このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第46時
観察4 生物の進化と系統樹

     2018 9 21(金)、25(火)
     普通教室

はじめに
 土の中の生物の屋外採取に行く予定でしたが、あいにくの雨。天気が回復するまで順延となりました。しかし、それが幸いとなって小さな生物たちの学習が進み、土の中の生物に関する興味関心がより高まる結果になりました。

 学習内容は、このページタイトル『生物の進化と系統樹』です。生物界における『土の中の生物』位置を明確にすることで、これらの生物が当たり前の存在のように見えていきます。だんだん違和感がなくなっていく、と表現してもよいでしょう。

 5時間完了の『土の中の生物』を終えたの感想は、「むしろ、この授業を入れることを前提にしてカリキュラムを組んだ方が良い」です。

関連ページ
生物の分類2年(2000年度)
生物の分類


図1:生物の系統樹(クリックすると拡大します)


本時の目標
・生物の進化と系統樹を理解する
・生物界を、植物・菌-細菌・動物の3つに分ける
・3つに分類する基準(とくに菌-細菌)を理解する
・1年で学習した植物、2年で学習した動物の具体例をあげながら、進化や系統樹を復習する
・これから観察実習を行う具体的な土の中の生物1つひとつについて、系統樹における位置を把握する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)生物を3つに分ける (3分〜5分)
 学習プリントに、下図2のような図形を印刷しておきます。そして、それを3色(左から植物・菌-細菌・動物)で分けます。色は何色でも構いませんが、植物は葉緑体で光合成を行う生物なので、にします。


図2:生物界を3つに分ける


図3:植物・菌-細菌・動物に分けた系統樹

 植物と動物は簡単ですが、菌-細菌の名前は出てこないと思います。授業ではまず、植物を定義します。前に述べたように、『植物=葉緑体で光合成を行う生物』です。次に、動物とは何か、発問します。「動く生物」ではありません。植物を含め、基本的に全ての生物は動きます。動物とは何か、考え・対話させてください。

「植物は自分で生活に必要な栄養分をつくることができます。光合成する生物=植物、としたからです。したがって、動物は光合成ができない生物ですが、何々ができない生物、という定義はよくありません。何々ができる生物、として定義してください。植物は光合成ができる生物ですが、動物は何ができる生物でしょう。あるいは、何をする生物でしょう。ポイントは、生活に必要な栄養分をどのようにして手に入れているか、です」

 動物は、体内で他の生物を吸収する生物です。ヒトの場合、口から他の生物を取り込み、歯で噛み、だ液・胃液などの消化液でどろどろに溶かし、小腸で吸収し、不要物を大便として排出します。以上のように動物の定義ができたら、中央に位置する生物は何か、考えさせます。おそらく、子どもたちから菌-細菌、という言葉が出てくると思います。30秒使っても出てこない場合は、先生から紹介しても良いでしょう。大切なことは菌-細菌の定義です。

「植物と動物を区別するポイントは、生活に必要な栄養分をどうやって手に入れるかでした。植物は自分で作り出し、動物は他の生物を食べることで手にいれています。では、菌-細菌はどうしているでしょう?」

「菌-細菌は、動物と同じように自分で栄養分を作ることができません。どのように手に入れていますか」

「動物は体内で消化・吸収していますが、菌-細菌は?」

 菌-細菌は、体外で他の生物を吸収する生物です。体外でどろどろに溶かすこともあるので、異臭が発生することもありますが、ヒトの大便が臭い理由と大差ありません。菌-細菌は体外、動物は体内、それだけの違いです。そもそも、ヒトの腸内には無数の細菌が生活しています。私の授業カリキュラムでは、4時間後に大便の半分以上は腸内細菌(あるいは細菌の死骸)であることを紹介する予定です。

(3)植物の系統樹 (5分〜10分)
 1年で学習した内容です。本日のメインではないので、スピード感を大切にして、確実におさえていきましょう。


図4:植物の系統樹
 左から順に、被子植物・裸子植物・シダ植物・コケ類・藻類

(4)菌-細菌の系統樹 (1分〜3分)
 3時間後に学習する内容です。余裕があれば、具体的な生物名を教えてください。なければ、菌は肉眼レベルまで大きくなるものがあるけれど、細菌は単細胞&顕微鏡レベル(肉眼では観察不可)を付け加えてください。


図5:菌-細菌の系統樹

(5)動物の系統樹 (5分〜10分)
 2年で学習した内容です。スピード感を大切にすることは同じですが、肉眼レベルの『土の中の生物』はここに分類されるので、必要な分類基準を確実におさえてください。


図6:動物の系統樹(クリックすると拡大します)

(6)土の中の生物を書き込む (10分〜15分)
 本時のメインです。長い時間でありませんが、重要で楽しい時間になります。教科書や資料集の『土の中の生物』の写真や図版を見ながら、生物名を1つずつ書き込んでいってください。体の特徴によって位置づけすることで、生物を見る目が育つだけでなく、興味関心が高くなります。以下は、図6に書き加えた生物です。

書き加えた『土の中の生物
センチコガネ、ハネカクシの幼虫、シデムシ、カニムシ、クモ、ダニ、トビムシ、イシノミ、ムカデ、ワラジムシ、ダンゴムシ、ミミズ、ヒメミミズ、センチュウ、(モグラ)


図7:土の中の生物を書き加えるためのヒント

(7)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 結果として、このタイミングで系統樹を学習したことは、土の中の生物だけに止まらず、すべての生物を身近に感じることになったと思います。社会環境の変化によって、今回と同じ学習効果を期待することは難しいと思いますが、中学3年生の最後に系統樹を学習することの価値は十分あると思います。

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