このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第45時
観察3 土の中の生物

     2018 9 14(金)、18(火)
     普通教室

はじめに
 落葉樹は、毎年たくさんの葉を落とします。その葉は小動物の食べ物となり、豊かな生態系をつくるみなもとになっています。本時のタイトル『土の中の生物』は、この生態系で生活する生物たちです。

 よく耳にする生物として、ミミズ・ダンゴムシ・ムカデ・ハサミムシなどがあります。これらの食べものを調べると、ミミズ・ダンゴムシは落ち葉を食べるので草食動物、ムカデ・ハサミムシは生きた小動物を食べる肉食動物、であることがわかります。土の中の生物をひとまとめにして分解者、として扱っている教科書は適切ではありません。

 私の授業カリキュラムでは、土の中の生物に関する学習を5時間計画しています。1時間目となる本時のねらいは、土の中の生物に興味を持たせることです。拒絶・拒否反応を示す子どもたちの意識改革、土の中の生物に親しみを持ってもらうことが目的です。

関連ページ
観察9 土の中の生物3年(2001年)


図1:落ち葉を起点にする生態系


本時の目標
・土の中の生物に興味関心を持つ
・土の中の生物は、落ち葉を起点とする複雑な食物網をつくっていることを理解する
・興味関心をもった生物のからだをできるだけ正確にスケッチする
・生物の採取方法を知る(落ち葉の種類、土の深さ、湿度・温度などによって、生活する生物が大きく変わる)

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 本時の紹介をする中で、「土の中の生物に限らず生物全般を好きではないこと」「しかし、美しく、きれいなものであること」を告白します。これらはヒト(私)の主観です。そして、「土の中の生物は地球の生態系を支えるものであり、よくよく考えれば、私たちは各自の体内(消化器官)に住む細菌によって腸内環境を整えてもらっている」という事実を紹介します。

(2)落ち葉について、再考する(5分〜8分)
 落ち葉は、植物の葉です。生物学的にはレタスやホウレンソウと同じです。とても単純なことですが、指摘されなければ気づかないものです。

 落ち葉は腐っているではないか、という指摘があるかもしれませんが、ドライフルーツという食べものもあります。そもそも、腐っているかどうかの判断はヒト中心的・主観的なものです。どんなに新鮮な野菜でも、収穫した時点で死んだようなものです。もちろん、細胞レベルでは生きていますが、落ちたての落ち葉なら生きている細胞もあるはずです。

 「落ち葉はどうなるか、知っている人はいますか? だんだん形がなくって、最終的に何になるのか?・・・そうですね、土になります。落ち葉からできた土は高い栄養分を含むので、値段の高くなっています。園芸店では土を売っていることを知っていますか! 高いものは(両手で大きさを示しながら)これぐらいで1200円ぐらいします。そのような土を漢字三文字で「◯◯土」、と言いますが? ・・・そうですね、「腐葉土」といいます(下図2)」


図2:落ち葉が土になることを示した図

 「1年生で岩石を学習した時、先生が担当した人には教えましたが、土と砂の違いを説明できる人はいますか? ・・・おや、誰もいないようですが、・・・では、質問を変えて、月、月面にはたくさんの岩がありますが、月に土はあるでしょうか? 全員に挙手で答えてもらいます。・・・(中略)・・・月に土はありません。土は有機物、生物由来のものです。高級な土の原材料は落ち葉、と考えてもよいでしょう。これに対して、礫・砂・泥は生物とは関係ない、無機物からできたものです」

(3)落ち葉を起点にする生態系の生物(8分〜10分)
 落ち葉を食べる生物は何か、子どもたちに問いかけます。そして、ミミズやダンゴムシは落ち葉を主食としていることを紹介します。もちろん、落ち葉にもいろいろな種類があり、それぞれの生物は好き嫌いをもっています。

 次に確認することは、ミミズやダンゴムシを食べる生物、肉食生物がいることです。さらに、ミミズやダンゴムシの排泄物を食べる生物がいることを教えます。それらの例は、教科書の図版で確認してください。資料集を見ることも忘れないでください。いろいろな生物がいます。指導上のポイントは次の通りです。

(ア)草食動物や肉食動物がいる
(イ)上層部には大きな生物が、下層部には小さな生物が生活している
(ウ)生物の大きさは、肉眼・ルーペ・顕微鏡の3段階にわける
(エ)顕微鏡レベルの生物は動物ではなく、菌(細菌)
(オ)菌(細菌)は、無機物まで分解する分解者
(カ)これらを腐食連鎖、ということもある


図1:落ち葉を起点にする生態系


図3:同上(B組での板書、クリックすると拡大します)


図4:同上(C組での板書、クリックすると拡大します)


図5:土の中の生物による生態系のまとめ

(4)生物のスケッチ (15分〜20分)
 (3)で生物の大きさを3段階に分けたら、興味ある生物を1つずつスケッチさせます。教科書や資料集の写真や図版を見て行わせます。写真よりも図版やスケッチの方が、学習効果が上がる子どももいます。

 スケッチのポイントはからだのつくりですが、細かいことは難しいので、脚やかだらの数を調べます。


図6:脚や体の数を示した板書

 の基本数は、3対(6本)・4対(8本)・たくさん・7対(14本)のものに分けることができます。これは、節足動物の昆虫類・クモ類・甲殻類・多足類に対応します。

 は頭・胸・腹の3つに分けた時、全てつながって1つになるもの、2つになるもの、全て分かれて3つになるものがあります。1つになるものとしてタコ、があります。2つに分かれるものは頭・胸腹(ヒト)、頭胸・腹(クモ)の2種類があります。昆虫は3つに分かれます。

(5)ヒアリ、セアカゴケグモ (7分〜10分)
 教科書にしたがった学習は(4)で終わりですが、最近、日本国内を騒がせている外来生物2種について詳しく説明します。人に危害を与える生物として宣伝されていますが、どのような形態をしてどのようにして危害を加えるのかを知ることで、必要以上に怖がらなくなるだけでなく、小さな生物に対して興味関心を持つようになります。


図7:本時のまとめ、ヒアリ・セアカゴケグモ


図8:ヒアリ・セアカゴケグモ

(6)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 小さな生物について、多くの子どもたちが興味を持ってくれたと思います。名前を知り、体の特徴を知ることで、親しみを感じるようになり、だんだん本物を自分の目で見たくなっていきます。

関連ページ
観察9 土の中の生物3年(2001年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

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