このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第69時

観測17 大気の大循環 

2017 12 12(火)、15(金)
普通教室

はじめに
 地球レベルの大気の大循環は、最近5年ぐらい前から教科書に掲載されるようになりました。内容は深く掘り下げると理解できない子どもが続出するので、さらりと指導することが重要です。

 理解ができなくなる原因は『地球が球体であること』です。さらに、地球が自転し、地球をとりまく大気が3次元で循環するので、空間認知力が十分でない子どもは、さっぱりわからなくなります。立体的な動画CGを使った説明でも理解しずらい内容ですから、授業において、『平面図から立体的空間をイメージすること』は至難の技です。大人でも空間認知が不得意な人がよくみられるので、もし先生自身が自信を持てないなら、そもそもこの授業は行わないほうが良いでしょう。

 なお、この内容が教科書に掲載されるようになったのは、私が著書『観察でわかる地学(誠文堂新光社2007年)』『中学理科の地学(誠文堂新光社2012年)』で紹介したことも一因だと思います。読み物としては重要な内容であっても、学校現場では混乱を招く内容になることもあります。『大気の大循環』を授業で扱うなら、先生自身が深く理解していることが第一条件となります。かくいう私も、授業で大まかな原理を楽しく紹介して興味関心を高めることはできても、このHPに詳細を記述するレベルではないことを告白しておきます。教科書出版社は本項目を削除、資料集出版社は掲載、というようにそれぞれの特徴を出すようにすれば、先生と子どもが助かるだけでなく、出版各社も共存共栄できる明るい日本社会になると思います。 そのような学習項目や内容、および、すでに混乱している事例はたくさんみられます。私は定年で公的な職を失った後、新鮮な感覚を失わないうちに日本理科教育のためになんらかの形で貢献することが自分の仕事であるような気がしてきています。


図1:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
・『太陽の熱エネルギー』と『地球の自転』が原因なる、地球レベルの大気の大循環があることを知る
・貿易風、偏西風の成因を知り、地球レベルの気象現象に興味を持つ
・風の摩擦による海洋に大循環があることを知る

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)本日の天気図(10分〜15分)
 本時の学習内容は比較的短時間で終了するので、タイムリーな天気図指導を行ってください。なお、次時から2時間〜3時間使って、天気図の書き方を学習します。天気図は教える必要がなくなった項目ですが、これがかけるようになると理解がより一層深くなるだけでなく、気象に関する興味関心が一気に高まる子どもができるので、余裕があれば行いたい内容です。

(3)大気の大循環 (15分〜20分)
 大気の大循環が起こる原因は、太陽の熱エネルギーによって空気が温められることです。温められた空気は上昇します。

 地球レベルで調べた時、太陽のエネルギーを一番よく受けるのは赤道付近です。太陽が真上にくるからです。より詳しい説明は、3年生の天文分野『日本から見た太陽の動き』で学びます。

指導手順
 まず、地球が自転しないものと仮定します。次に、自転することにより3つの大循環が起こることを知らせます。


図2:地球が自転しないと仮定した場合の大気の大循環

 図2は地球が自転していないと仮定した場合です。一番太陽エネルギーで温められる場所は赤道です。その結果、図2の(1)赤道で上昇気流が発生し、(2)上昇した空気が南北の極地へ流れ、(3)極地上空で下降気流になり、(4)極地地表で寒気が赤道へ向かって動き、(1)赤道で再び温められて上昇気流となり、(2)赤道上空で暖気が赤道から極地へ動き、・・・という循環を繰り返します。

 次に、実際の地球の場合を考えます。図3を見てください。


図3:自転している地球における大気の大循環

 実際の地球は自転しているので、大循環は低緯度・中緯度・高緯度の3つに別れます。3つに分かれることの詳細は説明しませんが、緯度30度:下降気流、緯度60度:上昇気流、という形になります。

 図3は『大気の断面図』ですが、図4は『大気の平面図』です。違いに補完しあう関係ですが、授業では深入りしないようにしましょう。


図4:同上(平面図)

 図4では、貿易風・海賊風を紹介しています。なお、図3から図4になおす作業は簡単ではありません。比較的高い空間認知力が要求されるからです。わからない人は数時間学習してもわからないものなので、ムリしないでくださいね!

(4)(3)のまとめ (5分)


図5:本時のまとめ

(5)本時の感想、考察 (5分)


図6:本時の学習プリント


授業を終えて
 本ページの冒頭で、授業で『地球レベルの大気の大循環』を行うことは難しいと述べましたが、今後検討すべき内容として『海洋の大循環』があります。最近、海洋と気象が深い関係を持っていることが一般に認知され始めています。私は近い将来、中学3年の最終単元として『地球』を創設し、その中の1つとして『海洋や海流』について学習すべきだと思います。日本は島国であり、美味しい海の幸をいただいているので、感謝の気持ちを育てるためにも科学的な視点を中学生に与えることが大人の仕事だと思います。

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