このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第83時

実習12 電子の気持ちで考える合成抵抗 

2018 1 30(火)、2 2(金)
理科室

はじめに
 13年前『実験8 合成抵抗 2年(2003年度)』は教える必要がないものでしたが、最近は必須内容です。学習内容自体は簡単なので、いわゆるできない子どもができるようになること、全員が理解することを目標にしてください。先生自身の目標です。


図1:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
・合成抵抗の求め方を知る
・合成抵抗を正しく計算する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)抵抗とは、いじめっ子 (5分)
 13年前の授業では、これから紹介する『私の例え話』が人気でした。とてもわかりやすく、子どもたちの日常によく見れたことだったからです。まずは、13年前の話を紹介しましょう。

13年前の理想的な『合成抵抗』の説明方法

 「抵抗とは何か理解するために、抵抗をいじめっ子、として考えます。どのようないじめっ子かというと、誰かがそこを通ろうとすると、通せんぼするいじめっ子です。無理に通ろうとすると、そのいじめっ子に何発か殴られることになります。みなさんの学級の中に、そのような人は?・・・(ぐるっと顔を見渡して)・・・(子どもたちがざわざわしてきたら)・・・(誰かの名前が出るようならその子の目を見て)(怖くて名前が出ないようならスルーしたり教育的にじっと見たりするなど今後の教育活動のために最適な対応をして)

 「さてさて、今回、回路という道を通るのはみなさんではないので、安心してください。通過するのは電源から出てきた人、『電子さん』です」

 「例えば、2Ωと3Ωの抵抗が待ち構えている場合、みなさんなら、どちらを通りますか。2Ωなら2発、3Ωなら3発殴られることになります。ちょっと聞いてみましょう。2Ωを選ぶ人? ・・・たくさんいますね。では、3Ωを選ぶ人? ・・・(挙手する子どもがいた場合は、楽しい会話を楽しんでください)ということで、抵抗は電流を流さないようにするもの、であることがわかったと思います。そして、Ωの値が大きいほどが流れ難い、ということもわかったと思います」

 「以上はいじめっ子1人の場合ですが、2人の場合を考えます。かなり危険になったような気がすると思いますが、実際はどうなるのか考えてみましょう」

 「直列回路の場合、2Ωと3Ωが順番に並んでいるので、これは悲惨です。2発殴れた後に3発殴られるので、合計5発殴られます。最悪です。しかし、5発殴られなければ通過できないので、どうにもなりません。抵抗を直列つなぎにした場合の合成抵抗は、単純に足し算するだけで求めることができます。この場合、2Ω+3Ω=5Ωになります。とても簡単です」

 「並列回路の場合はどうなるでしょう。回路の形が違うので、同じ計算式ではないこと、はわかると思います。2人いるので、足し算しなければならないことはわかると思いますが、単純な足し算ではないようです。では、どのように足し算をしたらよいかというと、実は、裏技『足し算』をすることになります。算数的『裏技』を教える前に、まず、裏技で『いじめっ子』のパンチをかわすことができることを教えます。並列回路の場合、通過するための道が2つできたことがわかりますか。分岐点がありますよね。2Ωと3Ωの分岐点、並列になるためのポイントです。実は、並列回路の場合、2人が殴ってやろうと待ち構えている間を、スルスルっとかわして通過することができるのです。分岐点でどちらか一方に殴られるのを選ぶことなく、その間を忍者のようにぐぐり抜けていくことができます。2人が「俺が殴る」と言い争っているうちに、その隙間をつく、というわけです。したがって、実際に殴られる数は、2Ωより小さくなります。とりあえず2発殴られる道は確保しておいて、さらに、もう1本3発殴られる道も選択しながら通り抜けることができる、ということです」

 「ということで、並列回路での合成抵抗は、足し算することで『小さくなってしまう』裏技を使います」

 「正しくは裏技ではなく、逆数を足す、といいます。具体的には、2+3ではなく、1/2+1/3、という計算をします。2の逆数と3の逆数を足す、という足し算です。できるかな? さてさて、この計算は小学校3年生の学力が必要になると思うので、代表して誰かにやってもらいましょう。簡単なように見えますが、これができないと先に進まないので、誰かに代表してやってもらいましょう。では、・・・(適切な生徒を互選、あるいは、指名して)・・・(その生徒が自力で正解を出すまで学級全体で支援して)・・・ということで、1/2+ 1/3= 3/6+ 2/6= 5/6、ができました! 拍手!!」

