このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第64時

観測12 シベリア気団のよる冬の季節風
 小規模な低気圧による海陸風  

2017 12 4(月)
普通教室

はじめに
 授業の記録写真が1枚もありませんが、がんばって記録します。(探したら出てきました!)

 本タイトルの内容は10年前には大きく取り上げることはなかったのですが、ここ10年ほどはしっかり扱っています。シベリア気団による冬の寒さは、名古屋でもしっかり感じます。乾燥した冷たい空気は、本当に身にしみるものです。しかし、雪はあまり降りません。私が幼いことは雪の思い出がたくさんあったのですが、わずか50年の歳月で日本の気候はかなり変わってしまったようです。その一方、大雪のニュースもよく聞くようになりました。それは日本海側の地域になりますが、原因は大陸からの気団が日本海上空を通過するときに大量の水分を含むからです。実際はいろいろな条件が複合的に作用すると思いますが、中学レベルでは、ざっくりと以上の理解ができれば良いと思います。そして、日本列島の背骨にあたる高い山にあたることで上昇気流となり、上昇気流で雲ができ、夏なら雨になるものが雪になって降る、というものです。雪を降らして水分を失った空気は乾燥し、名古屋に乾燥した冬の北風として吹いてくるわけです。

 前書きばかりが長くなりそうなので、本文に移動します。


図1:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
・シベリア気団による冬の季節風について理解する
・小規模の低気圧による海陸風について理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 今日は限定された天気や風について学習します。できるだけ具体的に、狭い範囲に絞ることで、空気の温度変化と水の時状態変化について理解を深めたいと思います。

(2)本日の天気図 (5分〜10分)
 冬の天気図は特徴的です。新聞の天気図を毎日切り抜いておけば、典型的な『西高東低(西に高気圧、東に低気圧)』の気圧配置の日がたくさんあることに気づきます。授業では朝刊の天気図を使うことを原則にしていますが、前時『日本の四季』を合わせて、西高東低の気圧配置の図を紹介したいものです。今日は2017年12月4日。その日の気温は忘れてしまいましたが、すでにシベリア寒波が襲来した日があったことでしょう。天気図とその日付を確認しながら、寒い日を思い出すことはとても有意義なことです。

 本時前半のメインディッシュは『冬のシベリア気団』、乾燥した大陸シベリアでできた−数10度の空気のかたまりです。なお、この授業を冬に行う場合はシベリア気団でよいと思いますが、他の季節に行う場合は、タイムリーな気象と使って授業を構成してください。

(3)冬の日本の天気は、日本海側と太平洋側で違う(20分〜25分)
 日本の冬の天気はシベリア気団に支配されています。 地表付近だけでなく、上空の空気についても調べる必要がありますが、授業では地表付近の空気のついて調べます。

 シベリアでできる冷たい空気(寒気)は高気圧です。とくに動くことなく、じっとしていためにどんどん空気が冷えてたまってしまった、と考えてください。その結果、山盛りの冷たい空気ができてしまい、ついに動き出してしまったものがシベリア寒気団です。それは地球の自転による『偏西風』の影響を受け、日本へやってきます。じわっと広がるようにやってくることもあります。

 地表付近の寒気は、大陸から日本海を渡ります。この時、海上からたくさんの水蒸気をもらい、湿った空気にかわります。気温が低いので飽和水蒸気量が小さく、いとも簡単に湿度100%の空気になってしまいます。その空気が日本に上陸すると、日本は島国ですから、空気が山の斜面にあたり、強制的に上昇させられます。

 気温は標高100mにつき、0.6℃ほど下がるので、湿度100%の空気は一気に雲をつくります。雲は水蒸気(気体)が液体や固体に状態変化したものですが、温度0度C以下の場合は『雪』になります。大陸からどんどん寒気が押し寄せれば、次から次へと冷たい湿度100%の空気が上昇されられ、その斜面に雪を降らせます。日本海側は大雪が降る理由は以上です。

 その一方、太平洋側はまったく違う気候になります。ここでいう太平洋側とは、山の斜面を登り終えて下降気流になった地域、あるいは、その延長線上にある地域です。この地域にくるシベリア気団は、気温は比較的低いままですが、湿度が全く違います。雪を降らせた後なので、乾燥しています。少し前に学習した『飽和水蒸気量曲線』を確認することも忘れないでください。

 名古屋を含む太平洋側の北風は乾燥しているので、雪を降らせることは稀です。雪を降らせる雲は、比較的高い位置にある雪雲です。


図2:冬のシベリア気団が日本に与える影響(A組)


図3:冬の日本の天気(A組でのまとめ)


図4:同上(B組)

4)小規模な低気圧による海陸風(10分〜15分)
 低気圧、として取り上げたことがポイントです。シベリア気団は高気圧ですが、授業後半に扱う空気は低気圧です。低気圧ができる原因はいろいろありますが、ここでは上昇気流によってできるもの、として紹介します。

 みなさんは海が好きですか。潮風に吹かれてことはあるでしょうか。さて、ここで問題です。晴れた日、潮風が吹く時間はいつか知っていますか。検討がつかない人は、2択問題で答えてください。

問題:海から風が吹くのは、昼ですか夜ですか?

 考え方を紹介します。風は『気圧の違い』による空気の動きです。風は水と同じように、高いところから低いところへ流れます。ということは、海岸をはさんで『海』と『陸』に分けた時、どちらが高気圧・低気圧になるかを調べればわかります。

 昼夜どちらで考えても良いのですが、昼の場合を調べてみましょう。昼は太陽が出て、いろいろなものを温めます。空気が暖かくなれば、空気は上昇気流となり、気圧が低くなります。では、『海』と『陸』を比較した場合、暖かくなりやすいのはどちらでしょう。『水』と『砂』の比較、と考えることもできます。すると、水よりも砂の方が暖かくなりやすいことが体験的にわかると思います。夏の砂浜、アスファルトを素足で歩くと火傷しそうになります、よね。

 ということは、『陸』にある空気の方が暖かくなり、上昇気流(低気圧)になり、周りに空気を引き寄せることになります。その結果、海の上にある空気も引き寄せられるので、潮の香りがする潮風が吹くことになります。夜の浜辺を散歩しても、波の音が聞こえるだけで潮の匂いがしないのはこのためです。


図5:小規模な低気圧による海陸風(A組)


図6:同上(B組)

(5)本時の感想、考察 (5分)


図7:本時の板書(A組、クリックすると拡大します)


授業を終えて
 高気圧、低気圧ができる原因は複雑で、簡単ではありません。今日の授業は体験にもとづくものであれば、とても理解が進むと思いますので、いろいろな子どもの体験談を引き出したり先生から雑談をしたりしましょう。

note:生徒と先生の会話
「先生、海の匂いは昼しかしないのですか」
「将来、好きな人と散歩することがあると思いますが、夜の海辺で潮の香りがするね! うん、いい香りだね。なんてやらかさないようにしてください。若い2人のこととはいっても、かなりがっかりです」

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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