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第65時
観測13 2つの前線(寒冷前線、温暖前線)
2017 12 4(月)、5(火)
普通教室はじめに
寒気と暖気が接している面を前線面といい、前線面が地面と接している線を前線、といいます。これは、2時間前『日本の四季をつくる4つの気団・季節の変わり目にできる停滞前線』で学習した内容なので、今日の学習はさくさく進むと思います。しかも、授業当日の写真がないのですから、私も油断するほどよく理解していたのだと思います。指導方法については、14年前の授業記録『4つの前線2年(2003年) 』もご覧ください。14年前は年間授業時間数が25%も少なかったので、1時間で4つの前線を学習しています。
図1:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)
本時の目標
・寒冷前線と温暖前線の『断面図と平面図』を描き、それらの構造を3次元的に理解する
・寒冷前線の特徴や、その前線面にそってできる雲について理解する
・温暖前線の特徴や、その前線面にそってできる雲について理解する
準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 色鉛筆
- 本日の学習プリント(1 /人)
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)(2)本日の天気図 (10分〜15分)
本時は簡単な学習なので、新聞の天気図を使ってこれまでの復習&予習をしましょう。お勧めは、寒気と暖気に色を塗ることです。青と赤の色鉛筆で丁寧に作業させてください。冬の季節なら、シベリア高気圧(寒気)を青に塗ります。標準気圧は1013hPaですが、何1013hPaまで着色するかは天気図を見て適切に判断してください。作業に使う天気図は、学習プリントの裏に数日間並べて添付しておいてもよいでしょう。高気圧が発達したり衰えたりする様子がわかります。
また、本時の最後に、もう一度天気図を振り返ります。その場面では、寒冷前線と温暖前線に合わせて着色させます。天気図は、上空から見た平面図であり、地表でなくて少し上空の空気の温度を示すことになります。前線は地表と接している境界線であることを確認しましょう。
(3)寒冷前線 (12分〜15分)
寒冷前線は、寒気が押し寄せてきた時にできる地表との接線です。寒気は密度が大きいので、下へもぐりこむようにしてくいぐい進んできます。これは密度が小さい暖気と合わせて覚えるようにするといいでしょう。寒気が進むと、それまでそこにあった空気はどこかへ押しやらせてしまうことになります。その方向は寒気との境界面で、境界面は寒気上空に広がっています。つまり、それまでそこにあった空気は上昇気流となり、雲を作って雨を降らせます。
ワンポイント
それまでそこにあった空気は、相対的に暖かい空気になりますが、『暖気』として赤く塗らないようにしましょう。そのまま放置してください。両方塗ってしまうと、寒気と暖気が押し合う『停滞前線』、寒気が暖気に追いついた『閉塞前線』との区別が不明瞭になるからです。一般に空気が上昇したり、上昇気流ができると雨が降ることは、ほとんど全ての場面で共通した現象です。これは『大気圧と風』『空気の圧縮、断熱膨張、ペットボトルロケットによる実験』『シベリア気団による冬の季節風、小規模な低気圧による海陸風』で学習しています。
寒冷前線による上昇気流は、激しい雨を降らせる積乱雲をつくります。寒気は前進する力や速さエネルギーが大きく、前線面が垂直に切り立っているからです。
その雨域は、前線直前の狭い部分です。地上では、黒い積乱雲が迫ってきたかと思うと、急に気温が3℃ほど下がり、激しい雨が降ります。運動場で活動している途中、急に真っ暗になって運動場が洪水になった経験を思い出させてください。寒冷前線が通過した後は、気温が下がったままになります。雨は止みますが、体調を崩しやすいので体を温めるように注意する必要があります。
(4)温暖前線 (15分〜20分)
温暖前線は、暖気が押し寄せてきた時にできる地表との接線です。暖気は密度が小さいので、上へ滑るように進もうとしますが、前線はなかなか動きません。前へ進むと同時に上昇してしまうので、地表との接線『前線』はあまり動かないのです。これは下からぐいぐい進む寒気との大きな違いです。暖気が進もうとしても、それまでそこにあった空気はあまり動きません。ゆっくり後退しますが、基本的に動かないと考えます。その結果、境界面にそった暖気の上昇気流ができます。上昇気流ができれば雲ができ、その雲は雨を降らせます。
ワンポイント
それまでそこにあった空気は、相対的に寒冷な空気になりますが、『寒気』として青く塗らないようにしましょう。そのまま放置してください。理由は前に述べた通りです。温暖前線による上昇気流は、穏やかな雨を降らせる乱層雲をつくります。前線面がなだらかな斜面になっているので、広い範囲に乱層雲ができ、しとしとした雨を降らせます。
その雨域は、前線直後の広い部分です。地上では、曇りがちな空だったものが、雨雲(乱層雲)に変わっていきます。気温の変化はありません。比較的寒いままで、温暖前線が通過すると雨が止み、暖かくなります。ほっとする前線通過ですね。
(5)本日の天気図(2回目) (5分)
上記(2)で述べたように、もう一度天気図を用意させてください。そして、天気図にある寒冷前線と温暖前線、それぞれの手前にあたる部分を着色させます。どれだけの範囲を塗るかは、センスの問題ですが、センスは気象の学習を重ねることで磨かれていくものです。先生は、黒板に新聞の天気図と同じものを板書し、いい感じに着色してください。また、寒冷前線と温暖前線は、温帯低気圧を中心にして発達する前線です。温帯低気圧は2時間後に学習することを知らせてください。
(6)本時の感想、考察 (5分)
授業を終えて
前線の模式図を書かせる時は、断面図を平面図の違いをしっかり意識、理解できるように指導しましょう!関連ページ
4つの前線2年(2003年)実践ビジュアル教科書『中学理科の地学』
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による冬の季節風
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観測14 雲を10種類に分ける
(世界規準)