 「実は、答えは5/6ではありません。答えは、逆数を足し算したものの逆数です。もとに戻す感じですね」

 「さて、具体的に計算してもらいましょうう。5/6の逆数は6/5ですが、それが答えです。では、最終正解を2人目の代表者にお願いしましょう。では、・・・(適切な生徒を互選、あるいは、指名して)・・・(その生徒が自力で正解を出すまで学級全体で支援して)・・・ということで、6/5=6÷5= 1.2、できました。答えは1.2Ωです。拍手!!」

 しかし、最近は様子が変わってきました。子どもどうし叩き合うことはあっても、あからさまに殴る行為は皆無といってよい状況です。荒れた学校ではいまだに殴ったり殴り合っているかもしれませんが、13年前と比較すると激減していることと思います。子どもや大人の人気漫画の世界でも、素手による暴力行為は人気がないように思います。これはとてもよい傾向であり、歓迎すべきことです。しかし、肉体的な痛みと精神的な痛みを比較した時、どちらが良いか悪いかを判断することは難しい問題です。目に見える身体の傷は減少傾向にありますが、目に見えない心の傷は増加傾向にあります。あ、脱線してきたので、続きは別ページで、、、

 とうことで、上記説明方法は子どもや社会の実態から離れてきているので、修正を加えながら話をしてくださいね。


図2:直列回路(左)と並列回路(右)の合成抵抗の求め方

(3)先生によるオリジナル練習問題(10分〜15分)
 算数アレルギーの子ども、分数の足し算ができない子ども、小数点ができる割り算ができない子どもを指名してください。そして、その子ができるようなオリジナル問題をその場で作成し、学級全体で取り組みます。どんなにできる学校でも、できない子どもが隠れています。それを見抜くことが先生の一番目の仕事です。

 下図3をみてください。左は直列つなぎの問題、右は並列つなぎの問題です。


図3:先生によるオリジナル練習問題

 直列つなぎは、1Ω+7Ω=8Ω、2Ω+4Ω=6Ω、です。おそらく誰を指名してもできると思います。それでも、算数恐怖症の子どもを指名すると、周囲の子どもに答えを求めます。周囲に答えを求めなくてもみんなの前で正しい答えを発表することができたという達成感を味あわせてください。その子にとっては、非常に大きな体験です。同じような体験を2回、3回と繰り返すことで、少しずつ自信をつけていきます。初めは恥ずかしがっていますが、実は、その子は心の中で『できるようになりたい』『できなければいけない』をいう気持ちを持っています。2回、3回と指名され、みんなの前で答えることで応援されていることにも気づいていきます。

 並列つなぎの計算は、図3のように2つのステップに分けます。(1)逆数にして足し算する、(2)答えはその逆数、です。ポイントは途中の計算式をきちんと書くことです。また、割り算の方法についても板書してください。できない子どもが絶対にいる、と思って書くことが大切です。

(4)キルヒホッフの復習&合成抵抗(10分〜15分)
 合成抵抗の計算方法を理解したところで、キルヒホッフの復習をします。先生は図4、図5を参考にして、直列つなぎと並列つなぎのオリジナル問題を作成してください。


図4:キルヒホッフの復習&合成抵抗の問題(直列つなぎ)


図5:キルヒホッフの復習&合成抵抗の問題(並列つなぎ)

図4、図5の指導方法のポイント
1)すべての抵抗と電源の下に、V・A・Ωを書く
2)電圧・電流・抵抗の順を、絶対に守る
3)とくに初回は、3つを色分けさせる
4)直列つなぎ・並列つなぎで、すべて同じになるものを調べる
5)すべて同じになるものは『電圧』または『電流』
6)『抵抗』はそのまま、または、裏技(逆数)足し算をする

(5)本時の感想、考察 (5分)


図6:本時の板書(クリックすると拡大します)
(割り算の計算式は2回書いたが、いずれも消されている)

別学級での板書


図7:逆数の足し算方法に関する板書(枠内)


図8:終業時の板書
 右2/3は、数回消されている。割り算の計算方法の一部が残っている。


授業を終えて
 合成抵抗の計算方法については、学習塾で教えてもらっている生徒が何人かいるでしょう。さらに、違う計算方法を教えてもらっている生徒もいます。先生は焦ることなく、自分の目標を達成してください。本時の目標は、合成抵抗の計算方法を理解させことを超えたところに設定しします。冒頭で述べたように、算数アレルギーの子どもを助けることです。私の授業では、これまでに何度も行ってきているので、かなり成果がでてきているように思います。公立中学校の授業目標は、学習塾とは別次元です。

関連ページ
実験8 合成抵抗 2年(2003年度)

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第82時 ←
実習11オームの法則

→ 第84時
実習13 3種類の電熱線
↑ TOP
[→home
(C) 2018 Fukuchi Takahiro