募集する
(14)前線は曲(1次元)であることを理解させたら、前線面は曲(2次元)であることの説明をする
 ※平面的な地図(2次元)で、2次元の曲面(3次元に等しい)を表現することは難しい

(15)前線の上に立ち、暖気は寒気の上を滑るように押していること、寒気は暖気の下にもぐりこむように押していること、それら2つ境界面は曲面となって寒気の上に存在していること、その境界面にある暖気は上昇気流で雨雲をつくって雨を降らせていること、それら全てを体全体を使って表現する

(6)本時の感想、考察 (5分)


図7:停滞前線の断面図と本日のまとめ


授業を終えて
 4つの気団による四季の変化は、簡単でわかりやすい内容です。授業後半の停滞前線は、前線面と前線について立体的にイメージさせることがポイントです。前線面に沿って、雲が傾いた屋根ようにつらなっている様子をイメージさせてください。

 なお、11/28から始まる期末テスト範囲はこのページの学習内容までです。次の時間からしばらく、これまでの復習やテスト返却などがあり、次回授業記録は12/1(金)になります。

関連ページ
日本の天気2年(2003年)
4つの前線2年(2003年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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